【2026年秋・敬老の日】高齢者の糖尿病は「下げすぎ」にもご注意を|年齢・認知機能で変わるHbA1c目標と低血糖・フレイル対策をご家族と【田園調布・多摩川】

皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。

朝晩はずいぶん過ごしやすくなり、まもなく敬老の日(2026年は9月21日)がやってきます。連休にご実家へ帰省し、久しぶりにご両親・祖父母と顔を合わせるという方も多いのではないでしょうか。外来では最近、「親が糖尿病なのですが、この管理で大丈夫でしょうか」「高齢の母のHbA1cはどこまで下げればいいのですか」といった、ご家族の立場からのご相談が増えております。

実は、高齢の方の糖尿病は「若い方の糖尿病の延長」ではありません。日本老年医学会・日本糖尿病学会が合同で作成した「高齢者糖尿病診療ガイドライン2023」では、年齢・認知機能・生活機能に応じて血糖の目標値を柔軟に設定し、「下げすぎによる低血糖」を避けることが強調されています。今回は、敬老の日を前に知っていただきたい高齢者糖尿病の考え方と、ご家族ができる見守りのポイントを、糖尿病内科を専門とする立場からやさしく解説いたします。

高齢者の糖尿病は何が違う?——3つの特徴

わが国の糖尿病患者さんの多くは高齢の方です。加齢にともない、糖尿病は次のような特徴を持つようになります。

特徴 具体的には
① 食後の血糖値が上がりやすい 加齢によりインスリン分泌の反応が遅れ、また筋肉量が減ることで、食後高血糖が目立ちやすくなります。空腹時の採血だけでは見つかりにくいことがあります。
② 低血糖の症状に気づきにくい 冷や汗・動悸といった典型的なサインが出にくく、「なんとなく元気がない」「ぼんやりする」だけのことがあります(詳しくは後述します)。
③ 腎機能の低下でお薬が効きすぎることがある 加齢とともに腎臓の働き(eGFR=推算糸球体濾過量)が下がると、お薬の排泄が遅れ、同じ量でも効きすぎて低血糖を起こしやすくなります。

つまり高齢の方の糖尿病では、「高い血糖」と「下げすぎによる低血糖」の両方に目を配る必要があるのです。ここが、働き盛り世代の糖尿病診療との大きな違いです。

HbA1cの目標は「年齢・認知機能・使っているお薬」で変わる

HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー:過去1〜2か月の血糖の平均を反映する検査値)の目標は、すべての方で一律「7.0%未満」ではありません。高齢者糖尿病診療ガイドライン2023および日本糖尿病学会・日本老年医学会合同委員会の「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標」では、①認知機能、②日常生活動作(ADL:食事・移動・買い物などの生活機能)、③重症低血糖が危惧されるお薬(インスリン製剤、SU薬=スルホニル尿素薬、グリニド薬など)を使っているかどうかの3点で、目標値を細かく分けています。

高齢者(65歳以上)の血糖コントロール目標の考え方

患者さんの状態 低血糖が危惧される薬を
使っていない場合
使っている場合
(インスリン・SU薬など)
カテゴリーI
認知機能が正常で、生活も自立している
7.0%未満 65〜74歳:7.5%未満(下限6.5%)
75歳以上:8.0%未満(下限7.0%)
カテゴリーII
軽度の認知機能低下、または買い物・金銭管理などの手段的ADLに低下がある
7.0%未満 8.0%未満(下限7.0%)
カテゴリーIII
中等度以上の認知症、基本的ADLの低下、多くの併存疾患がある
8.0%未満 8.5%未満(下限7.5%)

※日本糖尿病学会・日本老年医学会合同委員会「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」をもとに作成。実際の目標は、罹病期間・低血糖の危険性・サポート体制などを考慮して主治医が個別に設定します。

ここで注目していただきたいのが、「下限」が設けられている点です。たとえばインスリンやSU薬を使っている75歳以上の方では「8.0%未満、ただし7.0%を下回らないように」が一つの目安になります。つまりガイドラインは、下げれば下げるほど良いわけではない、とはっきり示しているのです。

