皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。
健康診断の結果票を見て、「腹囲が基準を超えています」「メタボリックシンドロームの疑い」と書かれていて、どきっとされた方も多いのではないでしょうか。この夏、当院でも「お腹まわりを指摘されたのですが、何から始めればいいですか」というご相談が増えております。
今回のブログでは、日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2022」、厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」、そして2025年度から使われている「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)とは何か、そして「内臓脂肪は夏こそ落としやすい」理由と具体的なコツを、田園調布の患者さまにやさしくお伝えいたします。
先日は健診で「LDLコレステロールが高め」と言われたらの記事を公開いたしましたが、今回はお腹まわり全体、つまり血圧・血糖・脂質をまとめて考える「メタボ」のお話です。
目次
そもそも「メタボリックシンドローム」とは?
メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)とは、単に「太っている」ことではありません。内臓のまわりに脂肪がたまること(内臓脂肪型肥満)を土台として、高血圧・高血糖・脂質異常が重なった状態を指します。
皮下脂肪(つまめる脂肪)よりも、内臓脂肪(お腹の奥にたまる脂肪)のほうが、血圧・血糖・脂質に悪い影響を与えやすいことが分かっています。一つひとつは「軽度」でも、重なることで動脈硬化が進み、将来の心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まる——これがメタボが注目される理由です。
診断基準|腹囲・血圧・血糖・脂質のチェックポイント
日本のメタボリックシンドロームの診断は、まず腹囲(へその高さのウエスト周囲径)を必須項目とし、そこに脂質・血圧・血糖の3項目のうち2つ以上が当てはまるかで判定します。
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| 腹囲(必須項目) | 男性 85cm以上/女性 90cm以上 (内臓脂肪面積100cm²に相当) |
| ① 脂質 | 中性脂肪150mg/dL以上 かつ/または HDLコレステロール40mg/dL未満 |
| ② 血圧 | 収縮期130mmHg以上 かつ/または 拡張期85mmHg以上 |
| ③ 血糖 | 空腹時血糖110mg/dL以上 |
腹囲が基準を超え、かつ①〜③のうち2項目以上に当てはまると、メタボリックシンドロームと判定されます。1項目のみの場合は「予備群」です。
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ポイント|腹囲は「体重」より大事なサイン 体重が標準的でも、お腹だけ出ている「隠れメタボ」の方がいらっしゃいます。ご自宅で、朝食前・立った姿勢・軽く息を吐いたところで、おへその高さをメジャーで測ってみてください。 「予備群のうち」に手を打つことが、いちばんの近道です。 |
なぜ内臓脂肪は「放置してはいけない」のか
内臓脂肪は、ただエネルギーをためる袋ではありません。さまざまな物質を出して、血圧・血糖・脂質のバランスを乱す「臓器」のように働くことが分かっています。仕組みを図でご覧ください。
メカニズム図解|内臓脂肪がメタボを進めるながれ
| 内臓脂肪がたまる:食べ過ぎ・運動不足・飲酒などで、お腹の奥に脂肪が蓄積します。 | |
| 悪い物質が増え、良い物質が減る:血圧や血糖を上げる方向に働く物質が増え、動脈を守る「アディポネクチン」が減ります。 | |
| 血圧・血糖・脂質が同時に乱れる:一つひとつは軽くても、重なって動脈硬化が進みます。 | |
| 心筋梗塞・脳梗塞のリスク上昇:長い年月をかけて血管が傷み、将来の重い病気につながります。 |
脂肪肝(フェイティ・リバー)もこの流れの一部です。健診で「γ-GTPやALTが高め」「脂肪肝」と言われた方は、内臓脂肪と深く関係しています。この点はグループの五良会クリニック白金高輪のブログ(脂肪肝とメタボ)でも詳しく解説しております。
朗報|まずは「3%減量」で数値が変わります
「痩せなきゃ、と思うと気が重い」という方に、ぜひ知っていただきたいことがあります。日本肥満学会の肥満症診療ガイドライン2022では、肥満症(BMI25以上で健康障害を伴う状態)の治療目標として、まず現在の体重の3%を、3〜6か月かけて減らすことが示されています。
3%というのは、たとえば体重70kgの方なら約2kgです。内臓脂肪は皮下脂肪よりも落ちやすく、このわずかな減量でも血圧・血糖・脂質・肝機能の数値が改善しやすいことが報告されています。「まず2kg」であれば、少し前向きになれるのではないでしょうか。
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まずはここを目標に □ 3〜6か月で「今の体重の3%(例:70kgなら約2kg)」を減らす □ 男性は腹囲85cm、女性は90cm未満を目安に □ 体重・腹囲を週1回、同じ条件で記録する |
夏こそチャンス|食事のコツ
