【2026年秋】秋の夜長は“睡眠”から整える生活習慣病対策|睡眠不足で血糖・血圧が上がる?睡眠ガイド2023と今夜からできる7つのコツ【田園調布・多摩川】

皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。

9月に入り、田園調布のあたりも朝晩はずいぶん過ごしやすくなってきました。熱帯夜から解放されて「やっと眠れるようになった」という方も多い一方で、涼しくなった秋の夜長につい夜更かしをしてしまい、睡眠時間そのものが削られている方が少なくありません。実は外来で血糖値や血圧のお話をしていると、「眠る時間がなかなか取れなくて…」というお声を働き盛りの方から本当によく伺います。

あまり知られていませんが、睡眠は食事療法・運動療法に並ぶ「生活習慣病対策の第3の柱」です。睡眠不足が続くと、血糖値・血圧・体重はじわじわと悪い方向に動くことが多くの研究で報告されています。今回は、厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」をもとに、睡眠と血糖・血圧の深い関係と、今夜からできる睡眠の整え方をお伝えいたします。

秋は「睡眠を立て直す」絶好のチャンス

今年の夏も記録的な暑さで、エアコンをつけていても眠りが浅い夜が続きました。秋になり気温と湿度が下がると、人の眠りは自然と深くなりやすくなります。つまり秋は、夏の間に乱れた睡眠リズムをリセットするのに一年で最も適した季節なのです。

一方で、涼しく快適な夜はつい夜更かしのもとにもなります。動画やスマートフォンで気づけば深夜1時、それでも出勤時間は変わらないので睡眠は5時間台――そんな生活が続くと、せっかくの「眠りやすい季節」が台無しになってしまいます。健診シーズンの秋を前に、血糖・血圧の数字が気になる方こそ、まず睡眠から見直してみませんか。

睡眠不足で血糖・血圧が上がるメカニズム

「寝不足だと血糖値が上がる」と聞くと意外に思われるかもしれません。しかし体の中では、睡眠不足をきっかけに次のような変化が連鎖的に起こると考えられています。

メカニズム図解|睡眠不足が血糖・血圧を押し上げる流れ

1 交感神経が休まらない:睡眠が足りないと、体を緊張させる交感神経が夜間も優位なままになり、血管が収縮して夜間・早朝の血圧が下がりにくくなります。
2 ストレスホルモンの増加:コルチゾールなどの分泌バランスが乱れ、インスリン(血糖を下げるホルモン)の効きが悪くなります(インスリン抵抗性)。
3 食欲のブレーキが外れる:食欲を抑えるホルモン(レプチン)が減り、食欲を高めるホルモン(グレリン)が増えるため、夜食や甘いものが欲しくなり、体重増加につながりやすくなります。
4 血糖・血圧・体重の三重苦へ:この状態が慢性化すると、高血糖・高血圧・肥満が互いに悪化し合い、動脈硬化(血管の老化)が進みやすい体内環境になってしまいます。

つまり睡眠不足は、「日中に眠い」「集中できない」といった不調だけでなく、検査値の悪化という形で静かに体をむしばむ可能性があるのです。逆にいえば、睡眠を整えることは、お薬を増やさずにできる立派な治療の一部といえます。

何時間眠ればいい?――睡眠ガイド2023の目安

厚生労働省は2024年2月、約10年ぶりに睡眠指針を全面改訂した「健康づくりのための睡眠ガイド2023」を公表しました。世代別の推奨は次のとおりです。

世代 睡眠時間の目安 ポイント
成人 6時間以上を目安に確保 適正な睡眠時間には個人差がある。日中の眠気で不足を判断
高齢者 床上時間(寝床にいる時間)が8時間以上にならないように 長すぎる床上時間はかえって健康リスクに。日中の活動量がカギ
こども 小学生 9〜12時間/中高生 8〜10時間 朝食をとり、日中は運動、夜更かしの習慣化を避ける

日本人の平均睡眠時間は先進国の中でも際立って短く、特に働き盛り世代では6時間未満の方が多いことが指摘されています。「6時間眠れているから大丈夫」ではなく、6時間はあくまで最低ライン。日中に強い眠気がある方は、体が「足りない」とサインを出していると考えてください。

「寝だめ」「夜更かし」と生活習慣病のエビデンス

睡眠と生活習慣病の関係については、国内外で多くの疫学研究が積み重ねられています。

ポイント|研究からわかっていること

① 短い睡眠と糖尿病:睡眠時間が短い人では、十分に眠れている人と比べて2型糖尿病を発症するリスクが高いことが複数の研究の統合解析で報告されています。睡眠の「質」の低下(寝つきの悪さ・中途覚醒)も同様にリスクと関連します。

