【2026年秋】糖尿病治療中の「低血糖」対処完全ガイド|冷や汗・動悸はSOSサイン・ブドウ糖のとり方と運動の秋の予防策を院長が解説【田園調布・多摩川】

皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。

朝晩がぐっと涼しくなり、田園調布周辺でもウォーキングやゴルフなど、運動を再開される方が増えてきました。運動の秋は血糖コントロールにとって絶好のチャンスですが、一方でこの時期、外来でご相談が増えるのが「低血糖(ていけっとう)」です。「買い物の途中で急に冷や汗が出て、手が震えた」「夜中に動悸で目が覚めた」——糖尿病のお薬で治療中の方にとって、低血糖は決して他人事ではありません。

今回のブログでは、日本糖尿病学会『糖尿病診療ガイドライン2024』『糖尿病治療ガイド2024』に基づき、低血糖のサイン・正しい対処法(ブドウ糖のとり方)・起こりやすい場面と予防のコツを、外来でよくあるご相談を例にやさしく解説いたします。前回の「糖尿病のお薬の選ばれ方」の続編として、お薬と上手に付き合うための必読テーマです。

低血糖とは?——血糖値70mg/dL未満は身体からのSOS

低血糖とは、血糖値が下がりすぎて身体に不調が現れる状態のことで、一般に血糖値70mg/dL未満が目安とされています。脳はブドウ糖を主なエネルギー源としているため、血糖値が下がりすぎると、身体は「血糖値を上げよう」と警報を鳴らします。これが冷や汗や動悸といった低血糖症状の正体です。

大切なポイントは、低血糖の多くが糖尿病のお薬の作用が「効きすぎた」ときに起こるということです。特に注意が必要なのは、インスリン注射SU薬(スルホニル尿素薬)・グリニド薬といったインスリン分泌を強く促すタイプのお薬です。一方、メトホルミン・DPP-4阻害薬・SGLT2阻害薬などは、単独で使う限り低血糖を起こしにくいお薬です(組み合わせによってはリスクが上がります)。ご自身のお薬がどのタイプか分からない方は、外来でお気軽にお尋ねください。

外来でよくあるご相談をもとにした例をご紹介します(記事中の症例はいずれも架空のもので、特定の患者さんのものではありません)。

症例イメージ①|70代女性・SU薬で治療中

朝は食欲がなくパンを半分だけにして、いつもどおりSU薬を服用。午前中にスーパーで買い物をしていたところ、急に冷や汗・手の震え・強い空腹感が出現。「立っていられない感じ」になり、その場にしゃがみ込んでしまいました。——これは典型的な低血糖のパターンです。食事量が減った日でもお薬の量は同じだと、薬の作用が相対的に強くなりすぎてしまうのです。

低血糖のサイン——「冷や汗・動悸・手の震え」から始まる段階的な症状

低血糖の症状は、血糖値の下がり方に応じて段階的に進みます。初期のサインのうちに気づいて対処することが何より大切です。

段階 血糖値の目安 主な症状
警告症状
(交感神経症状)
約70mg/dL未満 冷や汗、動悸、手の震え、強い空腹感、不安感、顔面蒼白
中枢神経症状 約50mg/dL前後 頭痛、目のかすみ、集中力の低下、眠気、ろれつが回らない、いつもと違う言動
重症低血糖 約30〜50mg/dL以下 意識もうろう、けいれん、昏睡——ご自身で対処できず、周囲の助けが必要な状態

