皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。
寒くなると、外来では「夏は落ち着いていた家庭血圧が、11月に入って上がってきた」というご相談が増えてまいります。お話を伺うと、週に何度もお鍋という方が少なくありません。「野菜たっぷりだから体にいいはず」と思っていらっしゃる方ほど、塩分の落とし穴に気づきにくいようです。
先に結論をお伝えします。お鍋の塩分の多くは、具材ではなく「つゆ」「つけだれ」「〆」に入っています。高血圧の方の減塩目標は1日6g未満(日本高血圧学会 JSH2025)で、しょうゆラーメン1杯の汁を残すだけで約6gも減ります。具材を我慢する必要はなく、減らす場所を知っておくことが大切です。
この記事では、高血圧で通院中の方とそのご家族に向けて、お鍋のどこで、どれくらい塩分が減らせるのかを、学会や自治体が公表している数値をもとに整理いたします。
THIS ARTICLE IS WRITTEN AND SUPERVISED BY
竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本温泉気候物理医学会 温泉療法医・温泉療法専門医
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医/著書『あぶら落とすスープ』
この記事は五藤良将が執筆・監修し、内容に責任を持っています。
目次
高血圧の方の塩分目標は「1日6g未満」
日本高血圧学会の「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」では、高血圧の方の減塩目標を1日6g未満としています。高血圧のない方の目安としては、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」が成人男性7.5g未満、成人女性6.5g未満を目標量としています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 高血圧の方の目標 | 1日6g未満(JSH2025) |
| 一般の目標量 | 男性7.5g未満・女性6.5g未満(食事摂取基準2025年版) |
| 実際の平均 | 20歳以上で男性10.7g・女性9.1g(令和5年 国民健康・栄養調査) |
| 例外(ご高齢の方) | エネルギーや栄養が不足しないよう、6g未満にこだわりすぎず、体格・栄養状態・活動量に応じて調整する(JSH2025) |
平均的な食生活の方が6g未満を目指すと、1日あたり3〜5g程度減らす必要があります。1食で1〜2gずつ、と考えると現実的です。
|
用語解説|食塩感受性(しょくえんかんじゅせい)とは 塩分をとったときの血圧の上がりやすさの個人差のことです。同じ量の塩分でも、血圧が大きく上がる方とあまり変わらない方がいます。一般に、ご高齢の方、肥満のある方、糖尿病や慢性腎臓病(CKD)のある方は食塩感受性が高い傾向があるとされ、減塩の効果が出やすいと考えられています。 |
お鍋の塩分は、どこに入っている?
塩分は水に溶けるため、煮込むほどつゆ(汁)に移っていきます。目安として、神戸市が公表している料理・調味料の食塩相当量をご紹介します(商品やレシピで変わるため、市販品はパッケージの「食塩相当量」をご確認ください)。
| 料理・調味料 | 食塩相当量の目安 |
|---|---|
| ポン酢しょうゆ 大さじ1(18g) | 1.4g |
| 豚汁 1杯 | 2.0g |
| しょうゆラーメン 1人前 | 7.8g(汁をすべて残すと1.8g) |
| かけうどん 1人前 | 7.0g(汁をすべて残すと1.5g) |
麺類の数値からわかるのは、塩分の約8割が汁に入っているということです。お鍋も同じ構造で、〆の雑炊は塩分の溶けたつゆをご飯がすべて吸うため、最後の一杯で塩分がまとまって増えます。反対に、秋田県の減塩レシピでは、具だくさん鍋で汁を3分の1残した場合の1人分を2.2gとしており、作り方と食べ方しだいでお鍋は減塩向きの料理にもなります。
減らす順番は「〆の汁 → つけだれ → つゆ」
上の数値から、効果の大きい順に並べると次のようになります。これはガイドラインが定めた順番ではなく、続けやすさと減らせる量を考えた当院からのご提案です。
① 〆の汁を残す(または、つゆを入れ替えてから〆にする)
ラーメン・うどんの〆なら、汁を残すだけで5〜6g近く減らせる計算です。雑炊にする日は、つゆを半分ほど捨ててお湯やだしを足してから作ると、ご飯が吸う塩分を抑えられます。〆を毎回ではなく「週末だけ」にするのも一つの方法です。
② つけだれは「注ぐ」から「つける」へ
ポン酢は大さじ1で1.4gです。取り皿に何度も注ぎ足すと、それだけで数gになります。小皿に少量を入れて具材の片面につける、だしで割る、ゆず・すだち・ねぎ・しょうがなど香りと酸味を足す、といった工夫で量を減らしやすくなります。
③ つゆは飲まない・加工品の具は控えめに
具は穴あきお玉ですくい、つゆをお椀で飲むのは控えめにします。つみれ・ちくわ・ソーセージ・キムチなどは具材そのものに塩分を含むため、生の魚や肉、豆腐、野菜、きのこを中心にすると減らしやすくなります。市販の鍋つゆは減塩タイプを選ぶか、表示より薄めて使い、昆布やかつお節のだしでうま味を補います。
ここまでの工夫は具材を減らすものではありません。野菜・きのこ・豆腐をしっかり食べられることは、お鍋の大きな長所です。
カリウム入りの減塩調味料は使ってよい?
