皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。
朝晩に少しずつ秋の気配を感じる季節になりました。暑さで落ちていた食欲が戻り、新米や果物、さつまいもなど、おいしいものが増える「食欲の秋」はもう目前です。一方で、外来では「食べる量はそれほど変わっていないのに、健診で血糖値や体重を指摘された」「食事制限はどうしても長続きしない」というご相談が増える時期でもあります。
そこで今回は、食べる「量」を我慢する前に見直したい「食べ方」――すなわち「食べる順番(ベジファースト)」と「食べる速さ」について、日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」や厚生労働省の情報(e-ヘルスネット、日本人の食事摂取基準2025年版)をもとに、糖尿病内科・代謝内科の視点からわかりやすく解説いたします。同じ献立でも、順番と速さを整えるだけで食後の血糖値の上がり方は変わりうる――今日の夕食からすぐに試せる内容です。
目次
「食欲の秋」こそ食べ方の見直しどき
夏の間は暑さで食が細くなっていた方も、涼しくなると自然と食欲が戻ってきます。新米は粘りと甘みが強く、ついおかわりをしたくなりますし、ぶどう・梨・柿などの果物、栗やさつまいもなど、糖質のおいしい食材が食卓に並ぶ季節です。
ここで「食べたいものを我慢する」ことから始めると、食事療法はなかなか長続きしません。実は、同じ献立・同じカロリーでも、「何から食べるか」「どのくらいの速さで食べるか」によって、食後の血糖値の上がり方や満腹感は変わりうることが、国内外の研究で報告されています。日本糖尿病学会の「糖尿病診療ガイドライン2024」でも、食事療法は総エネルギーや栄養バランスだけでなく、食習慣・食べ方を含めて個々の患者さんに合わせて調整することが重視されています。
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ポイント|「量」の前に「食べ方」 ① 食べる順番:野菜・きのこ・海藻、肉・魚などのおかずを先に、ごはん・パン・麺をあとに。 ② 食べる速さ:早食いを避け、ひと口ごとによく噛んで、1食20分を目安にゆっくりと。 ③ 我慢よりも工夫:好きなものを禁止するのではなく、食べ方を整えて無理なく続ける。 |
「食べる順番」で食後血糖の上がり方が変わる仕組み
いわゆる「ベジファースト(ベジタブルファースト)」とは、食事の最初に野菜などの食物繊維の多いおかずを食べ、ごはんなどの炭水化物を最後に回す食べ方です。国内の研究では、野菜を先に食べてから米飯を食べると、米飯を先に食べた場合に比べて食後の血糖値の上昇が緩やかになったことが報告されています。また、肉や魚などのたんぱく質・脂質を含むおかずを炭水化物より先に食べることでも、胃の動きやホルモン分泌を介して食後血糖の上昇が緩やかになることが示されています。
メカニズム図解|なぜ「野菜・おかずが先」だと血糖値が上がりにくいのか
| 食物繊維が先に胃腸に入る:野菜・きのこ・海藻の食物繊維が、あとから入ってくる糖質の消化・吸収のスピードをゆっくりにします。 | |
| おかず(たんぱく質・脂質)が胃の動きを調節:肉・魚を先に食べると胃から腸への排出が緩やかになり、インスリン分泌を助ける消化管ホルモン「インクレチン(GLP-1など)」の分泌も促されると報告されています。 | |
| 最後にごはん(炭水化物):糖質の吸収がゆっくりになり、血糖値の急上昇(血糖値スパイク)が起こりにくくなります。 | |
| 結果:食後高血糖と食べすぎの予防へ:血糖の急な上下動が抑えられ、満腹感も得やすくなるため、結果的に食べる量の適正化にもつながることが期待されます。 |
なお、ベジファーストは「これだけで糖尿病が治る」「必ず痩せる」という魔法の方法ではありません。効果の程度には個人差があり、食事全体の量やバランス、運動習慣と組み合わせてこそ意味があります。当院では、患者さんお一人おひとりの検査値やライフスタイルに合わせて、続けやすい食事療法をご提案しております。
ベジファーストの正しい実践法──「順番」+「時間」がカギ
「順番だけ守ればよい」と思われがちですが、研究では野菜を数分かけてよく噛んで食べてから主食に進む方法で効果が確認されているものが多く、順番と「かける時間」はセットで考えるのがおすすめです。数秒で野菜を流し込んですぐにごはんを食べてしまうと、期待した効果は得にくくなります。
| 順番 | 食べるもの | ポイント |
|---|---|---|
| ①最初 | 野菜・きのこ・海藻(サラダ、おひたし、みそ汁の具、酢の物など) | 目安として5分程度かけてよく噛んで。ドレッシングのかけすぎには注意 |
| ②次に | 肉・魚・卵・大豆製品などのたんぱく質のおかず | 筋肉の材料にもなる大切な栄養素。高齢の方こそしっかりと |
| ③最後 | ごはん・パン・麺などの炭水化物 | 抜くのではなく「最後に適量」。新米の季節はおかわりの習慣に注意 |
また、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、食物繊維の目標量は成人男性でおおむね1日20〜22g以上、成人女性で17〜18g以上とされていますが、多くの日本人はこれに届いていません。ベジファーストを意識することは、食後血糖対策と同時に、不足しがちな食物繊維を増やすことにもつながります。野菜のほか、きのこ・海藻・大麦や雑穀入りごはんも上手に活用しましょう。
「早食い」は肥満・糖尿病のリスク──ひと口30回のすすめ
