皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。
この夏、健康診断の結果をきっかけに当院を受診される方が増えています。これまで健診シリーズとしてLDLコレステロール・メタボリックシンドローム・腎機能(eGFR)・脂肪肝(MASLD)などを取り上げてきましたが、今回はご質問の多い「中性脂肪(トリグリセライド:TG)」がテーマです。「お酒はあまり飲まないのに中性脂肪が高いと言われた」「LDLは正常なのに中性脂肪だけ引っかかった」という方は、実はとても多くいらっしゃいます。
本記事は、日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」の診断基準に基づき、中性脂肪が高いと何が問題なのか、そして夏に数値が上がりやすい理由と今日からできる対策を、田園調布・多摩川エリアの皆さまに向けて分かりやすく解説いたします。
目次
中性脂肪とは?LDLコレステロールとの違い
中性脂肪(トリグリセライド)は、体を動かすエネルギー源として使われる脂質です。食事から摂った糖質・脂質・アルコールが肝臓で作り替えられ、血液中を運ばれて、使い切れなかった分は皮下脂肪や内臓脂肪として蓄えられます。
一方、LDLコレステロールは細胞膜やホルモンの材料となる脂質で、増えすぎると血管の壁にたまり動脈硬化を進めます。役割が違うため、「LDLは正常でも中性脂肪だけ高い」ということが普通に起こります。そして中性脂肪が高い状態は、それ自体が動脈硬化のリスクであるだけでなく、「善玉」のHDLコレステロールを減らし、LDLをより血管壁に入り込みやすい小型のタイプ(小型高密度LDL)に変えてしまうことが知られています。
| 項目 | 中性脂肪(TG) | LDLコレステロール |
|---|---|---|
| 主な役割 | エネルギー源・貯蔵 | 細胞膜・ホルモンの材料 |
| 上がる主な原因 | 糖質・アルコール・果糖の摂りすぎ、運動不足 | 飽和脂肪酸の摂りすぎ、体質・遺伝 |
| 食事の影響 | 直前の食事で大きく変動 | 直前の食事の影響は比較的小さい |
| 生活改善の効果 | 食事・運動・節酒で比較的変化しやすい | 生活改善に加え薬物療法が必要な場合も |
診断基準|「空腹時150」と「食後(随時)175」の2つの物差し
日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」では、中性脂肪の基準として従来の空腹時採血に加えて、食後でも判定できる「随時採血」の基準が新しく設けられました。食後の中性脂肪の高さ(食後高脂血症)も動脈硬化と関連することが分かってきたためです。
| 採血のタイミング | 基準値 | 判定 |
|---|---|---|
| 空腹時(10時間以上絶食) | 150mg/dL以上 | 高トリグリセライド血症 |
| 随時(食後など) | 175mg/dL以上 | 高トリグリセライド血症 |
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ポイント|健診結果を見るときの注意 ① 採血条件を確認:朝食を食べてから受けた健診では、数値がやや高めに出ます。空腹時か食後かで基準が異なります。 ② 1回の数値で決めつけない:中性脂肪は日々変動します。高値が続くかどうか、再検査での確認が大切です。 ③ 他の項目とセットで:HDLコレステロール・血糖値・肝機能(ALT)・腹囲と合わせて全体像を評価します。 |
放置してはいけない理由|動脈硬化・急性膵炎・脂肪肝
中性脂肪が高くても、自覚症状はほとんどありません。しかし放置すると、次のような問題につながる可能性があります。
メカニズム図解|中性脂肪が高い状態が続くと
| 糖質・アルコールの摂りすぎ:使い切れなかったエネルギーが肝臓で中性脂肪に作り替えられます | |
| 血液中と肝臓に脂肪がたまる:血液中の中性脂肪が増え、肝臓にたまれば脂肪肝(MASLD)、お腹にたまれば内臓脂肪に | |
| HDLが減り、LDLが小型化:血管を守る力が弱まり、血管壁に入り込みやすい小型LDLが増えます | |
| 動脈硬化が進行:心筋梗塞・脳梗塞のリスク上昇へ。糖尿病・高血圧・喫煙が重なるとリスクはさらに高まります |
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重要|中性脂肪500mg/dL以上は早めにご相談を ・中性脂肪が著しく高い状態(特に1,000mg/dL近く)では、急性膵炎という激しい腹痛を伴う病気のリスクが高まります。 ・500mg/dLを超える高値を指摘された方は、症状がなくても放置せず、早めに内科を受診してください。 |
夏に中性脂肪が上がりやすい4つの理由
お盆明けから初秋の健診・再検査で中性脂肪の高値が目立つのには、夏ならではの理由があります。
① 冷たい麺類・ごはんものに偏った食事
そうめん・冷やし中華・丼ものなど、夏の定番メニューは糖質中心になりがちです。糖質の摂りすぎは、脂っこいものを食べていなくても中性脂肪を上げます。「揚げ物は控えているのに数値が高い」という方は、まず主食と甘い物の量を見直してみましょう。
② ビールなどアルコールの機会が増える
アルコールは肝臓での中性脂肪の合成を高めます。ビールに限らず、お酒全般が中性脂肪を上げる方向に働きます。休肝日を設け、1回の量を控えめにすることが第一歩です。
③ 清涼飲料水・アイス・果物の果糖
