皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。
秋の健診結果が届くこの時期、外来では「中性脂肪にだけ『要再検査』の印がついていたけれど、お昼を食べたあとの採血だったので気にしなくていいですか?」というご相談を多くいただきます。これから忘年会・新年会が続く季節でもあり、そのまま年を越してしまう方も少なくありません。
結論からお伝えします。中性脂肪(トリグリセライド:TG)は、10時間以上の絶食後なら150mg/dL以上、食後など「随時」の採血でも175mg/dL以上であれば、「高トリグリセライド血症」と判断されます。つまり「食後だったから高く出ただけ」とは言い切れず、随時で175mg/dLを超えていたら、一度は空腹時の再検査を受けていただくことをおすすめします。また、500mg/dL以上では急性膵炎(すいえん)のリスクが高まるため、早めの受診が必要です。
この記事では、日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」と、2024年度から始まった第4期特定健診の基準をもとに、健診で中性脂肪が高かった方が「次に何をすればよいか」を整理いたします。
THIS ARTICLE IS WRITTEN AND SUPERVISED BY
竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医
日本温泉気候物理医学会 温泉療法医・温泉療法専門医
この記事は五藤良将が執筆・監修し、内容に責任を持っています。
目次
「空腹時150」と「随時175」——基準が2つある理由
中性脂肪は、食事でとった脂質や、余ったエネルギー(糖質・アルコール)から肝臓で作られる脂肪で、体のエネルギー源として使われます。ほかの検査項目と違い、食事の影響を大きく受け、食後数時間は上がるのが特徴です。
そのため以前は「空腹時の値」だけで判定するのが原則でした。しかし実際には、会社の健診や人間ドックが午後に行われたり、朝食をとってから受診されたりすることも少なくありません。そこで動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版では、空腹時に加えて「随時(食後を含む)」の基準が新たに設けられました。特定健診(いわゆるメタボ健診)でも、2024年4月1日以降の健診から、随時中性脂肪175mg/dL以上が特定保健指導の対象者を選ぶ脂質の基準として用いられるようになっています。
| 採血のタイミング | 定義 | 高トリグリセライド血症の基準 |
|---|---|---|
| 空腹時 | 10時間以上の絶食後(水やお茶などカロリーのない水分は可) | 150mg/dL以上 |
| 随時 | 上記の「空腹時」にあてはまらない採血(食後を含む) | 175mg/dL以上 |
| 注意が必要な高値 | 採血のタイミングにかかわらず | 500mg/dL以上で急性膵炎のリスクが高まる |
ポイントは、随時の基準(175)は「食後なら多少高くて当然」という甘めの基準ではないことです。日本人の疫学データから、食後の値でも175mg/dL以上の方は将来の心血管病(心筋梗塞など)が多いことが分かっており、その値が線引きになっています。一方で、随時で150〜174mg/dLの方は、ガイドライン上は「高トリグリセライド血症」には当たりません。
|
用語解説|レムナント・non-HDLコレステロールとは ① リポたんぱく:中性脂肪やコレステロールは水に溶けないため、たんぱく質の「カプセル」に包まれて血液中を運ばれます。食事由来の脂肪を運ぶのがカイロミクロン、肝臓で作られた脂肪を運ぶのがVLDLです。 ② レムナント:カイロミクロンやVLDLが中性脂肪を手放したあとの「燃えかす(残り物)」のような粒子です。血管の壁に入り込みやすく、中性脂肪が高い方ではレムナントが増え、動脈硬化を進めると考えられています。 ③ non-HDLコレステロール:総コレステロールからHDL(善玉)コレステロールを引いた値で、LDLに加えてレムナントなど「動脈硬化を起こしやすい粒子」をまとめて表します。食後でも評価でき、ガイドラインではLDLの目標値+30mg/dLが目標とされています。 |
架空のケースで考える:食後採血でTG 268mg/dLだった50代男性
ここで、当院の外来でよくお会いするような方をイメージした架空のケース(実在の患者さんではありません)で考えてみます。
| 項目 | 内容(架空) |
|---|---|
| 年齢・背景 | 50代男性・会社員。平日は外食中心、週4日ほどビールと焼酎 |
| 体格 | BMI 26.5、腹囲 91cm(ここ5年で体重が約5kg増加) |
| 健診結果(昼食3時間後の採血) | 中性脂肪 268mg/dL、HDL 38mg/dL、LDL 128mg/dL、γ-GTP 85U/L、HbA1c 5.9% |