② 短い睡眠と高血圧:慢性的な睡眠不足は高血圧の発症リスク上昇と関連することが報告されています。本来、血圧は睡眠中に10〜20%下がるものですが、眠りが足りない・浅いとこの「夜間降圧」が起こりにくくなります。

③ 長すぎる睡眠にも注意:睡眠時間と健康リスクの関係は「U字型」で、極端に長い睡眠(あるいは長すぎる床上時間)も生活習慣病や死亡リスクの上昇と関連することが知られています。

④ 週末の「寝だめ」では取り返せない:平日の睡眠不足(睡眠負債)を週末だけで解消するのは難しく、平日と休日の起床時刻の差が大きい生活(社会的時差ボケ)は代謝への悪影響が指摘されています。

誤解しやすいポイント

これらは「よく眠れば糖尿病や高血圧が治る」という意味ではありません。睡眠はあくまで食事・運動・お薬と並ぶ土台のひとつです。すでに治療中の方は、自己判断でお薬を減らしたりせず、睡眠改善は治療と並行して取り組んでいただくことが大切です。

今夜からできる「秋の睡眠」7つのコツ

睡眠ガイド2023では、睡眠時間だけでなく「睡眠休養感(朝起きたときに休まったと感じられるか)」を重視しています。秋の環境を味方につけて、次の7つから始めてみましょう。

今夜からできる7つのコツ

起きる時刻をそろえる:平日も休日も起床時刻の差は2時間以内に。体内時計が整います

朝の光を浴びる:起きたらカーテンを開けて朝日を。秋の澄んだ朝の光は体内時計の強力なリセットボタンです

日中に体を動かす:ウォーキングなど日中の運動は寝つきを良くし、深い睡眠を増やします(スポーツの秋と好相性)

カフェインは夕方まで:コーヒー・緑茶・エナジードリンクは就寝の5〜6時間前を最後に

「寝酒」はしない:お酒は寝つきを良くするように感じても、眠りを浅くし夜間の血圧にも良くありません

寝る前1時間はスマホを手放す:画面の光と情報の刺激は脳を昼モードに引き戻します

夕食は就寝の2〜3時間前まで:遅い夜食は睡眠の質と翌朝の血糖の両方に影響します

全部を一度に行う必要はありません。「起きる時刻をそろえる」と「朝の光」の2つだけでも、2週間ほど続けると眠りのリズムが変わってくる方が多い印象です。血圧手帳や体重と一緒に、「今日は何時間眠れたか」もメモしていただくと、外来でのご相談がぐっと具体的になります。

こんなときはご相談ください(受診の目安)

睡眠時間を確保しても日中の眠気や検査値の悪化が続く場合、背後に治療が必要な病気が隠れていることがあります。

重要|見逃したくないサイン

・大きないびき、睡眠中に呼吸が止まると家族に指摘された(睡眠時無呼吸症候群〈SAS〉の可能性。高血圧・糖尿病を悪化させます)

・しっかり寝ても日中の強い眠気が続く、運転中にうとうとする

・寝つきの悪さ・夜中に何度も目が覚める状態が週3日以上、3か月以上続いている

・脚がむずむずして眠れない、気分の落ち込みで眠れない

・睡眠を整えても家庭血圧や血糖値(HbA1c)が改善しない

当院は内科・糖尿病内科・代謝内科・心療内科を併設しており、血糖・血圧の管理と睡眠のお悩みを同じ窓口でまとめてご相談いただけます。睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、ご自宅でできる簡易検査のご案内や、必要に応じた専門機関との連携も行っております。土曜も午前は診療しておりますので、平日お忙しい働き盛りの方もどうぞご利用ください。

受診前チェックリスト

□ 最近1〜2週間の就寝・起床時刻(おおよそで結構です)

□ 家庭血圧の記録(朝晩の血圧手帳があれば)

□ 健診結果(血糖値・HbA1c・血圧・体重の推移がわかるもの)

□ いびき・無呼吸についてご家族から言われたことの有無

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五良会グループでは、田園調布の竹内内科小児科医院と港区の五良会クリニック白金高輪、横浜市都筑区の五良ファミリークリニックセンター南の医師が連携しております。患者さまの転居やライフスタイルの変化に合わせて、同じグループ内で継続診療が受けられる体制を整えております。

参考文献

  1. 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(2024年2月公表)
  2. 厚生労働省「健康日本21(第三次)」睡眠に関する目標項目
  3. 日本糖尿病学会 編・著『糖尿病診療ガイドライン2024』南江堂
  4. 日本高血圧学会『高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)』
  5. Cappuccio FP, et al. Quantity and quality of sleep and incidence of type 2 diabetes: a systematic review and meta-analysis. Diabetes Care. 2010;33(2):414-420.
  6. Spiegel K, et al. Impact of sleep debt on metabolic and endocrine function. Lancet. 1999;354(9188):1435-1439.

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