皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。
秋の健康診断シーズンが本格化するこの時期、「痩せているのに血糖値が高めと言われた」「太っていないのに糖尿病予備群と診断されて驚いた」というご相談が、田園調布・多摩川エリアの当院外来でも毎年増えてまいります。「糖尿病は太っている人の病気」というイメージをお持ちの方が多いのですが、実は日本人を含む東アジア人は、痩せていても2型糖尿病を発症しやすい体質であることが、多くの研究で明らかになっています。
今回は、日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」や順天堂大学の研究(2021年、米国内分泌学会雑誌掲載)などの知見をもとに、「痩せ型の糖尿病・糖尿病予備群」がなぜ起こるのか、どんな検査でわかるのか、そして痩せている方ならではの対策のポイントを、院長の五藤良将がやさしく解説いたします。
健診で血糖値やHbA1cを指摘された際の基本的な考え方は、姉妹記事「健診で「血糖値・HbA1cが高め」と言われたら」もあわせてご覧ください。
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竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医
この記事は五藤良将が執筆・監修し、内容に責任を持っています。
目次
「糖尿病=肥満の病気」ではありません|日本人の体質とインスリン分泌能
2型糖尿病は、血糖を下げるホルモンであるインスリンの「効きが悪くなること(インスリン抵抗性)」と「出る量・出るタイミングが不十分になること(インスリン分泌不全)」の2つが組み合わさって発症します。
欧米人の2型糖尿病は高度な肥満を伴う「インスリン抵抗性が主体」のタイプが多いのに対し、日本人を含む東アジア人は、もともとインスリンを分泌する膵臓(すいぞう)のβ細胞(ベータさいぼう)の予備能力が低く、「インスリン分泌不全が主体」のタイプが多いことが知られています。東京大学などの遺伝子研究でも、アジア人の2型糖尿病ではインスリン分泌に関わる遺伝子の影響が大きく、これが「アジア人患者は欧米人患者ほど太っていない」という体型の差にも関係している可能性が報告されています。
つまり、日本人は少しの体重増加や筋肉量の減少でも、インスリンの供給が需要に追いつかなくなり、痩せていても血糖値が上がってしまうことがあるのです。実際、当院のある大田区の特定健診でも、BMIが標準範囲内なのに血糖値やHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー:過去1〜2か月の血糖の平均を反映する検査値)を指摘される方は決して珍しくありません。
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用語解説|「インスリン分泌不全」と「インスリン抵抗性」とは ① インスリン分泌不全:膵臓のβ細胞からインスリンが十分に、あるいは適切なタイミングで分泌されなくなる状態です。特に食後すぐに出るべき「追加分泌(初期分泌)」が遅れ・不足すると、食後の血糖値が大きく上がります。日本人の2型糖尿病ではこちらが主体となることが多いとされます。 ② インスリン抵抗性:インスリンは出ているのに、筋肉・肝臓・脂肪組織での「効き」が悪くなる状態です。内臓脂肪の蓄積や運動不足、筋肉量の減少で強まります。肥満がなくても、筋肉が少ない方や脂肪のつき方に偏りがある方では起こり得ます。 |
痩せた若年女性の約7倍リスク|順天堂大学の研究からわかったこと
「痩せていれば安心」ではないことを示す代表的な国内研究が、順天堂大学が2021年に米国内分泌学会雑誌(The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism)に発表した調査です。18〜29歳の痩せた若年女性(BMI 16.0〜18.49)98名と標準体重の女性56名に75g経口ブドウ糖負荷試験を行ったところ、耐糖能異常(たいとうのういじょう:食後の血糖値が正常より高くなる糖尿病予備群の状態)の割合は、痩せた女性で13.3%と、標準体重の女性の1.8%に比べて約7倍も高いという結果でした。
しかも、その原因を調べると、痩せた女性の耐糖能異常ではインスリン分泌能の低下に加えて、中年の肥満者と同程度のインスリン抵抗性が認められました。背景には、エネルギー摂取量の不足、身体活動量の低さ、そして骨格筋量の減少があると分析されています。
