【2026年秋】急な血糖値・HbA1cの悪化は「膵臓」からのサインかも?膵性糖尿病と膵がんとの関係を院長・五藤良将がやさしく解説【田園調布・多摩川】

皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。

秋の健康診断シーズンを迎え、当院の外来でも「去年まで落ち着いていた血糖値が、今年は急に上がってしまった」「HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー:過去1〜2か月の血糖の平均を反映する検査値)が短期間で悪化した」というご相談が増えています。血糖値の悪化というと、食べすぎや運動不足を思い浮かべる方が多いのですが、実は生活習慣に大きな変化がないのに血糖値が急に悪くなったときには、「膵臓(すいぞう)」の病気が隠れていることがあるのをご存じでしょうか。

今回のブログでは、慢性膵炎や膵がんなど膵臓の病気が原因で起こる「膵性(すいせい)糖尿病」について、日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」、日本膵臓学会「膵癌診療ガイドライン2025年版(第7版)」、日本消化器病学会「慢性膵炎診療ガイドライン2021(改訂第3版)」に基づき、一般的な2型糖尿病との違い・気づくためのサイン・検査と治療のポイントをやさしく解説いたします。

五藤 良将

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竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将

日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医
この記事は五藤良将が執筆・監修し、内容に責任を持っています。

膵性糖尿病とは?――膵臓が原因で起こる糖尿病

糖尿病というと、生活習慣と体質が関係する「2型糖尿病」や、免疫の異常でインスリンが出なくなる「1型糖尿病」がよく知られています。しかし糖尿病にはもう一つ、膵臓そのものの病気が原因となって発症するタイプがあり、これを「膵性糖尿病(すいせいとうにょうびょう)」と呼びます。専門的には「膵外分泌疾患に伴う糖尿病」に分類され、海外の文献では「3c型糖尿病(Type 3c)」と表記されることもあります。

用語解説|二次性糖尿病とは

糖尿病そのものの体質ではなく、ほかの病気やお薬が原因となって血糖値が上がるタイプの糖尿病を「二次性糖尿病(続発性糖尿病)」と呼びます。膵性糖尿病はその代表で、ほかにステロイドなどのお薬によるもの(ステロイド糖尿病)、甲状腺や副腎などホルモンの病気によるものがあります。原因となっている病気の治療が、血糖改善の第一歩になる点が大きな特徴です。

膵臓は胃の裏側にある長さ15cmほどの細長い臓器で、大きく分けて2つの働きを担っています。この2つの働きが「同時に」壊れてしまうことが、膵性糖尿病を理解するいちばんのポイントです。

メカニズム図解|膵臓の2つの働きと膵性糖尿病

1 外分泌(がいぶんぴつ):食べ物を消化する消化酵素(アミラーゼ・リパーゼなど)をつくり、十二指腸に送り出す働き
2 内分泌(ないぶんぴつ):血糖を下げるインスリンと、血糖を上げるグルカゴンという2つのホルモンをつくり、血糖値を調節する働き
3 膵臓の病気で組織がダメージを受ける:慢性膵炎・膵がん・膵臓の手術などで、①と②の働きが同時に低下していく
4 膵性糖尿病の完成:インスリン不足で血糖が上がる一方、グルカゴンも減るため低血糖からの回復力も弱く、さらに消化吸収の障害で栄養状態も崩れやすい、という独特の糖尿病になる

原因となる膵臓の病気――慢性膵炎・膵がん・膵臓の手術後

膵性糖尿病の原因となる主な病気を表にまとめました。いずれも「膵臓の組織が壊れる・失われる」ことでインスリンをつくるβ(ベータ)細胞が減ってしまう点が共通しています。

