【2026年9月】スポーツの秋は「歩く」から始める運動療法|1日8,000歩・速歩きで血糖・血圧・脂質はどう変わる?身体活動・運動ガイド2023をやさしく解説【田園調布・多摩川】

皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。

9月に入り、朝晩は少しずつ過ごしやすくなってきました。厳しい残暑の間「外を歩くのはちょっと…」と運動を控えていた方にとって、これからの季節はまさに「歩き始めるのに一番よい時期」です。健康診断で血糖値・血圧・コレステロールを指摘され、「まずは運動を」と言われたものの、何をどれくらいやればよいのか分からない——そんなご相談を、この時期の外来でとても多くいただきます。

先日のブログでは、涼しくなった秋こそ始めたい筋トレ(レジスタンス運動)についてお伝えしました。今回はその姉妹編として、ウォーキングを中心とした「有酸素運動」を取り上げます。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」(2024年1月公表・10年ぶりの改訂)と、日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」に基づき、「1日どれくらい・どんな速さで・いつ歩くか」を、田園調布・多摩川エリアの皆さまの生活に引き寄せて解説いたします。

なぜ「歩くこと」が血糖・血圧・脂質の“クスリ”になるのか

ウォーキングのような有酸素運動は、生活習慣病の治療において食事療法と並ぶ「二本柱」と位置づけられています。単に「カロリーを消費する」だけではなく、体の中では次のような変化が起こっていると考えられています。

メカニズム図解|歩くと血糖・血圧はこう変わる

1 筋肉が糖を直接取り込む:歩いて筋肉を動かすと、筋肉の細胞表面に「糖の取り込み口(GLUT4=糖輸送体)」が出てきて、インスリンに頼らずに血液中のブドウ糖を取り込みます。食後の血糖上昇をやわらげる効果が期待できます。
2 インスリンの効きがよくなる:運動を続けるとインスリン抵抗性(インスリンの効きにくさ)が改善し、血糖値やHbA1c(過去1〜2か月の血糖の平均を反映する指標)の改善につながると報告されています。
3 血管がしなやかになり血圧が下がりやすくなる:有酸素運動には血管を広げる物質(一酸化窒素など)の働きを高め、降圧効果が期待できることが、高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)でも示されています。
4 中性脂肪・内臓脂肪が減り、HDL(善玉)コレステロールが増える:続けるほど脂質のバランスが整い、メタボリックシンドローム・動脈硬化の予防につながります。

つまりウォーキングは、血糖・血圧・脂質という健診で指摘されやすい3項目すべてに同時に働きかけられる、コストのかからない“治療”なのです。先日ご紹介した筋トレが「糖の貯蔵庫(筋肉)を増やす」アプローチだとすれば、有酸素運動は「今ある筋肉にしっかり糖を使ってもらう」アプローチ。両方を組み合わせることで、より高い効果が期待できます。

1日8,000歩・週150分——最新ガイドが勧める運動量

「どれくらい歩けばいいの?」に対する現在の国の答えが、厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」です。2013年の旧基準から10年ぶりに改訂され、年代別の推奨がより具体的になりました。

対象 身体活動(歩行など) 運動・筋トレ
成人 歩行またはそれと同等以上の活動を1日60分以上(約8,000歩以上) 息が弾み汗をかく程度の運動を週60分以上+筋トレを週2〜3回
高齢者 歩行またはそれと同等以上の活動を1日40分以上(約6,000歩以上) 体操・バランス運動など多要素な運動を週3日以上+筋トレ週2〜3回

また、糖尿病・糖尿病予備群の方については、日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」で、中強度以上の有酸素運動を週150分以上(週3回以上に分けて、運動しない日が2日以上続かないように)行うことが勧められています。週150分は、1回30分なら週5回、1回50分なら週3回に相当します。

ポイント|「今より10分多く」からで大丈夫です

ガイド2023の合言葉は「今よりも少しでも多く体を動かす(+10〔プラス・テン〕)」。8,000歩はあくまで目標であり、現在3,000歩の方が急に8,000歩を目指す必要はありません

歩数の増加はその分だけ健康効果が積み上がると報告されています。まずは「今より1,000歩(約10分)多く」から始めましょう。

効果を高める歩き方 4つのコツ

① 「ややきつい」と感じる速歩きを混ぜる

だらだら歩きよりも、「会話はできるが、歌は歌えない」程度の速歩き(中強度・3メッツ以上)のほうが、血糖・血圧への効果が高いとされています。ずっと速歩きでなくても、「3分ふつうに歩いて、3分速く歩く」を繰り返す方法なら、体力に自信のない方でも取り組みやすくおすすめです。

