【2026年秋】糖尿病と「骨」の意外な関係|骨密度が正常でも骨折しやすい?“骨質”とAGEs・転倒を防ぐ秋の対策を院長がやさしく解説【田園調布・多摩川】

皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。

朝晩はずいぶん涼しくなり、田園調布の街路樹も少しずつ秋の色に変わってきました。まもなく敬老の日を迎えるこの時期、外来では「運動の秋だから歩き始めました」という嬉しいお声を伺う一方で、「先日転んで手をついたら骨折してしまった」というご相談も増え始めます。実は糖尿病のある方は、糖尿病のない方に比べて骨折しやすいことをご存じでしょうか。しかも「骨密度は年相応で正常」と言われていた方でも骨折が起こりやすい——これが糖尿病と骨の、少し意外な関係です。

2025年8月には、骨の健康の指針となる「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」が10年ぶりに改訂され(2025年版)、糖尿病をはじめとする生活習慣病と骨折リスクの関係にも、あらためて注目が集まっています。今回のブログでは、糖尿病診療ガイドライン2024と骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版などをもとに、糖尿病があると骨がもろくなる仕組み(骨質とAGEs)と、転倒・骨折を防ぐために今日からできる対策を、院長がやさしく解説いたします。

骨密度が正常でも骨折?——糖尿病と骨の意外な関係

まず、当院の外来でよく出会うような患者さんの例をご紹介します(記事中の症例はいずれも架空の例で、特定の患者さまの情報ではありません)。

Aさん(68歳・女性)は2型糖尿病歴12年、HbA1c 7.2%、BMI 21と、血糖も体重も比較的落ち着いています。ところが先日、自転車から降りる際にバランスを崩して手をつき、手首を骨折してしまいました。「区の検診で骨密度は年相応と言われていたのに、どうして……」と驚かれていました。

実は、Aさんのようなケースは決して珍しくありません。研究の蓄積により、2型糖尿病の方は糖尿病のない方に比べて大腿骨近位部骨折(足の付け根の骨折)のリスクが約1.3〜1.7倍1型糖尿病の方では数倍に高まると報告されています。しかも2型糖尿病では、骨密度がむしろ保たれている(正常〜やや高め)にもかかわらず骨折しやすいという特徴があり、骨密度の数値だけでは安心できないのです。

ポイント|糖尿病と骨折リスク

① 糖尿病は「骨折しやすくなる病気」でもある:三大合併症(神経・目・腎臓)に加え、骨も影響を受ける臓器のひとつです。

② 骨密度が正常でも油断できない:2型糖尿病では骨の「量」より「質」が低下します。

③ 転倒しやすさも重なる:低血糖・神経障害・筋力低下が転倒リスクを高め、骨折につながります。

大腿骨近位部骨折は、高齢の方が要介護状態になる大きなきっかけのひとつです。糖尿病の治療を長く続けていくうえで、血糖値だけでなく「骨」と「転倒」にも目を向けていただくことが、健康寿命を守る大切な一歩になります。

なぜ骨がもろくなる?——鍵は「骨質」とAGEs(糖化)

骨の強さは、「骨密度(骨の量)」が約7割、「骨質(骨の材質としての質)」が約3割を担うと考えられています。骨を鉄筋コンクリートの建物にたとえると、カルシウムなどのミネラルが「コンクリート」、コラーゲンが「鉄筋」にあたります。糖尿病で問題になるのは、主にこの「鉄筋」の部分、つまり骨質です。

メカニズム図解|高血糖が骨をもろくする流れ

1 高血糖が続く:血液中の余分なブドウ糖が、体のたんぱく質と結びつきます(糖化)。
2 AGEs(終末糖化産物)がたまる:骨の「鉄筋」であるコラーゲンにAGEsが蓄積し、本来のしなやかな架け橋(架橋)が、もろい架け橋に置き換わっていきます。
3 骨質が低下する:骨の新陳代謝(骨代謝回転)も低下し、しなやかさを失った「サビた鉄筋」のような骨になります。
4 骨密度が保たれていても骨折しやすくなる:コンクリート(骨量)は十分でも、鉄筋(コラーゲン)が劣化した建物は、衝撃に弱くなってしまいます。

