皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。
朝晩めっきり涼しくなり、田園調布の街路樹も少しずつ色づき始めました。秋は健康診断の結果が手元に届く季節でもありますが、最近の外来で増えているのが、「リウマチや喘息(ぜんそく)の治療でステロイドのお薬を飲み始めたら、血糖値が上がると言われた」「ステロイドを使っている間、血糖は大丈夫でしょうか」というご相談です。
ステロイド(副腎皮質ステロイド薬)は、膠原病(こうげんびょう)・気管支喘息・皮膚疾患・アレルギー疾患・がん治療の支持療法など、とても幅広い病気に使われる大切なお薬です。その一方で、血糖値を上げる作用があり、服用中に糖尿病と同じ状態になってしまうことがあります。これを「ステロイド糖尿病(ステロイド誘発性糖尿病)」と呼びます。今回は、日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」などの最新の知見をもとに、ステロイド糖尿病の仕組み・特徴・気づき方・治療について、やさしく解説いたします。
ステロイド糖尿病には「空腹時の血糖は正常なのに、昼から夕方にかけて血糖が上がる」という大きな特徴があり、通常の健診だけでは見逃されやすい病態です。ステロイドを服用中の方はもちろん、これから服用予定の方やご家族の方も、ぜひ最後までお読みください。
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竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医
この記事は五藤良将が執筆・監修し、内容に責任を持っています。
目次
ステロイドはどんなお薬?なぜ血糖値が上がるのか
ステロイド薬(副腎皮質ステロイド、代表的なお薬にプレドニゾロンなど)は、体の中でつくられるホルモン「コルチゾール」を薬にしたもので、炎症や過剰な免疫反応を強力に抑える働きがあります。関節リウマチやリウマチ性多発筋痛症などの膠原病、気管支喘息の発作、重い皮膚炎、ネフローゼ症候群、がん治療の支持療法まで、現代の医療に欠かせないお薬です。
一方でコルチゾールは、もともと「体にエネルギー(ブドウ糖)を供給するホルモン」でもあります。そのため、お薬として一定量以上を続けて使うと、次のような仕組みで血糖値が上がりやすくなります。
メカニズム図解|ステロイドで血糖値が上がる3つのルート
| 肝臓での糖新生(とうしんせい)が増える:肝臓がブドウ糖を新しくつくる働きが強まり、血液中に糖が送り出されます | |
| 筋肉・脂肪でインスリン抵抗性が強まる:血糖を下げるホルモン「インスリン」の効きが悪くなり、食後に取り込まれるはずの糖が血液中に残ります | |
| 膵臓(すいぞう)からのインスリン分泌も抑えられる:血糖が上がっても十分なインスリンが出にくくなります | |
| 結果:特に「食後」の血糖値が上がりやすくなる(ステロイド糖尿病) |
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用語解説|「糖新生」「インスリン抵抗性」とは ① 糖新生(とうしんせい):肝臓がアミノ酸などの材料からブドウ糖を新しくつくり出す働きです。本来は飢餓に備える大切な仕組みですが、ステロイドはこの働きを必要以上に強めてしまいます。 ② インスリン抵抗性:血糖を下げるホルモン「インスリン」は出ているのに、筋肉や脂肪・肝臓でその効きが悪くなっている状態です。肥満や運動不足でも生じますが、ステロイドはこれを短期間で強めます。 |
ステロイド糖尿病の特徴|「昼〜夕方の高血糖」と見逃しの落とし穴
ステロイド糖尿病は、いわゆる2型糖尿病とは血糖の上がり方のパターンが異なります。最大の特徴は、朝の空腹時血糖はほぼ正常なのに、昼食後から夕方にかけて血糖値が大きく上がることです。
プレドニゾロンなど多くの飲み薬のステロイドは朝に内服することが多く、お薬の血糖上昇作用が数時間後の昼〜夕方にピークを迎えるためです。夜間には作用が弱まるため、翌朝の空腹時血糖はまた正常近くに戻ります。