ポイント|「HbA1c 7.8%」は悪い数字とは限りません

① 目標は人それぞれ:75歳のお母さまの7.8%は、使っているお薬によっては「ちょうど良い」数字かもしれません。数字だけで一喜一憂せず、主治医に「私(親)の目標はいくつですか?」と確認してみてください。

② 下げすぎのサインにも注意:逆にインスリンやSU薬を使っている方でHbA1cが6%台前半の場合、気づかない低血糖が隠れていることがあります。一度主治医にご相談ください。

なぜ「下げすぎ」が危険なのか——気づきにくい低血糖

血糖値が下がりすぎた状態を低血糖といいます。若い方であれば、冷や汗・手のふるえ・強い空腹感・動悸といった「警告サイン」が出て、ご自身で気づいてブドウ糖や甘いものを口にできます。ところが高齢の方では、この警告サインが出にくくなります。

メカニズム図解|高齢者の低血糖が重症化しやすい理由

1 血糖値が下がる:お薬の効きすぎ、食事量の減少、飲酒などがきっかけになります。
2 警告サインが出にくい:加齢により自律神経の反応が弱まり、冷や汗・動悸などの症状が現れにくくなります(無自覚性低血糖)。
3 「元気がない」「ぼんやり」として現れる:頭のはたらきに必要なブドウ糖が足りなくなり、めまい・ろれつが回らない・ボーッとするなど、一見「年のせい」「認知症?」と紛らわしい症状が前面に出ます。
4 気づかれないまま重症化:意識障害・転倒・骨折につながるほか、重症低血糖を繰り返すと認知症や心血管疾患のリスク上昇との関連も報告されています。

重要|こんな様子は「低血糖かも」と疑ってください

・夕方や食事前に、急にぼんやりする・元気がなくなる

・ろれつが回らない、目の焦点が合わない(脳卒中との区別も必要です)

・理由のない不機嫌、いつもと違う言動

・朝、なかなか起きてこない・寝汗がひどい(夜間低血糖の可能性)

糖尿病のお薬を飲んでいる(または注射している)ご高齢の方にこうした様子がみられたら、まずブドウ糖や糖分を含むジュースなどを摂り、繰り返す場合は必ず主治医にご相談ください。お薬の種類や量を調整するだけで、見違えるように元気になる方も少なくありません。自己判断でお薬を中断することは避け、必ず医師と相談しながら調整しましょう。

フレイル・筋肉量低下を防ぐ食事と運動——「粗食が健康」とは限りません

高齢者糖尿病のもう一つの大きなテーマが、フレイル(加齢により心身の活力が低下し、要介護の一歩手前になった状態)とサルコペニア(筋肉量・筋力の低下)です。糖尿病のある方はない方に比べてフレイルになりやすいことが知られており、フレイルが進むと血糖管理も難しくなるという悪循環に陥りがちです。

ここで注意したいのが食事です。働き盛りの糖尿病治療では「食べすぎを控える」ことが中心になりますが、高齢の方が同じ感覚で食事を減らすと、たんぱく質まで不足して筋肉が落ち、かえってフレイルを招くことがあります。「歳をとったら粗食が一番」という思い込みは、高齢者糖尿病では必ずしも当てはまりません。

高齢者糖尿病の食事・運動のポイント

たんぱく質をしっかり:肉・魚・卵・大豆製品・乳製品を毎食に。腎臓の状態によって適量が変わるため、主治医・管理栄養士にご相談を(当院では栄養相談も行っております)

「ベジファースト」+よく噛む:野菜から食べ、ひと口ずつよく噛むことで食後高血糖を抑えます

涼しくなった今こそ散歩:無理のない範囲の速歩き・こまめに立ち上がる習慣が血糖・血圧の改善につながります

スクワットなど軽い筋トレ:椅子からの立ち座り運動は、ご自宅でできる「貯筋」の第一歩です

敬老の日にできる、ご家族の見守りチェック

糖尿病は、ご本人だけでなくご家族の気づきがとても大きな力になる病気です。敬老の日やお彼岸で顔を合わせる機会に、さりげなく次の点を確認してみてください。

敬老の日の見守りチェックリスト

□ お薬手帳を見せてもらう——飲み残しや重複、「いつのものか分からない薬」はありませんか

□ 食事の内容と量——冷蔵庫の中身、同じものばかり食べていないか、食が細くなっていないか

□ 体重の変化——半年で2〜3kg以上減っていたら要注意(フレイルのサイン)

