皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。
厳しい残暑が続いていますが、暦の上ではもう秋。これからは行楽やお祭り、会食など、お酒を飲む機会が少しずつ増えていく季節です。夏の間、「暑いから」とビールの量が増えたまま戻らない――そんな方も多いのではないでしょうか。健診で「γ-GTP(肝機能)」「中性脂肪」「尿酸値」「血圧」を指摘され、「お酒はどのくらいまでなら大丈夫ですか?」というご質問を、田園調布の外来でも毎日のようにいただきます。
実は2024年2月、厚生労働省から国として初めての「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」(2024年2月19日公表)が示されました。キーワードは「何杯飲んだか」ではなく「純アルコール量(グラム)」で考えることです。今回は、この厚労省ガイドラインと、高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)など各学会の最新指針をもとに、血圧・血糖・中性脂肪・尿酸値とお酒の関係、そして無理なく続けられる「上手な付き合い方」を、生活習慣病の診療を行う内科医の立場から解説いたします。
目次
「純アルコール量」とは?――缶ビール1本で何グラム?
これまで飲酒量は「ビール1本」「日本酒1合」といった杯数で語られがちでした。しかしお酒の種類によってアルコール度数は大きく異なるため、厚労省の新しいガイドラインでは、お酒に含まれる純アルコール量(グラム)に着目することが推奨されています。
計算式はシンプルです。
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ポイント|純アルコール量の計算式 純アルコール量(g)= 飲んだ量(mL)× アルコール度数(%)÷ 100 × 0.8 例:5%のビール500mL → 500 × 0.05 × 0.8 = 純アルコール約20g |
身近なお酒に換算すると、およそ次のようになります。
| お酒の種類(度数の目安) | 量 | 純アルコール量(約) |
|---|---|---|
| ビール(5%) | ロング缶500mL | 20g |
| 日本酒(15%) | 1合(180mL) | 22g |
| 缶チューハイ(7%) | 350mL | 20g |
| ワイン(12%) | グラス2杯(約200mL) | 19g |
| ウイスキー(43%) | ダブル1杯(60mL) | 21g |
| ストロング系チューハイ(9%) | 500mL | 36g |
注目していただきたいのは、最近人気の高アルコール度数(ストロング系)チューハイです。500mL缶1本で純アルコール約36g、日本酒1合半以上に相当します。「チューハイだから軽い」というイメージとは裏腹に、1本で後述の「リスクが高まるライン」に迫ってしまう点には注意が必要です。
厚労省・飲酒ガイドラインのポイント|男性40g・女性20gのライン
厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」(2024年2月19日公表)と、国の健康づくり計画「健康日本21(第三次)」では、生活習慣病のリスクを高める飲酒量として次の目安が示されています。
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生活習慣病のリスクを高める飲酒量(1日あたり純アルコール量) 男性:40g以上(ビールロング缶2本〜) 女性:20g以上(ビールロング缶1本〜) |
ここで大切なのは、この数字が「ここまでなら安全」というお墨付きではないという点です。ガイドラインでは、高血圧や一部のがん(食道がん・大腸がんなど)のように、少量の飲酒でもリスクが上がると報告されている病気があることも明記されています。また、同じ量でも影響には個人差が大きく、特に次のような方はより少ない量から影響が出やすいとされています。
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重要|特に飲酒の影響を受けやすい方 ・女性:体格や体内水分量、分解酵素の働きの違いから、男性より少ない量で影響が出やすいとされます ・高齢の方:同じ量でも血中濃度が上がりやすく、転倒・認知機能への影響も懸念されます ・飲むとすぐ顔が赤くなる方(フラッシング反応):アルコール分解酵素の働きが弱い体質で、食道がんなどのリスクがより高まると報告されています ・妊娠中・授乳中の方、肝臓や膵臓の病気で医師から禁酒を指示されている方:量にかかわらず飲酒は避けてください |
お酒は検査値をどう動かすか|血圧・血糖・中性脂肪・尿酸
健診でよく指摘される4つの検査値と飲酒の関係を、各学会の最新ガイドラインの目安とあわせて整理します。
| 検査値 | 飲酒との関係 | 学会ガイドラインの目安 |
|---|---|---|
| 血圧 | 習慣的な飲酒は血圧を上げる方向に働き、飲酒量を減らすと血圧の低下が期待できるとされます | JSH2025:節酒(エタノールとして男性20〜30mL/日以下、女性10〜20mL/日以下) |
| 血糖・体重 | お酒自体のカロリーに加え、おつまみの食べすぎ・食欲増進で体重増加につながりやすくなります。薬によっては低血糖のリスクも | 糖尿病診療ガイドライン2024:飲酒は適量にとどめ、肝疾患や合併症など状態によっては禁酒とする考え方が基本です |
| 中性脂肪 | アルコールは肝臓での中性脂肪の合成を高め、高トリグリセライド血症や脂肪肝の一因になります | 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版:アルコールは25g/日以下にとどめる(禁酒が必要な場合を除く) |