原因となる病気 特徴
慢性膵炎 長年のアルコール多飲が代表的な原因(原因不明の「特発性」もあります)。炎症が長く続くと膵臓が硬く萎縮し、経過が長くなるほど糖尿病の合併が増えることが知られています。
膵がん 腫瘍が膵臓の組織や膵管を障害することで血糖値が上がります。糖尿病の新規発症や急な悪化が、膵がん発見のきっかけになることがあります(詳しくは次の章で解説します)。
膵臓の手術後(膵切除後) 膵臓の腫瘍などで膵臓の一部または全部を切除した後は、残った膵臓の量に応じてインスリン分泌が低下します。膵全摘後は必ずインスリン療法が必要になります。
その他 重症急性膵炎の後、ヘモクロマトーシス(鉄が臓器に沈着する病気)、嚢胞性線維症など。

ふつうの2型糖尿病と何が違う?――膵性糖尿病の3つの特徴

膵性糖尿病には、一般的な2型糖尿病とは異なる特徴があります。ここでは、当院の外来でよくお会いするような患者さんをイメージした架空の症例(実在の患者さんの情報ではありません)でご紹介します。

症例イメージ①|62歳・男性・会社員のAさん(架空の症例です)

毎晩の晩酌を30年以上続けてきたAさん。昨年の健診ではHbA1c 6.5%でしたが、今年は7.9%へ急上昇。食事量は変わらないのに半年で体重が4kg減り、最近は脂っこい食事の後にお腹がゆるくなります。血液検査と腹部エコーの結果、膵臓の萎縮と石灰化がみつかり、慢性膵炎による膵性糖尿病と診断。禁酒・消化酵素薬・インスリン療法で、体重と血糖は少しずつ安定してきました。

特徴① 血糖値が「乱高下」しやすく、低血糖が起こりやすい

2型糖尿病ではインスリンの効きが悪くなる(インスリン抵抗性)要素が大きいのに対し、膵性糖尿病ではインスリンそのものが足りないことが主体です。しかも、血糖を上げるホルモンであるグルカゴンも同時に減っているため、血糖値が上にも下にも振れやすく、いったん低血糖になると回復しにくいという難しさがあります。

用語解説|ブリットル(不安定型)とは

「ブリットル(brittle)」は英語で「もろい・割れやすい」という意味で、血糖値が予測しにくく大きく変動する状態を指す医学用語です。膵性糖尿病や1型糖尿病の一部でみられ、インスリンの細かな調整や、皮膚に貼るセンサーで血糖の動きを連続的に確認するCGM(持続血糖モニタリング)が役立ちます。

特徴② 「痩せていく」「脂っこいものでお腹を下す」を伴いやすい

消化酵素が不足すると、食べたものの中でも特に脂肪をうまく消化・吸収できなくなります。その結果、食べているのに体重が減る、便が油っぽく水に浮く(脂肪便)、脂っこい食事で下痢をするといったサインが現れます。血糖値の悪化とこれらの症状が同時にあるときは、膵臓を疑う重要な手がかりになります。

用語解説|膵外分泌機能不全(PEI)とは

膵臓がつくる消化酵素が不足し、食べ物(特に脂肪)を十分に消化・吸収できなくなった状態を「膵外分泌機能不全(すいがいぶんぴつきのうふぜん)」と呼びます。放置すると痩せ・脂溶性ビタミン不足・骨粗しょう症などにつながるため、消化酵素を食事のたびにお薬で補う「膵消化酵素補充療法」が行われます。糖尿病の食事療法では脂質を控えることが多いのですが、膵外分泌機能不全ではやみくもな脂肪制限がかえって栄養状態を悪化させることがあり、酵素補充と組み合わせた栄養管理が大切です。

特徴③ 「糖尿病の治療」だけでは不十分――原因の膵臓の治療が必要

膵性糖尿病では、血糖コントロールと並行して、原因となっている膵臓の病気そのものの治療(禁酒・禁煙、慢性膵炎の治療、腫瘍があればその治療)を進めることが欠かせません。「糖尿病」と「膵臓の病気」を1つのチームとして診ていく必要があるのです。

「急な血糖悪化」は膵がんのサインのことも

この章がこの記事でいちばんお伝えしたい部分です。膵がんは早期にはほとんど自覚症状がないことが多く、発見が遅れやすいがんとして知られています。その中で、糖尿病は膵がんに気づくための数少ない手がかりの一つとされています。

