【2026年夏】熱中症予防の「塩分補給」、高血圧の方はどこまで必要?|JSH2025の減塩目標と両立する残暑の過ごし方【田園調布・多摩川】

皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。

2026年の夏も厳しい暑さが続き、お盆を迎えた田園調布・多摩川周辺でも連日「熱中症警戒アラート」が話題になっています。テレビやコンビニでは「水分と塩分をとりましょう」という呼びかけや塩分タブレット・塩あめの特設コーナーをよく見かけますが、外来では「高血圧で減塩するように言われているのに、夏は塩分をとったほうがいいの?」というご質問を、この時期とても多くいただきます。

実はこの疑問に対して、日本高血圧学会は「減塩しながら酷暑を乗り切る!!熱中症を防ぐ6か条」という指針を公表しており、2025年8月29日に発刊された最新の「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」でも減塩の重要性があらためて強調されています。今回のブログでは、これらの最新情報をもとに、「熱中症予防の塩分補給はどこまで必要か」「減塩と水分補給をどう両立するか」を分かりやすく解説いたします。

夏の血圧の変化や降圧薬の注意点については、姉妹記事「夏は血圧が下がる?猛暑と降圧薬・脱水の注意点」もあわせてご覧ください。

「塩分もとらなきゃ」は本当?——熱中症には2つのタイプがあります

熱中症とひとくちに言っても、日本高血圧学会は大きく2つのタイプに分けて考えることを勧めています。どちらのタイプかによって、「塩分補給が必要かどうか」の答えが変わってくるためです。

タイプ 起こりやすい場面 塩分補給の考え方
日常生活型(非労作性) 室内で過ごす高齢者の方、エアコンを使わない環境、寝ている間など 特別な塩分補給は原則不要。こまめな水分補給と暑さを避ける工夫が中心
運動・労作型(労作性) 炎天下でのスポーツ・作業・登山など、大量に汗をかく場面 水分に加えて塩分の補給も必要。経口補水液などを一時的に活用

つまり、「熱中症予防=いつでも誰でも塩分補給」ではありません。大量の汗をかいたときに限って塩分補給が必要になる、というのが医学的な整理です。田園調布周辺でも、通勤や買い物程度の外出であれば、必要なのはまず「こまめな水分補給」と「暑さを避けること」です。

ふだんの生活で失われる塩分は、食事で十分補えます

そもそも日本人は、平均でどのくらい塩分をとっているのでしょうか。令和5年の国民健康・栄養調査では、食塩摂取量の平均は男性10.7g/日・女性9.1g/日と報告されており、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」の目標量(成人男性7.5g/日未満・成人女性6.5g/日未満)を大きく上回っているのが現状です。

メカニズム図解|「塩分のとりすぎ」が夏でも起こるわけ

1 ふだんの発汗で失う塩分はわずか:日常生活レベルの汗であれば、失われる塩分は3食の食事から十分に補われます。
2 そこに塩分タブレットや塩あめを上乗せすると:もともと目標量を超えている塩分摂取が、さらに増えてしまいます。
3 血圧上昇・むくみの原因に:過剰なナトリウムは体に水分をため込み、血圧を上げる方向に働きます。高血圧や心臓・腎臓の病気をお持ちの方では特に注意が必要です。

「夏だから」と意識して塩分を上乗せしなくても、多くの方はすでに十分すぎる塩分をとっている——これが出発点になります。そのうえで、炎天下の部活動や庭仕事などで大量に汗をかく場面だけ、必要な分を賢く補給するのが、減塩と熱中症予防を両立するコツです。

高血圧の方の減塩目標——JSH2025で変わったこと

日本高血圧学会は2025年8月29日、7年ぶりの全面改訂となる「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」を発刊しました。ポイントを表にまとめます。

項目 JSH2025のポイント
降圧目標(診察室血圧) 合併症などを考慮しつつ、原則として全年齢で130/80mmHg未満に統一
降圧目標(家庭血圧) 125/75mmHg未満が目安
減塩目標 高血圧の方は食塩6g/日未満
生活習慣の改善 減塩に加え、野菜・果物などからのカリウム摂取、適正体重、運動、節酒、禁煙など。高血圧治療補助アプリなどデジタル技術の活用も新たに記載

高血圧の治療中の方にとって、減塩は夏でも変わらず大切な治療の柱です。当院(内科・糖尿病内科・代謝内科・生活習慣病外来)でも、JSH2025に沿って、お一人おひとりの血圧・合併症・生活スタイルに合わせた目標設定と栄養相談を行っております。なお、カリウム摂取については、腎臓の機能が低下している方では制限が必要な場合がありますので、自己判断せず主治医にご相談ください。

経口補水液・スポーツドリンク・塩分タブレットの使い分け

ドラッグストアに並ぶ「夏の飲み物・塩分補給グッズ」には、実は含まれる食塩の量に大きな差があります。おおよその目安を知っておくと、場面に応じて上手に使い分けられます。

種類 食塩相当量の目安 適した場面
水・麦茶 ほぼ0g 日常のこまめな水分補給の基本。食事がとれていればこれで十分なことがほとんど
スポーツドリンク 500mLで約0.5g前後(製品により異なります) 運動などで汗をかく場面。糖分が多いため、血糖値が気になる方は飲みすぎに注意
経口補水液 500mLで約1.5g 大量発汗時や脱水が疑われるときの一時的な補給に限定。健康な状態で日常的に飲むものではありません
塩分タブレット・塩あめ 製品によりさまざま 炎天下での長時間の作業・スポーツ時のみ。「おやつ代わり」の習慣的な摂取は避けましょう