この方は随時採血で175mg/dLを大きく超えており、HDLコレステロールも低めです。さらに腹囲・お酒・γ-GTP・HbA1cを合わせて考えると、中性脂肪だけの問題ではなく、内臓脂肪・脂肪肝・血糖の上がりやすさが重なった状態が疑われます。このような場合、当院では空腹時の再検査で脂質を確認すると同時に、肝機能・血糖・尿酸・腎機能なども一緒に評価し、生活のどこから手をつけるかをご相談します。
中性脂肪が高いと、何が困るのか
中性脂肪が高くても、ほとんどの場合自覚症状はありません。それでも放置しないほうがよい理由は、大きく2つあります。
① 動脈硬化を進める(長い時間をかけて)
高トリグリセライド血症では、前述のレムナントが増え、HDL(善玉)コレステロールが下がり、LDLが小さく血管に入り込みやすい形(小型高密度LDL)に変化しやすくなります。その結果、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まることが知られています。メタボリックシンドロームや2型糖尿病、脂肪肝(MASLD:代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)と一緒にみられることも多い検査値です。
② 急性膵炎を起こすことがある(とても高い場合)
|
注意|中性脂肪500mg/dL以上は「急性膵炎」の予防が優先です 急性膵炎とは、膵臓(すいぞう)が自分の消化酵素で炎症を起こす病気で、強いみぞおちの痛みや背中の痛み、吐き気をともないます。中性脂肪が500mg/dL以上になると急性膵炎のリスクが高まるとされ、この段階では動脈硬化予防よりも、まず中性脂肪を下げることが優先されます。 特に、大量の飲酒・脂っこい食事が重なる年末年始は、もともと高い中性脂肪がさらに跳ね上がりやすい時期です。健診で500mg/dL以上だった方は、忘年会シーズンの前に必ず一度ご相談ください。 |
再検査の受け方——「前日の夜」から準備が始まります
中性脂肪の再検査は、正確に評価するために空腹時(10時間以上の絶食後)に受けていただくのが基本です。また、LDLコレステロールを計算式(フリードワルド式)で求める場合、この式は空腹時で中性脂肪400mg/dL未満のときにしか使えないため、空腹時の採血には「LDLを正しく出す」という意味もあります。
| タイミング | やること | 根拠 |
|---|---|---|
| 前日の夕食 | 普段どおりの量で、21時ごろまでに済ませる | 翌朝9時の採血で10時間以上の絶食を確保するため |
| 前日のお酒 | できれば控える | 当院からのご提案(アルコールは中性脂肪を上げるため、普段の状態を見たい場合) |
| 当日の朝 | 朝食・ジュース・砂糖やミルク入りのコーヒーはとらない。水・お茶は可 | ガイドラインの「空腹時」の定義 |
| 持病のお薬 | 血糖を下げるお薬・インスリンを使っている方は、朝の服用・注射を事前に医師と相談 | 絶食中の低血糖を防ぐため |
なお、随時の値で十分に判断できる場合や、仕事の都合で空腹時の受診が難しい場合は、随時の採血で中性脂肪とnon-HDLコレステロールを評価する方法もあります。ご事情に合わせて相談しながら決めましょう。
忘年会シーズンに見直したい3つの生活習慣
中性脂肪は、生活習慣の影響が数値に表れやすい検査です。特にこれからの季節は、次の3点を意識していただくことをおすすめします。
① お酒は「量」と「回数」を決めておく
アルコールは肝臓での中性脂肪の合成を増やします。厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」(2024年2月)では、生活習慣病のリスクを高める飲酒量を1日あたり純アルコール量で男性40g以上、女性20g以上としています(ビール中瓶1本=約20g)。中性脂肪が高い方は、これより少ない量でも上がることがあり、500mg/dL以上の方では原則として禁酒をおすすめしています。
② 甘い飲み物・果物・〆の炭水化物に注意
中性脂肪は脂っこいものだけでなく、糖質、特に果糖(ジュース・清涼飲料水・果物・お菓子)の取りすぎでも上がります。宴会の「〆のラーメン」や、帰宅後の甘いものは控えめにしましょう。一方、青魚(サバ・イワシ・サンマなど)に多いn-3系脂肪酸(EPA・DHA)は中性脂肪を下げる方向に働くため、肉料理に偏らない献立がおすすめです。
③ 体重3%減と、日々の有酸素運動
内臓脂肪型肥満のある方では、体重の3%程度の減量でも中性脂肪などが改善しやすいとされています。寒い季節は外出が減りがちですが、通勤で一駅歩く、多摩川沿いを早歩きするなど、1日合計30分程度の有酸素運動を目安にしてください。持病のある方は、運動を始める前にご相談ください。
お薬はどんなときに検討する?
