【2026年夏】健診で「ALT・γ-GTP高値」「脂肪肝」と言われたら|新しい病名「MASLD」と夏の生活改善【田園調布・多摩川】

皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。

夏の健康診断の結果が手元に届く時期になりました。当院でも8月に入ってから、「健診で肝機能の数値(ALT・AST・γ-GTP)が高いと言われた」「腹部エコーで脂肪肝を指摘された」というご相談が増えています。お酒をほとんど飲まない方でも脂肪肝になることをご存じでしょうか。

実は「脂肪肝」の医学的な呼び名は近年大きく変わり、2024年8月に日本消化器病学会・日本肝臓学会が新しい日本語病名「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD:マッスルディー)」を正式に決定しました。さらに、最新の「MASLD診療ガイドライン2026(改訂第3版)」では、脂肪肝は肝臓だけの問題ではなく、糖尿病・心臓病・慢性腎臓病(CKD)とも深く関わる“全身の病気”として位置づけられています。今回はこの最新の知見と、日本肝臓学会の「奈良宣言2023」をもとに、健診で肝機能異常・脂肪肝を指摘されたときの考え方と、夏ならではの注意点・生活改善のコツを、田園調布・多摩川エリアの皆さまに分かりやすくお伝えいたします。

健診の「肝機能」の項目、どう読む?――ALTが30を超えたら受診を(奈良宣言2023)

健康診断の血液検査には、肝臓に関わる代表的な3つの項目があります。まずはそれぞれの意味を確認しましょう。

検査項目 主な意味 高くなる主な原因
ALT(GPT) 主に肝細胞に含まれる酵素。肝細胞が壊れると血液中に漏れ出します 脂肪肝、ウイルス性肝炎、薬剤性肝障害など
AST(GOT) 肝臓のほか心臓・筋肉にも含まれる酵素 肝障害のほか、筋肉の障害や激しい運動でも上昇
γ-GTP 胆道系の酵素。飲酒の影響を受けやすい 飲酒、脂肪肝、胆石・胆道の病気、薬剤など

このうち特に注目していただきたいのがALTです。2023年6月、日本肝臓学会は「奈良宣言2023」を発表し、「ALTが30 U/Lを超えていたら、かかりつけ医を受診しましょう」という分かりやすい行動目標を全国に呼びかけました。

奈良宣言2023(日本肝臓学会)のポイント

・健診でALT値が30 U/Lを超えていたら、まずかかりつけ医へ相談を

・「基準値内だから」「自覚症状がないから」と放置しないことが大切です

・肝臓は「沈黙の臓器」――かなり進行するまで症状が出にくいため、数値の異常が唯一のサインであることが少なくありません

「要経過観察」と書かれていると、つい安心して健診結果を引き出しにしまってしまいがちですが、ALT 30超えは肝臓からの早期のSOSと考えて、一度医療機関でご相談いただくことをおすすめいたします。

「脂肪肝」の新しい病名「MASLD」とは?――お酒を飲まなくてもなる脂肪肝

脂肪肝とは、肝臓の細胞に中性脂肪が過剰にたまった状態です。日本では健診受診者の約3割に脂肪肝が指摘されるという報告もあり、決してめずらしい病気ではありません。

かつて、お酒をあまり飲まない方の脂肪肝は「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:ナッフルディー)」と呼ばれていました。しかし国際的な病名変更を受けて、2024年8月に日本消化器病学会・日本肝臓学会が新しい日本語病名を決定し、現在は「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)」と呼ばれています。進行した肝炎を伴うタイプは「代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH:マッシュ)」です。

なぜ「代謝機能障害関連」という名前になったのか

新しい名前の最大のポイントは、「お酒を飲まない人の脂肪肝」という“除外”の定義から、「肥満・血糖・血圧・脂質などの代謝の乱れ(心代謝リスク因子)に関連して起こる脂肪肝」という“原因に注目した”定義に変わったことです。つまりMASLDは、当院が日ごろ診療しているメタボリックシンドローム・糖尿病・脂質異常症・高血圧と地続きの病気だということが、名前そのものに示されたのです。

ポイント|MASLDの診断の考え方

① 肝臓に脂肪がたまっている:腹部エコー(超音波)検査などで確認します

② 心代謝リスク因子が1つ以上ある:肥満・腹囲、血糖高値、血圧高値、中性脂肪高値、HDLコレステロール低値など

③ 飲酒量が一定未満:純アルコール換算で男性30g/日・女性20g/日未満が目安(それ以上の飲酒がある場合は別の分類で評価します)

