皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。
残暑が続く2026年8月、冷たい甘い飲み物やアイスを口にする機会が増えるこの時期は、実はお口の中の環境が一年でもっとも乱れやすい季節のひとつです。最近、糖尿病で通院中の患者さまから「歯ぐきから血が出やすくなった」「歯科で歯周病を指摘された」というご相談を受けることが増えました。
歯周病は、網膜症・腎症・神経障害などと並んで糖尿病の「第6の合併症」と呼ばれるほど、血糖と深い関わりを持つ病気です。しかも関係は一方通行ではなく、歯周病が血糖コントロールを悪化させることも分かってきました。今回は、日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」と日本歯周病学会「糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン 改訂第3版2023」に基づき、糖尿病と歯周病の「双方向の関係」と、内科側からできる対策を分かりやすく解説いたします。
目次
歯周病とはどんな病気?――痛みなく進む「静かな感染症」
歯周病は、歯と歯ぐきの境目にたまったプラーク(歯垢)の中の細菌が引き起こす慢性の感染症・炎症です。歯ぐきの腫れや出血から始まり(歯肉炎)、進行すると歯を支える骨が溶けて(歯周炎)、最終的には歯を失う原因になります。
やっかいなのは、かなり進行するまで痛みがほとんどないことです。「歯磨きのときに少し血がにじむ」「朝起きると口がねばつく」といった軽いサインのまま静かに進むため、「サイレントディジーズ(静かな病気)」とも呼ばれます。日本では成人の多くが程度の差はあれ歯周病を抱えているとされ、決して他人事ではありません。
糖尿病と歯周病は「双方向」で悪化し合う
糖尿病の方は、1型・2型を問わず、糖尿病でない方と比べて歯周病になりやすいことが分かっています。高血糖の状態が続くと、細菌と戦う白血球の働きが低下し、歯ぐきの細い血管の血流も悪くなるため、お口の中の感染・炎症が治りにくくなるのです。また、高血糖では唾液が減って口が乾きやすくなることも、細菌が増える一因になります。
一方で、逆方向の影響もあります。歯周病で歯ぐきの炎症が続くと、炎症性サイトカイン(TNF-αなど)と呼ばれる物質が歯ぐきの血管から全身へ流れ込み、インスリンの効きを悪くする(インスリン抵抗性)ことが知られています。つまり「糖尿病が歯周病を悪化させ、歯周病が血糖を悪化させる」という悪循環が生まれるのです。
メカニズム図解|糖尿病と歯周病の悪循環
| 高血糖が続く:白血球の働きが低下し、歯ぐきの血流も悪化。唾液も減り、お口の細菌が増えやすくなります | |
| 歯周病が発症・進行:歯ぐきの炎症が慢性化し、治りにくくなります | |
| 炎症物質が全身へ:TNF-αなどの炎症性サイトカインが血流に乗って全身に広がります | |
| インスリンが効きにくくなる:インスリン抵抗性が高まり、血糖値・HbA1cがさらに悪化 → 1に戻る悪循環 |
数字で見る糖尿病×歯周病――歯周治療でHbA1cが下がる?
日本歯周病学会「糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン 改訂第3版2023」では、国内外の研究をもとに、次のようなデータが示されています。
| 項目 | 報告されている内容 |
|---|---|
| 糖尿病 → 歯周病 | 糖尿病のある方では歯周病の発生率が約24%増加(コホート研究のメタアナリシス) |
| 歯周病 → 糖尿病 | 歯周炎のある方では糖尿病を発症する相対リスクが約26%上昇 |
| 歯周治療の効果 | 歯ぐきの奥の歯石・細菌まで除去する徹底した歯周治療を行った群では、12か月後にHbA1cが対照的な治療の群より0.6%低かったという無作為化比較試験の報告 |
HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー:過去1〜2か月の血糖の平均を反映する検査値)が0.5%前後変わるというのは、お薬を1剤調整するのに近いインパクトです。もちろん効果の程度には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありませんが、「歯ぐきの治療が血糖管理の応援団になる」ことは、ガイドラインでも重視されています。だからこそ、糖尿病診療ガイドライン2024でも歯周病は糖尿病の合併症のひとつとして位置づけられ、医科と歯科の連携が推奨されているのです。
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ポイント|糖尿病と歯周病の関係まとめ ① 双方向:糖尿病は歯周病を悪化させ、歯周病は血糖を悪化させます ② 治療で好転:歯周治療により血糖コントロールの改善が期待できるという報告があります ③ 連携が大切:内科での血糖管理と、歯科での歯周病ケアは「車の両輪」です |
夏〜残暑はお口の環境が乱れやすい季節
この時期に歯ぐきのトラブルのご相談が増えるのには、理由があります。
① 甘い飲み物・アイスの機会が増える
スポーツドリンクや清涼飲料水、アイスには思いのほか多くの糖分が含まれます。だらだらと飲み続けると、お口の中が長時間「細菌のごちそう」で満たされ、プラークが増えやすくなります。血糖値スパイク(食後の急激な血糖上昇)の観点からも注意が必要です。