② 食後1時間ごろに歩くと「血糖値スパイク」対策に

食後30分〜1時間ごろは血糖値が上がってくるタイミング。ここで15〜30分歩くと、食後高血糖(血糖値スパイク)をやわらげる効果が期待できます。夕食後にテレビの前に座る時間を、少しだけ夜の散歩に置き換えてみてください。

③ こま切れでOK——10分×3回でも効果は積み上がる

「まとまった30分」が取れなくても大丈夫です。10分の歩行を1日3回に分けても、身体活動量としては積み上がります。通勤・買い物・昼休みなど、生活の中のこま切れ時間を活用しましょう。

④ 「記録」が継続のいちばんの味方

スマートフォンの歩数計やウェアラブル端末で歩数を「見える化」すると、継続率が上がることが知られています。まずは1週間、ご自身の平均歩数を知ることから。数字が見えると、「あと1,000歩」が具体的な行動に変わります。

多摩川・田園調布エリアで実践する「ながらウォーキング」

幸い、当院のある田園調布・多摩川エリアは、ウォーキングに恵まれた環境です。

多摩川の河川敷・多摩川台公園の遊歩道は信号が少なく、ご自身のペースで速歩きを続けやすいコースです。また、特別な運動時間を作らなくても、「東横線・目黒線の一駅手前で降りて歩く」「バスをやめて多摩川駅まで歩く」「買い物を少し遠回りする」といった“ながらウォーキング”でも、歩数は確実に積み上がります。朝晩が涼しくなるこれからの季節は、夏のような熱中症の心配が減る一方で、日中はまだ汗ばむ日もありますので、水分補給と帽子は引き続きお忘れなく。

歩き始める前に——注意が必要な方

運動を始める前に医師にご相談いただきたい方

心臓病・不整脈の既往がある方、健診で心電図異常を指摘された方

・血糖コントロールが不安定な方、進行した糖尿病網膜症・腎症・神経障害のある方(運動の種類・強度に調整が必要な場合があります)

血圧がかなり高い状態(目安として180/110mmHg以上)の方

・膝や腰に痛みのある方(水中歩行や自転車など関節にやさしい種目への変更も検討します)

重要|運動中にこんな症状が出たら、すぐ中止してください

・胸の痛み・締めつけ感、強い動悸・息切れ

・冷や汗、強いふらつき・めまい

・(糖尿病治療中の方)強い空腹感・手のふるえなどの低血糖症状——インスリンやSU薬など低血糖を起こしうるお薬を使用中の方は、ブドウ糖や補食を携帯しましょう

糖尿病の方は足のケアも大切です。歩き始める前に足に合った靴を選び、歩いたあとは靴ずれ・マメ・傷がないか足の裏までチェックする習慣をつけてください。足のしびれや変形が気になる方は、フットケアの記事もあわせてご覧ください。

当院でできるサポート

竹内内科小児科医院では、「まずは運動を」と言われた段階の方から、すでに糖尿病・高血圧・脂質異常症の治療中の方まで、お一人おひとりの体の状態に合わせた運動のご提案をしております。

血液検査・心電図などで運動を安全に始められる体かどうかを確認したうえで、生活リズムに合わせて「何を・どれくらい」を一緒に考えます。当院には管理栄養士による栄養相談もございますので、運動と食事の両輪でのサポートが可能です。土曜午前も診療しておりますので、平日はお忙しい働き盛り世代の方もご相談いただきやすい体制です。

受診前チェックリスト(運動のご相談の際にお持ちください)

□ 直近の健康診断の結果(血糖・HbA1c・血圧・脂質・心電図)

□ 服用中のお薬・お薬手帳(特に糖尿病・血圧のお薬)

□ ふだんの1日の歩数(スマートフォンの歩数計でわかる範囲で)

□ 膝・腰・足の痛みや、運動中に気になった症状のメモ

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五良会グループでは、田園調布の竹内内科小児科医院、港区の五良会クリニック白金高輪、横浜市都筑区の五良ファミリークリニックセンター南の医師が連携しております。患者さまの転居やライフスタイルの変化に合わせて、同じグループ内で継続診療が受けられる体制を整えております。

参考文献

  1. 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」(2024年1月公表)
  2. 日本糖尿病学会 編・著『糖尿病診療ガイドライン2024』南江堂, 2024.
  3. 日本高血圧学会『高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)』2025.
  4. 日本糖尿病学会 編・著『糖尿病治療ガイド2024』文光堂, 2024.
  5. 厚生労働省 e-ヘルスネット「健康日本21(第三次)における身体活動・運動の目標」(2026年9月閲覧)

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日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医

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