【2026年秋】DPP-4阻害薬を飲んでいる方へ|インクレチンを活かす仕組み・SU薬併用の低血糖・類天疱瘡など注意したい副作用を院長・五藤良将がやさしく解説【田園調布・多摩川】

皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。

10月に入り、田園調布でも朝晩はひんやりとした空気を感じるようになりました。秋は健康診断の結果をきっかけに糖尿病の治療を始める方が増える季節です。外来では「『DPP-4(ディーピーピーフォー)阻害薬』と言われたけれど、どんな薬ですか?」「低血糖が起きにくいと聞いたけれど本当?」「週1回でよい飲み薬があると聞いた」といったご質問をよくいただきます。

DPP-4阻害薬は、2009年に日本で最初の薬が登場して以来、日本で処方されることの多い2型糖尿病の飲み薬です。今回のブログでは、日本糖尿病学会の「糖尿病診療ガイドライン2024」「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム(第2版・2023年11月)」「糖尿病治療ガイド2024」、日本糖尿病協会の「インクレチンとSU薬の適正使用に関するRecommendation」、各薬の添付文書をもとに、DPP-4阻害薬の仕組み、どんな方に向いているか、SU薬(スルホニル尿素薬)との併用で起こる低血糖、そして皮膚に水ぶくれができる類天疱瘡(るいてんぽうそう)などの注意したい副作用を、やさしく解説いたします。

「SGLT2阻害薬を飲んでいる方へ」「メトホルミン(ビグアナイド薬)を飲んでいる方へ」に続く、「お薬別ガイド」シリーズの第3弾です。お薬全体の地図は「糖尿病のお薬はどう選ばれる?」もあわせてご覧ください。

五藤 良将

THIS ARTICLE IS WRITTEN AND SUPERVISED BY

竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将

日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医
この記事は五藤良将が執筆・監修し、内容に責任を持っています。

目次

  1. DPP-4阻害薬とはどんなお薬?
  2. 血糖を下げる仕組み|体の「インクレチン」を長持ちさせる
  3. 日本で使われているDPP-4阻害薬|1日1回・1日2回・週1回
  4. どんな方に向いている?ガイドラインでの位置づけ
  5. 外来でよく出会うケース①|70代・痩せ型で腎機能が下がってきた方
  6. 「低血糖を起こしにくい」の落とし穴|SU薬・インスリンとの併用
  7. 外来でよく出会うケース②|60代・SU薬を飲んでいる方
  8. 注意したい副作用|類天疱瘡・急性膵炎・腸閉塞・間質性肺炎
  9. 心臓・腎臓への影響と、ほかのお薬との組み合わせ
  10. 適応と保険診療の線引き
  11. よくあるご質問(FAQ)
  12. 受診前のチェックリスト
  13. 竹内内科小児科医院が選ばれる理由
  14. 五良会グループの関連記事
  15. 参考文献

DPP-4阻害薬とはどんなお薬?

DPP-4阻害薬は、2型糖尿病の飲み薬のグループのひとつです。食事をとったときに腸から分泌されるインクレチンというホルモンの働きを長持ちさせることで、血糖値が高いときにだけインスリンの分泌を後押しし、血糖を上げるホルモン(グルカゴン)を抑えます。

「血糖が高いときにだけ働く」という性質から、単独では低血糖を起こしにくく、体重も増えにくいのが特徴です。1日1回の服用で済む薬が多く、食事のタイミングに左右されにくいことから、ご高齢の方から働き盛りの方まで幅広く使われています。

用語解説|インクレチン(GLP-1・GIP)とは

① インクレチン:食事が腸に入ったときに、腸の細胞から分泌されるホルモンの総称です。すい臓に「食べ物が入ってきたので、インスリンを出す準備を」と知らせる“合図役”をしています。

② GLP-1(ジーエルピーワン):小腸の下のほう(L細胞)から出るインクレチンです。インスリン分泌を促すほか、グルカゴンを抑える、胃の動きをゆっくりにするなどの働きがあります。