果糖(フルクトース)は肝臓で代謝され、中性脂肪の材料になりやすい糖です。熱中症対策の水分補給が加糖飲料に偏ると、血糖値だけでなく中性脂肪にも影響します。水分補給の基本は水・麦茶とし、果物は適量を楽しむのがおすすめです。
④ 暑さによる運動不足
猛暑で歩く機会が減ると、エネルギー消費が落ちて中性脂肪がたまりやすくなります。厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、成人に1日60分以上(8,000歩以上が目安)の歩行または同等以上の身体活動が推奨されています。朝夕の涼しい時間帯の散歩や、冷房の効いた施設内でのウォーキングなど、無理のない工夫で続けましょう。
今日からできる食事・運動のコツ
中性脂肪は、脂質の中でも生活習慣の見直しによる変化が比較的期待しやすい項目です。ポイントを整理します。
| 対策 | 具体的なコツ |
|---|---|
| 糖質を摂りすぎない | 麺・ごはんの大盛りを控える/甘い飲み物を水・麦茶に置き換える/間食は時間と量を決める |
| お酒を控えめに | 休肝日を週2日以上/「とりあえずもう1杯」をやめる/ノンアルコール飲料も活用 |
| 魚・食物繊維を増やす | 青魚(サバ・イワシなど)のEPA・DHA、野菜・海藻・きのこを毎食に/主菜を肉から魚に置き換える日を作る |
| 有酸素運動を続ける | 1日合計30〜60分の早歩きを目標に/通勤で一駅歩く/朝夕の涼しい時間帯を活用(熱中症対策も忘れずに) |
| 体重を3%減らす | 肥満のある方は、まず現体重の3%減で中性脂肪・血圧・血糖の改善が期待できるとされています |
当院では管理栄養士による栄養相談を行っており、お一人おひとりの生活パターンに合わせた実行しやすいプランをご提案しております。「何から始めればいいか分からない」という方こそ、お気軽にご相談ください。
お薬による治療が検討されるのはどんなとき?
中性脂肪の治療の基本は、あくまで食事・運動・節酒などの生活習慣の改善です。そのうえで、生活改善を続けても高値が続く場合や、糖尿病・心筋梗塞の既往など動脈硬化のリスクが高い場合、著しい高値で急性膵炎が心配される場合には、フィブラート系薬剤やEPA製剤などのお薬による治療が検討されます。
お薬が必要かどうかは、中性脂肪の数値だけでなく、LDL・HDLコレステロール、血糖値、血圧、喫煙、ご家族の病歴などを総合して、ガイドラインに沿って判断します。これらの治療は医師の診断に基づく保険診療として行うものであり、痩身や美容を目的とした自由診療のお薬とは目的も位置づけも異なります。健診で指摘を受けた方は、自己判断でサプリメントなどに頼る前に、まず内科でご相談ください。
当院でできること・受診の目安
竹内内科小児科医院では、健診結果の見直しから再検査(空腹時採血)、脂質異常症・糖尿病・高血圧などの生活習慣病の継続診療まで、一貫して対応しております。土曜午前も診療しておりますので、平日はお仕事で忙しい働き盛りの方もご相談いただけます。
また、内科と小児科を併設しているため、ご家族そろっての受診が可能です。中性脂肪の高さには食習慣が大きく関わるため、ご家庭の食卓ぐるみで見直すことが改善の近道になります。お子さまの肥満や食生活のご相談も、小児科でお受けしております。
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受診をおすすめするチェックリスト □ 健診で中性脂肪150mg/dL以上(食後の採血なら175mg/dL以上)を指摘された □ 中性脂肪500mg/dL以上と言われた(早めの受診を) □ HDLコレステロールが低い、血糖値・血圧・肝機能も指摘されている □ 何年も「要経過観察」のまま再検査を受けていない □ 減量や食事改善を自己流で続けているが、数値が変わらない |
受診の際は、健診結果の用紙(過去数年分あればなお良い)と、服用中のお薬が分かるもの(お薬手帳)をお持ちください。数値の推移が分かると、より的確な評価ができます。
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健診結果のご相談は、お早めにどうぞ 中性脂肪は自覚症状のないまま動脈硬化を進めます。「まだ大丈夫」と思っているうちが、生活習慣で立て直せる一番のチャンスです。 ご予約は、記事末尾のWEB予約・WEB問診・LINE・お電話(03-3721-5222)からお気軽にお取りいただけます。 |
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参考文献
- 日本動脈硬化学会編「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」日本動脈硬化学会, 2022.
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」2024年1月公表.
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「脂質異常症」(2026年8月閲覧)
- 日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」公式サイト https://www.j-athero.org/jp/jas_gl2022/(2026年8月閲覧)
竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医