重要|「無自覚性低血糖」にご注意ください

・低血糖を何度も繰り返すと、警告症状(冷や汗・動悸)が出ないまま、いきなり意識障害に至る「無自覚性低血糖」が起こりやすくなります。

・高齢の方では、症状が「めまい」「脱力」「ぼんやりする」など分かりにくい形で現れ、認知症と間違われることもあります。

・「最近、低血糖のサインを感じにくくなった」と思ったら、必ず主治医にお伝えください。お薬の調整が必要なサインです。

低血糖が起きたときの対処法——「ブドウ糖10g」と15分ルール

低血糖かなと思ったら、我慢せず、すぐに糖分をとることが鉄則です。順序を整理してみましょう。

メカニズム図解|低血糖時の対処ステップ

1 症状に気づいたら、まず安全確保:運転中・作業中ならすぐに中断し、座れる場所へ。血糖測定器をお持ちの方は測定を(測れない状況なら、測定より対処を優先します)。
2 ブドウ糖10g(または糖分を含むジュース150〜200mL程度)をとる:砂糖なら約20gが目安です。チョコレートやアメは吸収が遅く、低血糖の対処には不向きです。
3 15分待って、症状・血糖値を再確認:回復しなければ、もう一度同量の糖分をとります(いわゆる「15分ルール」)。
4 回復したら、次の食事が遠い場合は補食を:おにぎりやビスケットなど、腹持ちのする炭水化物を少量とると、低血糖のぶり返しを防げます。落ち着いたら、低血糖が起きた状況をメモして受診時にお知らせください。

α-グルコシダーゼ阻害薬を服用中の方は「必ずブドウ糖」で

ボグリボース・アカルボースなどのα-グルコシダーゼ阻害薬は、砂糖(ショ糖)の分解・吸収を遅らせるお薬です。このお薬を服用中の方が低血糖になったときは、砂糖では回復が遅れるため、必ず「ブドウ糖」そのものをとってください。ブドウ糖は薬局で購入できるほか、当院でも低血糖対策についてご案内しております。

意識がもうろうとしているとき——ご家族・周囲の方の対応

ご本人の意識がはっきりしないときは、無理に口から食べ物や飲み物を与えないでください(誤嚥・窒息の危険があります)。ためらわず救急要請(119番)を行ってください。インスリン治療中などで重症低血糖のリスクが高い方には、ご家族が鼻にスプレーするだけで応急処置ができるグルカゴン点鼻粉末剤(バクスミー点鼻粉末剤3mg)という選択肢もあります。2020年3月に日本で承認され、同年10月から使用可能になったお薬で、注射の手技が不要なため、ご家族でも落ち着いて対応しやすいのが特長です(適応は「低血糖時の救急処置」で、医師の処方が必要です)。処方をご希望の方はご相談ください。

低血糖が起こりやすい場面と予防のコツ——運動の秋こそご注意を

低血糖は「いつ起こりやすいか」がある程度分かっています。ご自身の生活パターンと照らし合わせてみてください。

起こりやすい場面 予防のコツ
食事の量が少なかった日・食事時間が遅れた日 食事がとれないときのお薬の扱い(シックデイルール)を、元気なうちに主治医と決めておく
運動中・運動後(運動後、数時間〜夜間に遅れて起こることも 長めのウォーキングやゴルフの際はブドウ糖・補食を携帯し、空腹での運動は避ける
飲酒時・飲酒した日の夜間 アルコールは肝臓の糖放出を抑えます。空きっ腹の飲酒は避け、適量を守る
入浴前後、就寝前 血糖が下がりやすい方は就寝前の血糖確認・補食を検討
お薬が増えた・変わった直後 変更後1〜2週間は体調の変化に注意し、気になる症状は早めに報告

症例イメージ②|60代男性・会社員(HbA1c 8.2%・BMI 27)

健診をきっかけに当院で治療を開始し、涼しくなった9月から一念発起して毎晩1時間のウォーキングを開始。ところが開始1週間後の夜中、強い空腹感と冷や汗で目が覚めました。運動はとても良い取り組みですが、運動の効果で血糖が下がりやすくなった分、お薬が相対的に効きすぎた状態です。このような場合、運動をやめるのではなく、お薬の量を調整して運動を続けていただくのが正解です。自己判断で服薬を中断せず、必ずご相談ください。

なお、低血糖を恐れるあまり血糖を高めに放置するのも、合併症の観点からは望ましくありません。特にご高齢の方では、年齢や認知機能に応じて「下げすぎない」HbA1c目標(下限値)が設定されています。詳しくは先日の記事「高齢者の糖尿病は「下げすぎ」にもご注意を」をご覧ください。