③ GIP(ジーアイピー):小腸の上のほう(K細胞)から出るインクレチンで、インスリン分泌を促します。

④ DPP-4(ジペプチジルペプチダーゼ-4):体の中でインクレチンを分解してしまう酵素の名前です。GLP-1は分泌されてから数分程度でこの酵素に分解され、働きを失います。DPP-4「阻害薬」は、この酵素のブレーキ役です。

DPP-4阻害薬の主な特徴を表にまとめます。

項目 DPP-4阻害薬の特徴
主な作用 インクレチンの分解を防ぎ、血糖依存性にインスリン分泌を促し、グルカゴン分泌を抑える
低血糖 単独では起こしにくい。ただしSU薬・インスリンとの併用では起こり得る
体重 増えにくい(減量効果は大きくない)
得意な血糖 とくに食後高血糖の改善。空腹時血糖も下げる
服用回数 1日1回が中心。1日2回の薬、週1回の薬もある
腎機能 多くは腎機能に応じて量を調整。リナグリプチン・テネリグリプチンは原則として調整不要
注意したい副作用 頻度はまれだが、類天疱瘡・急性膵炎・腸閉塞・間質性肺炎など(薬剤により異なる)

血糖を下げる仕組み|体の「インクレチン」を長持ちさせる

DPP-4阻害薬は、インスリンそのものを外から補う薬でも、すい臓を無理に働かせる薬でもありません。もともと体に備わっている「食後の血糖調節の仕組み」を、少し長く働かせるお薬です。流れを図解でご説明します。

メカニズム図解|DPP-4阻害薬が血糖を下げるまで

1 食事をとる:食べ物が小腸に届くと、腸からインクレチン(GLP-1・GIP)が分泌されます。
2 本来はすぐ分解される:血液中のDPP-4という酵素が、インクレチンを数分程度で分解してしまいます。
3 DPP-4阻害薬がブレーキをかける:酵素の働きを抑えることで、体内のインクレチン(活性型)の濃度が高めに保たれます。
4 すい臓に2つの作用:β細胞(インスリンを出す細胞)からのインスリン分泌を促し、α細胞からのグルカゴン(血糖を上げるホルモン)分泌を抑えます。
5 結果:食後を中心に血糖とHbA1cが下がる。この作用は血糖が高いときに強く、正常〜低めのときには弱まるため、単独では低血糖を起こしにくいのが特徴です。

用語解説|「血糖依存性(グルコース依存性)」とは

血糖値(グルコース)が高いときにだけ作用が強まり、血糖値が下がってくると作用が弱まる性質のことです。インクレチンによるインスリン分泌の促進は、この性質をもっています。一方、SU薬(スルホニル尿素薬)は血糖値に関係なくインスリンを出させるため、低血糖を起こしやすいという違いがあります。この違いが、後でご説明する「SU薬との併用」の注意点につながります。

なお、日本人を含む東アジアの方は、欧米の方に比べてインスリンを出す力(インスリン分泌能)が弱いタイプの糖尿病が多いことが知られています。アジア人を対象とした研究をまとめた解析(メタアナリシス)では、DPP-4阻害薬によるHbA1cの低下幅が、アジア人以外よりもアジア人で大きい傾向が報告されています。日本でこのお薬が多く使われている背景のひとつです。

日本で使われているDPP-4阻害薬|1日1回・1日2回・週1回

日本では、2009年に最初のDPP-4阻害薬(シタグリプチン)が登場し、その後、複数の薬が使えるようになりました。代表的なものを、飲み方と腎機能による調整の観点から整理します(商品名は代表的なもの)。

一般名(代表的な商品名) 飲み方 腎機能による量の調整
シタグリプチン(ジャヌビア®・グラクティブ®) 1日1回 必要
ビルダグリプチン(エクア®) 1日2回(朝・夕) 必要(肝機能にも注意)
アログリプチン(ネシーナ®) 1日1回 必要
リナグリプチン(トラゼンタ®) 1日1回 原則不要
テネリグリプチン(テネリア®) 1日1回 原則不要
アナグリプチン(スイニー®) 1日2回(朝・夕) 必要
サキサグリプチン(オングリザ®) 1日1回 必要
トレラグリプチン(ザファテック®) 週1回 必要
オマリグリプチン(マリゼブ®) 週1回 必要

