皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。
7月も後半に入り、田園調布・大田区でも連日の猛暑と高い湿度が続いております。この季節になると、「足の指の間がジュクジュクしてかゆい」「足の裏に小さな水ぶくれができた」「靴を脱いだときのニオイが気になる」といったご相談が増えてまいります。いわゆる「水虫(足白癬:あしはくせん)」です。
水虫は身近な病気だけに「市販薬でなんとかなる」「かゆくなければ大丈夫」と自己判断されがちですが、実は見た目がそっくりな別の皮膚病も多く、正しい診断には顕微鏡検査が欠かせません。また、足の水虫を放置すると、爪に菌が入り込む「爪白癬(つめはくせん)」に進み、ご家族へうつしてしまうこともあります。
今回のブログでは、日本皮膚科学会・日本医真菌学会合同「皮膚真菌症診療ガイドライン2025」と、科研製薬が全国211施設で実施した大規模疫学調査「Foot Check 2023」の結果をもとに、水虫の正しい知識と、この夏こそ始めたい治療・予防のポイントを、皮膚科も併診する地域のかかりつけ医の立場からわかりやすくお伝えいたします。
目次
水虫(白癬)とは?なぜ夏に増えるのか
水虫は、白癬菌(はくせんきん)というカビ(真菌)の一種が皮膚の一番外側の層(角質層)に住みつくことで起こる感染症です。医学的には、足にできるものを「足白癬」、爪にできるものを「爪白癬」、体にできるものを「体部白癬(たむし)」、股にできるものを「股部白癬(いんきんたむし)」と呼びます。
白癬菌は、皮膚の主成分であるケラチン(たんぱく質)を栄養にして増えるという性質があります。そして、この菌がとても好むのが高温多湿の環境です。気温が上がり、汗をかき、靴の中が蒸れる夏は、白癬菌にとってまさに「活動の季節」。冬の間はおとなしくしていた水虫が、梅雨から夏にかけて再びかゆみを伴って現れる方が多いのは、このためです。
メカニズム図解|夏に水虫が悪化する流れ
| 高温多湿になる:気温・湿度が上がり、汗で足がふやける | |
| 靴の中が蒸れる:長時間の靴・ストッキングで湿度が90%以上に | |
| 白癬菌が増える:角質のケラチンを栄養に、菌がぐんぐん活発化 | |
| 症状が出る:かゆみ・皮むけ・水ぶくれとして自覚。この時期が治療の始めどき |
日本人の何人に1人?最新調査でわかった実態
「水虫なんて自分には関係ない」と思っていませんか。ところが、水虫は私たちが思う以上に身近な病気です。
2023年に科研製薬が全国211施設の皮膚科外来で実施した大規模疫学調査「Foot Check 2023」では、足の健康調査に協力した約14,500人を医師が直接診察しました。その結果、足白癬または爪白癬のいずれかを持つ方は約16.6%にのぼりました。内訳をみると、足白癬が約13.7%、爪白癬が約7.9%です。
| 種類 | 全体の割合 | おおよその目安 |
|---|---|---|
| 足白癬(足の水虫) | 約13.7% | およそ7人に1人 |
| 爪白癬(爪の水虫) | 約7.9% | およそ13人に1人 |
| いずれかに罹患 | 約16.6% | およそ6人に1人 |
さらに注目したいのは、この調査が「水虫の診察」以外の目的で受診した方を対象にしている点です。つまり、自分では水虫だと気づかずに来院された方の中に、これだけ多くの隠れた水虫が見つかったということ。「かゆくないから水虫ではない」とは限らないのです。
水虫のタイプと症状の見分け方
足白癬は、症状の出方によって大きく3つのタイプに分けられます。複数のタイプが混ざることもあります。
| タイプ | 主な症状 | できやすい場所 |
|---|---|---|
| 趾間型(しかんがた) | 皮がむける、白くふやける、ジュクジュク、かゆみ | 足の指の間(特に薬指と小指の間) |
| 小水疱型(しょうすいほうがた) | 小さな水ぶくれ、強いかゆみ | 足の裏、土踏まず、足のふち |
| 角質増殖型(かくしつぞうしょくがた) | かかとが硬くガサガサ、ひび割れ、かゆみが少ない | かかと、足の裏全体 |
|
見落とされやすい「かゆくない水虫」 角質増殖型は、かかとが厚く硬くなるだけでかゆみがほとんどないため、「乾燥肌」「加齢のせい」と思い込まれがちです。ところが白癬菌はしっかり潜んでおり、爪白癬の原因になったり、周囲へうつしたりします。冬でも症状が続くのが特徴で、市販の保湿クリームだけでは改善しません。 |