② 脱水で唾液が減る
唾液には細菌を洗い流し、お口の中を中和する大切な働きがあります。汗をかいて体が脱水気味になると唾液の分泌が減り、口の中がねばつき、細菌が増えやすい環境になります。
③ 生活リズムの乱れ
お盆や夏休みで就寝が遅くなり、歯磨きがおろそかになりがちです。夏の疲れが出るこの時期は、体の免疫力も落ちやすく、歯ぐきの炎症が悪化しやすいタイミングといえます。
歯周病セルフチェック
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こんなサインはありませんか? □ 歯磨きのときに歯ぐきから血が出る □ 朝起きたとき、口の中がねばねばする □ 歯ぐきが赤く腫れている・むずがゆい □ 口臭を指摘されるようになった □ 歯が長くなったように見える(歯ぐきが下がった) □ 硬いものが噛みにくい・歯がぐらつく □ 1年以上、歯科健診を受けていない |
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重要|糖尿病・糖尿病予備群の方は特にご注意を ・上のチェックが1つでも当てはまる方は、かかりつけ歯科での歯周病チェックをおすすめいたします ・「最近、血糖・HbA1cが下がりにくい」と感じている方は、歯周病が隠れた原因になっている可能性もあります |
今日からできる5つの対策
1. 毎日の歯磨き+歯間ケア
歯ブラシだけでは歯と歯の間のプラークは落としきれません。デンタルフロスや歯間ブラシを1日1回、夜の歯磨きに加えるのがおすすめです。
2. 定期的な歯科受診
歯周病の管理には、歯科での定期的なチェックとクリーニング(歯石除去)が欠かせません。症状がなくても年1〜2回以上の歯科健診を習慣にしましょう。
3. 血糖コントロールを整える
血糖が整うと、歯ぐきの炎症も治りやすくなります。食事療法・運動療法・お薬の調整は、お口の健康を守ることにもつながります。
4. 甘い飲み物は「だらだら飲み」を避ける
水分補給の基本は水やお茶に。スポーツドリンクが必要な場面(大量に汗をかく作業・運動時)以外は、糖分の多い飲料を長時間かけて飲み続けないようにしましょう。
5. 禁煙
喫煙は歯周病の大きな危険因子で、歯ぐきの血流を悪化させ治療の効果も下げてしまいます。糖尿病の血管合併症の予防のためにも、禁煙は非常に効果的です。
当院でできること――医科と歯科の連携
竹内内科小児科医院では、糖尿病内科・代謝内科として、血糖・HbA1cの評価と食事・運動・お薬による血糖管理を行っております。歯周病の治療そのものは歯科の先生にお願いする領域ですが、当院ではかかりつけ歯科の先生と情報を共有しながら、内科側から血糖コントロールを整えることで、歯周病治療がしっかり効果を発揮できる土台づくりをサポートいたします。
「健診で血糖値を指摘されたまま放置している」「歯科で歯周病と言われたが、血糖は大丈夫だろうか」という方は、ぜひ一度ご相談ください。当院は土曜午前も診療しておりますので、平日お忙しい働き盛りの方も受診いただけます。また、五良会グループでは、田園調布の当院と港区の五良会クリニック白金高輪が連携し、糖尿病の精密検査や専門的な治療にも多角的に対応しております。
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受診前チェックリスト □ 直近の健康診断・血液検査の結果(血糖値・HbA1c) □ お薬手帳(服用中のお薬がわかるもの) □ 歯科での指摘内容・治療状況(わかる範囲で) □ 気になる症状のメモ(歯ぐきの出血、口の渇き、のどの渇き・多尿など) |
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ご予約・ご相談はお気軽に 糖尿病・血糖値・生活習慣病のご相談は、竹内内科小児科医院(東急東横線・目黒線 多摩川駅 徒歩5分/TEL 03-3721-5222)へ。WEB予約・LINEからのご予約も可能です。詳しくは下記のクリニック案内をご覧ください。 |
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五良会グループでは、田園調布から白金高輪まで医師が連携しております。患者さまの転居やライフスタイルの変化に合わせて、同じグループ内で継続診療が受けられる体制を整えております。
参考文献
- 日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病診療ガイドライン2024. 南江堂, 2024.
- 特定非営利活動法人日本歯周病学会 編. 糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン 改訂第3版2023. 医歯薬出版, 2023.
- 日本歯周病学会「歯周治療を適切・安全に行うためのポイント―全身状態への配慮―」(2023年7月)https://www.perio.jp/(2026年8月閲覧)
- 日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病治療ガイド2024. 文光堂, 2024.
竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医