【2026年忘年会シーズン】インスリン・SU薬を使っている方がお酒を飲んだ夜は「寝ている間の低血糖」に注意|飲む前・寝る前・翌朝のチェックと酔いとの見分け方を院長・五藤良将が解説【田園調布・多摩川】

皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。

11月に入り、忘年会や年末年始の集まりの予定が入り始める時期になりました。外来では、糖尿病のお薬を飲んでいる方から「お酒の席で、何に気をつければいいですか」というご相談が増えてまいります。そして意外に多いのが、「飲んでいる最中は何ともなかったのに、夜中や明け方に冷や汗で目が覚めた」というお話です。

結論から申し上げます。インスリン注射やSU薬(スルホニルウレア薬)・グリニド薬を使っている方がお酒を飲んだ夜は、「飲んでいる間」よりも「寝ている間から翌朝」の低血糖に注意が必要です。アルコールには肝臓が血糖を補う働きを弱める作用があるとされ、飲み終わってから数時間たって血糖が下がることがあります。しかも、低血糖の症状は「酔い」とよく似ているため、ご本人も周りの方も気づきにくいのです。

この記事では、インスリン・SU薬・グリニド薬を使っている方とそのご家族に向けて、お酒を飲む日の「飲む前・飲んでいる間・寝る前・翌朝」にそれぞれ何を確認すればよいかを整理いたします。お酒の量の考え方そのものは、「純アルコール量」で考えるお酒との付き合い方で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

五藤 良将

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竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将

日本温泉気候物理医学会 温泉療法医・温泉療法専門医
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医/著書『あぶら落とすスープ』
この記事は五藤良将が執筆・監修し、内容に責任を持っています。

お酒で低血糖が起こりやすいのは、どのお薬を使っている人?

飲酒による低血糖(ていけっとう:血糖値がおおむね70mg/dL未満に下がり、冷や汗・動悸・手のふるえなどが出る状態)のリスクは、使っているお薬によって大きく異なります。特に注意が必要なのは、血糖値に関係なくインスリンを補う・出させるタイプのお薬です。

お薬の種類 飲酒時の低血糖リスク 主な注意点
インスリン注射 高い 特に持効型・混合型を夜に打つ方は、夜間〜早朝の低血糖に注意
SU薬(グリメピリド・グリクラジドなど) 高い 作用が長く続き、低血糖が長引く・くり返すことがある
グリニド薬(ミチグリニドなど) 中等度 飲んだのに食事がとれなかったときに起こりやすい
DPP-4阻害薬・GLP-1受容体作動薬・メトホルミン・SGLT2阻害薬など 単独では低い ただしインスリンやSU薬と併用している場合は、上の段と同じ注意が必要。メトホルミン・SGLT2阻害薬には別の注意点あり(後述)

「自分のお薬がどれに当たるかわからない」という方は少なくありません。お薬手帳を見ても判断に迷うときは、忘年会の前の受診時にそのままお尋ねください。各お薬の詳しい特徴は、SU薬・グリニド薬の記事で解説しています。

なぜ「寝ている間」に血糖が下がるのか

食事をとらない夜間、私たちの血糖値は主に肝臓が支えています。肝臓は、蓄えていたグリコーゲン(糖のたくわえ)を分解したり、糖新生(とうしんせい)という仕組みで新しくブドウ糖を作ったりして、寝ている間も血糖が下がりすぎないように調整しています。

メカニズム図解|お酒を飲んだ夜に低血糖が起こるまで

1 肝臓がアルコールの分解を優先:飲酒中から数時間、肝臓はアルコールの処理に追われます。
2 糖新生が抑えられる:その間、肝臓がブドウ糖を作る働きが弱まるとされています。
3 お薬のインスリンは働き続ける:インスリン注射やSU薬の作用は、飲酒の有無に関係なく続きます。
4 夜間〜明け方に血糖が下がる:「補う力」が落ちたまま「下げる力」が続くため、眠っている間に低血糖が起こることがあります(遅発性低血糖)。

さらに、お酒の席では「おつまみだけで主食をとらない」「〆を控える」ことも多く、糖質の摂取量が普段より少なくなりがちです。アルコール+食事量の不足+お薬の作用が重なることが、夜間低血糖の典型的なパターンです。

用語解説|糖新生・遅発性低血糖とは

糖新生(とうしんせい):肝臓などで、アミノ酸や乳酸といった糖以外の材料からブドウ糖を作り出す仕組みです。食事をしていない夜間や空腹時に、血糖値を保つ大切な役割を担っています。