日本糖尿病学会と日本癌学会の合同委員会報告では、糖尿病のある方はない方に比べて膵がんのリスクが約1.85倍と報告されています。また、日本膵臓学会「膵癌診療ガイドライン2025年版」でも、糖尿病――特に「新しく糖尿病を発症したとき」と「治療中の糖尿病が急に悪化したとき」――は膵がんの危険因子の一つに挙げられており、膵がんと診断された方をさかのぼると、診断前の数年以内に糖尿病の発症や血糖の悪化が先行していた例が少なくないことが知られています。

症例イメージ②|68歳・女性のBさん(架空の症例です)

10年来の2型糖尿病で、飲み薬でHbA1c 6%台後半を保っていたBさん。ところがこの数か月、食事も薬も変わらないのにHbA1cが8%台まで急に悪化し、食欲も落ちて体重が3kg減少。かかりつけ医で腹部の精密検査を勧められ、超音波内視鏡(EUS)まで進んだことで膵臓の小さな腫瘍が見つかり、手術が可能な段階で治療を始めることができました。

重要|こんなときは「膵臓のチェック」をご相談ください

・生活習慣に大きな変化がないのに、血糖値・HbA1cが短期間で急に悪化した

・50歳以降に初めて糖尿病を指摘され、同時に体重減少や食欲低下がある

・みぞおちや背中の重苦しい痛み、便が油っぽい・下痢が続く

・皮膚や白目が黄色くなった(黄疸)、尿の色が濃くなった

・ご家族に膵がんの方がいる、慢性膵炎・膵のう胞を指摘されたことがある

誤解のないように付け加えますと、血糖値が悪化した方の大多数は膵がんではありません。季節や体重の変化、お薬の飲み忘れ、感染症など、血糖が上がる理由はさまざまです。ただ、「急な悪化」というサインを放置せず、一度は膵臓を含めた原因の評価をしておくことが、万一の病気の早期発見につながります。

検査と治療のポイント

当院で行える検査

膵性糖尿病が疑われるとき、まずは外来でできる検査から段階的に進めます。当院では血液検査(血糖・HbA1cに加え、膵酵素であるアミラーゼ・リパーゼ、腫瘍マーカーのCA19-9など)と腹部超音波(エコー)検査で膵臓の状態を確認し、インスリンを出す力はCペプチドという検査値で評価します。より詳しい画像検査(造影CT・MRI/MRCP・超音波内視鏡:EUS)が必要な場合は、連携する専門医療機関へ速やかにご紹介します。

治療の考え方

治療の柱 内容
血糖の治療 インスリン分泌が大きく低下している場合はインスリン療法が中心になります。血糖が乱高下しやすいため、CGM(持続血糖モニタリング)も活用しながら、低血糖を避けることを最優先にきめ細かく調整します。
消化・栄養の治療 膵外分泌機能不全に対する膵消化酵素補充療法と、管理栄養士と連携した栄養管理。極端な脂肪制限は行わず、必要なエネルギーをしっかり確保します。
原因の病気の治療 禁酒・禁煙は慢性膵炎の進行を抑える基本です。腫瘍が原因の場合は、専門医療機関での治療と並行して血糖を管理します。

ご注意ください

膵性糖尿病では、2型糖尿病でよく使われる飲み薬が合わないことがあります(低血糖を起こしやすいお薬、体重を減らす作用のあるお薬など)。自己判断でお薬を変更・中断せず、必ず主治医にご相談ください。また、本記事は一般的な情報提供であり、効果を保証するものではありません。診断・治療は個々の状態によって異なります。

受診前チェックリスト

□ 健診結果(できれば過去数年分)――血糖値・HbA1cの推移がわかるもの

□ 体重の変化(いつから・何kg減ったか)

□ 飲酒量(1日あたり・何年間)と喫煙歴

□ お腹や背中の痛み、便の変化(油っぽい・下痢)の有無

□ 服用中のお薬・お薬手帳、ご家族の病歴(膵がん・糖尿病)