夏は食欲が落ちやすく、体を動かす機会も工夫しやすい季節です。まずは食事から、無理のない範囲で見直してみましょう。2025年度から使われている「日本人の食事摂取基準(2025年版)」も、極端な制限ではなくバランスと継続を重視しています。
① 冷たい甘い飲み物に注意
猛暑の水分補給に、ジュースやスポーツドリンク、加糖の炭酸飲料を大量に飲むと、糖分とカロリーの摂り過ぎになります。基本の水分補給は水やお茶を中心にしてください。ビールも「飲み過ぎ」は内臓脂肪の大きな原因になります。
② 「ベジ・ファースト」と麺類の“ちょい足し”
食事の最初に野菜・海藻・きのこを食べると、血糖の急な上昇をゆるやかにできます。そうめんや冷やし中華だけで済ませず、たんぱく質(卵・鶏肉・豆腐)と野菜を一品足すのがおすすめです。
③ 「食べない」より「置き換える」
欠食は、かえって次の食事の血糖を上げやすくします。極端に減らすのではなく、揚げ物を焼き物に、白いご飯を少し雑穀ごはんに、といった置き換えで無理なく続けましょう。栄養面のご相談は、当院の管理栄養士による栄養相談もご利用いただけます。
夏こそチャンス|運動のコツ(身体活動ガイド2023)
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、成人の目安として次のように示されています。
| 対象 | 身体活動・運動の目安 |
|---|---|
| 成人 | 歩行またはそれと同等以上の身体活動を1日60分(週23メッツ・時)以上。加えて筋力トレーニングを週2〜3日 |
| 高齢者 | 歩行など1日40分以上+筋力・バランスなど多要素の運動を週3日 |
| 共通 | 座りっぱなしの時間を減らすことも大切 |
とはいえ、真夏の日中の屋外運動は熱中症の危険があります。無理は禁物です。
|
夏の運動は「涼しく・こまめに」 ・早朝や夕方の涼しい時間帯、または冷房の効いた室内で行う ・エスカレーターを階段に、一駅手前で降りて歩く、など日常の「ちょこちょこ動く」を増やす ・運動の前後・最中はこまめに水分補給を(甘くない飲み物で) |
すでに高血圧や糖尿病で治療中の方、心臓や膝に不安のある方は、運動を始める前に一度ご相談ください。安全な運動量を一緒に考えます。
こんな方は一度ご相談を
下のいずれかに当てはまる方は、健診の結果票を持って、お気軽に受診してください。生活習慣の見直しだけで十分な方もいれば、お薬による治療を検討したほうがよい方もいらっしゃいます。
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受診前チェックリスト □ 健診で「メタボ」「腹囲」「脂肪肝」を指摘された □ 血圧・血糖・脂質のうち、2つ以上が基準を超えている □ 自己流のダイエットが続かない・リバウンドを繰り返す □ 直近の健診結果票(お手元にあればお持ちください) |
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重要|「治療薬」についての注意 ・肥満症の治療薬は、あくまで医師が肥満症と診断し、適応・保険適用の基準を満たした場合に、食事・運動療法と併せて検討するものです。 ・「美容目的・ダイエット目的」での安易な使用とは明確に区別する必要があります。自己判断ではなく、必ず医師にご相談ください。 |
当院では内科・糖尿病内科・代謝内科として、血圧・血糖・脂質を総合的に拝見し、管理栄養士の栄養相談とあわせて、一人ひとりに合った無理のないプランをご提案しております。土曜午前も診療しておりますので、お仕事帰りやお休みの日にもご相談いただけます。
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五良会グループでは、田園調布の竹内内科小児科医院と港区の五良会クリニック白金高輪、横浜市都筑区の五良ファミリークリニック センター南が連携し、生活習慣病を多角的にサポートしております。患者さまの転居やライフスタイルの変化に合わせて、同じグループ内で継続診療が受けられる体制を整えております。
参考文献
- 日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2022」(2022年)
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」(2024年公表)
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」(2025年度から使用)
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「メタボリックシンドロームの診断基準」https://kennet.mhlw.go.jp/(2026年8月閲覧)
- メタボリックシンドローム診断基準検討委員会「メタボリックシンドロームの定義と診断基準」日本内科学会雑誌. 2005;94(4):794-809.
※本記事は一般的な健康情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療方針を保証するものではありません。症状や検査値には個人差がありますので、実際の診断・治療は医療機関にご相談ください。
竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医