【2026年夏】お盆に気づいた家族の「いびき」、放置は危険かも|睡眠時無呼吸症候群(SAS)と高血圧・糖尿病・肥満の悪循環、CPAP保険適用が拡大【田園調布・多摩川】

皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。

2026年のお盆、ご家族で久しぶりに顔を合わせた方も多いのではないでしょうか。帰省先で同じ部屋に寝てみて、「お父さんのいびき、こんなに大きかった?」「寝ている間、呼吸が止まっていた気がする」——そんな“気づき”のご相談が、この時期の外来では毎年増えます。

大きないびきと呼吸の停止は、睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)のサインかもしれません。SASは単に「眠りの質」の問題ではなく、高血圧・糖尿病・肥満と深く結びついた生活習慣病の一員です。しかも2026年6月の診療報酬改定で、治療の柱であるCPAP(シーパップ)療法の保険適用基準が緩和され、これまで対象外だった方にも治療の道が広がりました。

今回は、日本呼吸器学会「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」、日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」、日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2022」をもとに、いびきと生活習慣病の関係、検査と治療の流れを分かりやすく解説いたします。

お盆の帰省は「家族の睡眠」に気づくチャンス

SASの難しいところは、ご本人には自覚がほとんどないことです。無呼吸が起きているのは眠っている間ですから、「いびきがうるさい」「呼吸が止まっていた」と気づくのは、たいてい一緒に寝ているご家族です。単身赴任や一人暮らしの方では、お盆やお正月の帰省が、家族が睡眠の異変に気づける貴重な機会になります。

日中の強い眠気や起床時の頭痛・熟睡感のなさも大切なサインですが、「歳のせい」「夏バテのせい」と見過ごされがちです。世界的な推計では、日本国内で中等症以上(後述するAHIが15以上)の睡眠時無呼吸のある方は約900万人にのぼるとされ、その多くが未診断・未治療と考えられています。

ポイント|家族が気づけるSASの3大サイン

① 大きないびき:止まったあと「ガガッ」と再開する、途切れ途切れのいびき

② 呼吸の停止:寝ている間に10秒以上、呼吸が止まって見える

③ 日中の居眠り:会話中・運転中・食事中などにうとうとしてしまう

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?|AHIと重症度

睡眠時無呼吸症候群は、眠っている間に気道(空気の通り道)がふさがったり狭くなったりして、無呼吸(10秒以上の呼吸停止)や低呼吸(呼吸が浅くなる状態)を繰り返す病気です。大部分は、のど・舌の周囲の軟部組織が気道を塞ぐ「閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)」です。

重症度は、睡眠1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数であるAHI(無呼吸低呼吸指数)で評価します。日本呼吸器学会のSAS診療ガイドライン2020では、次のように分類されます。

重症度 AHI(1時間あたりの回数) イメージ
軽症 5以上15未満 4〜12分に1回、呼吸が乱れる
中等症 15以上30未満 2〜4分に1回、呼吸が乱れる
重症 30以上 2分に1回以上、一晩中呼吸が乱れる

無呼吸のたびに血液中の酸素が低下し、脳は眠りを中断して呼吸を再開させます。ご本人は覚えていなくても、体は一晩中「溺れかけては目を覚ます」ような状態を繰り返しているのです。

なぜ放置は危険?高血圧・糖尿病・肥満との悪循環

SASが「生活習慣病の一員」と言われるのは、無呼吸のくり返しが血圧・血糖・体重のすべてに影響するためです。

メカニズム図解|無呼吸が生活習慣病を悪化させる流れ

1 気道がふさがり無呼吸に:血液中の酸素が繰り返し低下します(間欠的低酸素)
2 体が「緊急事態」と判断:交感神経(体を興奮させる神経)が夜通し活発になります
3 血圧・血糖が上がりやすくなる:夜間・早朝の血圧上昇、インスリンの効きにくさ(インスリン抵抗性)につながります
4 睡眠不足→食欲増加→体重増加→気道がさらに狭く:肥満と無呼吸がお互いを悪化させる悪循環が完成します

具体的には、次のような関係が知られています。

高血圧との関係:JSH2025(高血圧管理・治療ガイドライン2025)では、睡眠時無呼吸は血圧を上げる要因・二次性高血圧の原因の一つとして挙げられています。特に、お薬を複数使っても血圧が下がりにくい「治療抵抗性高血圧」や、早朝・夜間の高血圧の背景にSASが隠れていることがあります。JSH2025では全年齢で診察室血圧130/80mmHg未満が降圧目標とされ、目標達成のためにも背景にあるSASの評価が大切です。

