皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。
お盆休みが近づき、田園調布・多摩川周辺でも帰省やご家族の集まりを控えている方が多い時期になりました。夏の食卓の定番といえばそうめん・冷やし中華などの冷たい麺、そしてスイカや桃などの夏の果物ですね。「暑くて食欲がないから、お昼はそうめんだけ」という日が続いていないでしょうか。実はこの「麺だけ」「果物中心」の夏の食事が、食後の血糖値を大きく上げる「血糖値スパイク(食後高血糖)」を招きやすいことは、意外と知られていません。
今回のブログでは、日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」および厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」の考え方を踏まえて、夏の麺類・果物と血糖値の関係と、今日からできる食べ方の工夫(食事療法)を、糖尿病内科・代謝内科の視点から分かりやすく解説いたします。糖尿病の方はもちろん、健診で「血糖値が高め」「予備群」と言われた方、ご家族の食事を用意される方にもお役立ていただける内容です。
先日の記事「猛暑でも安全に続ける生活習慣病の運動療法」の姉妹編として、今回は“食事”に焦点を当てます。
目次
なぜ夏は血糖値が乱れやすいのか
「夏は汗をかくから痩せそう」「食欲も落ちるし血糖値も下がるのでは?」と思われがちですが、外来で夏の血液検査を拝見していると、むしろ夏に血糖コントロールが乱れる方が少なくありません。理由は大きく3つあります。
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ポイント|夏に血糖値が乱れやすい3つの理由 ① 食事が糖質に偏る:そうめん・冷やし中華・ざるそばなど「麺だけ」の食事が増え、たんぱく質や野菜が不足しがちになります。 ② 甘い飲み物・果物が増える:スポーツドリンクや清涼飲料水、アイス、夏の果物など、気づかないうちに糖分の摂取量が増えます。 ③ 脱水で血液が濃縮される:汗による脱水は血糖値を相対的に上昇させ、糖尿病の方では高血糖の悪循環につながることがあります。 |
特に②については、当院の過去記事「夏に急増する「ペットボトル症候群」(清涼飲料水ケトーシス)」でも詳しく解説しております。今回はその“食事編”として、①の夏の麺類・果物との付き合い方を中心にお伝えいたします。
「そうめんだけ」の昼食で何が起きる?──血糖値スパイクの仕組み
そうめんは消化がよく、のどごしもよい優れた夏の主食です。問題は、そうめん“だけ”で食事を済ませてしまう食べ方にあります。麺類は糖質(でんぷん)が主成分で、単独で食べると消化吸収が速く、食後30分〜1時間で血糖値が急上昇しやすいのです。この食後の急激な血糖上昇と下降は「血糖値スパイク(食後高血糖)」と呼ばれます。
メカニズム図解|「麺だけ」ランチが血糖値スパイクを招く流れ
| 糖質中心・早食いになりやすい:冷たい麺はよく噛まずに短時間で食べられるため、糖質が一気に消化管へ流れ込みます。 | |
| ブドウ糖が急速に吸収される:たんぱく質・脂質・食物繊維が少ないと胃から腸への移動が速く、血糖値が急上昇します。 | |
| インスリンが急いで分泌される:急上昇した血糖を処理するため、すい臓に負担がかかります。予備群の方ではこの処理が追いつかず、高血糖が長引きやすくなります。 | |
| 血管への負担・強い眠気やだるさ:食後高血糖の繰り返しは動脈硬化のリスク要因とされ、食後の強い眠気・だるさの一因にもなります。 |
健診の空腹時血糖やHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー:過去1〜2か月の血糖の平均を反映する値)が正常範囲でも、食後だけ血糖値が高くなる「隠れ高血糖」の方もいらっしゃいます。「食後に毎回強い眠気がある」「麺類やご飯のあとにだるくなる」という方は、一度ご相談いただく価値があります。
夏の麺類の糖質量を比べてみると
「そうめんは細いからヘルシー」というイメージをお持ちの方も多いのですが、実は乾麺2束(100g)をゆでて食べると、ご飯茶碗1杯分を上回る糖質量になります。日本食品標準成分表をもとにした目安を表にまとめました。
| 主食(1食の目安量) | 糖質量の目安 | ワンポイント |
|---|---|---|
| そうめん 乾麺2束(100g) | 約70g | つるつると2〜3束食べてしまいがち。めんつゆの糖分・塩分にも注意 |
| 冷やし中華 1人前(生麺約120g+タレ) | 約70〜80g | 甘酢ダレにも糖分。具材(卵・ハム・きゅうり)が付く点は良い |
| ゆでうどん 1玉(約250g) | 約50〜55g | 冷やしうどんも「単品」にせず具材を足す |
| ご飯 茶碗1杯(150g) | 約53g | 比較の基準。定食スタイルはおかずが付く分、血糖上昇が緩やかになりやすい |
※数値は日本食品標準成分表(八訂)等をもとにした概算の目安です。製品により差があります。
大切なのは「そうめんを食べてはいけない」ということでは決してありません。量の目安を知り、単品にしないことがポイントです。
夏の果物・冷たい飲み物との上手な付き合い方
