【抗加齢の最新研究】とんぶり成分は脂肪の吸収を抑える?米ぬかの新成分は肌バリアを守る?|専門医がやさしく解説【田園調布・多摩川】

皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。

「食べたあぶらを、なかったことにできたら——」。生活習慣病の外来をしていると、患者さまからこうした声をよくお聞きします。私自身、日本抗加齢医学会専門医として、また『あぶら落とすスープ』などの著書を通じて、「日々の食事で無理なく体をととのえる」というテーマに長く取り組んでまいりました。

そんな中、2025年から2026年にかけて、近畿大学のグループから食品由来成分に関する興味深い基礎研究が相次いで報告されました。ひとつは「とんぶり(畑のキャビア)」に含まれる成分による食事性脂肪の吸収抑制、もうひとつは「米ぬか(米糠)」由来の新しい成分による皮膚バリア機能の改善に関する報告です。

今回のブログでは、この2つの研究を「かかりつけ医」の視点から分かりやすくご紹介するとともに、あくまで研究段階の知見をどう受け止め、日々の食生活にどう活かせばよいかを、田園調布の皆さまと一緒に考えてみたいと思います。過度な期待や誤解を避けるための注意点も、あわせてお伝えいたします。

はじめにお読みください|この記事の位置づけ

本記事で紹介する研究は、いずれも動物(マウス)や培養細胞・皮膚モデルを用いた基礎研究の段階であり、ヒトでの効果・効能が確立されたものではありません。特定の食品や成分が病気を予防・治療すると保証するものではなく、また特定の商品の購入をおすすめするものでもありません。健康づくりの基本は、バランスのとれた食事・運動・睡眠であることに変わりはございません。

抗加齢医学が注目する「食品由来成分」

抗加齢医学(アンチエイジング医学)の分野では、身近な食品に含まれる成分(機能性成分)が、体の代謝や皮膚の健康にどのような働きを持つのかを、科学的に調べる研究が世界中で進められています。

こうした研究は、将来的な機能性表示食品や医薬品開発の「入口」として重要です。一方で、研究の多くは試験管の中(in vitro)や動物実験から始まり、「細胞・動物で確認された作用が、そのまま人間の体でも同じように起こるとは限らない」という点に注意が必要です。医師として大切にしているのは、こうした新しい知見を、期待しすぎず・軽視しすぎず、フラットに受け止める姿勢です。

研究①|とんぶり成分「モモルジンIc」と脂肪吸収

「とんぶり」は、ホウキギ(ホウキグサ)の成熟した種子を加工した秋田県の伝統食材で、そのプチプチとした食感から「畑のキャビア」とも呼ばれます。

近畿大学大学院薬学研究科などの共同研究グループは、とんぶり(マウンテンキャビア)に含まれるトリテルペンサポニンの一種「モモルジンIc(Momordin Ic)」に着目しました。高脂肪食を与えたマウスを用いた実験で、モモルジンIcが胃の内容物が腸へ送られる速度(胃排出)をゆるやかにし、さらに消化管ホルモン「GLP-1」の分泌を促すことを通じて、食事由来の脂肪の吸収を抑える働きを示したと報告しています。この成果は2026年7月に学術誌『Journal of Natural Medicines』に掲載されました。

ポイント|「GLP-1」とは

① 消化管から出るホルモン:食事をとると小腸などから分泌され、血糖の調整や食欲・胃の動きの調整に関わります。

② 糖尿病治療でもおなじみ:GLP-1の働きを利用したお薬は、実際に糖尿病や肥満症の治療でも用いられています。今回の研究は「食品成分がGLP-1の分泌に関わる可能性」を動物で示した点が注目されます。

メカニズム図解|どうやって脂肪の吸収を抑えるのか

メカニズム図解|モモルジンIcで報告された作用(マウス試験)

1 胃排出をゆるやかに:胃から腸へ食べ物が送られるスピードが遅くなり、脂肪が一気に吸収されにくくなります。
2 GLP-1の分泌を促進:消化管ホルモンGLP-1の分泌が高まり、胃の動きや代謝の調整に関わります。
3 結果:食事性脂肪の吸収を抑制(マウス):これらの働きを通じて、高脂肪食マウスで肥満・脂質異常の予防的な作用が示されました。

興味深いのは、この作用が「膵リパーゼ(脂肪を分解する酵素)を直接ブロックする」タイプではなく、胃と腸のはたらき・ホルモンを介した、体にとって自然な調整に近い経路で報告されている点です。ただし、繰り返しになりますが、これはマウスでの結果であり、人がとんぶりを食べて同じ効果が得られると示されたわけではありません。

研究②|米ぬか由来の新成分と皮膚バリア

もうひとつは、皮膚の健康に関わる研究です。近畿大学薬学総合研究所とオリザ油化株式会社の共同研究グループは、米ぬか(米糠)から米油をつくる際に出る副産物から、これまで知られていなかった3種類の新規化合物(アシル化グルコシルセラミド)を発見し、その化学構造を解明しました。米の学名にちなんで「oryzaceramide(オリザセラミド)A・B・C」と名づけられています。