※具体的な用量・禁忌は各薬の添付文書に従います。メトホルミン・SGLT2阻害薬・ピオグリタゾンとの配合錠もあり、飲む錠数を減らせる場合があります。

週1回の飲み薬は、毎日の服薬管理が難しい方や、ご家族・訪問看護師さんが服薬を確認する在宅療養の方にとって選択肢になります。一方で「飲み忘れに気づいたときの対応」が毎日の薬と異なるため、飲み忘れた場合の対処は事前に確認しておきましょう。

どんな方に向いている?ガイドラインでの位置づけ

日本糖尿病学会の「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム(第2版)」では、「誰にでも同じ最初の薬」ではなく、病態・安全性・併存疾患・続けやすさの4つのステップで薬を選ぶ考え方が示されています。DPP-4阻害薬の位置づけを整理します。

ステップ DPP-4阻害薬との関係
Step1:病態に応じて選ぶ 肥満のない方(インスリン分泌不全が主体と考えられる方)で、とくに使われることの多い選択肢のひとつ。肥満のある方でも選択肢に含まれます
Step2:安全性への配慮 高齢の方など低血糖を避けたい方では、SU薬・グリニド薬を避ける考え方が示されており、低血糖を起こしにくいDPP-4阻害薬は候補になりやすいお薬です
Step3:併存疾患による付加的利益 心不全・慢性腎臓病・心血管疾患がある方では、それらへの効果が示されているSGLT2阻害薬・GLP-1受容体作動薬が優先して検討されます
Step4:服薬アドヒアランス・費用 1日1回・週1回の薬、配合錠など、続けやすさの面で選びやすいお薬です

用語解説|インスリン分泌不全・服薬アドヒアランスとは

① インスリン分泌不全:すい臓がインスリンを出す力そのものが弱っている状態です。痩せ型〜標準体重の日本人の2型糖尿病で多くみられます。詳しくは「痩せているのに血糖値が高め?」で解説しています。

② 服薬アドヒアランス:患者さんご自身が治療の内容を理解・納得し、主体的にお薬を続けられている度合いのことです。飲む回数や錠数が少ないほど保ちやすいとされています。

血糖コントロールの目標は、日本糖尿病学会では合併症予防の観点からHbA1c 7.0%未満が基本です。ただし、ご高齢の方や低血糖のリスクが高い方では、年齢・認知機能・日常生活の状況に応じて目標を緩めに設定することが勧められています。

外来でよく出会うケース①|70代・痩せ型で腎機能が下がってきた方

※以下は、当院の外来でよく出会う患者さんの傾向をもとに作成した架空の例です。特定の患者さんの診療情報ではありません。

Cさん(74歳・女性・ご主人と二人暮らし)

・区の健診でHbA1c 7.8%、空腹時血糖 142mg/dL。身長152cm・体重48kg(BMI 20.8)と痩せ型。

・eGFR 48(腎機能は中等度に低下)。食事は1日3食とれているが、昼は少なめで間食に甘いものが多い。

・食事内容の見直し(間食の工夫)とウォーキングを3か月続けても HbA1c 7.6% と、ご本人と相談して決めた目標(7.5%未満を目安)に届かず。

・対応:低血糖を起こしにくく、腎機能による量の調整が原則不要なリナグリプチンを1日1回で開始。腎機能・肝機能の定期チェックを続け、「皮膚に水ぶくれができたら早めに受診を」とお伝えしました。

Cさんのように、肥満がなく、インスリンの出が弱いタイプで、ご高齢・腎機能低下があり低血糖を避けたい方は、DPP-4阻害薬がよく選ばれるタイプです。痩せ型の方で体重を減らす作用のある薬を使うと、筋肉量の低下(サルコペニア)やフレイルにつながる心配もあるため、体重への影響が少ない点も利点になります。高齢の方の目標設定は「高齢者の糖尿病は「下げすぎ」にもご注意を」で詳しく解説しています。

「低血糖を起こしにくい」の落とし穴|SU薬・インスリンとの併用

DPP-4阻害薬は単独では低血糖を起こしにくい薬ですが、SU薬(スルホニル尿素薬)やインスリンと一緒に使うと、低血糖が起こりやすくなることがわかっています。日本でDPP-4阻害薬が発売された直後、SU薬にDPP-4阻害薬を追加した方で重い低血糖が相次いで報告され、日本糖尿病協会の委員会が注意喚起(Recommendation)を出しました。