スイカ・桃・ぶどう・梨など、夏から初秋は果物のおいしい季節です。果物はビタミン・カリウム・食物繊維の大切な供給源で、「日本人の食事摂取基準(2025年版)」でも野菜・果物を含むバランスのよい食事が基本とされています。一方で、果物の甘み(果糖・ブドウ糖)も摂りすぎれば血糖値や中性脂肪の上昇につながります。
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果物・飲み物のワンポイント ・果物の目安は1日1〜2単位程度(例:スイカなら小玉1/8個程度、桃なら1個程度)。「食後のデザート」より「間食代わり」に少量ずつが安心です。 ・果汁100%ジュースやスムージーは血糖値が上がりやすい飲み方です。噛んで食べる生の果物を優先しましょう。 ・日常の水分補給は水・麦茶が基本。スポーツドリンクは大量発汗時に限定を。詳しくはペットボトル症候群の記事もご覧ください。 |
今日からできる「そうめん+α」の食事療法
糖尿病診療ガイドライン2024でも、食事療法は特定の食品を禁止するものではなく、総エネルギーと栄養バランスを整え、無理なく続けられる形にすることが基本とされています。夏の食卓では、次の5つの工夫がおすすめです。
① そうめんに「たんぱく質」を足す
ゆで卵・蒸し鶏(サラダチキン)・豚しゃぶ・ツナ・納豆・ちくわなどを1〜2品添えるだけで、血糖上昇が緩やかになりやすく、夏バテ予防にもつながります。お盆の集まりなら「豚しゃぶそうめん」「サバ缶そうめん」もおすすめです。
② 「野菜・きのこ・海藻」を先に食べる
トマト・きゅうり・オクラ・もずく・わかめなどを麺より先に食べる、いわゆる「ベジファースト」は、食後血糖の急上昇を抑える工夫として知られています。薬味(ねぎ・みょうが・大葉・しょうが)をたっぷり使うのも良い方法です。
③ 麺は「2束まで」と決めて、よく噛む
乾麺2束(100g)を上限の目安にし、足りない分はおかずで補いましょう。冷たい麺は早食いになりやすいため、意識してよく噛むことも大切です。
④ 朝食を抜かない
暑さで朝食を抜くと、昼食後の血糖値がより急上昇しやすくなることが知られています。牛乳・ヨーグルト・卵・バナナなど、簡単なものでも朝に口にする習慣を保ちましょう。
⑤ お盆の会食は「食べる順番」と「翌日リセット」
帰省先でのごちそうやお寿司・天ぷらは、楽しんでいただいて構いません。野菜や汁物から箸をつける、甘い飲み物を控える、そして食べ過ぎた翌日は麺単品ではなく野菜とたんぱく質中心に整える──この「翌日リセット」の考え方が、長く続けるコツです。
糖尿病・予備群の方が夏に気をつけたいこと
すでに糖尿病で治療中の方は、夏は脱水と血糖変動の両方に注意が必要です。こまめな水分補給(水・麦茶)を心がけ、発熱や食欲不振で食事がとれない「シックデイ」の際のお薬の扱いは、自己判断せず当院にご相談ください。旅行・帰省時の注意点は「糖尿病の方の旅行・帰省ガイド」にまとめております。
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重要|こんな症状は早めに受診を ・のどの渇きが強く、水をたくさん飲む・尿の回数が増えた ・食べているのに体重が減ってきた ・強いだるさ・吐き気が続く(高血糖やケトーシスのサインのことがあります) ・治療中の方で、食事がとれないのにいつも通りお薬を続けてよいか迷ったとき |
当院でできるサポート(糖尿病内科・代謝内科・栄養相談)
竹内内科小児科医院では、糖尿病内科・代謝内科として、血糖値・HbA1cの評価から食事・運動のご相談、必要に応じたお薬の調整までを行っております。健診で「血糖値が高め」「予備群」と言われた段階でのご相談は、将来の糖尿病や合併症を防ぐうえで特に大切です(詳しくは「HbA1c・血糖値を指摘されたら」をご覧ください)。
また、当院は内科と小児科を併設しておりますので、お子さまからおじいちゃま・おばあちゃままで、ご家族の食習慣をまとめてご相談いただけるのが強みです。お盆に帰省されたご家族の健康が気になった方も、どうぞお気軽にお声がけください。土曜午前も診療しております。
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受診前チェックリスト □ 直近の健康診断・血液検査の結果(あればご持参ください) □ ふだんの食事内容(夏によく食べる麺類・果物・飲み物) □ 服用中のお薬・お薬手帳 □ 気になる症状(食後の眠気・のどの渇き・体重変化など)とその時期 |
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五良会グループでは、田園調布の竹内内科小児科医院、港区の五良会クリニック白金高輪、横浜市都筑区の五良ファミリークリニックセンター南の医師が連携しております。患者さまの転居やライフスタイルの変化に合わせて、同じグループ内で継続診療が受けられる体制を整えております。
参考文献
- 日本糖尿病学会 編・著.『糖尿病診療ガイドライン2024』南江堂, 2024.
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書, 2024年10月.
- 日本糖尿病学会 編・著.『患者さんとその家族のための糖尿病治療の手びき2026(改訂第59版)』南江堂, 2026.
- 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補」(2026年8月閲覧)
竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医