皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。
朝晩はめっきり涼しくなり、空気が少しずつ乾き始める季節になりました。この時期になると、田園調布・多摩川周辺の外来でも「急に体がかゆくなった」「すねが粉をふいたようにカサカサする」というご相談が増えてまいります。実はこうした皮膚の変化、とくに糖尿病をお持ちの方にとっては、単なる「秋の乾燥」では済まない大切なサインであることが少なくありません。
皮膚は「体の外側にある、いちばん大きな臓器」ともいわれ、血糖の状態を映す鏡のような存在です。首やわきの黒ずみ、治りにくい水虫、発疹がないのに続くかゆみ——こうした変化が、糖尿病の発見や悪化のきっかけとして見つかることもあります。今回は、糖尿病診療ガイドライン2024(日本糖尿病学会)や皮膚瘙痒症診療ガイドライン2020(日本皮膚科学会)などをもとに、「糖尿病と皮膚」の関係と、今日から始められる秋のスキンケアを、内科・皮膚科の両方を標榜する当院の視点からやさしく解説いたします。
THIS ARTICLE IS WRITTEN AND SUPERVISED BY
竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医
この記事は五藤良将が執筆・監修し、内容に責任を持っています。
目次
なぜ糖尿病だと皮膚トラブルが起こりやすいのか
糖尿病の方は、そうでない方に比べて皮膚のトラブルを経験しやすいことが知られています。理由はひとつではなく、高血糖が皮膚に対していくつもの方向から影響するためです。
まず、血糖値が高い状態が続くと、余分なブドウ糖が尿に出るときに水分も一緒に失われ、体は脱水傾向になります。さらに糖尿病神経障害のひとつである自律神経障害が進むと、汗をかく機能が低下し、皮膚のうるおいを保つ皮脂や汗のバリアが弱くなります。加えて、細い血管の血流が悪くなることで皮膚に栄養が届きにくくなり、白血球のはたらきが落ちることで感染への抵抗力(易感染性:いかんせんせい)も低下します。
メカニズム図解|高血糖が「かゆみ・感染の悪循環」を生むまで
| 高血糖が続く:尿に糖と一緒に水分が失われ、体が脱水傾向になります | |
| 皮膚のうるおいが低下:自律神経障害による発汗の減少、血流の低下が重なり、皮膚が乾燥します | |
| バリア機能が壊れる:乾燥した皮膚は外からの刺激に敏感になり、かゆみを感じやすくなります | |
| かき壊し→感染の悪循環:かき壊した傷から細菌や真菌(カビ)が入り込みやすく、易感染性のため治りにくい——この悪循環が糖尿病の皮膚トラブルの本質です |
また、長年の高血糖は皮膚のコラーゲンそのものも変化させます。ここで関わってくるのが「AGEs」という物質です。
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用語解説|AGEs(終末糖化産物)とは AGEs(エージーイーズ:Advanced Glycation End-products、終末糖化産物)とは、余分な糖がたんぱく質と結びついて「糖化」することでできる物質です。長年の高血糖で皮膚のコラーゲンにAGEsが蓄積すると、皮膚の弾力が失われ、硬く、傷が治りにくい皮膚になっていきます。AGEsは皮膚だけでなく骨や血管の老化にも関わることが知られており、抗加齢医学の分野でも注目されています。 |
秋に増える「乾燥・かゆみ」——発疹がないのにかゆい皮膚瘙痒症
秋から冬にかけて外来で最も増えるのが、「見た目にはほとんど何もないのに、かゆい」というご相談です。湿疹やじんましんのような発疹がないのにかゆみだけが続く状態を、医学的には皮膚瘙痒症(ひふそうようしょう)と呼びます。
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用語解説|皮膚瘙痒症(ひふそうようしょう)とは 「瘙痒(そうよう)」とは、かゆみのこと。皮膚に発疹などの目に見える変化がないのに、かゆみが生じる状態を皮膚瘙痒症といいます。日本皮膚科学会の「皮膚瘙痒症診療ガイドライン2020」では、加齢や乾燥によるもののほか、糖尿病・慢性腎臓病・肝臓や甲状腺の病気など、全身の病気が背景に隠れていることがあるとされています。 「乾燥のせいだと思っていたら、実は血糖値が高かった」というケースもあるため、長引くかゆみは一度、内科的な視点でのチェックをおすすめいたします。 |
たとえば、こんな患者さんを想像してみてください(本記事に登場する症例は、当院の外来でよく出会う患者さんをイメージした架空の例で、特定の方の診療情報ではありません)。