重要|SU薬を飲んでいる方にDPP-4阻害薬を追加するとき

日本糖尿病協会「インクレチン(GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬)の適正使用に関する委員会」のRecommendation(2011年9月29日最終修正)では、とくに高齢者(65歳以上)、軽度腎機能低下者(血清クレアチニン1.0mg/dL以上)、またはその両方に当てはまる場合、追加時にSU薬を減らすことが勧められています。

・グリメピリド(アマリール®):1日2mg以下に

・グリベンクラミド(オイグルコン®・ダオニール®):1日1.25mg以下に

・グリクラジド(グリミクロン®):1日40mg以下に

※減量の判断は主治医が行います。ご自身でSU薬を中止・減量しないでください。

用語解説|SU薬(スルホニル尿素薬)とは

すい臓のβ細胞に直接はたらきかけて、血糖値に関係なくインスリンを出させる飲み薬です(グリメピリド・グリクラジドなど)。血糖を下げる力は強い一方、低血糖や体重増加が起こりやすく、ご高齢の方や腎機能が低下した方では低血糖が長引くことがあります。DPP-4阻害薬が加わると、インスリンを出させる作用が上乗せされるため、SU薬の量の見直しが必要になります。

インスリン注射を使っている方にDPP-4阻害薬を追加する場合も、同じように低血糖に注意し、必要に応じてインスリンの量を調整します。冷や汗・手のふるえ・動悸・強い空腹感などの低血糖のサインと対処法は、「低血糖対処完全ガイド」をご確認ください。

外来でよく出会うケース②|60代・SU薬を飲んでいる方

※こちらも外来の傾向をもとにした架空の例です。

Dさん(67歳・男性・定年後に再雇用で勤務)

・10年前からグリメピリド1日3mgとメトホルミンを服用。最近はHbA1c 8.0%と上昇傾向。血清クレアチニン 1.1mg/dL。

・「夕方、散歩のあとに手がふるえて冷や汗が出たことがある」とのこと。

・対応:DPP-4阻害薬を追加するにあたり、65歳以上・クレアチニン1.0mg/dL以上に当てはまるため、グリメピリドを1日1mgに減量。ブドウ糖を持ち歩いていただき、低血糖のサインと対処を改めてご説明しました。

Dさんのように、長くSU薬を飲んでいる方は、HbA1cが高めでも、実は低血糖を起こしていることがあります。「HbA1cが高いから薬を足す」だけではなく、低血糖の有無を確認しながら、お薬の組み合わせ全体を見直すことが大切です。持続血糖測定(CGM)で血糖の波を確認することもあります(「血糖値を“見える化”する時代へ」参照)。

注意したい副作用|類天疱瘡・急性膵炎・腸閉塞・間質性肺炎

DPP-4阻害薬は全体として副作用の少ないお薬ですが、頻度はまれでも知っておきたい副作用があります。添付文書の「重大な副作用」には、薬剤によって次のようなものが記載されています。

副作用 気づきのサイン
類天疱瘡 かゆみを伴う赤み、皮膚の水ぶくれ(水疱)・ただれ、口の中のただれ
急性膵炎 持続する激しい腹痛(背中に抜けるような痛み)、吐き気・嘔吐
腸閉塞 強い便秘、お腹の張り、腹痛、嘔吐(お腹の手術歴がある方・ご高齢の方は特に注意)
間質性肺炎 空せき、息切れ、発熱が続く
低血糖 冷や汗、手のふるえ、動悸、強い空腹感(とくにSU薬・インスリン併用時)
肝機能障害 だるさ、食欲低下、皮膚や白目が黄色くなる(定期採血で確認します)

用語解説|類天疱瘡(るいてんぽうそう)とは

本来は体を守るはずの免疫が、皮膚の表皮と真皮をつなぎとめるたんぱく質(BP180など)を誤って攻撃してしまう自己免疫性水疱症のひとつです。皮膚がはがれやすくなり、張りのある水ぶくれができます。もともとご高齢の方に多い皮膚の病気ですが、DPP-4阻害薬を服用している方で発症する例が報告されており、添付文書の重大な副作用に記載されています。