JSH2025では、減塩とあわせて、カリウムを多く含む野菜・果物、低脂肪の乳製品などを積極的にとり、ナトリウムとカリウムの比(Na/K比)を下げることが勧められています。日本高血圧学会は2024年10月のコンセンサスステートメントで、随時尿のナトカリ比についてまず4未満、将来的に2未満という段階的な目標を示しています(週4日以上、異なる時間帯の尿の平均で評価することが推奨されています)。
一方で、市販の減塩しょうゆ・減塩塩の中には、ナトリウムの一部をカリウムに置き換えた製品があります。多くの方には問題ありませんが、次に当てはまる方は注意が必要です。
| あてはまる方 | 考え方 |
|---|---|
| 腎臓の数値(eGFR)が低いと言われている方 | カリウムを尿に出しにくく、血液中のカリウムが高くなることがあります。使う前に主治医にご相談ください。 |
| ARB・ACE阻害薬・MR拮抗薬を飲んでいる方 | これらのお薬はカリウムを上げる方向に働くことがあります。腎機能が正常でも、直近の採血でカリウム値を確認してからが安心です。 |
| 上記のどちらにもあてはまらない方 | 一般には使いやすい選択肢です。ただし「減塩」でも使う量が増えれば塩分は減らないため、量は控えめに。 |
|
用語解説|RAA系阻害薬と高カリウム血症 RAA系(レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系)は、体の塩分・水分量と血圧を調節するホルモンの仕組みです。これを抑えるARB・ACE阻害薬・MR拮抗薬は、血圧を下げて腎臓や心臓を守る大切なお薬ですが、カリウムを体にためやすくする作用もあります。 高カリウム血症は、血液中のカリウムが高くなりすぎた状態です。軽いうちは症状が出にくく、高度になると脱力感や脈の乱れ(不整脈)を起こすことがあるため、採血での確認が欠かせません。お薬は自己判断で中止しないでください。 |
冬に血圧が上がる理由は、塩分だけではありません
血圧は一般に夏に低く、冬に高くなる傾向があります。JSH2025でも、寒冷環境は睡眠・便秘・ストレスなどと並んで血圧を上げる要因として挙げられています。寒さで血管が縮み、体を緊張させる交感神経が働きやすくなるためです。
そのため、減塩に取り組んでも、寒さの影響で家庭血圧が目標(JSH2025では125/75mmHg未満)に届かないことがあります。その場合はお薬の調整が必要なこともあり、食事だけで何とかしようと無理をする必要はありません。冬の入浴時の血圧変動については「ヒートショックと入浴中の事故を防ぐ」で解説しております。
なお、顔の片側のゆがみ・片方の手足の脱力・言葉が出にくい、締めつけられるような胸の痛み、血圧が著しく高く激しい頭痛を伴う、といった場合は、様子を見ずに119番で救急受診してください。
受診・相談の前に確認しておくこと
冬の血圧や減塩についてご相談いただく際は、次のものがあると、お薬と食事の両面から具体的にお話しできます。
|
ご持参・ご確認いただきたいもの □ 家庭血圧の記録(朝・晩、できれば2週間分。手帳やアプリの画面で構いません) □ お薬手帳(ARB・ACE阻害薬・利尿薬などの名前を確認します) □ 直近の健診・採血結果(eGFR・クレアチニン・カリウムの値) □ ふだん使っている鍋つゆ・減塩調味料の商品名(パッケージの写真でも可) □ 1週間のうちお鍋・麺類・汁物を食べる回数と、〆の有無 |
ご家族の方へ
お鍋は家族で同じものを囲む料理なので、味付けを決める方の工夫がそのまま全員の塩分量になります。つゆを薄めに作り、味の濃さは各自の取り皿(つけだれ・薬味)で調整するようにすると、高血圧の方だけ別メニューにしなくても済みます。
ご高齢のご家族の場合は、減塩より食事量が十分にとれているかを優先していただきたい場面もあります。食が細くなってきた、体重が減ってきたというときは、極端な減塩をせずにご相談ください。
まとめ
- 高血圧の方の減塩目標は1日6g未満(JSH2025)。ご高齢の方は、栄養状態に合わせて調整します。
- お鍋の塩分はつゆ・つけだれ・〆に集中しています。麺類の〆は、汁を残すだけで5〜6g近く減る計算です。
- 減らす順番は「〆の汁 → つけだれ → つゆ」がおすすめです(当院からのご提案)。具材を我慢する必要はありません。
- カリウム入りの減塩調味料は、腎機能が低下している方・ARBなどを飲んでいる方は使う前に相談を。
- 冬は寒さでも血圧が上がります。家庭血圧が125/75mmHg以上の日が続くときは、記録を持ってご相談ください。
竹内内科小児科医院で診るという選択(当院が選ばれる理由)
冬の血圧管理は、お薬の調整と、毎日の食事の工夫を組み合わせることが大切です。当院では次のような体制で、ご家庭での取り組みを継続的にお手伝いしております。
理由① 生活習慣病を院長が直接診療
日本糖尿病協会登録医・日本抗加齢医学会専門医の院長が、高血圧・糖尿病・脂質異常症をまとめて診療し、家庭血圧の記録をもとにお薬と食事の両面から調整します。
理由② 食事療法の書籍を持つ院長