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ケース①|56歳女性・HbA1c 7.2%・事務職 9月の半ばごろから、すねと背中がかゆくて夜中に目が覚めるように。見た目は少しカサついている程度で発疹はありません。「年のせいかしら」と市販のかゆみ止めでしのいでいましたが、かき壊した痕が増えてきて受診。皮膚の乾燥に加えて、夏の間に血糖コントロールがやや乱れていたことがわかり、保湿剤とかゆみ止めの外用薬、そして血糖管理の立て直しを並行して行う方針となりました。 |
このように、糖尿病の方のかゆみ対策は「保湿」と「血糖コントロール」の両輪で考えることが大切です。かゆみは我慢すればするほど、かき壊しによってバリアが壊れ、さらにかゆくなるという悪循環に陥ります。早めに外用薬でかゆみの連鎖を断ち切ることが、結果的に皮膚を守る近道になります。
皮膚に現れる糖尿病のサイン——首の黒ずみ・すねのシミ・治りにくい傷
糖尿病には、皮膚に現れやすい特徴的な変化がいくつか知られています。なかには「糖尿病と診断される前」から現れるものもあり、皮膚が病気の発見のきっかけになることもあります。
| 皮膚のサイン | よくある部位・見た目 | 背景にあるもの |
|---|---|---|
| 首・わきの黒ずみ (黒色表皮腫) |
首まわり・わき・そけい部が、ビロード状に黒ずんで厚くなる | インスリン抵抗性(肥満・2型糖尿病の前段階でも) |
| すねの褐色のシミ (前脛骨部色素斑) |
すねの前面に、小さな茶色いへこんだ斑がいくつもできる | 細い血管の障害。糖尿病の方に比較的よくみられます |
| すねの黄色っぽい硬い斑 (リポイド類壊死症) |
すね前面の黄色〜赤褐色でテカリのある硬い斑。まれ | 糖尿病に特徴的。潰瘍化することがあり皮膚科での管理が必要 |
| 手指のこわばり・ばね指 | 指の皮膚が厚く硬くなる、指の曲げ伸ばしで引っかかる | AGEsによるコラーゲンの変化(手根管症候群を合併することも) |
| 突然の水ぶくれ (糖尿病水疱) |
やけどの覚えがないのに、手足に痛みのない水ぶくれ。まれ | 神経障害・血管障害が進んだ方にみられることがあります |
| 傷の治りが遅い | ちょっとした切り傷・靴ずれがいつまでもジクジクする | 血流障害+易感染性。足では足病変の入り口になります |
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用語解説|黒色表皮腫(こくしょくひょうひしゅ)とインスリン抵抗性 黒色表皮腫とは、首すじ・わき・そけい部などの皮膚が、黒ずんでビロードのように厚くなる変化です。「洗っても落ちない黒ずみ」として気づかれることが多く、インスリン抵抗性——すなわち、血糖を下げるホルモンであるインスリンが効きにくくなっている状態——のサインとして重要です。 肥満をともなうお子さん・若い方にもみられ、2型糖尿病がまだ発症する前の段階で現れることもあります。当院は内科と小児科を併設しておりますので、お子さんの首の黒ずみが気になる場合もお気軽にご相談ください。 |
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用語解説|リポイド類壊死症(るいえししょう)——まれでも知っておきたいサイン リポイド類壊死症(糖尿病性リポイド類壊死症)は、すねの前面に黄色〜赤褐色の、表面がテカテカと光る硬い斑ができる、まれな皮膚の病気です。糖尿病との関連が深いことで知られ、進行すると中央が薄くなって潰瘍(かいよう:皮膚がえぐれた状態)になることがあります。見た目が「打ち身の痕」や「シミ」と紛らわしいため、すねに治らない硬い斑がある方は、自己判断せず皮膚科・内科でご相談ください。 |
治りにくい水虫・皮膚感染症にご注意を
糖尿病の方の皮膚トラブルで、乾燥・かゆみと並んで多いのが皮膚の感染症です。高血糖の状態では白血球のはたらきが低下するため、健康な方なら問題にならない程度の菌でも感染が成立しやすく、いったん感染すると治りにくい傾向があります。
とくに多い3つの感染症
① 足白癬(あしはくせん:水虫)・爪白癬(つめはくせん)——糖尿病の方は白癬(真菌=カビの感染症)の頻度が高いことが知られています。足の指の間のジュクジュク、かかとのガサガサ、爪が白く濁って厚くなる変化が典型です。日本皮膚科学会の「皮膚真菌症診療ガイドライン2025」でも、爪白癬は塗り薬・飲み薬による適切な治療が推奨されており、「水虫は治らないもの」と諦める必要はありません。