特徴:DPP-4阻害薬に関連する類天疱瘡では、赤み(炎症)が目立たず、水ぶくれが主体となるタイプがみられるとの報告があります。服用開始から数か月〜数年たってから出ることもあり、「長く飲んでいるから大丈夫」とは言えません。

対応:水ぶくれやびらんが出たら、早めに受診してください。診断には皮膚の検査や血液検査(抗BP180抗体など)を行い、DPP-4阻害薬の中止や皮膚科専門医との連携を検討します。当院は皮膚科も標榜しており、まず院内で拝見したうえで必要に応じて専門医へご紹介いたします。

重要|こんなときは早めにご連絡・受診を

・皮膚に水ぶくれ・ただれができた、かゆみの強い赤みが広がってきた

・みぞおちから背中にかけての強い痛みが続く、吐き気・嘔吐がある

・お腹が張って便もガスも出ない、嘔吐する

・せき・息切れ・発熱が続く

・食事がとれない・発熱しているなど体調を崩したとき(シックデイ)は、お薬の扱いを含めて当院(03-3721-5222)へご相談ください

糖尿病の方の皮膚トラブル全般については、「糖尿病と「皮膚」のサイン」もあわせてご覧ください。秋から冬は乾燥でかゆみが出やすい季節ですが、「乾燥によるかゆみ」と「水ぶくれ」は別のものとして、気になる変化があれば遠慮なくお見せください。

心臓・腎臓への影響と、ほかのお薬との組み合わせ

糖尿病のお薬は、「血糖を下げる力」だけでなく、心臓や血管に悪影響がないかを確かめる大規模な臨床試験(心血管アウトカム試験)で評価されるようになりました。DPP-4阻害薬についても複数の試験が行われています。

試験名(対象薬) 主な結果
TECOS(シタグリプチン) 心血管イベントは偽薬(プラセボ)と比べて増えない(非劣性)。心不全入院の増加もみられず
CARMELINA(リナグリプチン) 腎機能が低下した方を多く含む集団でも、心血管イベントは増えない(非劣性)
EXAMINE(アログリプチン) 急性冠症候群後の方で、心血管イベントは増えない(非劣性)
SAVOR-TIMI 53(サキサグリプチン) 心血管イベントは増えないが、心不全による入院が増加したと報告

用語解説|「非劣性(ひれっせい)」とは

新しい治療が、比べる相手(ここでは偽薬=プラセボ)と比べて「悪くはない」ことを確かめる試験デザインのことです。DPP-4阻害薬の試験では「心臓や血管の病気を増やさない(安全である)」ことが確かめられましたが、「減らす(予防する)」ことまでは示されていません。一方、SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬の一部では、心血管イベントや腎臓病の進行を減らすことが示されています(優越性)。

このため、心不全・慢性腎臓病・心筋梗塞や脳梗塞の既往がある方では、SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬を優先して検討し、DPP-4阻害薬は血糖コントロールを補う役割で組み合わせることがあります。心不全のある方では、薬剤の種類も含めて慎重に選びます。

組み合わせのポイント

組み合わせ 考え方
+メトホルミン 作用の仕組みが異なり、よく併用されます。配合錠もあります
+SGLT2阻害薬 併用で低血糖は起こりにくく、配合錠もあります。脱水・シックデイの注意はSGLT2阻害薬側のルールに従います
+SU薬・インスリン 低血糖に注意。SU薬・インスリンの減量を検討
+GLP-1受容体作動薬 通常は併用しません。同じインクレチンの経路に働くため、GLP-1受容体作動薬(注射・飲み薬)へ切り替える場合はDPP-4阻害薬を中止します

適応と保険診療の線引き

DPP-4阻害薬の保険上の適応は2型糖尿病です。1型糖尿病(インスリンが出なくなるタイプ)の治療には使いません。また、DPP-4阻害薬は体重を大きく減らす薬ではなく、「やせ薬」や美容目的で使うお薬ではありません。

同じインクレチン関連薬でも、肥満症治療薬として承認されているGLP-1受容体作動薬などは、別の厳格な条件のもとで使われるお薬です。インターネット上で美容目的の使用をうたう情報も見かけますが、保険診療の対象外であるだけでなく、医学的な管理を伴わない使用には注意が必要です。お薬の選択は、病態と検査結果をふまえて主治医とご相談ください。

よくあるご質問(FAQ)

Q1. 食前・食後、いつ飲んでもいいのですか?