院長は著書『あぶら落とすスープ』(アスコム)で、日々の食事から体を整える工夫をご紹介してきました。外来でも、続けやすい具体的な食事のコツをお伝えします。
理由③ 温泉療法専門医として冬の過ごし方も
院長は日本温泉気候物理医学会の温泉療法医・温泉療法専門医です。入浴・温泉・寒さ対策など、冬の血圧が気になる季節の生活面のご相談にも、医学的な根拠に基づいてお答えします。
理由④ 内科・小児科併設でご家族そろって
同じ鍋を囲むご家族を、お子さまからご高齢の方まで同じ窓口で診療できます。ご家族の食生活をまとめてご相談いただけます。
理由⑤ 多摩川駅徒歩5分・土曜午前も診療
東急東横線・目黒線「多摩川駅」から徒歩5分。平日は19時まで受付、土曜は午前診療を行っています。通院が難しい方には訪問診療にも対応しています。
理由⑥ 五良会グループの連携
内視鏡検査や専門外来が必要な場合は、姉妹院の五良会クリニック白金高輪へ切れ目なくご紹介します。
冬の血圧が気になったら、家庭血圧の記録を持って一度ご相談ください。
AUTHOR / SUPERVISOR この記事の執筆医師
竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将(ごとう よしまさ)
日本温泉気候物理医学会 温泉療法医・温泉療法専門医日本抗加齢医学会 専門医日本糖尿病協会 登録医
- 防衛医科大学校 医学部 卒業(27期)。防衛医科大学校病院、自衛隊中央病院、自衛隊横須賀病院ほかで臨床経験を積む
- 医療法人社団 五良会(竹内内科小児科医院・五良会クリニック白金高輪)理事長/医療法人社団 正友会(五良ファミリークリニックセンター南)理事長/竹内内科小児科医院 院長
- 日本温泉気候物理医学会 温泉療法医・温泉療法専門医:温泉・入浴・気候が体に与える影響を医学的に学び、持病のある方の安全な入浴・温泉利用をアドバイスしています
- 日本内科学会 認定内科医/日本抗加齢医学会 専門医/日本糖尿病協会 登録医/日本旅行医学会 認定医
- 日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/難病指定医
- 所属学会:日本内科学会、日本糖尿病学会、日本温泉気候物理医学会、日本アレルギー学会、日本東洋医学会、日本リウマチ学会、日本外来小児科学会、日本抗加齢医学会、日本睡眠学会、日本美容内科学会、日本旅行医学会 ほか
- 著書『あぶら落とすスープ』(アスコム)。NHK・TBS・フジテレビ・日本テレビ・テレビ朝日などテレビを中心にメディア出演多数
執筆・監修責任について
本記事も院長の五藤良将が執筆・監修しています。日本高血圧学会のガイドライン・提言、厚生労働省の公表資料などを確認したうえで、内科医・温泉療法専門医の立場からまとめました。内容は公開時点の情報に基づくものであり、新しい知見やガイドラインの改訂があった場合は記事を更新します。
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個々の患者さんの診断・治療に代わるものではありません。症状や治療のご判断については、必ず医師にご相談ください。記載内容について気になる点がございましたら、竹内内科小児科医院(03-3721-5222)までお知らせください。
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五良会グループでは、田園調布の竹内内科小児科医院、港区の五良会クリニック白金高輪、横浜市都筑区の五良ファミリークリニックセンター南が連携しております。患者さまの転居やライフスタイルの変化に合わせて、同じグループ内で継続診療が受けられる体制を整えております。
参考文献
- 日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」(2025年8月29日公表)
- 日本高血圧学会「尿ナトリウム/カリウム比に関するコンセンサスステートメント」Hypertension Research(2024年10月8日公表)
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
- 厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」
- 神戸市「減塩について(料理・調味料の食塩相当量)」https://www.city.kobe.lg.jp/a00685/kenko/health/promotion/eating/salt.html(2026年10月閲覧)
- 秋田県「具だくさん鍋(減塩レシピ)」https://www.pref.akita.lg.jp/(2026年10月閲覧)
- 五藤良将『あぶら落とすスープ』(アスコム)
竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本温泉気候物理医学会 温泉療法医・温泉療法専門医/日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医