「水虫だと思ったら違った」よくある間違い
実は、足のトラブルの中には見た目が水虫にそっくりでも、白癬菌が原因ではないものが少なくありません。皮膚科の外来では、こうしたケースをよく経験します。
|
ポイント|水虫と間違えやすい皮膚トラブル ① 汗疱(かんぽう)・異汗性湿疹:手足に小さな水ぶくれ。汗が関係し、白癬菌はいません。 ② 接触皮膚炎(かぶれ):サンダルや靴の素材、薬剤によるかぶれ。 ③ 掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう):足裏に膿を持った水ぶくれが繰り返しできます。 ④ 乾燥や角化症:かかとのガサガサが体質・加齢による場合もあります。 |
これらは水虫とは治療法がまったく異なります。水虫でないのに抗真菌薬を塗り続けると、かえってかぶれて悪化することもあります。逆に、水虫なのにステロイドを塗ってしまうと、一時的にかゆみは治まっても菌が広がってしまいます。だからこそ、自己判断で市販薬を使い続ける前に、一度きちんと診断を受けることが大切なのです。
メカニズム図解|水虫の確定診断(顕微鏡検査)
| 採取:皮むけや爪のかけらをほんの少しだけ採ります(痛みはほぼありません) | |
| 顕微鏡で観察:専用の液で処理し、白癬菌がいるかを直接確認します | |
| 診断確定:菌が見えれば水虫と確定。見えなければ別の病気として治療方針を立てます |
感染のしくみと家庭内でうつさない工夫
白癬菌は、水虫の方の足からはがれ落ちた角質(垢)とともに床やマットに落ち、そこを別の方が素足で歩くことでうつっていきます。ただし、菌が皮膚に付着してすぐに感染するわけではありません。一般に、菌が付いてから角質に入り込むまでには半日〜1日ほどかかるとされ、その日のうちに足を洗えば感染のリスクはぐっと下がります。
ご家庭では、次のような場所が「うつる場所」になりやすいので注意しましょう。
|
重要|家庭内でうつりやすい場所 ・バスマット、足ふきマット(家族で共用しない) ・スリッパ、サンダルの共用 ・畳やカーペット、フローリング ・温泉・プール・ジムなどの共用の足ふきマット |
ご家族に水虫の方がいる場合は、ご本人の治療とあわせて、家庭内での対策をご家族全員で行うことが再発防止のカギです。バスマットはこまめに洗って乾かし、床の掃除機がけや拭き掃除を心がけましょう。特別な消毒は必要なく、毎日足を石けんで丁寧に洗い、しっかり乾かすことがもっとも効果的です。
治療の考え方(ガイドライン2025)
2025年に改訂された「皮膚真菌症診療ガイドライン2025(日本皮膚科学会・日本医真菌学会合同)」では、足白癬の治療について、抗真菌薬による外用療法(塗り薬)が有用であるとされています(推奨度A)。趾間型・小水疱型の多くは、適切な塗り薬で改善が期待できます。
治療のうえで、皮膚科医が繰り返しお伝えしているのが次の2点です。
|
治療を成功させる2つのコツ □ 症状が出ている場所より広めに塗る:見た目に異常がなくても周囲に菌が広がっているため、足の裏全体・指の間までまんべんなく塗ります。 □ 症状が消えてもすぐにやめない:かゆみや皮むけが治まっても菌はまだ残っています。自己判断で中断すると再発の大きな原因になります。塗る期間は必ず医師の指示に従いましょう。 |
角質増殖型のようにかかとが硬く厚くなっているタイプや、後述する爪白癬を合併している場合には、塗り薬だけでは届きにくいため、飲み薬(内服の抗真菌薬)が選択されることもあります。内服薬は効果が高い一方で、肝機能への影響や他のお薬との飲み合わせに配慮が必要なため、血液検査などを行いながら慎重に進めてまいります。
|
お薬に関する大切なお願い お薬の種類・使う量・治療期間は、水虫のタイプ、範囲、ほかのご病気や服用中のお薬によってお一人おひとり異なります。このブログは一般的な情報提供であり、具体的な治療は必ず診察のうえで判断いたします。市販薬で改善しないときや、自己判断でお薬を中断する前に、一度ご相談ください。 |
爪の水虫(爪白癬)は放置しないで
足の水虫を長く放置すると、白癬菌が爪の中に入り込み、爪白癬(つめはくせん)へと進むことがあります。爪が白〜黄色く濁る、厚くなる、もろくボロボロ崩れる、といった変化が特徴です。爪白癬は基本的にかゆみがないため気づきにくく、進行してから受診される方が多いのが実情です。