🏥 竹内内科小児科医院で診るという選択(当院が選ばれる理由)

「血糖値が急に悪くなった」というとき、糖尿病の治療の見直しと、背景にある膵臓など原因の検索を、同じ窓口で進められることが大切です。当院では次のような体制でこのテーマの診療にあたっています。

理由① 糖尿病・生活習慣病の専門的な外来

日本糖尿病協会登録医・日本抗加齢医学会専門医の院長が、血糖悪化の「原因さがし」から治療の調整までを外来で直接担当します。

理由② 血液検査+腹部エコーで膵臓の初期評価

膵酵素・腫瘍マーカーを含む血液検査と腹部超音波検査を院内で行い、精密検査が必要かどうかを判断します。

理由③ 五良会グループの専門外来へ切れ目なく紹介

姉妹院の五良会クリニック白金高輪(内視鏡・消化器内科・糖尿病内科)と連携し、超音波内視鏡(EUS)などが必要な場合も専門医療機関への橋渡しをスムーズに行います。

理由④ 内科×小児科で、ご家族そろって同じ窓口

お子さまの診療のついでに親御さんの血糖のご相談も。ご家族の健康をまとめて診られるのが当院の強みです。

理由⑤ 多摩川駅徒歩5分・土曜午前も診療

東急東横線・目黒線「多摩川駅」から徒歩5分。お仕事のある方も土曜午前に受診いただけます。訪問診療にも対応しています。

「血糖値が急に上がった」「体重が減ってきた」――気になるサインがあれば、一度ご相談ください。

健診結果をお持ちいただければ、その場で経過を一緒に確認いたします。

医療法人社団 五良会・正友会 理事長 五藤 良将

AUTHOR / SUPERVISOR

竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将(ごとう よしまさ)

  • 防衛医科大学校 医学部 卒業(27期)。防衛医科大学校病院、自衛隊中央病院、自衛隊横須賀病院ほかで臨床経験を積む
  • 医療法人社団 五良会 理事長/医療法人社団 正友会 理事長/竹内内科小児科医院 院長
  • 日本内科学会 認定内科医/日本抗加齢医学会 専門医/日本糖尿病協会 登録医/日本旅行医学会 認定医
  • 日本温泉気候物理医学会 温泉療法専門医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/難病指定医
  • 所属学会:日本内科学会、日本糖尿病学会、日本アレルギー学会、日本東洋医学会、日本リウマチ学会、日本外来小児科学会、日本抗加齢医学会、日本睡眠学会、日本美容内科学会、日本旅行医学会 ほか
  • 著書『あぶら落とすスープ』(アスコム)。NHK・TBS・フジテレビ・日本テレビ・テレビ朝日などメディア出演多数

執筆・監修責任について

本記事は、五藤良将が公的機関の発表・国内外の診療ガイドライン・査読済み論文を確認したうえで執筆・監修しています。内容は公開時点の情報に基づくものであり、新しい知見やガイドラインの改訂があった場合は、こちらで記事を更新します。
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個々の患者さんの診断・治療に代わるものではありません。症状や治療のご判断については、必ず医師にご相談ください。記載内容について気になる点がございましたら、竹内内科小児科医院(03-3721-5222)までお知らせください。

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参考文献

  1. 日本糖尿病学会 編・著.『糖尿病診療ガイドライン2024』南江堂, 2024.
  2. 日本膵臓学会 膵癌診療ガイドライン改訂委員会 編.『膵癌診療ガイドライン2025年版(第7版)』金原出版, 2025.
  3. 日本消化器病学会 編.『慢性膵炎診療ガイドライン2021(改訂第3版)』南江堂, 2021.
  4. 日本糖尿病学会・日本癌学会「糖尿病と癌に関する委員会報告」糖尿病. 2013;56(6):374-390.
  5. 日本内分泌学会「膵性糖尿病」一般の皆様へ(2026年9月閲覧)
  6. 日本糖尿病学会 編・著.『糖尿病治療ガイド2024』文光堂, 2024.
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