このうち「oryzaceramide A」を、ヒトの表皮を再現した三次元培養モデルに加えたところ、皮膚から水分が逃げる量(経表皮水分蒸散量:TEWL)が有意に減少し、角層(皮膚の一番外側)のバリア機能が改善することが示されました。この成果は2025年11月に学術誌『Phytochemistry Letters』に掲載されています。

ポイント|「皮膚バリア」と「セラミド」

① 皮膚バリアとは:肌の一番外側で、水分の蒸発を防ぎ、外からの刺激をブロックする働き。これが弱ると乾燥やかゆみ、肌荒れが起こりやすくなります。

② セラミドの役割:角層のすき間を埋めて水分を保つ、バリア機能の要となる成分。今回はその仲間の「新しいセラミド」が米ぬかから見つかった、というニュースです。

身近な「米ぬか」から新しい機能性成分が見つかったことは、食品や化粧品への応用が期待される一方で、こちらも培養皮膚モデルでの結果です。「米ぬかを塗れば・食べれば肌が若返る」といった話ではない点にご注意ください。

研究結果を「正しく」受け止めるために

重要|研究ニュースを読むときの3つの視点

「誰で」調べた研究か:細胞・動物か、人か。今回はいずれも細胞・動物の段階です。

「成分」と「食品そのもの」は別:精製した成分での結果が、その食品を食べた効果を意味するとは限りません。

「予防・改善の可能性」=「効く」ではない:確立された効果効能ではなく、今後の研究で検証される仮説の段階です。

新しい研究は、私たちに「食のちからの奥深さ」を教えてくれます。とんぶりも米ぬか(玄米)も、古くから日本人が食べてきた滋味豊かな食材です。こうしたニュースは、特定の成分に飛びつくきっかけではなく、「昔ながらのバランスのよい和食を、あらためて見直す」きっかけとして受け止めていただくのが、抗加齢医学の観点からも健やかだと考えています。

今日からできる「あぶらと上手につきあう」食生活

脂肪の吸収を抑える特別な成分を探すよりも、まずは日々の食べ方を少し工夫することが、生活習慣病予防の確かな一歩になります。外来でお伝えしている基本を、いくつかご紹介いたします。

あぶらと上手につきあう食習慣チェック

食べる順番:野菜・汁物・きのこ・海藻などの食物繊維を先に。急な血糖・脂質の上昇をゆるやかに

よく噛んでゆっくり:胃排出や満腹感の調整に役立ちます

主食に雑穀・玄米を少し:白米に混ぜるだけでも食物繊維がプラス

あぶらは「量」より「質」:青魚やオリーブ油など、質のよい脂を適量

汁物(スープ)を上手に:野菜たっぷりの汁物は満足感が得やすく、食べ過ぎ予防に

私の著書『あぶら落とすスープ』も、こうした「毎日の食事で無理なく続ける」という考え方から生まれたものです。特別な食材や高価なサプリメントに頼らずとも、身近な食材の組み合わせと食べ方で、体は少しずつ応えてくれます。気になる方は、当院の管理栄養士による栄養相談もぜひご活用ください。

当院・五良会グループのサポート

竹内内科小児科医院では、糖尿病・脂質異常症・肥満症などの生活習慣病について、日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医である院長が、お薬だけに頼らない食事・生活の見直しも含めてご相談を承っております。管理栄養士による栄養相談では、お一人おひとりの生活に合わせた具体的な食事の工夫をご提案いたします。土曜午前も診療しておりますので、お仕事帰りやご家族そろってのご相談もしやすい体制です。

肌の乾燥・肌荒れなど皮膚のお悩みは、当院の皮膚科でもご相談いただけます。より専門的な美容・アンチエイジングのご相談については、五良会グループの五良会クリニック白金高輪(港区)とも連携してご対応いたします。

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【院長紹介】竹内内科小児科医院 院長 五藤良将
糖尿病・生活習慣病・抗加齢医学への取り組みについて。

五良会グループでは、田園調布の竹内内科小児科医院と港区の五良会クリニック白金高輪が連携し、生活習慣病から皮膚・アンチエイジングのご相談まで、多角的にサポートしております。患者さまのライフスタイルや転居に合わせて、同じグループ内で継続診療が受けられる体制を整えております。

参考文献

  1. 近畿大学「マウンテンキャビアエキス由来モモルジンIcの胃排出遅延とGLP-1分泌促進を介した肥満・脂質異常症予防効果」Journal of Natural Medicines. 2026年7月8日掲載. DOI:10.1007/s11418-026-02052-3(2026年7月閲覧)
  2. 近畿大学・オリザ油化「米糠の副産物から3種の新規化合物(oryzaceramide A・B・C)を発見し化学構造を解明、うち1種が皮膚バリア機能を高めることを解明」Phytochemistry Letters. 2025年11月26日オンライン掲載(2026年7月閲覧)
  3. 近畿大学アンチエイジングセンター 公式サイト(2026年7月閲覧)
  4. 日本抗加齢医学会 公式サイト(2026年7月閲覧)

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日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医

Author: 五藤 良将