車を運転される方へ——運転前の血糖確認を習慣に

運転中の低血糖は、ご自身だけでなく周囲の方の安全にも関わります。インスリンやSU薬で治療中の方は、運転前に血糖を確認する・車内に必ずブドウ糖を常備する・少しでも「おかしい」と感じたらすぐ安全な場所に停車することを習慣にしてください。長距離運転では2時間ごとの休憩と補食が安心です。無自覚性低血糖がある方は、運転の可否も含めて必ず主治医とご相談ください。

当院でできること——低血糖を防ぐ「ちょうどよい」血糖コントロール

竹内内科小児科医院(東急東横線・目黒線 多摩川駅 徒歩5分)では、糖尿病内科・代謝内科として、低血糖を起こしにくいお薬選びと、患者さんお一人おひとりの生活に合わせた血糖コントロールを大切にしております。院内でHbA1c・血糖の迅速測定が可能ですので、結果を当日にご説明しながら治療方針をご相談できます。管理栄養士による栄養相談では、低血糖を防ぐ食事のタイミングや補食の工夫も具体的にお伝えしています。

また、内科と小児科を併設しているため、ご本人の糖尿病治療とご家族の体調管理をまとめてご相談いただけるのも当院の特長です。土曜午前も診療しておりますので、平日お忙しい会社員の方もご利用ください。

受診前チェックリスト|こんな方はご相談ください

□ 冷や汗・動悸・手の震えなど、低血糖と思われる症状を経験したことがある

□ 低血糖のサインを以前より感じにくくなった気がする

□ 自分のお薬が低血糖を起こしやすいタイプか分からない

□ 運動を始めた・食事量が変わったのに、お薬はそのままになっている

□ 食事がとれないとき(シックデイ)のお薬の扱いを決めていない

関連記事|竹内内科小児科医院(田園調布)

【2026年秋】糖尿病のお薬はどう選ばれる?|9系統の飲み薬と注射薬の特徴・使い分け
低血糖を起こしやすいお薬・起こしにくいお薬の違いはこちらで詳しく解説しています
【2026年秋・敬老の日】高齢者の糖尿病は「下げすぎ」にもご注意を
年齢・認知機能で変わるHbA1c目標と低血糖・フレイル対策
糖尿病の方の旅行・帰省ガイド|お薬・インスリンの持ち運びと「シックデイ」の備え
食事がとれない日のお薬の扱い(シックデイルール)はこちらも参考に

関連ページ|五良会クリニック白金高輪(港区)

糖尿病内科のご案内|五良会クリニック白金高輪
港区方面にお勤め・お住まいの方は、姉妹院の糖尿病内科でも同様の診療をご利用いただけます

関連ページ|五良ファミリークリニック センター南(横浜市都筑区)

糖尿病と上手につきあう〜HbA1c・薬物療法・合併症予防まで〜
高齢者糖尿病・認知症外来にも対応するグループ院の糖尿病解説記事です

五良会グループでは、田園調布の竹内内科小児科医院、港区の五良会クリニック白金高輪、横浜市都筑区の五良ファミリークリニック センター南の医師が連携しております。患者さまの転居やライフスタイルの変化に合わせて、同じグループ内で継続診療が受けられる体制を整えております。

参考文献

  1. 日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病診療ガイドライン2024. 南江堂; 2024.
  2. 日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病治療ガイド2024. 文光堂; 2024.
  3. 日本糖尿病学会・日本老年医学会 編・著. 高齢者糖尿病診療ガイドライン2023. 南江堂; 2023.
  4. 糖尿病情報センター「低血糖」 https://dmic.jihs.go.jp/(2026年9月閲覧)
  5. 日本イーライリリー株式会社. バクスミー点鼻粉末剤3mg 添付文書(2020年3月承認・同年10月発売、PMDA掲載)(2026年9月閲覧)
GORYOKAI GROUP
竹内内科小児科医院

内科 小児科 糖尿病内科 代謝内科 アレルギー科
皮膚科 生活習慣病 訪問診療 心療内科 健康診断

〒145-0072 東京都大田区田園調布本町40-12 コンド田園調布2階

東急東横線・目黒線 多摩川駅 徒歩5分

土曜午前も診療
診療時間 日祝
午前
9:00-12:00
午後
15:30-19:00

CLINICS
WEB予約

melmo
WEB問診


LINE


TEL

竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医

Author: 五藤 良将