| 尿酸値 | プリン体の多い少ないにかかわらず、アルコールそのものが尿酸の産生を増やし排泄を妨げます | ビールに限らず総量を減らすことが基本。痛風発作を繰り返す方は主治医とご相談ください |
メカニズム図解|「お酒で中性脂肪・尿酸が上がる」仕組み
| アルコールが肝臓で分解される:飲んだアルコールの大部分は肝臓で処理されます | |
| 分解の過程で肝臓の代謝が「脂肪をため込む」方向へ傾く:中性脂肪の合成が進み、脂肪肝・高トリグリセライド血症の素地に | |
| 同時に尿酸の産生が増え、腎臓からの排泄が抑えられる:「プリン体ゼロ」のお酒でも尿酸値は上がりうるのはこのためです | |
| 飲みすぎが続くと検査値の異常が積み重なる:中性脂肪・尿酸値・γ-GTP・血圧が同時に高くなる方が少なくありません |
今日からできる「上手な付き合い方」6つのコツ
「お酒を完全にやめましょう」と言われても、長続きしない方が多いのが現実です。厚労省ガイドラインでも、自分の飲酒量を知り、あらかじめ量を決めて飲むといった「飲酒の仕方の工夫」が紹介されています。当院で外来の患者さまにお伝えしているコツをまとめます。
① 「1週間の合計」で考える
飲み会がある週は、他の日を控えて週合計を調整する考え方が現実的です。まずはご自身の1週間の純アルコール量を、上の換算表で一度計算してみてください。
② 休肝日をつくる
週に2日程度お酒を飲まない日を設けることは、総量を減らすうえで有効な方法のひとつです。「毎日の晩酌が習慣で、やめられるか不安」という方は、まず週1日から始めてみましょう。
③ 食事と一緒に、ゆっくり飲む
空腹での飲酒は血中アルコール濃度が急に上がります。食事をとりながら、水やお茶を挟んで(いわゆる「和らぎ水」)ゆっくり飲むことが勧められています。
④ ストロング系より低アルコール・ノンアルコールを活用
近年は品質の高いノンアルコール飲料や微アルコール飲料が増えています。「2杯目からノンアル」に置き換えるだけでも、純アルコール量は大きく減らせます。
⑤ 「寝酒」はしない
アルコールは寝つきを良くするように感じても、睡眠の後半を浅くし、いびきや夜間の血圧にも悪影響を及ぼします。眠れないことが続く場合は、お酒に頼らず当院にご相談ください。
⑥ 飲んだ量を記録する
スマートフォンのメモやアプリで「今日の純アルコール量」を記録するだけでも、飲みすぎへの気づきにつながります。血圧手帳と同じ感覚で、まずは2週間試してみるのがおすすめです。
受診の目安と当院でできること(田園調布・多摩川)
次のような場合は、一度内科の受診をおすすめします。
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受診前チェックリスト □ 健診で γ-GTP・ALT・中性脂肪・尿酸値・血圧・血糖のいずれかを指摘された □ 男性で純アルコール40g以上、女性で20g以上の飲酒がほぼ毎日続いている □ 休肝日をつくろうとしても、つくれない □ 飲んだ翌朝の血圧が高い、動悸・むくみ・だるさが気になる □ 痛風発作を起こしたことがある、足の親指の付け根が痛んだことがある |
当院は内科・糖尿病内科・代謝内科として、生活習慣病の診療に力を入れています。血液検査で肝機能・脂質・尿酸値・血糖(HbA1c)を確認し、飲酒量の見直しを含めた食事・運動のアドバイスを、管理栄養士による栄養相談とあわせてご提供しています。「お酒をやめなさい」と一方的に言うのではなく、お一人おひとりの生活に合わせて、続けられる目標を一緒に考えることを大切にしています。
五良会グループでは、田園調布の竹内内科小児科医院と港区の五良会クリニック白金高輪が連携し、生活習慣病の管理から脂肪肝の精密検査まで多角的にサポートしております。土曜午前も診療しておりますので、平日はお仕事で忙しい働き盛りの方も、健診結果を持ってお気軽にご相談ください。
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医療法人社団五良会では、患者さまのライフスタイルや転居に合わせて、同じグループ内で継続診療が受けられる体制を整えております。お子さまの診療と同じ日に、ご自身の生活習慣病のご相談をいただくことも可能です。ご家族そろってかかりつけにしていただけるのが、内科・小児科併設の当院の強みです。
参考文献
- 厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」(2024年2月19日公表)
- 厚生労働省「健康日本21(第三次)」(生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している者の減少に関する目標)
- 日本高血圧学会『高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)』
- 日本動脈硬化学会『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』
- 日本糖尿病学会『糖尿病診療ガイドライン2024』
- 日本痛風・尿酸核酸学会『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版』
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健診結果とお酒のこと、一度ご相談ください 竹内内科小児科医院(東急東横線・目黒線「多摩川駅」徒歩5分)では、生活習慣病の検査・治療と管理栄養士による栄養相談を行っています。土曜午前も診療しています。ご予約は下記のWEB予約・LINE・お電話(03-3721-5222)からどうぞ。 |
竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医