食べる順番と並んで大切なのが「食べる速さ」です。厚生労働省のe-ヘルスネットでは、35〜69歳の成人約4,700人を対象とした国内研究で、食べる速さが速い人ほど現在のBMI(体格指数)が高く、20歳時からの体重増加も大きかったことが紹介されています。この傾向は、摂取エネルギーや運動量などの影響を考慮しても認められました。早食いの方は、満腹感を感じる前に食べ終えてしまうため、結果として食べすぎにつながりやすいと考えられています。
また、よく噛んでゆっくり食べることは、食後の血糖値の急上昇を抑える方向に働くことや、消化管ホルモンの分泌を介して満腹感を得やすくすることも報告されています。厚生労働省は、ひと口30回を目安によく噛んで食べる「噛ミング30(カミングサンマル)」を提唱しています。
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早食いを卒業する5つのコツ ・ひと口30回を目安に噛む(まずは「今より5回多く」からでOK) ・ひと口ごとに箸を置く/汁物や水分で流し込まない ・1食20分以上かける(満腹感を感じ始めるまでの時間の目安) ・歯ごたえのある食材(根菜・きのこ・海藻・大きめに切った野菜)を取り入れる ・テレビやスマートフォンを見ながらの「ながら食べ」を減らし、食事に集中する |
なお、「よく噛めない」こと自体が早食いや偏った食事の原因になっている場合もあります。歯やかみ合わせ、義歯の不具合がある方は、歯科での治療も血糖・体重管理の大切な一歩です。お子さんの場合も、早食い・丸のみの習慣は肥満につながりやすいため、ご家族みんなで「ゆっくりよく噛む」食卓を意識していただくのが理想です。内科と小児科を併設する当院ならではの視点として、食習慣はご家族単位で整えるのがいちばん続きやすいと日々感じております。
外食・コンビニ・そば屋さんでもできる実践のコツ
「家では実践できても、外食やコンビニでは難しい」という声もよくいただきます。完璧を目指す必要はありません。次のような小さな工夫の積み重ねで十分です。
| シーン | できる工夫 |
|---|---|
| 定食屋・和食 | 小鉢・みそ汁・サラダから箸をつけ、ごはんは最後に。丼ものより定食を選ぶ |
| 麺類(そば・うどん・ラーメン) | サイドの野菜・卵・チャーシューなどを先に。「大盛り無料」でも普通盛りに。すすり込む麺は早食いになりやすいので意識してゆっくり |
| コンビニ | おにぎり単品にせず、サラダ・カップみそ汁・ゆで卵・サラダチキンを組み合わせ、その順に食べる |
| 飲み会・会食 | お通しやサラダ・刺身などを先に、締めのごはん・麺は控えめに。お酒は純アルコール量を意識して |
こんな方は一度ご相談ください
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受診をおすすめするチェックリスト □ 健診で血糖値・HbA1c(過去1〜2か月の血糖の平均を反映する値)を指摘された □ 「食事に気をつけて」と言われたが、何から始めればよいかわからない □ 家族に糖尿病の方がいて、自分の食習慣が心配 □ 食べるのが速いとよく言われる/食事が10分以内に終わる □ 血圧・コレステロール・中性脂肪・尿酸値も一緒に相談したい |
竹内内科小児科医院では、糖尿病内科・代謝内科として、血液検査の結果をもとに、食べる順番・速さを含めた無理なく続けられる食事・運動のアドバイスを行っております。田園調布・多摩川エリアで「健診の結果が気になるけれど、まだ病院に行くほどではないかも」と迷っている方こそ、予備群のうちの受診が肝心です。土曜午前も診療しており、平日お忙しい働き盛りの方もご相談いただけます。
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健診結果のご相談・生活習慣病の診療はお気軽に 竹内内科小児科医院(東急東横線・目黒線「多摩川駅」徒歩5分) TEL:03-3721-5222/WEB予約・LINE予約は下記のボタンからどうぞ(土曜午前も診療) |
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五良会グループでは、田園調布の竹内内科小児科医院と港区の五良会クリニック白金高輪、横浜市都筑区の五良ファミリークリニックセンター南(医療法人社団正友会)の医師が連携し、生活習慣病・糖尿病の診療を多角的にサポートしております。患者さまの転居やライフスタイルの変化に合わせて、同じグループ内で継続診療が受けられる体制を整えております。
参考文献
- 日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病診療ガイドライン2024. 南江堂. 2024.
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(2024年10月公表)
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「速食いと肥満の関係 −食べ物をよく『噛むこと』『噛めること』」(2026年8月閲覧)
- 農畜産業振興機構「野菜から食べる『食べる順番』の効果」野菜情報(2026年8月閲覧)
- Imai S, et al. Eating vegetables before carbohydrates improves postprandial glucose excursions. Diabet Med. 2013;30(3):370-372.
- Kuwata H, et al. Meal sequence and glucose excursion, gastric emptying and incretin secretion in type 2 diabetes. Diabetologia. 2016;59(3):453-461.
竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医