メカニズム図解|痩せているのに血糖値が上がる流れ
| 食事量が少ない・運動が少ない:エネルギーと栄養(特にたんぱく質)が不足し、活動量も低い状態が続きます。 | |
| 筋肉量が減る:筋肉は食後のブドウ糖の最大の受け入れ先(貯蔵庫)です。筋肉が減ると、食後の血糖の行き場がなくなります。 | |
| 脂肪組織の「質」も低下:痩せていても脂肪組織の働きが乱れると遊離脂肪酸があふれ出し、筋肉や肝臓にインスリン抵抗性を引き起こします。 | |
| もともと少なめのインスリン分泌では追いつかない:分泌不全+抵抗性のダブルパンチで、食後の血糖値が上がりやすくなります(耐糖能異常→糖尿病へ)。 |
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用語解説|「耐糖能異常(IGT)」と「サルコペニア」とは 耐糖能異常(IGT)とは、75g経口ブドウ糖負荷試験の2時間後血糖値が140〜199mg/dLの状態を指します。空腹時血糖値が正常でも食後だけ高くなる方が多く、健診の空腹時採血だけでは見逃されることがある「糖尿病予備群」です。 サルコペニアとは、加齢や低栄養・低活動により筋肉量と筋力が低下した状態です。高齢者だけの問題と思われがちですが、極端なダイエットを続ける若い世代でも筋肉量の低下は起こり、血糖を処理する能力の低下につながります。 |
外来でよくお会いするケース|痩せ型でも血糖が上がる2つのパターン
当院の外来でよくお会いするような患者さまを想定した、架空のモデルケースを2つご紹介します(実在の患者さまの情報ではありません)。ご自身と重なる部分がないか、イメージしながらお読みください。
ケース① 50代女性・BMI 20・母親が糖尿病
身長158cm・体重50kg(BMI 20.0)の会社員の女性。若い頃から体型は変わらず、「太ったことは一度もない」のが自慢でした。ところが今年の健診でHbA1c 6.3%・空腹時血糖 108mg/dLを指摘。お母さまが糖尿病治療中とのことで当院を受診され、75g経口ブドウ糖負荷試験を行ったところ、2時間後血糖値が175mg/dLと耐糖能異常に該当しました。インスリン分泌の立ち上がりが遅い「分泌不全型」のパターンで、ご家族に糖尿病のある痩せ型の方の典型例です。デスクワーク中心で運動習慣がなく、筋肉量も少なめでした。
ケース② 40代男性・BMI 23・健診では「肥満なし」でも脂肪肝
身長172cm・体重68kg(BMI 23.0)の営業職の男性。体重は標準範囲内ですが、腹部エコーで脂肪肝を指摘され、中性脂肪 210mg/dL、HbA1c 6.1%。いわゆる「隠れ肥満(正常体重でも内臓や肝臓・筋肉に脂肪がたまった状態)」のパターンです。BMIが正常でも、内臓脂肪や異所性脂肪(いしょせいしぼう:本来たまるべきでない肝臓や筋肉にたまる脂肪)が多いと、インスリン抵抗性が強まり血糖値が上がりやすくなります。お酒の機会が多く、移動は車中心で歩数は1日3,000歩程度でした。
このように、同じ「痩せ型・標準体型の血糖高め」でも、背景は一人ひとり異なります。だからこそ、画一的な「食べる量を減らしましょう」ではなく、検査でご自身のタイプを知ることが大切です。
どんな検査でわかる?|75g糖負荷試験・HOMA指数・Cペプチド
痩せ型で血糖値が気になる方に、当院で検討する主な検査をまとめました。
| 検査 | わかること | こんな方に |
|---|---|---|
| 75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT) | ブドウ糖液を飲み、血糖値とインスリン値の変化を2時間追跡。食後高血糖と分泌パターンの両方がわかります | 空腹時血糖100〜125mg/dL、HbA1c 5.6〜6.4%の「境界域」の方 |
| HOMA-β/HOMA-IR | 空腹時の血糖値とインスリン値から計算する指数。分泌能(HOMA-β)と抵抗性(HOMA-IR)のバランスを推定します | ご自身が「分泌不全型」か「抵抗性型」か知りたい方 |
| 血中・尿中Cペプチド | ご自身の膵臓が実際に作っているインスリン量の指標 | 分泌能をより正確に評価したい方、1型糖尿病との鑑別が必要な方 |
| 抗GAD抗体などの自己抗体 | 緩徐進行1型糖尿病(ゆっくり進む1型)の鑑別 | 痩せ型で血糖悪化が比較的速い方 |
