皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。
秋は、春から夏にかけて受けた健康診断や人間ドックの結果が手元に届き、「そういえば血糖値のところにマークが付いていたな」と気になり始める季節です。当院でも9月に入ってから、「健診で血糖値が高めと言われました」「HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)という数値が引っかかったのですが、私は糖尿病なのでしょうか?」というご相談が増えてまいりました。
実は、「血糖値が高め=すぐに糖尿病」というわけではありません。糖尿病の診断には、日本糖尿病学会が定めた明確な診断基準と診断の手順があります。今回のブログでは、日本糖尿病学会『糖尿病診療ガイドライン2024』に基づき、「糖尿病型」「境界型」という言葉の意味、1回の検査で診断がつく場合とつかない場合、そして精密検査として行われる75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)まで、健診結果を手にした方が知りたいポイントをやさしく解説いたします。
当院の健診結果フォローシリーズとして、これまでLDLコレステロール、中性脂肪、eGFR(腎機能)などを取り上げてまいりました。今回はその「血糖」編です。
目次
健診の「血糖値」と「HbA1c」は何が違う?
健診結果の「糖代謝」の欄には、多くの場合血糖値(血漿グルコース値)とHbA1cの2つが並んでいます。この2つは、どちらも血糖の状態を表しますが、見ている「時間の長さ」がまったく違います。
| 検査項目 | 何を見ているか | 特徴 |
|---|---|---|
| 血糖値 | 採血したその瞬間の血液中のブドウ糖の濃度 | 食事や運動、ストレスで大きく変動する。「空腹時」か「食後(随時)」かで意味が変わる |
| HbA1c | 過去1〜2か月間の血糖の平均的な状態 | 直前の食事の影響を受けにくい。「血糖の通信簿」のような指標 |
たとえるなら、血糖値は「今日この瞬間の気温」、HbA1cは「この1〜2か月の平均気温」です。ですから、健診前日に食事を控えて血糖値だけ良く見えても、HbA1cが高ければ、ふだんの血糖が高めであることが分かってしまいます。糖尿病の診断では、この2つを組み合わせて判定することが大きなポイントになります。
糖尿病の診断基準|4つの「糖尿病型」
日本糖尿病学会『糖尿病診療ガイドライン2024』では、次の4つのうちいずれか1つを満たすと「糖尿病型」と判定されます。
| 検査 | 「糖尿病型」の基準値 |
|---|---|
| ① 空腹時血糖値 | 126 mg/dL 以上 |
| ② 75gOGTT(ブドウ糖負荷試験)2時間値 | 200 mg/dL 以上 |
| ③ 随時血糖値(食事と関係なく測った血糖値) | 200 mg/dL 以上 |
| ④ HbA1c | 6.5% 以上 |
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ポイント|「糖尿病型」=「糖尿病と診断」ではありません ① 血糖値とHbA1cは別扱い:①〜③の「血糖値」と、④の「HbA1c」は、診断のうえで役割が異なります。HbA1cだけが何回高くても、それだけでは糖尿病と診断されません。 ② 原則は「2回の確認」:糖尿病の診断には、原則として別の日にもう一度検査を行い、糖尿病型が再現されることを確認します。ただし、次の章のように1回で診断が確定する場合もあります。 |
診断の流れ|1回で診断がつく場合・再検査が必要な場合
「では、私はいつ診断が決まるの?」という疑問にお答えするため、診断の流れを図解でご紹介します。
メカニズム図解|糖尿病診断の流れ
| 同じ日の採血で「血糖値」と「HbA1c」が両方とも糖尿病型:その1回の検査で糖尿病と診断されます。 | |
| 血糖値が糖尿病型で、のどの渇き・多飲・多尿・体重減少などの典型的な症状、または確実な糖尿病網膜症がある:この場合も1回で糖尿病と診断されます。 | |
| 血糖値またはHbA1cの一方だけが糖尿病型:この段階では「糖尿病疑い」です。なるべく早めに(目安として3〜6か月以内に)別の日に再検査を行い、判定します。 | |
| 過去に糖尿病型・治療歴が確認できる場合:現在の数値が基準未満でも、糖尿病として経過をみることがあります。「昔言われたけれど今は大丈夫」と自己判断しないことが大切です。 |
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健診で「要精密検査」「要医療」となった方へ 健診はあくまで「スクリーニング(ふるい分け)」です。診断を確定し、治療が必要かどうかを判断するには、医療機関での再検査が欠かせません。放置している間にも高血糖は静かに血管を傷つけていきます。症状がないうちに受診することこそ、健診を受けた意味を活かす一番の方法です。 |
「境界型」と言われたら|75g糖負荷試験(OGTT)とは
血糖値が「正常型」にも「糖尿病型」にも当てはまらない場合は「境界型」と判定されます。いわゆる「糖尿病予備群」と呼ばれる状態です。判定には、ブドウ糖75gを溶かした甘い検査用の飲料を飲み、飲む前・30分後・1時間後・2時間後などの血糖値を測る75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)が用いられます。
| 判定区分 | 空腹時血糖値 | 75gOGTT 2時間値 |
|---|---|---|
| 正常型 | 110 mg/dL 未満 | 140 mg/dL 未満 |
| 境界型 | 110〜125 mg/dL | 140〜199 mg/dL |
| 糖尿病型 | 126 mg/dL 以上 | 200 mg/dL 以上 |
また、空腹時血糖値が100〜109 mg/dLは正常域の中でも「正常高値」と呼ばれ、将来糖尿病に進む方が含まれやすいため、ガイドラインでは75gOGTTを積極的に行うことが勧められています。「健診では基準値内だったのに、精密検査をしたら食後の血糖値だけが高い『隠れ糖尿病(食後高血糖)』が見つかった」というケースは、実際の外来でも少なくありません。