遅発性低血糖(ちはつせいていけっとう):原因となった出来事(飲酒や運動など)から時間がたってから起こる低血糖のことです。飲酒の場合は、帰宅して眠った後や翌朝に起こることがあるとされています。

「酔っているだけ」と「低血糖」は見分けにくい

低血糖のときに出る「ふらつき」「ろれつが回らない」「ぼんやりする」「つじつまの合わない言動」は、酔ったときの様子とよく似ています。そのため、周囲の方が「飲みすぎただけだろう」と考えて寝かせてしまい、発見が遅れることがあります。

ここで、説明のための架空のケースをご紹介します(実在の患者さんの情報ではありません)。

60代の男性会社員の方。SU薬とメトホルミンを服用中で、HbA1cは7%台前半です。忘年会で焼酎のお湯割りを4杯ほど飲み、おつまみ中心で〆のごはんは食べずに帰宅しました。帰宅時は「少し酔っている」程度でしたが、明け方に強い冷や汗と動悸で目が覚めた——。外来で伺う「お酒の後の低血糖」は、このように飲酒量が特別多くなくても、食事量の少なさとSU薬が重なった形が少なくありません。

また、高齢の方や糖尿病の罹病期間が長い方では、冷や汗や動悸といった「警告サイン」が出にくくなっていることがあります。お酒が入るとさらに気づきにくくなります。

用語解説|無自覚性低血糖とは

無自覚性低血糖(むじかくせいていけっとう):血糖値が下がっているのに、冷や汗・動悸・ふるえなどの自律神経症状が出ないまま、急に意識がもうろうとする状態に進んでしまうことです。低血糖をくり返している方、自律神経障害のある方、高齢の方で起こりやすいとされています。思い当たる方は、自己判断で飲酒を続けず、必ず主治医にご相談ください。

このため、糖尿病のお薬を使っていることを、一緒に飲む方の誰か1人に伝えておくことをおすすめしています。「様子がおかしければ、酔いではなく低血糖を疑って甘いものを飲ませてほしい」と一言添えておくだけで、対応がまったく変わります。同居のご家族にも、帰宅後の様子を気にかけていただくようお願いしておきましょう。

飲む前・飲んでいる間・寝る前・翌朝のチェックポイント

まず前提として、糖尿病のある方の飲酒は、血糖コントロールが良好で、合併症や肝臓・膵臓の病気がないなどの条件を満たす場合に、主治医と相談のうえで少量にとどめるのが基本です。国立国際医療研究センター 糖尿病情報センターの患者向け資料では、一般的に許される量の目安として1日アルコール25g程度まで(日本酒1合、ビール中瓶1本500mL程度)が示され、休肝日をつくることもすすめられています。ただし、これは「誰でもここまで飲んでよい量」ではなく、合併症や使っているお薬によっては禁酒が必要なこともあります。

そのうえで、お酒を飲む日は次の4つのタイミングで確認してください。

タイミング 確認すること・やること
飲む前 ・ブドウ糖(10g程度)を持ち歩く
・空腹のまま飲み始めない
・お薬・インスリンの量を自己判断で増減しない(調整が必要な場合は事前に主治医と決めておく)
飲んでいる間 ・主食(ごはん・麺・パンなど)を適量とる。お酒の分だけ食事を抜くのは避ける
・お酒と同じくらい水やお茶を飲む
・ふらつき・冷や汗を感じたら、まず低血糖を疑ってブドウ糖を
寝る前 ・血糖自己測定やCGM(持続グルコース測定)を使っている方は、必ず測ってから寝る
・低めの場合に補食をとるかどうかの目安は、あらかじめ主治医と決めておく
・ご家族に「飲んで帰ってきた」ことを伝えておく
翌朝 ・寝汗・悪夢・起床時の頭痛やだるさは、夜間低血糖のサインのことがある
・朝食を抜かない(二日酔いで食べられない日は、シックデイに準じて主治医に連絡)
・測定している方は朝の値を記録し、次の受診時に見せる

低血糖が疑われるときは、ブドウ糖10g、またはブドウ糖を含むジュース150〜200mL程度をとり、15分ほどしても症状が続く場合は同じ量をもう一度とります。α-グルコシダーゼ阻害薬(ボグリボースなど)を飲んでいる方は、砂糖では回復が遅れるため必ずブドウ糖を使ってください。詳しくは低血糖の対処ガイドをご覧ください。

重要|すぐに救急車(119番)を呼ぶべきとき

・呼びかけへの反応が鈍い、意識がもうろうとしている

・けいれんを起こしている

・自分で飲み込めない(この場合、無理に口から飲ませると窒息の危険があります)

