【2026年秋】食事の「糖質」を数える〈カーボカウント〉入門|新米・秋の味覚も楽しめる糖尿病の食事療法を院長がやさしく解説【田園調布・多摩川】

皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。

新米や栗、さつまいも、ぶどうや梨——実りの秋を迎え、田園調布の外来でも「糖尿病だけど、秋の味覚はどれくらい食べていいの?」「食事療法って、結局何をどれだけ食べればいいの?」というご質問が増えています。カロリー計算は難しくて続かなかった、という声も少なくありません。

そこで今回は、食事に含まれる糖質の量(カーボ)を「数える」ことで血糖値と上手に付き合う食事療法「カーボカウント」について、日本糖尿病学会の糖尿病診療ガイドライン2024「カーボカウントの手びき」、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」に基づき、基礎から応用までやさしく解説いたします。今回は普段より一歩踏み込んだ専門用語も登場しますが、そのつど「用語解説」ボックスでかみくだいてご説明しますので、どうぞ安心してお読みください。

秋の味覚と血糖値については、姉妹記事「実りの秋の「新米・果物・さつまいも」と血糖値」もあわせてご覧ください。

カーボカウントとは?——「カロリー」ではなく「糖質」を数える

カーボカウント(carbohydrate counting:炭水化物計算)とは、食事に含まれる炭水化物(とくに糖質)の量に注目して、食後の血糖値をコントロールする食事療法です。もともとは1型糖尿病のインスリン治療のために発展した方法ですが、現在では2型糖尿病の方の食後高血糖対策としても広く活用されており、日本糖尿病学会も「カーボカウントの手びき」という患者さん向けのテキストを発行しています。

「食事療法=カロリー制限」と思われがちですが、食後すぐの血糖値をもっとも大きく動かすのは、カロリーそのものではなく糖質の量です。つまり「今日の昼食には糖質が何グラム入っているか」を知ることが、血糖管理の第一歩になるのです。

用語解説|「炭水化物」「糖質」「カーボ」とは

① 炭水化物:糖質と食物繊維を合わせた栄養素の総称です。ご飯・パン・麺・いも類・果物・砂糖などに多く含まれます。

② 糖質:炭水化物から食物繊維を除いたもの。体内でブドウ糖に分解され、血糖値を直接上げる成分です。

③ カーボ:カーボカウントで使う糖質量の単位。日本では糖質10g=1カーボと数える方法が広く用いられています(例:ご飯150gの糖質約55g=約5.5カーボ)。

なぜ糖質が血糖値を決めるのか——3大栄養素と食後高血糖のメカニズム

食事に含まれるエネルギー源は、糖質・たんぱく質・脂質の3大栄養素ですが、血糖値への影響の仕方はまったく異なります。糖質は食後15分程度から血糖値を上げ始め、食べた糖質のほぼすべてが約2時間以内に血糖(ブドウ糖)に変わるとされています。一方、たんぱく質や脂質が食後すぐの血糖値に与える影響はゆるやかです。

メカニズム図解|糖質が食後の血糖値を上げるまで

1 糖質を食べる:ご飯・パン・麺・果物などの糖質が消化され、ブドウ糖に分解されます。
2 血糖値が上がる:ブドウ糖が小腸から吸収され、血液中に入ります。糖質の「量」が多いほど上がり幅も大きくなります。
3 インスリンが働く:すい臓から分泌されるホルモン「インスリン」が、ブドウ糖を筋肉や肝臓に取り込ませます。
4 糖質量が読めれば血糖値も読める:インスリンの分泌が不足していたり効きが悪い糖尿病の方でも、糖質量をそろえれば食後血糖の変動が予測しやすくなります。

このように「糖質の量」と「食後血糖」はほぼ比例の関係にあるため、糖質量を把握することが血糖コントロールの合理的な近道になるのです。なお、食べる順番(ベジファースト)や食べる速さも食後血糖に影響します。詳しくは「「食べる順番」と「食べる速さ」で血糖値は変わる」をご覧ください。

基礎カーボカウント——毎食の糖質量を「ほぼ一定」にするコツと食品別早見表

カーボカウントには「基礎」と「応用」の2段階があります。まず、すべての糖尿病の方に役立つのが基礎カーボカウントです。これは、毎回の食事の糖質量をほぼ一定に保つことで、食後血糖の大きな山谷(血糖変動)を減らす方法です。

1日の糖質量の目安はどれくらい?