経口補水液は「飲む点滴」——だからこそ毎日飲むものではありません

経口補水液500mLには食塩約1.5gが含まれます。高血圧の方の減塩目標(6g/日未満)の約4分の1に相当するため、汗をほとんどかいていない日に習慣的に飲むと、塩分のとりすぎにつながります。特に食塩制限を指示されている方(高血圧・心不全・腎臓病など)は、日常的な使用について主治医にご相談ください。

減塩と熱中症予防を両立する6つのポイント

日本高血圧学会の「減塩しながら酷暑を乗り切る!!熱中症を防ぐ6か条」をもとに、当院からのアドバイスを加えてご紹介します。

減塩しながら熱中症を防ぐ6つのポイント

① 高温環境を避ける:室内では我慢せずエアコンを使い、屋外の用事は朝夕の涼しい時間帯に。環境省の「熱中症警戒アラート」も参考にしましょう。

② 2つの熱中症を区別する:ふだんの生活では水分補給が中心、大量に汗をかく場面だけ塩分も補給——この使い分けが基本です。

③ 朝食を含めて3食きちんと食べる:食事がとれていれば、必要な塩分と水分の多くは自然に補われます。夏バテで食事量が減っているときは要注意です。

④ 野菜・果物でカリウムを:トマトやきゅうり、すいかなど夏の野菜・果物は水分とカリウムの補給源になります(腎機能が低下している方は主治医にご相談ください)。

⑤ お酒に頼らない・よく眠る:アルコールは尿の量を増やして脱水を進めます。「ビールで水分補給」はできません。睡眠不足も体温調節を乱します。

⑥ 血圧と体重を測る習慣を:家庭血圧に加え、体重の急な減少は脱水のサインになります。運動の前後で体重を比べると、汗の量の目安が分かります。

減塩そのものについては、「ラーメンやうどんの汁は残す」「しょうゆは“かける”より“つける”」「だし・酢・香辛料で味に変化をつける」といった小さな工夫の積み重ねが有効です。当院では管理栄養士による栄養相談も行っておりますので、夏の献立や減塩の具体的な方法についてもお気軽にご相談ください。

降圧薬・利尿薬を服用中の方へ——夏ならではの注意点

夏は汗と血管の拡張により、血圧がふだんより下がりやすい季節です。降圧薬を服用中の方では、めまい・ふらつき・立ちくらみが起こりやすくなることがあります。また、利尿薬や一部の糖尿病治療薬(SGLT2阻害薬)を服用中の方は、脱水の影響を受けやすいため、特に注意が必要です。

重要|自己判断でお薬を中止しないでください

・「夏は血圧が下がるから」と自己判断で降圧薬をやめると、血圧の急上昇や脳卒中・心筋梗塞のリスクにつながるおそれがあります。

・家庭血圧がふだんより明らかに低い日が続く、ふらつきが強い——そんなときは、お薬の調整が必要かどうか、早めに受診してご相談ください。

・利尿薬を服用中の方は、大量に汗をかく予定(旅行・スポーツ・屋外作業など)がある場合、事前に主治医と水分・塩分のとり方を確認しておくと安心です。

受診の目安とチェックリスト

次のような場合は、我慢せずご相談ください。土曜も午前は診療しておりますので、平日お忙しい方もご利用いただけます。

受診前チェックリスト

□ 健診や家庭血圧で血圧が高め(135/85mmHg以上)と言われている

□ 夏になって血圧がふだんより大きく上下している

□ 降圧薬・利尿薬を飲んでいて、めまい・ふらつき・だるさがある

□ 塩分タブレットや経口補水液を毎日のように使っている

□ 減塩したいが、何から始めればよいか分からない

ご来院の際は、家庭血圧の記録(血圧手帳やアプリの画面)とお薬手帳をお持ちいただけると、診察がスムーズです。

ポイント|この記事のまとめ

① ふだんの生活では:塩分補給は原則不要。こまめな水分補給(水・麦茶)と暑さを避ける工夫を。

② 大量に汗をかく場面では:経口補水液などで水分と塩分を一時的に補給。

③ 高血圧の方は:夏も減塩(6g/日未満)が治療の柱。JSH2025の降圧目標は原則130/80mmHg未満(家庭血圧125/75mmHg未満)です。

参考文献

  1. 日本高血圧学会編「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」ライフサイエンス出版, 2025年8月29日発刊.
  2. 日本高血圧学会「減塩しながら酷暑を乗り切る!!熱中症を防ぐ6か条:熱中症予防と高血圧管理の観点から」https://www.jpnsh.jp/general_salt_01.html(2026年8月閲覧)
  3. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(ナトリウム:目標量 成人男性7.5g/日未満・成人女性6.5g/日未満)
  4. 厚生労働省「令和5年国民健康・栄養調査」(食塩摂取量の平均値:男性10.7g/日・女性9.1g/日)
  5. 環境省「熱中症予防情報サイト(熱中症警戒アラート)」https://www.wbgt.env.go.jp/(2026年8月閲覧)

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