・SU薬を使っていて、ブドウ糖で一度回復しても再び症状が出る(低血糖が遷延している可能性)

飲んだ後のお風呂・温泉は控えて|温泉療法専門医からのお願い

年末年始は、温泉旅行やご実家への帰省でお酒を楽しむ機会も増えます。日本温泉気候物理医学会の温泉療法専門医として、ぜひお伝えしたいのが「飲酒後すぐの入浴・温泉は控える」ことです。

アルコールには血管を広げて血圧を下げる作用や、利尿作用による脱水を招く作用があります。そこに温かいお湯で血管がさらに広がると、血圧低下によるふらつきや失神、転倒、浴槽内での事故につながるおそれがあります。インスリンやSU薬を使っている方では、ここに低血糖が重なると、意識を失う危険がさらに高まります。

これは医学的な基準値ではなく当院からのご提案ですが、お酒を飲んだ日の入浴は、酔いがさめるまで待つか、翌朝にまわすのが安全です。旅館の大浴場は、夕食で飲酒する前に済ませておくのも一つの工夫です。冬の入浴の注意点は、ヒートショックの記事と温泉の入り方の記事でも詳しく解説しています。

メトホルミン・SGLT2阻害薬を飲んでいる方の注意点

低血糖のリスクは単独では低いお薬でも、お酒との関係で知っておきたい点があります。

メトホルミン(ビグアナイド薬)

メトホルミンの添付文書では、「過度のアルコール摂取者」は禁忌(使ってはいけない方)とされ、過度のアルコール摂取は乳酸アシドーシス(血液が酸性に傾くまれですが重い副作用)のリスク因子の一つに挙げられています。「適量」を超える飲み方が続く方は、お薬の見直しが必要になることがありますので、正直にご相談ください(メトホルミンの記事)。

SGLT2阻害薬

SGLT2阻害薬は尿から糖を出すお薬で、もともと脱水に注意が必要です。日本糖尿病学会の「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」では、極端な糖質制限や脱水がケトアシドーシスの誘因になりうることが注意喚起されています。お酒の利尿作用、〆を抜くなどの糖質不足、二日酔いでの嘔吐が重なる状況は避けましょう。吐き気・腹痛・強いだるさがあるときは、血糖値がそれほど高くなくても早めに受診してください(SGLT2阻害薬の記事)。

忘年会シーズンの前に、外来で確認しておきたいこと

おすすめは、12月の忘年会が始まる前、11月中の定期受診のタイミングでご相談いただくことです。これは制度上の期限ではなく、飲み会の予定が重なる前に対策を決めておくための当院からのご提案です。次のものをご準備いただくと、具体的なお話がしやすくなります。

受診・相談前に確認しておくこと

□ お薬手帳(インスリン製剤名・単位数、SU薬・グリニド薬の有無)

□ 12月〜1月の飲み会・旅行・帰省のおおよその予定と回数

□ ふだん飲むお酒の種類と1回あたりの量(例:ビール中瓶2本、焼酎お湯割り3杯など)

□ これまでに夜間・翌朝の冷や汗、悪夢、寝汗などがあったか

□ 血糖自己測定やCGMの記録(使っている方)

□ 直近の健診結果(HbA1c・肝機能〈AST・ALT・γ-GTP〉・eGFR)

「お酒の話をすると叱られそう」と感じて、飲酒量を少なめに伝えてしまう方もいらっしゃいます。ですが、実際の量がわかったほうが、安全な飲み方やお薬の調整を一緒に考えやすくなります。控えることも、量を決めて楽しむことも、どちらも大切な選択です。

まとめ

  • インスリン・SU薬・グリニド薬を使っている方は、飲酒後の「寝ている間〜翌朝」の低血糖に特に注意が必要です。
  • アルコールは肝臓の糖新生を抑えるとされ、食事量の不足とお薬の作用が重なると、遅れて低血糖が起こることがあります。
  • 低血糖は酔いと見分けにくいため、一緒に飲む方・ご家族にお薬のことを伝え、ブドウ糖を持ち歩きましょう。
  • お酒を飲んだ日の入浴・温泉は、酔いがさめてからか翌朝に。
  • メトホルミン・SGLT2阻害薬にも飲酒に関する注意点があります。忘年会シーズンの前に、外来で飲み方とお薬について確認しておきましょう。

竹内内科小児科医院で診るという選択(竹内内科小児科医院が選ばれる理由)