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見逃しの落とし穴|朝の採血だけでは分かりません 健康診断や外来の採血は多くが朝の空腹時に行われます。ステロイド糖尿病では空腹時血糖が正常のことが多いため、「朝の血糖値は問題なし」でも昼〜夕方には200mg/dLを超えている、ということが起こり得ます。 また、過去1〜2か月の血糖の平均を反映するHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)も、ステロイドを始めて間もない時期には、まだ上がっていないことがあります。「空腹時血糖とHbA1cが正常=安心」とは限らない点が、この病態の難しいところです。 |
| 項目 | 一般的な2型糖尿病 | ステロイド糖尿病 |
|---|---|---|
| 朝の空腹時血糖 | 上がりやすい | 正常のことが多い |
| 血糖が上がる時間帯 | 1日を通じて | 昼食後〜夕方が中心 |
| 経過 | ゆっくり進行 | ステロイド開始後、数日〜数週間で出現することも |
| お薬をやめた後 | 継続的な管理が必要 | 減量・中止で改善することが多い(戻らない場合もあり) |
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用語解説|「二次性糖尿病」とは 糖尿病には、1型・2型のほかに、ほかの病気やお薬が原因となって起こる糖尿病があり、これを「二次性糖尿病(その他の特定の機序・疾患による糖尿病)」と呼びます。ステロイド糖尿病はその代表例で、ほかに膵臓の病気(膵炎・膵がん)やホルモンの病気(クッシング症候群・先端巨大症など)、一部の免疫チェックポイント阻害薬などのお薬も原因になります。原因を取り除ける場合は血糖が改善する可能性がある点が、通常の2型糖尿病との大きな違いです。 |
どんな方がなりやすい?|外来でよくある2つのケース
ステロイドを使えば全員が糖尿病になるわけではありません。発症のしやすさには、ステロイドの量と期間に加えて、もともとの体質が関わります。次のような方は特に注意が必要です。
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ステロイド糖尿病のリスクが高い方 □ ステロイドの内服量が多い・服用期間が長い(用量が多いほどリスクは高まります) □ ご家族に糖尿病の方がいる □ 健診で「血糖値が高め」「境界型(糖尿病予備群)」と言われたことがある □ 肥満・メタボリックシンドロームがある □ ご高齢の方(加齢とともにインスリンの分泌力・効きは低下します) |
当院の外来でよく出会うような患者さんをイメージした、架空の2つの例をご紹介します(実在の患者さんの情報ではありません)。ご自身と重なる点がないか、ぜひ確かめてみてください。
ケース1:リウマチ性多発筋痛症でステロイドを開始した60代の女性
68歳の女性。肩や腰の強い痛みで「リウマチ性多発筋痛症」と診断され、プレドニゾロン15mg/日の内服が始まりました。痛みは劇的に良くなりましたが、開始2週間後、たまたま夕方に測った血糖値が245mg/dLと高値。朝の空腹時血糖は105mg/dL、HbA1cは6.0%とほぼ正常でした。まさに「朝は正常・夕方だけ高い」ステロイド糖尿病の典型パターンです。この方の場合、ステロイドを続けながら血糖の推移を確認し、必要に応じて食事の工夫やお薬による血糖管理を並行して行っていくことになります。
ケース2:健診で「血糖値が高め」だった50代の男性会社員
55歳の男性会社員、BMI 27の肥満傾向。数年前から健診で「血糖値が高め(境界型)」を指摘されつつ、お忙しくて受診はされていませんでした。今回、気管支喘息の悪化で1週間ほどステロイドの内服治療を受けたところ、のどの渇き・トイレの回数の増加が出現し、来院時の随時血糖は280mg/dL。もともと境界型だった方は、短期間のステロイドでも一気に血糖が上がることがあります。このように、ステロイドは「隠れていた糖尿病体質」を表に出すきっかけにもなるのです。
どうやって見つける?|検査のポイント