中性脂肪が高いと分かっても、多くの方はまず食事・運動・お酒の見直しから始めます。そのうえで、ガイドラインや専門家の解説では次のような考え方が示されています。
| 状況 | 基本的な考え方 |
|---|---|
| LDLコレステロールも高い | まずスタチンでLDLを下げることを優先し、そのうえでnon-HDLが目標に届かない場合に中性脂肪を下げる治療を検討 |
| 生活改善後も中性脂肪が高い | フィブラート系薬(ペマフィブラートなど)やn-3系脂肪酸製剤(EPA製剤など)を、動脈硬化のリスクや腎機能を見ながら検討 |
| 500mg/dL以上 | 急性膵炎の予防を優先。禁酒・脂質制限とあわせて、お薬による治療を早めに検討 |
お薬にはそれぞれ向いていない方や注意点もあります。たとえばフィブラート系薬は腎機能によって使えない・量を調整する必要があることがあり、スタチンとの併用時には筋肉の症状に注意します。また、ペマフィブラートについては、中性脂肪は下げるものの心血管イベントを減らす効果は大規模試験(PROMINENT試験)で示されなかったという報告もあります。中性脂肪の数値だけでなく、その方全体の動脈硬化リスクを見て、お薬が本当に必要かを一緒に判断することが大切です。なお、これらはいずれも保険診療として脂質異常症に対して処方されるお薬で、ダイエットや美容目的で使うものではありません。
|
重要|すぐに受診・救急相談が必要なサイン ・中性脂肪が高いと言われている方で、みぞおちから背中に抜けるような強い痛みが続く ・飲酒や脂っこい食事のあとに、吐き気・嘔吐をともなう腹痛がある ・前かがみになると少し楽になる腹痛がある(急性膵炎でみられることがあります) |
受診・相談前に確認しておくこと
|
受診前チェックリスト □ 今年の健診結果(中性脂肪・HDL・LDL・γ-GTP・HbA1c・尿酸・eGFR)と、可能なら過去2〜3年分 □ 健診の採血が「空腹時」か「食後」か(何時に何を食べたか分かればメモ) □ お薬手帳(ステロイド・女性ホルモン剤・一部の降圧薬なども中性脂肪に影響することがあります) □ 1週間の飲酒量(種類と量)と、甘い飲み物・間食の頻度 □ ご家族(親・きょうだい)に脂質異常症・心筋梗塞・膵炎の方がいるか □ 空腹時の再検査を希望する場合は、前日21時以降は絶食で、午前中に来院 |
まとめ
- 中性脂肪の基準は空腹時150mg/dL以上、随時(食後を含む)175mg/dL以上。「食後だったから大丈夫」とは限りません。
- 2024年4月以降の特定健診でも、随時中性脂肪175mg/dL以上が保健指導の基準に用いられています。
- 500mg/dL以上は急性膵炎のリスクがあり、忘年会シーズン前の受診をおすすめします。
- 再検査は10時間以上の絶食後が基本。前日21時までに夕食を済ませ、水・お茶はOKです。
- 治療の基本はお酒・糖質・体重の見直し。お薬は、全体の動脈硬化リスクを見て必要性を判断します。
竹内内科小児科医院で診るという選択(当院が選ばれる理由)
中性脂肪の異常は、血糖・肝臓・尿酸・血圧と一緒に考えることで、はじめて「どこから手をつけるか」が見えてきます。当院では、健診結果を持ってご来院いただいた方に、次のような体制で対応しております。
理由① 生活習慣病・代謝の診療
日本糖尿病協会登録医・日本抗加齢医学会専門医の院長が、脂質・血糖・肝機能・尿酸をまとめて評価します。
理由② ご家族そろって受診できる
内科と小児科を併設。脂質異常症にはご家族で体質が似る型もあり、お子さまの健診結果も同じ窓口でご相談いただけます。
理由③ 土曜午前も診療・駅から徒歩5分
空腹時の再検査は午前の受診が便利です。多摩川駅から徒歩5分、平日に加えて土曜午前も診療しています。
理由④ 五良会グループの連携
脂肪肝の精査や膵臓・消化器の内視鏡検査が必要な場合は、姉妹院の五良会クリニック白金高輪へ切れ目なくご紹介します。
理由⑤ 訪問診療・地域密着
2019年の継承以来、田園調布・多摩川エリアで診療を続けています。通院が難しい方には訪問診療にも対応しています。