□ 歩き方・ふらつき——ペットボトルのふたが開けにくそうなど、筋力低下のサイン

□ 「ぼんやりする時間帯」がないか——低血糖や脱水が隠れていることがあります

□ 通院状況——「最近は薬だけもらっている」「何か月も検査していない」場合は、一度きちんと評価を

シックデイ(体調不良の日)のルールを家族で共有しましょう

発熱・下痢・食欲不振などで食事がとれない日(シックデイ)は、血糖が大きく乱れ、お薬によっては中止・調整が必要になることがあります。「食べられないときに、どの薬を続けてどの薬を休むか」は自己判断がとても難しいポイントです。あらかじめ主治医に確認し、ご本人・ご家族で紙に書いて共有しておくと安心です。

当院・五良会グループでできるサポート

竹内内科小児科医院(東急東横線・目黒線 多摩川駅徒歩5分)では、糖尿病内科・代謝内科として、高齢の方の糖尿病診療に力を入れております。

・年齢と生活に合わせた「ちょうど良い」目標設定:高齢者糖尿病診療ガイドライン2023に沿って、認知機能・生活機能・使用中のお薬を踏まえた個別の目標をご提案します。お薬が増えすぎている方の「減らす調整」もご相談ください。

・ご家族と一緒の受診を歓迎します:診察室にご家族が同席いただき、お薬や食事のことを一緒に確認していただけます。内科と小児科を併設した地域のかかりつけ医として、お子さまからおじいさま・おばあさままで、ご家族ぐるみで健康をサポートするのが当院の持ち味です。土曜午前も診療しておりますので、働き盛りのご家族が付き添っての受診もしやすくなっております。

・通院が難しくなっても、訪問診療で継続:足腰が弱って通院が負担になってきた方には、訪問診療(往診)でのフォローも行っております。大田区・田園調布周辺で「親の通院が途切れてしまった」とお悩みの方は、一度ご相談ください。

また、五良会グループでは、田園調布の当院と港区の五良会クリニック白金高輪、横浜市都筑区の五良ファミリークリニックセンター南(医療法人社団正友会)が連携しております。白金高輪では持続血糖測定(CGM)を活用した専門的な糖尿病診療や内視鏡・健康診断を、センター南では高齢者糖尿病と認知症を合わせて診る外来を行っており、患者さまのお住まいやライフスタイルに合わせて、同じグループ内で継続診療が受けられる体制を整えております。

受診前チェックリスト(ご家族の付き添い受診の場合)

□ お薬手帳(残っているお薬があれば現物も)

□ 直近の健診結果・他院の検査結果(HbA1c・腎機能の値が分かるもの)

□ 最近の食事・体重・気になる様子のメモ

□ ご本人の「これからどう過ごしたいか」というご希望

高齢のご家族の糖尿病、「今の治療のままで大丈夫?」と思ったら

HbA1cの目標確認・お薬の見直し・フレイル対策まで、糖尿病内科がご家族と一緒に考えます。
WEB予約・LINE・お電話(03-3721-5222)からご予約ください。土曜午前も診療しております。

竹内内科小児科医院|東京都大田区田園調布本町40-12 コンド田園調布2階(多摩川駅 徒歩5分)

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五良会グループでは、田園調布から白金高輪、横浜・センター南まで医師が連携しております。患者さまの転居やライフスタイルの変化に合わせて、同じグループ内で継続診療が受けられる体制を整えております。

参考文献

  1. 日本老年医学会・日本糖尿病学会 編著. 高齢者糖尿病診療ガイドライン2023. 南江堂, 2023年5月.
  2. 日本糖尿病学会・日本老年医学会合同委員会「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」
  3. 日本糖尿病学会 編著. 糖尿病診療ガイドライン2024. 南江堂, 2024.
  4. 日本糖尿病学会 編著. 糖尿病治療ガイド2024. 文光堂, 2024.
  5. 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」(2024年1月公表)

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竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医

Author: 五藤 良将