多くのDPP-4阻害薬は、食事の影響を受けにくいため食前・食後どちらでも服用できるとされています。ただし1日2回の薬もあり、配合錠では飲むタイミングが決まっているものもあります。処方された薬の飲み方をご確認ください。

Q2. 飲み忘れたらどうすればよいですか?

1日1回の薬で、気づいたのが同じ日のうちであれば、その時点で1回分を飲むのが一般的です。翌日に2回分をまとめて飲むことはしないでください。週1回の薬は対応が異なりますので、処方時の説明や薬局でのご案内をご確認いただくか、当院へご相談ください。

Q3. 「低血糖が起きにくい」なら、食事を抜いても大丈夫ですか?

DPP-4阻害薬単独であれば低血糖は起こりにくいですが、SU薬やインスリンを併用している方は、食事を抜くと低血糖の危険があります。また、食事療法と運動療法は、どのお薬を使う場合でも治療の土台です。

Q4. 一度飲み始めたら、一生飲み続けるのですか?

必ずしもそうではありません。食事・運動の見直しや体重の変化によって血糖が改善すれば、減量や中止を検討できることもあります。逆に、病態の変化に応じて別の薬に切り替えることもあります。自己判断で中止せず、定期的な検査をもとに一緒に見直していきましょう。

Q5. 皮膚科で「類天疱瘡」と言われました。糖尿病の薬はどうなりますか?

DPP-4阻害薬を服用中であれば、関連が疑われるため中止を検討するのが一般的です。その場合は、ほかの系統の薬で血糖コントロールを続けます。皮膚科の先生からの情報をお持ちのうえ、早めにご相談ください。

受診前のチェックリスト

受診前チェックリスト

□ 健診結果(HbA1c・血糖値・クレアチニン/eGFR)をお持ちください

□ 服用中のすべてのお薬(お薬手帳)。SU薬・インスリンの有無は特に大切です

□ 最近、冷や汗・手のふるえ・動悸など低血糖のような症状があったか

□ 皮膚の水ぶくれ・ただれ、強いかゆみがないか

□ 腹痛・お腹の張り・便秘、せきや息切れが続いていないか

□ 心臓病・腎臓病・膵炎・お腹の手術の既往

竹内内科小児科医院で診るという選択(当院が選ばれる理由)

DPP-4阻害薬は「飲みやすい薬」だからこそ、ほかのお薬との組み合わせや、皮膚・お腹の変化に気を配りながら続けることが大切です。ここまでの内容を、当院では次のような体制で診ています。

理由① 糖尿病・生活習慣病の専門的診療

日本糖尿病協会登録医・日本抗加齢医学会専門医の院長が、病態(インスリン分泌・抵抗性)と腎機能・年齢をふまえてお薬を選び、SU薬との併用時の減量なども含めて組み合わせ全体を見直します。

理由② 内科×小児科×皮膚科を同じ窓口で

内科・小児科に加えて皮膚科も標榜しています。水ぶくれなど皮膚の変化もまず院内で拝見でき、ご家族そろってのご相談も可能です。

理由③ 多摩川駅徒歩5分・土曜午前も診療

受付は午前12時まで・午後19時まで。お仕事帰りや土曜午前にも、定期採血とお薬の見直しを続けやすい環境です。

理由④ 五良会グループの切れ目ない連携

内視鏡検査や消化器内科の専門的な診療は姉妹院の五良会クリニック白金高輪へ、高齢者糖尿病のご相談は五良ファミリークリニックセンター南へ、同じグループ内でご紹介できます。

理由⑤ 訪問診療・地域密着

通院が難しくなった方には訪問診療にも対応しており、週1回の飲み薬など服薬管理しやすい治療もご相談いただけます。2019年の継承開業から、田園調布・大田区の「かかりつけ」として診療を続けています。