このAGEs(エージーイー:終末糖化産物)は、骨だけでなく血管や皮膚の老化にも関わる物質で、「体のコゲ」と表現されることもあります。血糖コントロールを良好に保つことは、骨のコラーゲンを糖化から守ることにもつながるのです。

「転びやすさ」も骨折リスク——低血糖・神経障害・筋力低下

骨折は「骨のもろさ」と「転倒」のかけ算で起こります。糖尿病のある方では、骨質の低下に加えて、転倒そのものが起こりやすくなる要因がいくつも重なりやすいことが知られています。

Bさん(75歳・男性)は糖尿病歴20年、インスリン治療中でHbA1c 8.4%。最近、夜中にトイレへ立つ際にふらつくことが増え、ご家族が心配されて受診されました。よくお話を伺うと、夕食が遅れた日に冷や汗や動悸(低血糖のサイン)を自覚することがあり、また足の裏のしびれ(糖尿病神経障害)で足元の感覚が鈍くなっていることも分かりました。

転倒につながる要因 なぜ転びやすくなる?
低血糖 ふらつき・意識がぼんやりする・力が入らないといった状態が転倒の引き金になります。特に夜間・早朝は要注意です。
糖尿病神経障害 足裏の感覚が鈍くなり、段差やつまずきに気づきにくくなります。立ちくらみ(起立性低血圧)の原因にもなります。
網膜症・視力低下 足元の障害物が見えにくくなります。白内障の進行が早いことも知られています。
筋力低下(サルコペニア) 糖尿病では筋肉量が減りやすく、踏ん張る力・バランス能力が落ちやすくなります。

Bさんのように複数の要因が重なっている方では、「血糖を下げること」と同じくらい「低血糖と転倒を避けること」が大切な治療目標になります。高齢の方のHbA1c目標は、年齢・認知機能・使っているお薬によって個別に設定します。詳しくは高齢者の糖尿病の記事もあわせてご覧ください。

糖尿病のお薬と骨——自己判断での中止は禁物です

糖尿病のお薬の中には、骨との関係が知られているものがあります。代表的なのはピオグリタゾン(チアゾリジン薬)で、特に女性で骨折リスクの上昇が報告されており、添付文書にも記載があります。また、インスリンやSU薬など低血糖を起こしうるお薬を使っている方では、低血糖による転倒への注意が必要です。

大切なお願い|お薬を自己判断でやめないでください

「骨に悪いかもしれない」と自己判断でお薬を中止すると、血糖コントロールの悪化そのものが骨質の低下や合併症の進行を招き、かえって骨折リスクを高めてしまいます。骨折の既往や骨粗鬆症がある方・ご心配な方は、必ず主治医にご相談ください。お一人おひとりの骨のリスクに応じて、お薬の種類を一緒に見直していきます。

なお、骨粗鬆症と診断された場合の治療薬(骨吸収抑制薬・骨形成促進薬など)は、糖尿病があっても基本的に同じように使うことができます。糖尿病の治療と骨粗鬆症の治療は、両立できるものとお考えください。

骨を守る血糖管理と検査——HbA1cと骨密度測定

血糖と骨の関係は「高すぎても、下げすぎてもいけない」のが特徴です。血糖コントロールが不良な状態(目安としてHbA1cがおおむね7.5〜8%を超える状態)が続くと骨折リスクが高まる一方、厳格すぎる治療による低血糖は転倒・骨折の直接の引き金になります。

骨密度検査(DXA法など)のすすめ

骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版でも、骨密度測定はDXA(デキサ)法による腰椎・大腿骨での測定が基本とされています。ただし前述のとおり、糖尿病のある方では骨密度や骨折リスク評価ツール(FRAX®など)が実際のリスクを過小評価する可能性が指摘されています。「骨密度は正常だから大丈夫」で終わらせず、糖尿病があること自体をひとつのリスクと捉えて、検査結果は主治医と一緒に解釈することが大切です。