糖尿病との関係:間欠的低酸素と睡眠の分断はインスリン抵抗性を高め、閉塞性睡眠時無呼吸のある方では2型糖尿病の合併が多いことが多くの研究で報告されています。血糖コントロールがなかなか安定しない方で、SASが見つかるケースは珍しくありません。

肥満との関係:日本肥満学会の肥満症診療ガイドライン2022では、閉塞性睡眠時無呼吸は肥満に起因・関連する健康障害の一つに位置づけられています。首まわり・舌の付け根に脂肪がつくと気道が狭くなるため、体重増加はSASの最大の危険因子です。一方で、やせ型・小顔・あごが小さい方でも起こるのが日本人の特徴で、「太っていないから大丈夫」とは言えません。

重要|こんな影響も報告されています

・重症のSASを治療せず放置すると、心筋梗塞・脳卒中・不整脈など心血管疾患のリスク上昇が報告されています

・日中の強い眠気は、居眠り運転による交通事故のリスクにもつながります。お仕事で運転される方は特に早めの検査をおすすめします

こんな方は要注意|セルフチェック

SASセルフチェック|当てはまるものはありますか?

□ 家族に「いびきが大きい」「呼吸が止まっている」と言われた

□ 日中、会議中や運転中に強い眠気がある

□ 朝起きたときに頭痛がする、熟睡した感じがない

□ 夜間に何度もトイレに起きる

□ 高血圧・糖尿病・脂質異常症の治療中、または健診で指摘された

□ 最近体重が増えた、首まわりが太くなった

□ あごが小さい・扁桃が大きいと言われたことがある

複数当てはまる方、特に「いびき・無呼吸の指摘」と「日中の眠気」や「高血圧・糖尿病」が重なる方は、一度検査を受けていただく価値があります。

検査はどう進む?|自宅でできる簡易検査から

「検査」と聞くと入院を想像される方が多いのですが、最初のステップはご自宅でできる簡易検査です。指先と鼻にセンサーを付けて一晩眠るだけで、無呼吸の回数(AHIに相当する指標)と血液中の酸素の低下を調べられます。

検査 場所 内容
簡易検査(携帯型装置) 自宅 鼻の気流と指先の酸素飽和度(SpO₂)を測定。普段どおりの環境で検査できます
精密検査(PSG:終夜睡眠ポリグラフ検査) 医療機関(1泊)または在宅 脳波・呼吸・酸素・心電図などを同時に記録し、睡眠の質と無呼吸を詳しく評価します

簡易検査の結果によっては、そのまま治療に進める場合と、精密検査で確定診断を行う場合があります。診察で症状やご事情をうかがいながら、適切な流れをご案内いたします。

治療の選択肢|CPAP・マウスピース・減量(2026年6月から保険適用が拡大)

治療は重症度と原因に応じて選択します。代表的な選択肢は次の3つです。

治療法 主な対象 内容
CPAP(シーパップ)療法 中等症〜重症 鼻マスクから空気を送り、気道が塞がらないよう支える標準治療。毎晩の使用継続が大切です
口腔内装置(マウスピース) 軽症〜中等症など 下あごを前方に保持して気道を広げる装置。歯科と連携して作製します
減量・生活習慣の改善 すべての方(肥満のある方は特に) 体重の減量は無呼吸の改善が期待できる根本的対策。CPAPと並行して取り組みます

ポイント|2026年6月の診療報酬改定でCPAPの保険適用が拡大

① 精密検査(PSG):AHI 20以上 → 15以上に緩和(症状などの要件を満たす場合)

② 簡易検査:AHI相当 40以上 → 30以上に緩和。入院せず外来でCPAPを始められる方が広がりました

③ 以前「基準に届かない」と言われた方も:中等症(AHI 15〜20程度)で治療対象外とされた方は、再評価する価値があります

CPAP療法は健康保険の適用で、自己負担3割の方で月5,000円前後(診察料などを含む、おおよその目安)が一般的です。なお、CPAPやマウスピースは保険診療として行う医学的治療であり、いびきの美容的な悩みだけを対象とするものではありません。適応の有無は検査結果と症状に基づいて判断いたします。

今日からできる生活習慣の工夫

検査や治療と並行して、次のような生活習慣の見直しも無呼吸の軽減に役立つとされています。

① 体重管理——まずは「3%減」から

肥満のある方では、減量そのものが気道を広げる根本的な対策です。肥満症診療ガイドライン2022では、まず現体重の3%の減量が目標とされ、これだけでも血圧・血糖・脂質の改善が期待できるとされています。詳しくは内臓脂肪と3%減量の記事もご覧ください。

② 寝る前のお酒を控える

アルコールはのどの筋肉をゆるませ、気道を塞がりやすくします。「寝酒でよく眠れる」と感じても、実際には無呼吸といびきを悪化させることが知られています。お盆で飲酒の機会が増えた方は、まず就寝前3〜4時間の飲酒を控えることから始めましょう。