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重要|「境界型=セーフ」ではありません ・境界型の方は、正常型の方に比べて糖尿病へ進行しやすいことが知られています。 ・境界型の段階から、動脈硬化(心筋梗塞・脳梗塞のリスク)はすでに進み始めるとされています。 ・一方で、境界型は食事・運動などの生活習慣の見直しで改善が期待できる大切なタイミングでもあります。 |
健診後の受診イメージ|2つのモデルケース
イメージしていただきやすいよう、当院の外来でよくお会いするような患者さん像をもとにした架空のモデルケースを2つご紹介します(実在の患者さんの事例ではありません)。
ケース1:52歳男性・会社員Aさん(空腹時血糖118・HbA1c 6.2%)
デスクワーク中心で、BMI 26とやや肥満気味のAさん。健診で空腹時血糖118 mg/dL、HbA1c 6.2%で「要精密検査」となりました。どちらも糖尿病型(126以上/6.5%以上)には達していませんが、空腹時血糖は境界型の範囲です。外来では75gOGTTを行い、2時間値が168 mg/dLと分かり「境界型」と判定。この段階ではお薬は使わず、食事の順番の工夫、通勤での速歩き、体重3%減を目標にした生活改善を開始し、3〜6か月ごとに経過をみる方針となりました。
ケース2:64歳女性Bさん(HbA1c 7.8%・随時血糖215・のどの渇きあり)
数か月前からのどが渇いて水をよく飲む、夜中にトイレに起きる、といった症状があったBさん。健診でHbA1c 7.8%を指摘され受診されました。当日の随時血糖は215 mg/dL。血糖値とHbA1cが同じ日にどちらも糖尿病型であり、典型的な高血糖症状もあるため、この時点で2型糖尿病と診断されました。合併症の評価(眼底・尿検査など)を行いながら、食事・運動療法とお薬による治療を開始し、症状は落ち着いていきました。
このように、同じ「健診で血糖の異常を指摘された」方でも、数値の組み合わせや症状によって、その後の流れは大きく異なります。ご自身の結果がどのパターンに当たるのか、ぜひ健診結果の紙をお持ちのうえご相談ください。
診断された後・境界型だった後の「次の一歩」
糖尿病と診断された場合も、過度に悲観する必要はありません。現在の糖尿病治療の目標は、血糖・血圧・脂質・体重をトータルに管理して合併症を防ぎ、健康な方と変わらない生活の質と寿命を保つことです。血糖コントロールの目安としては、合併症予防の観点からHbA1c 7.0%未満が一つの目標とされますが、年齢や病状に応じて目標は一人ひとり個別に設定します(高齢の方の「下げすぎ」の注意については、先日の記事で詳しく解説しています)。
境界型・正常高値だった方にとっては、今が糖尿病を防ぐ絶好のチャンスです。食事の順番(ベジファースト)やゆっくり食べる工夫、1日8,000歩を目安にした速歩き、週2〜3回の筋力トレーニングなど、当院のブログでもご紹介してきた生活習慣の工夫が、境界型の段階では特に効果を発揮しやすいと考えられています。当院では管理栄養士による栄養相談も行っておりますので、「何から始めればよいか分からない」という方もお気軽にご相談ください。
当院でのご相談の流れ・受診チェックリスト
竹内内科小児科医院(東急東横線・目黒線 多摩川駅 徒歩5分)は、糖尿病内科・代謝内科を掲げる地域のかかりつけ医院として、健診後の再検査から診断、食事・運動療法、お薬による治療、合併症のチェック(無散瞳眼底カメラによる眼底チェックなど)まで、一貫して対応しております。土曜午前も診療しておりますので、平日お忙しい会社員の方もご相談いただけます。
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受診前チェックリスト(健診後の血糖のご相談) □ 健診・人間ドックの結果票(できれば過去数年分) □ のどの渇き・多飲・多尿・体重減少・疲れやすさなど、気になる症状のメモ □ ご家族の糖尿病の有無(血縁のご家族に糖尿病の方がいるか) □ 服用中のお薬・お薬手帳(ステロイドなど血糖に影響する薬の確認のため) □ 妊娠中・妊娠の可能性の有無(判定基準が異なるため) |
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ご予約・ご相談はお気軽に 健診結果の用紙を1枚お持ちいただくだけで結構です。「糖尿病かどうかまだ分からない段階」でのご相談こそ歓迎いたします。WEB予約・LINE・お電話(03-3721-5222)にて承っております。詳しくは記事末尾のご案内をご覧ください。 |
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五良会グループでは、田園調布の竹内内科小児科医院と港区の五良会クリニック白金高輪、横浜市都筑区の五良ファミリークリニックセンター南の医師が連携し、糖尿病の診断から治療・合併症管理までを多角的にサポートしております。患者さまの転居やライフスタイルの変化に合わせて、同じグループ内で継続診療が受けられる体制を整えております。
参考文献
- 日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病診療ガイドライン2024. 第1章「糖尿病診断の指針」. 南江堂, 2024. https://www.jds.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=4
- 日本糖尿病学会 糖尿病診断基準に関する調査検討委員会. 糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告(国際標準化対応版). 糖尿病. 2012;55(7):485-504.
- 日本糖尿病・生活習慣病ヒューマンデータ学会. 糖尿病標準診療マニュアル2026(一般診療所・クリニック向け). 2026年3月.
- 厚生労働省. 標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)(2026年9月閲覧)
竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医