皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。
2026年の夏も、田園調布・多摩川周辺では連日の猛暑と熱帯夜(最低気温25℃以上の夜)が続いています。外来でも「夜中に何度も目が覚める」「朝起きても疲れが取れない」「子どもが夜更かしになってしまった」といった夏の睡眠のお悩みについてご相談いただくことが増えました。
睡眠は、血圧・血糖・免疫・こころの健康すべてに関わる「土台」です。今回は、厚生労働省が公表した「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(2024年2月公表)の内容をもとに、熱帯夜でもぐっすり眠るための具体的なコツと、医療機関へのご相談をおすすめする目安について、内科・小児科の両方の視点から分かりやすくお伝えいたします。
目次
なぜ熱帯夜は眠れないのか|「深部体温」がカギ
人は眠りに入るとき、体の内部の温度(深部体温)が下がることで自然な眠気が訪れます。手足の皮膚から熱を逃がして深部体温を下げる――これが入眠のスイッチです。
ところが熱帯夜では、寝室の温度と湿度が高いままのため、体の熱をうまく逃がすことができません。その結果、深部体温が下がりにくくなり、寝つきが悪くなる・眠りが浅くなる・夜中に目が覚めるという悪循環が生まれます。
メカニズム図解|熱帯夜で眠りが浅くなる仕組み
| 寝室の温度・湿度が高い:夜になっても室温28℃以上・湿度70%以上の環境が続く | |
| 体の熱を逃がせない:手足の皮膚からの放熱が妨げられ、深部体温が下がらない | |
| 発汗で体力・水分を消耗:一晩でコップ1〜2杯分の汗をかき、体は「軽い脱水」状態に | |
| 眠りが浅くなり、疲労が翌日に持ち越される:中途覚醒が増え、日中のだるさ・集中力低下・夏バテへつながる |
つまり夏の不眠対策の第一歩は、根性や我慢ではなく、「深部体温を下げやすい寝室環境をつくること」なのです。
睡眠不足が招く夏の健康リスク
「たかが寝不足」と思われがちですが、睡眠不足が続くと、夏特有の健康リスクが高まることが知られています。
① 夜間・翌日の熱中症リスク
睡眠不足は体温調節機能や自律神経のはたらきを乱し、翌日の熱中症リスクを高める要因とされています。環境省の熱中症環境保健マニュアルでも、寝不足や体調不良の日は暑さへの抵抗力が落ちることが指摘されています。また、熱帯夜には就寝中に熱中症を発症する「夜間熱中症」もあり、特にご高齢の方では注意が必要です。
② 血圧・血糖への影響
睡眠不足や質の低い睡眠が続くと、交感神経の緊張が続き、血圧が上がりやすくなることが報告されています。また睡眠不足はインスリンのはたらきを弱め、血糖コントロールの悪化にも関係します。高血圧や糖尿病で通院中の方にとって、夏の睡眠は治療の一部と言ってもよいほど大切です。
③ こころの不調・夏バテ
眠りの不足はイライラや気分の落ち込み、集中力の低下にも直結します。「眠れない→日中つらい→夜に不安になってまた眠れない」という悪循環に入る前に、早めの対策が肝心です。
今夜からできる「夏の快眠」7つのコツ
厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、良い睡眠のためには寝室環境・生活習慣・光の浴び方を整えることが推奨されています。熱帯夜向けに具体化すると、次の7つがポイントです。
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熱帯夜の快眠チェックリスト □ エアコンは朝までつけたままに(室温26℃前後・湿度50〜60%が目安。タイマーで切ると再覚醒の原因に) □ 風は体に直接当てず、壁や天井に向ける(扇風機との併用も有効) □ 就寝1〜2時間前にぬるめ(38〜40℃)の入浴で、いったん体温を上げてから下げる □ 寝る前と起床後にコップ1杯の水分補給(就寝中の脱水・夜間熱中症予防) □ 通気性・吸湿性のよい寝具・パジャマを選ぶ □ 朝は同じ時刻に起きて朝の光を浴びる(体内時計のリセット) □ 昼寝をするなら午後早めに20〜30分まで(夕方以降の長い昼寝は夜の眠りを妨げます) |
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ポイント|「電気代がもったいない」より「健康がもったいない」 ① エアコンの朝までの連続使用は、夜間熱中症の予防と睡眠の質の確保という点で、医学的に理にかなった選択です。 ② 特にご高齢の方は暑さ・のどの渇きを感じにくくなるため、「暑くないから大丈夫」ではなく温度計を見て判断することをおすすめいたします。 |
お子さんの睡眠と夏休みの生活リズム