③ 横向きで寝る・枕を見直す

仰向けでは舌の付け根が落ち込み、気道が塞がりやすくなります。横向き寝や、高すぎない枕への変更で、いびきが軽くなる方もいらっしゃいます。

④ 残暑の睡眠環境を整える

熱帯夜の続く8月は、暑さで睡眠が浅くなりがちです。エアコンは我慢せず28℃を目安に朝まで使用し、脱水予防の水分補給も忘れずに。夏の睡眠の整え方は熱帯夜の睡眠の記事で詳しく解説しています。

当院でのご相談について

竹内内科小児科医院では、内科・糖尿病内科・代謝内科・生活習慣病の診療の中で、いびき・日中の眠気・睡眠時無呼吸のご相談をお受けしています。高血圧や糖尿病の治療中の方は、血圧・血糖の管理と睡眠の評価を同じ主治医のもとで一体的に進められるのが当院の強みです。検査や治療の適応については、診察のうえで最適な流れをご案内し、専門的な精密検査が必要な場合は連携医療機関をご紹介いたします。

平日はお仕事で忙しい働き盛りの方も、土曜午前の診療をご利用いただけます。「家族に指摘されたけれど、自分ではよく分からない」という段階でのご相談も大歓迎です。ご家族の付き添い受診で、夜間の様子を教えていただけると診断の大きな助けになります。

受診前チェックリスト

□ いびき・無呼吸を指摘された時期と頻度(ご家族からの情報があれば一緒に)

□ 日中の眠気の程度(運転中・会議中など、どんな場面か)

□ 健康診断の結果(血圧・血糖・脂質・体重の推移が分かるもの)

□ 服用中のお薬(お薬手帳)

関連記事

関連記事|竹内内科小児科医院(田園調布)

健診で「メタボ」「腹囲オーバー」と言われたら|内臓脂肪は“夏”に落とす・3%減量で変わる血圧・血糖・脂質
SAS改善の土台となる減量の具体的な進め方はこちら
熱中症予防の「塩分補給」、高血圧の方はどこまで必要?|JSH2025の減塩目標と両立する残暑の過ごし方
JSH2025に基づく夏の血圧管理のポイント
健診でHbA1c・血糖値を指摘されたら|「予備群のうち」が勝負どころ
血糖コントロールと睡眠は密接な関係があります
熱帯夜で眠れない方へ|夏の睡眠の質を高める7つのコツと受診の目安
夏の睡眠環境づくりの実践ガイド

関連記事|五良会クリニック白金高輪(港区)

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とCPAP治療の完全ガイド|2026年6月診療報酬改定対応
検査からCPAP導入までをさらに詳しく解説した専門ガイド
糖尿病治療×内視鏡×人間ドック|CGM個別化+抗老化エビデンス
グループ内の糖尿病専門診療のご案内

関連記事|五良ファミリークリニック センター南(横浜市都筑区)

夏に血圧が下がるのは、良いこと?〜降圧薬の自己中断が危ない・夏の高血圧完全ガイド〜
夏の血圧変動と降圧薬との付き合い方
高血圧症の最新治療|JSH2025・家庭血圧・降圧目標
JSH2025に基づく高血圧管理の専門ページ

五良会グループでは、田園調布から白金高輪まで医師が連携しております。患者さまの転居やライフスタイルの変化に合わせて、同じグループ内で継続診療が受けられる体制を整えております。

参考文献

  1. 日本呼吸器学会(監修). 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020. 南江堂, 2020.
  2. 日本高血圧学会. 高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025). ライフサイエンス出版, 2025.
  3. 日本肥満学会. 肥満症診療ガイドライン2022. ライフサイエンス出版, 2022.
  4. Benjafield AV, et al. Estimation of the global prevalence and burden of obstructive sleep apnoea: a literature-based analysis. Lancet Respir Med. 2019;7(8):687-698.
  5. 厚生労働省. 令和8年度(2026年度)診療報酬改定(在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料・対象患者基準の見直し)(2026年8月閲覧)

GORYOKAI GROUP
竹内内科小児科医院

内科 小児科 糖尿病内科 代謝内科 アレルギー科
皮膚科 生活習慣病 訪問診療 心療内科 健康診断

〒145-0072 東京都大田区田園調布本町40-12 コンド田園調布2階

東急東横線・目黒線 多摩川駅 徒歩5分

土曜午前も診療
診療時間 日祝
午前
9:00-12:00
午後
15:30-19:00

CLINICS
WEB予約

melmo
WEB問診


LINE


TEL

竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医

Author: 五藤 良将