医療法人社団 五良会・正友会 理事長 五藤 良将

この記事の執筆医師 / AUTHOR & SUPERVISOR

竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将(ごとう よしまさ)

  • 防衛医科大学校 医学部 卒業(27期)。防衛医科大学校病院、自衛隊中央病院、自衛隊横須賀病院ほかで臨床経験を積む
  • 医療法人社団 五良会(竹内内科小児科医院・五良会クリニック白金高輪)理事長/医療法人社団 正友会(五良ファミリークリニックセンター南)理事長/竹内内科小児科医院 院長
  • 日本内科学会 認定内科医/日本抗加齢医学会 専門医/日本糖尿病協会 登録医/日本旅行医学会 認定医
  • 日本温泉気候物理医学会 温泉療法専門医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/難病指定医
  • 所属学会:日本内科学会、日本糖尿病学会、日本アレルギー学会、日本東洋医学会、日本リウマチ学会、日本外来小児科学会、日本抗加齢医学会、日本睡眠学会、日本美容内科学会、日本旅行医学会 ほか
  • 著書『あぶら落とすスープ』(アスコム)。NHK・TBS・フジテレビ・日本テレビ・テレビ朝日などメディア出演多数

執筆・監修責任について

本記事も院長の五藤良将が執筆・監修しています。公的機関の発表・国内外の診療ガイドライン・査読済み論文・添付文書を確認したうえで執筆しています。内容は公開時点の情報に基づくものであり、新しい知見やガイドラインの改訂があった場合は、こちらで記事を更新します。記事中の症例は外来の傾向をもとにした架空の例です。
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個々の患者さんの診断・治療に代わるものではありません。お薬の中止・変更は自己判断で行わず、必ず医師にご相談ください。記載内容について気になる点がございましたら、竹内内科小児科医院(03-3721-5222)までお知らせください。

DPP-4阻害薬の飲み方・SU薬との組み合わせ・皮膚の変化など、気になることがあれば一度ご相談ください。

平日 午前9:00〜12:00/午後15:30〜19:00、土曜は午前のみ(日祝休診)

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五良会グループでは、田園調布の竹内内科小児科医院、港区の五良会クリニック白金高輪、横浜市都筑区の五良ファミリークリニックセンター南が連携しております。患者さまの転居やライフスタイルの変化に合わせて、同じグループ内で継続診療が受けられる体制を整えております。

参考文献

  1. 日本糖尿病学会 編・著「糖尿病診療ガイドライン2024」南江堂, 2024年.
  2. 日本糖尿病学会「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム(第2版)」2023年11月2日公表.
  3. 日本糖尿病学会 編・著「糖尿病治療ガイド2024」文光堂, 2024年.
  4. 日本糖尿病協会 インクレチン(GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬)の適正使用に関する委員会「インクレチンとSU薬の適正使用について(Recommendation)」2010年4月7日作成, 2011年9月29日最終修正.
  5. 各DPP-4阻害薬の添付文書(PMDA 医療用医薬品情報検索).
  6. Kim YG, et al. Differences in the glucose-lowering efficacy of dipeptidyl peptidase-4 inhibitors between Asians and non-Asians: a systematic review and meta-analysis. Diabetologia. 2013;56(4):696-708.
  7. Green JB, et al. Effect of Sitagliptin on Cardiovascular Outcomes in Type 2 Diabetes (TECOS). N Engl J Med. 2015;373(3):232-242.
  8. Rosenstock J, et al. Effect of Linagliptin vs Placebo on Major Cardiovascular Events in Adults With Type 2 Diabetes and High Cardiovascular and Renal Risk (CARMELINA). JAMA. 2019;321(1):69-79.
  9. White WB, et al. Alogliptin after Acute Coronary Syndrome in Patients with Type 2 Diabetes (EXAMINE). N Engl J Med. 2013;369(14):1327-1335.
  10. Scirica BM, et al. Saxagliptin and Cardiovascular Outcomes in Patients with Type 2 Diabetes Mellitus (SAVOR-TIMI 53). N Engl J Med. 2013;369(14):1317-1326.
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竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医

Author: 五藤 良将