特に、閉経後の女性・65歳以上の方・骨折の既往がある方・ご家族に大腿骨骨折の方がいる場合は、一度骨密度検査を受けておくことをおすすめします。大田区にお住まいの方は区の骨粗しょう症検診の制度もありますので、当院外来でお気軽にご相談ください。

今日からできる骨折予防——食事・運動・住まいの工夫

(1)食事——カルシウム・ビタミンD・たんぱく質

骨の材料となるカルシウム(1日700〜800mgが目安)は、牛乳・ヨーグルト・小魚・大豆製品・小松菜などから。カルシウムの吸収を助けるビタミンDは、鮭やさんまなどの魚類・きのこ類に多く含まれ、日光を浴びることで皮膚でも作られます。秋は魚もきのこもおいしい季節、まさに「骨の食事療法」に向いた季節です。また、筋肉と骨の両方を守るためにたんぱく質(肉・魚・卵・大豆製品)を毎食欠かさないことも大切です。血糖値が気になる方も、これらの食品は血糖を大きく上げにくく、むしろ積極的にとっていただきたい食材です。

(2)運動——「貯筋」とバランス訓練

骨は適度な負荷がかかることで強くなります。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」でも、歩行などの有酸素運動に加えて週2〜3回の筋力トレーニングが推奨されています。かかとの上げ下ろし、椅子からの立ち座り(スクワット)、支えにつかまっての片脚立ちなどは、ご自宅で今日から始められる骨と筋肉のトレーニングです。運動の秋、まずは1日8,000歩の速歩き週2〜3回の“貯筋”から始めてみませんか。

(3)住まい——転倒の7割は家の中で起こります

高齢者の転倒の多くは、屋外ではなくご自宅の中で起こります。電気コードや座布団など床の障害物を片づける、廊下・トイレに夜間の足元灯をつける、浴室にマットや手すりを設置する、階段では必ず手すりを使う——こうした小さな工夫が、骨折を防ぐ大きな力になります。夜間にトイレへ立つことが多い方は、低血糖や立ちくらみへの対策とあわせて、通り道の環境も見直してみてください。

受診前チェックリスト|ひとつでも当てはまる方はご相談ください

□ 糖尿病があり、この1年で転んだこと・つまずきが増えたと感じることがある

□ 大人になってから、軽い転倒で骨折したことがある

□ 閉経後・65歳以上で、骨密度検査を一度も受けたことがない

□ 夜間や食前に、冷や汗・動悸・ふらつき(低血糖のサイン)を感じることがある

□ 足の裏のしびれ・感覚の鈍さが気になる

□ 以前より身長が2cm以上縮んだ、背中が丸くなったと言われた

糖尿病の方の「骨の健康チェック」、当院でご相談いただけます

竹内内科小児科医院(東急東横線・目黒線 多摩川駅 徒歩5分)では、糖尿病・生活習慣病の診療とあわせて、骨粗鬆症・転倒予防のご相談を承っております。大田区の骨粗しょう症検診についてもお気軽にお尋ねください。土曜午前も診療しておりますので、平日お忙しい方やご家族お揃いでの受診もどうぞ。

ご予約・お問い合わせ:TEL 03-3721-5222(下のボタンからWEB予約・LINEもご利用いただけます)

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五良会グループでは、田園調布の竹内内科小児科医院と港区の五良会クリニック白金高輪、横浜市都筑区の五良ファミリークリニックセンター南(医療法人社団正友会)の医師が連携し、糖尿病と骨・転倒予防を含む生活習慣病の管理を多角的にサポートしております。患者さまの転居やライフスタイルの変化に合わせて、同じグループ内で継続診療が受けられる体制を整えております。

参考文献

  1. 日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病診療ガイドライン2024. 南江堂, 2024.
  2. 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会(日本骨粗鬆症学会・日本骨代謝学会・骨粗鬆症財団). 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版. ライフサイエンス出版, 2025.(2025年8月1日発行・10年ぶりの改訂)
  3. 日本骨粗鬆症学会 生活習慣病における骨折リスク評価委員会. 生活習慣病骨折リスクに関する診療ガイド2019年版. ライフサイエンス出版, 2019.
  4. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」(2026年9月閲覧)
  5. 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」(2026年9月閲覧)

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日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医

Author: 五藤 良将