夏休み中は就寝・起床時刻が遅れがちですが、成長期のお子さんにとって睡眠は、体と脳の発達・情緒の安定・学習の定着に欠かせません。「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、年代ごとに必要な睡眠時間の目安が示されています。
| 年代 | 推奨される睡眠時間の目安 | 夏休みの注意点 |
|---|---|---|
| 小学生 | 9〜12時間 | 起床時刻を平日と同じに保つ |
| 中学生・高校生 | 8〜10時間 | 夜ふかし・スマートフォンの長時間使用に注意 |
| 成人 | 6時間以上を目安 | 短時間睡眠の常態化・休日の寝だめに注意 |
夏休み明けに「朝起きられない」「頭痛・立ちくらみがする」というお子さんの中には、生活リズムの乱れだけでなく、起立性調節障害(OD)が隠れていることもあります。当院は内科と小児科を同一医師が併診できる体制ですので、お子さんの睡眠や生活リズムのお悩みも、ご家族の不眠のご相談も、同じ窓口でまとめてご相談いただけます。
やってしまいがちなNG習慣|寝酒・カフェイン・寝る前スマホ
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夏の夜のNG習慣にご注意ください ・寝酒(ナイトキャップ):寝つきがよくなったように感じても、眠りを浅くし、中途覚醒と脱水を悪化させます。ビールなどのアルコールには利尿作用があり、夏は特に逆効果です。 ・夕方以降のカフェイン:コーヒー・緑茶・エナジードリンクなどのカフェインは、就寝の5〜6時間前からは控えめに。 ・寝る直前までのスマートフォン:画面の強い光と情報の刺激は体内時計を後ろにずらします。就寝前30分〜1時間は画面から離れるのが理想です。 |
なお、市販の睡眠改善薬やアルコールに頼り続けることはおすすめできません。眠れない状態が続く場合は、原因に合わせた対処が必要ですので、自己判断を重ねる前にどうぞご相談ください。
こんなときはご相談ください|受診の目安
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重要|次のような場合は医療機関へのご相談をおすすめします ・寝つけない・夜中に目が覚める状態が週3日以上、1か月以上続いている ・日中の強い眠気・だるさで、仕事や学校生活に支障が出ている ・家族に大きないびき・睡眠中の呼吸の停止を指摘された(睡眠時無呼吸症候群の可能性) ・気分の落ち込みや不安が強く、眠れない日が続いている ・高血圧・糖尿病の治療中で、睡眠の乱れとともに数値が悪化している |
当院では、内科・小児科・生活習慣病の診療に加え、心療内科の専門外来(木曜午前・隔週金曜午前:阿部靖彦医師)を設けており、不眠やストレスに関連する睡眠のお悩みにも対応しております。いびきや睡眠中の無呼吸が気になる方の検査のご相談も承ります。
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受診前チェックリスト(メモしてお持ちいただくとスムーズです) □ 就寝時刻・起床時刻・夜中に目が覚める回数(直近1〜2週間分) □ 飲酒・カフェインの量とタイミング □ 服用中のお薬・サプリメント □ ご家族から指摘されたいびき・呼吸の様子 |
「眠れないくらいで受診してよいのかしら」と迷われる方も多いのですが、睡眠のお悩みは立派な受診理由です。土曜も午前は診療しておりますので、平日お忙しい方もどうぞお気軽にご相談ください。WEB予約・LINE・お電話(03-3721-5222)でご予約いただけます。
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五良会グループでは、田園調布の竹内内科小児科医院と港区の五良会クリニック白金高輪、横浜市都筑区の五良ファミリークリニックセンター南(医療法人社団正友会)の医師が連携しております。睡眠時無呼吸症候群の精密検査のご相談や、患者さまの転居・ライフスタイルの変化に合わせたグループ内での継続診療にも対応する体制を整えております。
参考文献
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(2024年2月公表)(2026年7月閲覧)
- 環境省「熱中症環境保健マニュアル」(2026年7月閲覧)
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「睡眠と生活習慣病との深い関係」「快眠と生活習慣」(2026年7月閲覧)
竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医