② カンジダ症——口の端が切れる(口角炎)、陰部や皮膚が重なり合う部分のただれ・かゆみなどとして現れます。血糖が高い時期に繰り返しやすいのが特徴です。
③ 蜂窩織炎(ほうかしきえん)——皮膚の傷から細菌が入り込み、皮膚の深い部分で炎症が広がる感染症です。足がパンパンに赤く腫れ、熱をもって痛み、発熱をともなうこともあります。糖尿病の方では重症化しやすく、早期の抗菌薬治療が必要です。
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ケース②|62歳男性・HbA1c 8.2%・BMI 27・営業職 数年前から足の指の間がジュクジュクしていましたが、「ただの水虫」と市販薬を塗ったり塗らなかったり。最近は爪も白く厚くなってきました。秋の健診でHbA1c 8.2%を指摘されて受診された際に足を拝見すると、指の間のひび割れから細菌が入りかけた痕が。白癬のひび割れは、蜂窩織炎や糖尿病足病変の「入り口」になります。この方には血糖コントロールの見直しと白癬の治療、毎日の足のチェックを併せてご提案しました。 |
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重要|「たかが水虫」と放置しないでください ・糖尿病の方の足白癬・ひび割れは、細菌感染(蜂窩織炎)や足潰瘍の入り口になります ・神経障害があると、傷ができても痛みに気づきにくいため、発見が遅れがちです ・足が赤く腫れて熱をもつ・発熱をともなう場合は、我慢せず早めに受診してください |
今日からできる「秋のスキンケア5か条」
糖尿病の方のスキンケアは、特別なことをする必要はありません。ポイントは「うるおいを守る・こすらない・毎日観察する」の3つ。空気が乾き始める今の時期から始めることで、冬本番のかゆみをぐっと減らすことができます。
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秋のスキンケア5か条 □ お風呂は38〜40℃のぬるめに。熱い湯・長湯は皮脂を奪います。ナイロンタオルでゴシゴシこすらず、よく泡立てた石けんでやさしく洗いましょう □ 入浴後はなるべく早く保湿剤を。ヘパリン類似物質や尿素配合の保湿剤、白色ワセリンなどは、診察のうえ保険診療で処方できます □ 衣類・暖房の「かゆみの引き金」を減らす。チクチクする素材を避け、電気毛布・こたつの使いすぎ、暖房による部屋の乾燥にもご注意を □ 足を毎日1回、観察する習慣を——指の間・足の裏・爪まで。見えにくい方は鏡やご家族の協力を。深爪も禁物です □ 血糖コントロールこそ最大のスキンケア。かゆみ・感染の背景には高血糖があります。HbA1cを整えることが、皮膚を内側から守ります |
市販の保湿剤で構わないので「続けること」がいちばん大切ですが、かき壊しや湿疹がすでにできている場合は、保湿剤だけでは追いつきません。ステロイド外用薬などを短期間きちんと使って炎症を鎮めるほうが、結果的に早く楽になります。使い分けはどうぞ外来でご相談ください。
こんなときは受診をご検討ください
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重要|受診の目安 ・かゆみで夜眠れない、または2週間以上かゆみが続いている ・足の傷・水ぶくれ・ひび割れがなかなか治らない ・皮膚が赤く腫れて熱をもち、痛む(発熱をともなうときは早急に) ・爪が白く濁って厚くなってきた、水虫を長年放置している ・首・わきの黒ずみがあり、健診で血糖値やHbA1cを指摘されたことがある |
「皮膚のことで内科にかかっていいのかしら」と迷われる方も多いのですが、ここまでお読みいただいたとおり、糖尿病の方の皮膚トラブルは血糖と切り離せないものです。皮膚と血糖の両方をまとめて相談できる窓口として、当院をご活用いただければと思います。
🏥 竹内内科小児科医院で診るという選択(当院が選ばれる理由)
「かゆみは皮膚科、血糖は内科」と分けて考えると、通院の負担が増えるうえ、悪循環の全体像が見えにくくなります。当院では、糖尿病の管理と皮膚の診療をひとつの窓口でこう診ています。
理由① 糖尿病内科と皮膚科をひとつの窓口で
当院は内科・糖尿病内科・代謝内科に加えて皮膚科を標榜しています。血糖の管理と、かゆみ・水虫・保湿剤などの皮膚の相談を、同じ外来でまとめて行えます。
理由② 糖尿病に取り組む院長が直接診察
日本糖尿病協会登録医・日本抗加齢医学会専門医の院長・五藤良将が外来で直接診察し、皮膚のサインから血糖コントロールまで一貫して診ます。