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用語解説|「HOMA-β」「HOMA-IR」「Cペプチド」とは ① HOMA-β(ホーマ・ベータ):空腹時の血糖値とインスリン値から膵β細胞のインスリン分泌能を推定する指数です。低いほど分泌の力が弱いことを示唆します。 ② HOMA-IR(ホーマ・アイアール):同じく空腹時の値からインスリン抵抗性を推定する指数で、一般に1.6以下が正常、2.5以上で抵抗性ありと判断されます。 ③ Cペプチド:インスリンが作られる際に同じ量だけ切り出される物質で、注射のインスリンには含まれないため、「ご自身の膵臓が作ったインスリンの量」を反映します。 ※いずれも数値の解釈には測定条件や治療内容の影響があるため、結果は必ず医師と一緒にご確認ください。 |
なお、痩せ型の方では貧血などによりHbA1cが実際の血糖と「ズレる」こともあります。詳しくは姉妹記事「HbA1cが“本当の血糖”とズレることがある?」をご覧ください。
痩せ型の方の血糖対策|「減らす」より「貯筋」と「質」
肥満のある方の糖尿病対策は「減量」が柱になりますが、痩せ型の方が同じように食事量を減らすと、筋肉量がさらに減って逆効果になりかねません。「糖尿病診療ガイドライン2024」(日本糖尿病学会)でも、食事療法は年齢・体格・身体活動量に応じて個別に設定することが基本とされています。痩せ型の方のポイントは次の3つです。
① たんぱく質をしっかり、欠食しない
肉・魚・卵・大豆製品・乳製品を毎食に。特に朝食を抜くと昼食後の血糖値が急上昇しやすくなります(セカンドミール効果)。極端な糖質制限や欠食は、痩せ型の方ではおすすめできません。
② 「貯筋」=週2〜3回のレジスタンス運動
筋肉は最大の血糖の貯蔵庫です。スクワットやかかと上げなどの筋力トレーニング(レジスタンス運動)を週2〜3回、そして厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」が推奨する1日約8,000歩・週60分以上の筋トレを含む身体活動を目標に、涼しくなった秋から始めてみましょう。詳しくは「筋肉は最大の「血糖の貯蔵庫」」「スポーツの秋は「歩く」から始める運動療法」で解説しています。
③ 食べる順番・速さで食後血糖の山をなだらかに
野菜・たんぱく質を先に、主食は後に。ひと口30回を目安によく噛むことで、食後高血糖(血糖値スパイク)を抑えやすくなります。詳しくは「「食べる順番」と「食べる速さ」で血糖値は変わる」をご覧ください。
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重要|こんな「自己流対策」は逆効果になることがあります ・痩せ型なのに、さらに食事全体を減らす(筋肉量が減り、血糖処理能力がさらに低下します) ・主食を完全に抜く極端な糖質制限(低栄養・筋肉減少のリスク。行う場合は必ず医師にご相談ください) ・SNSで話題の「痩せる薬」の安易な使用(GLP-1受容体作動薬などの糖尿病治療薬・肥満症治療薬には保険適用の条件があり、痩せ型の方への美容目的の使用は適応外です) |
受診の目安チェックリスト
次の項目にあてはまる方は、痩せていても一度、血糖の精密検査をおすすめいたします。
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受診前チェックリスト □ 健診で空腹時血糖100mg/dL以上、またはHbA1c 5.6%以上を指摘された □ ご家族(親・きょうだい)に糖尿病の方がいる □ 痩せ型だが、運動習慣がなく筋力の低下を感じる □ 妊娠中に血糖が高めと言われたことがある(妊娠糖尿病の既往) □ 体重は正常でも、脂肪肝や中性脂肪の高値を指摘されている □ 食後に強い眠気・だるさを感じることが多い |
🏥 竹内内科小児科医院で診るという選択(当院が選ばれる理由)
「痩せているから大丈夫」と思っていた方ほど、健診の数値をきっかけに早く動くことが将来の合併症予防につながります。ここまでお読みいただいた内容を、田園調布の当院ではこのような体制で診ています。
理由① 糖尿病・生活習慣病の専門的診療
日本糖尿病協会登録医・日本抗加齢医学会専門医の院長が、75g糖負荷試験やインスリン分泌能の評価から食事・運動の個別指導まで、外来で直接診療いたします。
理由② デジタル無散瞳眼底カメラを完備
瞳孔を開く目薬を使わずに眼底を撮影でき、糖尿病網膜症のスクリーニングを診察と同日に行えます。異常があれば近隣の眼科専門医へご紹介します。
理由③ 内科×小児科併設・ご家族そろって
糖尿病は体質(遺伝的素因)の影響も大きい病気です。親御さまの通院にあわせて、お子さまの健康相談まで同じ窓口でご相談いただけます。
理由④ 多摩川駅徒歩5分・土曜午前も診療