健診で中性脂肪が高かった方は、年末年始の前に一度ご相談ください。
健診結果とお薬手帳をお持ちください。空腹時の再検査は午前中のご来院がおすすめです。
この記事の執筆医師 / AUTHOR / SUPERVISOR
竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将(ごとう よしまさ)
- 防衛医科大学校 医学部 卒業(27期)。防衛医科大学校病院、自衛隊中央病院、自衛隊横須賀病院ほかで臨床経験を積む
- 医療法人社団 五良会(竹内内科小児科医院・五良会クリニック白金高輪)理事長/医療法人社団 正友会(五良ファミリークリニックセンター南)理事長/竹内内科小児科医院 院長
- 日本内科学会 認定内科医/日本抗加齢医学会 専門医/日本糖尿病協会 登録医/日本旅行医学会 認定医
- 日本温泉気候物理医学会 温泉療法医・温泉療法専門医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/難病指定医
- 所属学会:日本内科学会、日本糖尿病学会、日本アレルギー学会、日本東洋医学会、日本リウマチ学会、日本外来小児科学会、日本抗加齢医学会、日本睡眠学会、日本美容内科学会、日本旅行医学会 ほか
- 著書『あぶら落とすスープ』(アスコム)。NHK・TBS・フジテレビ・日本テレビ・テレビ朝日などテレビ・メディア出演多数
執筆・監修責任について
本記事も院長の五藤良将が執筆・監修しています。公的機関の発表・国内外の診療ガイドライン・査読済み論文を確認したうえで作成しており、内容は公開時点の情報に基づくものです。新しい知見やガイドラインの改訂があった場合は、こちらで記事を更新します。
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個々の患者さんの診断・治療に代わるものではありません。症状や治療のご判断については、必ず医師にご相談ください。記載内容について気になる点がございましたら、竹内内科小児科医院(03-3721-5222)までお知らせください。
|
関連記事|竹内内科小児科医院(田園調布)
|
|
関連記事|五良会グループ(白金高輪・センター南)
|
五良会グループでは、田園調布の竹内内科小児科医院、港区の五良会クリニック白金高輪、横浜市都筑区の五良ファミリークリニックセンター南が連携しております。患者さまの転居やライフスタイルの変化に合わせて、同じグループ内で継続診療が受けられる体制を整えております。
参考文献
- 日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」(2022年7月発行)
- 厚生労働省「特定健康診査及び特定保健指導の実施に関する基準」改正告示(令和6年4月1日適用;随時中性脂肪175mg/dL以上の規定) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001081393.pdf (2026年11月閲覧)
- 厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」(2024年2月公表)
- 日本医事新報社 Web医事新報「高トリグリセライド血症」(私の治療)2025年5月22日登録・2026年2月21日更新
- 日本医事新報社 Web医事新報「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版における高TG血症の基準」2023年8月25日登録・2026年2月21日更新
- Das Pradhan A, et al. Triglyceride Lowering with Pemafibrate to Reduce Cardiovascular Risk (PROMINENT). N Engl J Med. 2022;387(21):1923-1934.
竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医・日本温泉気候物理医学会 温泉療法医・温泉療法専門医