ステロイド糖尿病を見つけるポイントは、「いつ測るか」にあります。当院では、ステロイドを服用中・服用予定の方に対して、次のような形で血糖のチェックをお勧めしています。
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ポイント|ステロイド服用中の血糖チェック ① 昼食後〜夕方の血糖測定:朝の空腹時ではなく、血糖が最も上がりやすい昼食後2時間や夕食前の測定が有用です。 ② 開始前の評価:ステロイドを始める前に血糖・HbA1cを測っておくと、変化を早く捉えられます。中〜高用量を長く使う予定の方では特に大切です。 ③ 血糖自己測定・CGMの活用:必要に応じて、血糖自己測定(SMBG)や皮膚に貼るセンサーで血糖の動きを連続的に見るCGM(持続血糖モニタリング)を活用すると、1日の中の血糖の山と谷が一目で分かります。 |
すでにのどの渇き・水をよく飲む・尿の回数が増える・体重が減る・強いだるさといった症状がある場合は、血糖がかなり高くなっているサインの可能性があります。早めの受診をお願いいたします。
治療と血糖管理|ステロイドは自己判断でやめないでください
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重要|血糖値が上がっても、ステロイドの自己中断は絶対に避けてください ・ステロイドを急にやめると、もとの病気(リウマチ・喘息など)が悪化する恐れがあります。 ・長期間服用していた方が急に中止すると、体が自前のコルチゾールをつくれなくなっている「副腎不全」という危険な状態(だるさ・血圧低下・意識障害など)を起こすことがあります。 ・血糖が上がった場合は、ステロイドを続けながら血糖を管理する方法がありますので、必ず処方医・かかりつけ医にご相談ください。 |
ステロイド糖尿病の血糖管理は、ステロイドの量・期間、血糖の上がり方、もとの病気の状況に合わせて個別に調整します。一般的には次のような考え方で治療を行います。
| 状況 | 血糖管理の考え方 |
|---|---|
| 血糖上昇が軽度 | 食事療法(特に昼食・夕食の糖質の量とバランス)・運動療法を基本に、必要に応じて飲み薬(内服血糖降下薬)を検討します。 |
| 血糖上昇が高度/中〜高用量のステロイド | 昼〜夕方の高血糖に合わせたインスリン療法(特に昼食・夕食前の超速効型インスリンなど)が有効な場合が多く、血糖の動きに合わせてきめ細かく調整します。 |
| ステロイドを減量・中止するとき | 血糖は下がる方向に動くため、血糖降下薬やインスリンをそのままにしていると低血糖の危険があります。ステロイドの減量に合わせて、血糖のお薬も一緒に見直します。 |
ステロイドを減量・中止できれば血糖が改善する方が多い一方、もともと糖尿病体質のあった方では、そのまま2型糖尿病として治療の継続が必要になる場合もあります。ステロイド治療が終わった後も、健診などで血糖のフォローを続けることが大切です。
なお、ステロイドの長期使用では、血糖のほかにも骨粗鬆症(こつそしょうしょう)・感染症・胃潰瘍・血圧上昇などに注意が必要です。骨と糖尿病の関係については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
受診前チェックリスト
ステロイド服用中の血糖についてご相談いただく際は、以下をご確認のうえお越しいただくと、診察がスムーズです。
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受診前チェックリスト □ 服用中のステロイドの種類・量・開始時期(お薬手帳をお持ちください) □ ステロイドを処方されている病気(原疾患)と、処方元の医療機関 □ 直近の健診結果(血糖値・HbA1c)や、ご自身で測った血糖の記録 □ のどの渇き・多尿・体重減少・だるさなどの症状の有無 □ ご家族の糖尿病の有無、過去に「血糖が高め」と言われた経験 |
🏥 竹内内科小児科医院で診るという選択(当院が選ばれる理由)
ステロイド糖尿病は、「もとの病気の治療」と「血糖の管理」を両にらみで進める必要がある病態です。ここまでお読みいただいた内容を、当院ではこのような体制で診ています。