東急東横線・目黒線「多摩川駅」から徒歩5分。平日はお仕事の方も、土曜午前の外来をご利用いただけます(受付は午前12時まで・午後19時まで)。
理由⑤ 五良会グループの連携体制
より専門的なCGM(持続血糖測定)の活用や消化器精査(内視鏡)は姉妹院の五良会クリニック白金高輪へ、高齢のご家族の糖尿病・認知症のご相談は五良ファミリークリニックセンター南へ、グループ内で切れ目なくご紹介できます。
理由⑥ 訪問診療・地域密着
通院が難しくなったご高齢の方には訪問診療にも対応。2019年の継承開業から8年目、田園調布・大田区の「かかりつけ医」として世代を超えて診療を続けています。
「痩せているのに血糖値が高め」と言われたら、一度ご相談ください。
ご予約はWEB予約(CLINICS)から。/お電話 03-3721-5222(受付:午前12時まで・午後19時まで、土曜は午前のみ)
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五良会グループでは、田園調布の竹内内科小児科医院と港区の五良会クリニック白金高輪、横浜市都筑区の五良ファミリークリニックセンター南の医師が連携しております。患者さまの転居やライフスタイルの変化に合わせて、同じグループ内で継続診療が受けられる体制を整えております。
参考文献
- 日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病診療ガイドライン2024. 南江堂, 2024.
- 日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病治療ガイド2024. 文光堂, 2024.
- Sato M, et al. Low body weight and glucose intolerance in young Japanese women. The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism. 2021(オンライン公開2021年1月29日).
- 順天堂大学「食後高血糖となる耐糖能異常が痩せた若年女性に多いことが明らかに」プレスリリース(2021年2月)
- 東京大学「2型糖尿病の新規リスク遺伝子の発見〜インスリン分泌に関わり、アジア人患者と欧米人患者における体型の差にも寄与か〜」記者会見資料(2022年1月)
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」(2024年1月公表)
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
AUTHOR / SUPERVISOR
竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将(ごとう よしまさ)
- 防衛医科大学校 医学部 卒業(27期)。防衛医科大学校病院、自衛隊中央病院、自衛隊横須賀病院ほかで臨床経験を積む
- 医療法人社団 五良会 理事長/医療法人社団 正友会 理事長/竹内内科小児科医院 院長
- 日本内科学会 認定内科医/日本抗加齢医学会 専門医/日本糖尿病協会 登録医/日本旅行医学会 認定医
- 日本温泉気候物理医学会 温泉療法専門医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/難病指定医
- 所属学会:日本内科学会、日本糖尿病学会、日本アレルギー学会、日本東洋医学会、日本リウマチ学会、日本外来小児科学会、日本抗加齢医学会、日本睡眠学会、日本美容内科学会、日本旅行医学会 ほか
- 著書『あぶら落とすスープ』(アスコム)。NHK・TBS・フジテレビ・日本テレビ・テレビ朝日などメディア出演多数
執筆・監修責任について
本記事は、五藤良将が公的機関の発表・国内外の診療ガイドライン・査読済み論文を確認したうえで執筆・監修しています。内容は公開時点の情報に基づくものであり、新しい知見やガイドラインの改訂があった場合は、こちらで記事を更新します。
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個々の患者さんの診断・治療に代わるものではありません。症状や治療のご判断については、必ず医師にご相談ください。記載内容について気になる点がございましたら、竹内内科小児科医院(03-3721-5222)までお知らせください。
竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医