「お酒は付き合い程度なのに脂肪肝と言われた」という方は、まさにこのMASLDの可能性があります。やせ型の方でも、遺伝的体質や筋肉量の少なさなどを背景に脂肪肝になることがあり、「太っていないから大丈夫」とは言い切れません。

なぜ放置してはいけないのか――肝硬変・肝がんだけでなく“全身”に影響

脂肪肝は「よくあるもの」と軽く考えられがちですが、一部の方では肝臓の炎症と線維化(肝臓が硬くなること)が静かに進行します。

メカニズム図解|脂肪肝が進行するステップ

1 脂肪肝(MASLD):肝細胞に中性脂肪が蓄積。この段階では自覚症状はほぼありません
2 脂肪肝炎(MASH):たまった脂肪に炎症が加わり、肝細胞が壊れ続けます(ALT上昇)
3 線維化の進行:壊れた部分が“かさぶた”のように置き換わり、肝臓が徐々に硬くなります
4 肝硬変・肝がん:進行すると元に戻すことが難しくなります。だからこそ早期発見・早期対策が重要です

さらに、「MASLD診療ガイドライン2026(改訂第3版)」では、MASLDは肝臓の病気であると同時に、心血管疾患(心筋梗塞・脳卒中)、2型糖尿病、慢性腎臓病(CKD)のリスクとも関連する全身の病気として再定義されました。実際、MASLDの方の死因としては肝臓の病気そのものより心血管疾患が多いことが知られています。脂肪肝への対策は、肝臓だけでなく心臓・血管・腎臓を含めた全身を守る取り組みでもあるのです。

重要|こんな場合は早めに医療機関へ

・ALTが30 U/Lを超えている、または年々上昇している

・脂肪肝の指摘に加えて、糖尿病・高血圧・脂質異常症がある

・血小板数の低下を指摘された(線維化進行のサインのことがあります)

・だるさが続く、皮膚や白目が黄色い、おなかが張るなどの症状がある

夏は脂肪肝の“落とし穴”が多い季節

実は夏は、肝臓に脂肪がたまりやすい生活に傾きがちな季節です。当院のある田園調布・多摩川エリアでも、夏の生活習慣の変化をきっかけに数値が悪化する方を毎年お見かけします。

① 冷たい清涼飲料水・アイスの「果糖」

熱中症対策の水分補給は大切ですが、ジュースや加糖の炭酸飲料、スポーツドリンクの飲みすぎには注意が必要です。これらに多く含まれる果糖(果糖ブドウ糖液糖)は、肝臓で中性脂肪に変わりやすいことが知られています。日常の水分補給は水や麦茶を基本にしましょう。

② ビール・お酒の量が増える

暑い時期はビールがおいしい季節ですが、アルコールとおつまみのカロリーはγ-GTPや中性脂肪の上昇に直結します。飲酒量が多い方の脂肪肝は別の分類(アルコール関連肝疾患など)として、より積極的な節酒・禁酒のサポートが必要になります。

③ 暑さによる運動不足

猛暑で外出や運動の機会が減ると、消費エネルギーが減って内臓脂肪・肝臓の脂肪がたまりやすくなります。冷房の効いた時間帯・場所をうまく使った活動の工夫が大切です(詳しくは次のセクションで)。

今日からできる生活改善――目標は「まず体重の3%」

MASLDの治療の基本は、薬ではなく食事・運動などの生活習慣の改善です。うれしいことに、肝臓の脂肪は生活改善に比較的よく反応することが知られています。日本肥満学会の「肥満症診療ガイドライン2022」では、現体重の3%以上の減量で、脂肪肝を含む肥満に関連する検査値の改善が期待できるとされています。体重70kgの方ならまず約2kg、無理のない現実的な目標です。

取り組み 具体的なコツ(夏バージョン)
甘い飲み物を見直す 水分補給は水・麦茶が基本。ジュース・加糖コーヒーは「1日1本まで」など具体的に決める
夕食の主食を少し減らす ごはんを2〜3割減らし、その分たんぱく質(魚・大豆・鶏肉)と野菜をしっかり
お酒は休肝日を 週2日以上の休肝日。「とりあえずビール」は最初の1杯までと決めるのも一法
こまめに体を動かす 朝夕の涼しい時間帯の早歩き、屋内でのスクワットなど。週合計150分程度の運動が目安
体重を毎日はかる 同じ時間帯(起床後など)に測定して記録。グラフ化すると変化に気づきやすくなります