爪白癬が問題なのは、爪の中に菌の「すみか」ができてしまうと、足白癬を治してもそこから何度も再発してしまう点にあります。ガイドライン2025では、爪白癬の治療として、飲み薬(テルビナフィン、ホスラブコナゾールなど)や、爪に塗る専用の外用液(エフィナコナゾール、ルリコナゾール)が示されています。どれを選ぶかは、爪の濁った範囲や本数、全身の状態を見て決めていきます。
爪は生え替わるのに数か月から1年ほどかかるため、爪白癬の治療はある程度の期間、根気よく続けることが必要です。「もう歳だから」とあきらめず、気になる爪の変化があれば早めにご相談ください。なお、爪の濁りは加齢や外傷など白癬菌以外が原因のこともあり、ここでも顕微鏡検査での見極めが役立ちます。
糖尿病の方は特に注意|足を守るために
糖尿病をお持ちの方にとって、水虫は「たかが水虫」では済まないことがあります。糖尿病では、足の感覚が鈍くなる(神経障害)・血流が悪くなる・細菌への抵抗力が落ちるといった変化が起こりやすく、水虫による小さな皮膚の傷から細菌が入り込み、足の潰瘍やひどい感染症へと悪化するリスクが高まります。
特に、指の間がジュクジュクした趾間型の水虫は皮膚のバリアが壊れやすく、そこが細菌感染の入り口になりかねません。糖尿病の方は、毎日ご自身の足をよく観察し(フットケア)、水虫や小さな傷を見つけたら早めに医療機関へという習慣がとても大切です。
当院は糖尿病内科・代謝内科を専門とし、皮膚科も併診しております。血糖のコントロールと足のトラブルを一緒に診られることは、地域のかかりつけ医ならではの強みです。健診で血糖値やHbA1cを指摘された方、足の水虫が気になる糖尿病の方は、どうぞお気軽にご相談ください。
今日からできる予防のポイント
水虫は、日々のちょっとした習慣で予防・再発防止ができます。ご家族みんなで取り組みましょう。
|
水虫を防ぐ生活習慣 □ 毎日、足を石けんで指の間まで丁寧に洗う □ 洗ったあとは、指の間までしっかり乾かす □ 同じ靴を毎日履かず、2〜3足を替えて乾かす □ 通気性のよい靴・吸湿性のある靴下を選ぶ □ 職場やジムでは可能なら通気のよい履物に替える □ 温泉・プールのあとは足を洗って乾かす |
汗をかいたら足をふく、蒸れたらこまめに靴を脱いで乾かす——こうした「足を乾いた状態に保つ」工夫が、白癬菌の増殖を抑える一番のポイントです。5本指ソックスも、指の間の湿気対策として役立ちます。
受診の目安とチェックリスト
次のような場合は、市販薬で様子を見る前に、皮膚科の診察をおすすめします。正しい診断が、遠回りを防ぐ近道です。
|
受診をおすすめするサイン □ 市販の水虫薬を2週間ほど使っても良くならない □ かゆみがなくても、かかとがガサガサ・ひび割れる □ 爪が白〜黄色く濁る、厚くなる、崩れる □ 足の指の間がジュクジュクして、赤みや痛みがある □ 糖尿病があり、足に水虫や傷が見つかった □ ご家族に水虫の方がいて、うつっていないか心配 |
当院は内科・小児科・皮膚科・糖尿病内科を併せ持ち、田園調布・多摩川エリアの皆さまの「まず相談できるかかりつけ医」を目指しております。水虫の顕微鏡検査もその場で行えますので、「これは水虫かな?」と迷ったら、どうぞお気軽にお越しください。土曜午前も診療しておりますので、平日はお忙しい方もご利用いただけます。
|
関連記事|竹内内科小児科医院(田園調布)
|
|
関連情報|五良会グループ
|
五良会グループでは、田園調布の竹内内科小児科医院と港区の五良会クリニック白金高輪、横浜市都筑区の五良ファミリークリニック センター南が連携しております。患者さまの転居やライフスタイルの変化に合わせて、同じグループ内で継続して診療を受けていただける体制を整えております。
参考文献
- 日本皮膚科学会・日本医真菌学会合同皮膚真菌症診療ガイドライン策定委員会「皮膚真菌症診療ガイドライン2025」日本皮膚科学会雑誌. 2025.
- 望月隆ほか「日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン2019」日本皮膚科学会雑誌. 2019;129(13):2639-2673.
- 科研製薬「足白癬・爪白癬の実態と潜在罹患率の大規模疫学調査(Foot Check 2023)」プレスリリース(2024年4月)/日本臨床皮膚科医会雑誌. 2024.
- 日本皮膚科学会「皮膚科Q&A 水虫(白癬)」https://www.dermatol.or.jp/(2026年7月閲覧)
竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医