理由③ ご家族そろって相談できる内科×小児科
お子さんの首の黒ずみ(黒色表皮腫)や肥満のご相談から、ご高齢の方の乾燥・かゆみまで、ご家族で同じ窓口に相談いただけます。訪問診療にも対応しています。
理由④ 多摩川駅徒歩5分・土曜午前も診療
東急東横線・目黒線「多摩川駅」から徒歩5分。平日はお仕事のある方も、土曜午前の外来をご利用いただけます(受付は午前12時まで・午後19時まで)。
理由⑤ 五良会グループの連携で切れ目なく
内視鏡検査や専門外来が必要な場合は姉妹院の五良会クリニック白金高輪へ、スキンケアの美容的なご相談は同院2階の美容皮膚科へ、グループ内で切れ目なくご紹介できます。
長引くかゆみ・治らない水虫・気になる皮膚の変化——「乾燥のせい」と決めつける前に、一度ご相談ください。
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受診前チェックリスト □ 気になる皮膚の部位(かゆみ・黒ずみ・水虫など)を写真やメモにしておく □ 服用中のお薬・お薬手帳 □ 直近の健康診断の結果(血糖値・HbA1cの記載があるもの) □ 現在使っている保湿剤・市販薬があれば、その名前 |
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五良会グループでは、田園調布から白金高輪まで医師が連携しております。患者さまの転居やライフスタイルの変化に合わせて、同じグループ内で継続診療が受けられる体制を整えております。内視鏡検査や血液内科などの専門外来は五良会クリニック白金高輪1階と、美容的なスキンケアのご相談は同院2階の美容皮膚科と連携してご対応いたします。
参考文献
- 日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病診療ガイドライン2024. 南江堂, 2024.
- 日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病治療ガイド2024. 文光堂, 2024.
- 佐藤貴浩ほか. 皮膚瘙痒症診療ガイドライン2020. 日本皮膚科学会雑誌. 2020;130(7):1589-1606.
- 日本皮膚科学会「皮膚真菌症診療ガイドライン2025」https://www.dermatol.or.jp/(2026年9月閲覧)
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「糖尿病」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/(2026年9月閲覧)
AUTHOR / SUPERVISOR
竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将(ごとう よしまさ)
- 防衛医科大学校 医学部 卒業(27期)。防衛医科大学校病院、自衛隊中央病院、自衛隊横須賀病院ほかで臨床経験を積む
- 医療法人社団 五良会 理事長/医療法人社団 正友会 理事長/竹内内科小児科医院 院長
- 日本内科学会 認定内科医/日本抗加齢医学会 専門医/日本糖尿病協会 登録医/日本旅行医学会 認定医
- 日本温泉気候物理医学会 温泉療法専門医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/難病指定医
- 所属学会:日本内科学会、日本糖尿病学会、日本アレルギー学会、日本東洋医学会、日本リウマチ学会、日本外来小児科学会、日本抗加齢医学会、日本睡眠学会、日本美容内科学会、日本旅行医学会 ほか
- 著書『あぶら落とすスープ』(アスコム)。NHK・TBS・フジテレビ・日本テレビ・テレビ朝日などメディア出演多数
執筆・監修責任について
本記事は、五藤良将が公的機関の発表・国内外の診療ガイドライン・査読済み論文を確認したうえで執筆・監修しています。内容は公開時点の情報に基づくものであり、新しい知見やガイドラインの改訂があった場合は、こちらで記事を更新します。
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個々の患者さんの診断・治療に代わるものではありません。症状や治療のご判断については、必ず医師にご相談ください。記載内容について気になる点がございましたら、竹内内科小児科医院(03-3721-5222)までお知らせください。
竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医