筋力トレーニングと有酸素運動の組み合わせは、体重があまり減らなくても肝臓の脂肪の減少につながることが報告されています。「まず3%」を合言葉に、続けられることから始めましょう。当院では管理栄養士による栄養相談もご利用いただけますので、お一人で抱え込まず、ぜひご相談ください。

お薬について(大切な注意)

現在、日本ではMASLD自体を直接治す保険適用のお薬はなく、治療の中心は生活習慣の改善と、糖尿病・脂質異常症・高血圧など合併する病気ごとの治療です。糖尿病を合併する方では、病態に応じて肝臓にも良い影響が報告されているお薬(SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬など)が選択肢になることがありますが、これらはあくまで糖尿病などの治療薬として、適応を満たす場合に保険診療で使用するものです。ダイエット・美容目的での使用は適応外であり、当院では行っておりません。効果や副作用には個人差がありますので、必ず医師にご相談ください。

当院での検査・診療の流れ(消化器内科専門外来・グループ連携)

竹内内科小児科医院では、健診で肝機能異常・脂肪肝を指摘された方に、次のような流れで診療を行っております。

当院でできること

① 血液検査の再検・精密化:ALT・AST・γ-GTPに加え、血小板数や肝炎ウイルス検査、線維化の指標(FIB-4 indexなど)で「進行のリスク」を評価します

② 生活習慣病の同時チェック:血糖(HbA1c)・脂質・血圧・尿酸など、MASLDと関わりの深い項目をまとめて確認し、必要な治療につなげます

③ 消化器内科専門外来:火曜午前・水曜終日は消化器内科の専門外来(玉井博修医師)を設けており、腹部エコーなどの精密検査や専門的な評価が必要な方を院内でスムーズにご案内できます

④ 管理栄養士による栄養相談:日々の食事を無理なく変えるお手伝いをいたします

線維化が進行している疑いのある方や、より高度な検査・治療が必要な方には、五良会グループの五良会クリニック白金高輪(内視鏡・消化器内科・糖尿病内科)や、近隣の連携病院へ責任をもってご紹介いたします。五良会グループでは、田園調布の竹内内科小児科医院と港区の五良会クリニック白金高輪が連携し、脂肪肝・生活習慣病の診療を多角的にサポートしております。

また、当院は内科と小児科を併設しております。脂肪肝は近年、食生活の変化によりお子さん・若い世代にも増えていることが指摘されています。学校健診や小児の肥満についてのご相談も、親子でまとめてお受けできるのが当院の強みです。お仕事でお忙しい方は土曜午前もご利用ください。

受診前チェックリスト

受診前チェックリスト

□ 今回の健診結果(できれば過去2〜3年分もあると数値の推移が分かり大変参考になります)

□ 服用中のお薬・サプリメントが分かるもの(お薬手帳など)

□ 飲酒の頻度と量(缶ビール○本/日など、おおよそで結構です)

□ 20歳頃からの体重の変化(何kg増えたか)

□ ご家族の病歴(糖尿病・肝臓病など)

健診結果の「肝機能異常」「脂肪肝」の文字は、生活を見直す絶好のきっかけです。「ALTが30を超えていたら、かかりつけ医へ」――この夏、健診結果を引き出しにしまう前に、ぜひ一度ご相談ください。WEB予約・WEB問診・LINE・お電話(03-3721-5222)でご予約いただけます。

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五良会グループでは、田園調布から白金高輪まで医師が連携しております。患者さまの転居やライフスタイルの変化に合わせて、同じグループ内で継続診療が受けられる体制を整えております。

参考文献

  1. 日本消化器病学会・日本肝臓学会編「MASLD診療ガイドライン2026(改訂第3版)」南江堂, 2026.
  2. 日本肝臓学会「奈良宣言2023」(第59回日本肝臓学会総会, 2023年6月発表)
  3. 日本消化器病学会・日本肝臓学会「脂肪性肝疾患の日本語病名に関して」(2024年8月)
  4. 日本肥満学会編「肥満症診療ガイドライン2022」ライフサイエンス出版, 2022.
  5. 厚生労働省 e-ヘルスネット「脂肪肝」「メタボリックシンドローム」(2026年8月閲覧)

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竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医

Author: 五藤 良将