理由① 糖尿病・生活習慣病の専門的な外来
日本糖尿病協会登録医・日本抗加齢医学会専門医の院長が、ステロイド服用中の血糖チェックから、食事・運動・お薬・インスリンによる管理まで外来で直接担当します。
理由② 処方元の医療機関と連携した血糖管理
リウマチ・喘息・皮膚疾患などでステロイドを処方されている主治医と診療情報をやり取りしながら、血糖管理を分担する形での診療に対応しています。
理由③ 内科×小児科の併設・ご家族そろって
お子さまの喘息治療からご高齢の方の膠原病・糖尿病まで、ご家族が同じ窓口でご相談いただけます。訪問診療にも対応しています。
理由④ 通いやすさ|多摩川駅徒歩5分・土曜午前も診療
東急東横線・目黒線「多摩川駅」徒歩5分。平日は19時まで、土曜も午前診療を行っており、お仕事帰りや週末の受診が可能です。
理由⑤ 五良会グループの連携
より専門的な検査(内視鏡・人間ドックなど)が必要な場合は、姉妹院の五良会クリニック白金高輪へ切れ目なくご紹介できます。
ステロイド服用中の血糖値が気になったら、一度ご相談ください。
ご予約はWEB予約(CLINICS)から。/お電話 03-3721-5222
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五良会グループでは、田園調布から白金高輪まで医師が連携しております。患者さまの転居やライフスタイルの変化に合わせて、同じグループ内で継続診療が受けられる体制を整えております。
参考文献
- 日本糖尿病学会 編・著『糖尿病診療ガイドライン2024』南江堂, 2024.
- 日本糖尿病学会 編・著『糖尿病治療ガイド2024』文光堂, 2024.
- 日本内分泌学会「ステロイド糖尿病(一般の皆様へ)」https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=99(2026年9月閲覧)
- American Diabetes Association. Standards of Care in Diabetes—2026. Diabetes Care. 2026;49(Suppl 1).
- 日本糖尿病・生活習慣病ヒューマンデータ学会「糖尿病標準診療マニュアル2026」2026.
AUTHOR / SUPERVISOR
竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将(ごとう よしまさ)
- 防衛医科大学校 医学部 卒業(27期)。防衛医科大学校病院、自衛隊中央病院、自衛隊横須賀病院ほかで臨床経験を積む
- 医療法人社団 五良会 理事長/医療法人社団 正友会 理事長/竹内内科小児科医院 院長
- 日本内科学会 認定内科医/日本抗加齢医学会 専門医/日本糖尿病協会 登録医/日本旅行医学会 認定医
- 日本温泉気候物理医学会 温泉療法専門医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/難病指定医
- 所属学会:日本内科学会、日本糖尿病学会、日本アレルギー学会、日本東洋医学会、日本リウマチ学会、日本外来小児科学会、日本抗加齢医学会、日本睡眠学会、日本美容内科学会、日本旅行医学会 ほか
- 著書『あぶら落とすスープ』(アスコム)。NHK・TBS・フジテレビ・日本テレビ・テレビ朝日などメディア出演多数
執筆・監修責任について
本記事は、五藤良将が公的機関の発表・国内外の診療ガイドライン・査読済み論文を確認したうえで執筆・監修しています。内容は公開時点の情報に基づくものであり、新しい知見やガイドラインの改訂があった場合は、こちらで記事を更新します。
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個々の患者さんの診断・治療に代わるものではありません。症状や治療のご判断については、必ず医師にご相談ください。記載内容について気になる点がございましたら、竹内内科小児科医院(03-3721-5222)までお知らせください。
竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医