お酒との付き合い方は、使っているお薬・合併症・生活スタイルによって答えが変わります。当院では、次のような体制で一人ひとりに合わせてご相談をお受けしています。

理由① 糖尿病・生活習慣病の専門的診療

日本糖尿病協会登録医・日本抗加齢医学会専門医の院長が自ら外来を担当し、お薬の種類に応じた飲酒時の注意点まで具体的にお話しします。

理由② 温泉療法専門医が入浴・旅行も相談に

院長は日本温泉気候物理医学会の温泉療法医・温泉療法専門医です。年末年始の温泉旅行や冬の入浴の注意点も、持病に合わせてご説明します。

理由③ 内科×小児科併設でご家族そろって

お子さまからご高齢の方まで同じ窓口で受診できます。低血糖時の対応を、ご家族と一緒に確認していただくことも可能です。

理由④ 多摩川駅徒歩5分・土曜午前も診療

東急東横線・目黒線「多摩川駅」から徒歩5分。平日は19時まで受付、土曜午前も診療しています。

理由⑤ 五良会グループで切れ目なく連携

肝機能の異常などで内視鏡・専門外来が必要な場合は、姉妹院の五良会クリニック白金高輪へスムーズにご紹介します。訪問診療にも対応しています。

忘年会シーズンの前に、お酒とお薬のこと、一度ご相談ください。

医療法人社団 五良会・正友会 理事長 五藤 良将

AUTHOR / SUPERVISOR この記事の執筆医師

竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将(ごとう よしまさ)

日本温泉気候物理医学会 温泉療法医・温泉療法専門医日本抗加齢医学会 専門医日本糖尿病協会 登録医日本旅行医学会 認定医

  • 防衛医科大学校 医学部 卒業(27期)。防衛医科大学校病院、自衛隊中央病院、自衛隊横須賀病院ほかで臨床経験を積む
  • 医療法人社団 五良会(竹内内科小児科医院・五良会クリニック白金高輪)理事長/医療法人社団 正友会(五良ファミリークリニックセンター南)理事長/竹内内科小児科医院 院長
  • 日本温泉気候物理医学会 温泉療法医・温泉療法専門医:温泉・入浴・気候が体に与える影響を医学的に学び、持病のある方の安全な入浴・温泉利用をアドバイスしています
  • 日本内科学会 認定内科医/日本抗加齢医学会 専門医/日本糖尿病協会 登録医/日本旅行医学会 認定医
  • 日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/難病指定医
  • 所属学会:日本内科学会、日本糖尿病学会、日本温泉気候物理医学会、日本アレルギー学会、日本東洋医学会、日本リウマチ学会、日本外来小児科学会、日本抗加齢医学会、日本睡眠学会、日本美容内科学会、日本旅行医学会 ほか
  • 著書『あぶら落とすスープ』(アスコム)。NHK・TBS・フジテレビ・日本テレビ・テレビ朝日などテレビを中心にメディア出演多数

執筆・監修責任について

本記事も院長の五藤良将が執筆・監修しています。厚生労働省の飲酒ガイドライン、日本糖尿病学会の提言、医薬品の添付文書などを確認したうえで、内科医・温泉療法専門医の立場からまとめました。内容は公開時点の情報に基づくものであり、新しい知見やガイドラインの改訂があった場合は記事を更新します。
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個々の患者さんの診断・治療に代わるものではありません。お薬の量の調整や飲酒の可否については、必ず主治医にご相談ください。記載内容について気になる点がございましたら、竹内内科小児科医院(03-3721-5222)までお知らせください。

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五良会グループでは、田園調布の竹内内科小児科医院、港区の五良会クリニック白金高輪、横浜市都筑区の五良ファミリークリニックセンター南が連携しております。患者さまの転居やライフスタイルの変化に合わせて、同じグループ内で継続診療が受けられる体制を整えております。

参考文献

  1. 厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」(2024年〈令和6年〉2月公表)
  2. 国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター「糖尿病と食事(患者向け資料)」(2021年9月作成)https://dmic.jihs.go.jp/content/040_030_02.pdf(2026年11月閲覧)
  3. 日本糖尿病学会 SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」(2022年7月26日改訂)
  4. 医薬品医療機器総合機構(PMDA)メトホルミン塩酸塩製剤「使用上の注意」改訂資料(禁忌:過度のアルコール摂取者)https://www.pmda.go.jp/files/000229961.pdf(2026年11月閲覧)
  5. 厚生労働省 e-ヘルスネット「アルコールと糖尿病」(2021年10月19日更新)https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/alcohol/a-01-013.html(2026年11月閲覧)
  6. 日本糖尿病学会 編・著『糖尿病診療ガイドライン2024』南江堂(2024年)

Author: 五藤 良将