日本糖尿病学会の糖尿病診療ガイドライン2024では、糖質を極端に制限するのではなく、炭水化物はエネルギー比40〜60%を目安に、患者さんごとに柔軟に調整することが基本とされています。また厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」でも、炭水化物の目標量はエネルギー比50〜65%とされています。

たとえば1日1,600kcalの食事なら、その約半分(50〜55%)を炭水化物からとる場合、糖質はおおよそ1日200g前後、毎食60〜70g(6〜7カーボ)+間食10g程度が一つの目安になります。必要なエネルギー量は年齢・体格・活動量・治療内容によって変わりますので、ご自身の目安は主治医や管理栄養士と一緒に決めることが大切です。

身近な食品の糖質量早見表(秋の味覚も)

食品 目安量 糖質量(約)
ご飯(新米も同様) 茶碗1杯(150g) 約55g(5.5カーボ)
おにぎり 1個(100g) 約37g(3.7カーボ)
食パン 6枚切り1枚(60g) 約27g(2.7カーボ)
うどん(ゆで) 1玉(250g) 約52g(5.2カーボ)
ラーメン 1杯(麺・スープ含む) 約65〜70g(6.5〜7カーボ)
さつまいも(ふかしいも) 100g 約30g(3カーボ)
りんご 1/2個(可食部150g) 約20g(2カーボ)
ぶどう 100g(小房) 約15g(1.5カーボ)
肉・魚・卵・チーズ 通常の1食分 ほぼ0g

※糖質量は「日本食品標準成分表」等に基づくおおよその目安です。品種や調理法で変わります。

こうして見ると、ラーメン+半チャーハンのような「主食の重ね食べ」では糖質が100gを大きく超える一方、おかず(肉・魚・卵)はほとんど血糖値を上げないことがわかります。「主食の量をそろえ、おかずと野菜をしっかり」が基礎カーボカウントの合言葉です。

応用カーボカウント——インスリン治療中の方の「一歩進んだ」使い方

1型糖尿病の方や、2型糖尿病でも毎食前に超速効型インスリンを注射する強化インスリン療法(きょうかインスリンりょうほう:基礎インスリンと毎食前の追加インスリンを組み合わせる治療法)を行っている方では、応用カーボカウントが役立ちます。これは、食事の糖質量に合わせて食前の追加インスリン量(責任インスリン)を調整する方法で、「インスリン/カーボ比」と「インスリン効果値」という2つの指標を使います。

用語解説|インスリン/カーボ比(ICR)とインスリン効果値(ISF)

① インスリン/カーボ比(insulin-to-carbohydrate ratio):糖質1カーボ(10g)を処理するのに必要な超速効型インスリンの単位数。たとえば「1カーボにつき1単位」の方が糖質50g(5カーボ)の食事をとるなら、追加インスリンは5単位、という考え方です。

② インスリン効果値(insulin sensitivity factor:修正因子):超速効型インスリン1単位で血糖値が何mg/dL下がるかを表す数値。食前血糖が目標より高いときの「補正インスリン」の計算に使います。

これらの数値はお一人おひとりで大きく異なり、血糖記録やCGM(持続血糖モニタリング)のデータをもとに主治医が一緒に設定します。

インスリン量の自己調整は必ず主治医と相談してから

インスリン/カーボ比やインスリン効果値を用いた調整を自己判断で始めると、重い低血糖や高血糖の原因になります。開始・変更は必ず主治医・医療スタッフの指導のもとで行ってください。低血糖のサインと対処は「低血糖対処完全ガイド」で詳しく解説しています。

応用カーボカウントを身につけると、「外食だから打つ量がわからない」「食欲がない日はどうすれば」といった場面でも柔軟に対応できるようになり、食事の自由度が広がります。インスリン療法そのものについては「「インスリンは最後の手段」ではありません」もご参照ください。

外来でよくあるモデルケース——Aさん・Bさんの場合

※以下は、当院の外来でよく出会う患者さんをイメージした架空のモデルケースであり、特定の患者さんの診療情報ではありません。

Aさん(58歳・男性・会社員)——2型糖尿病、HbA1c 7.6%、BMI 26

営業職のAさんは昼食がほぼ外食で、ラーメン+半チャーハン(糖質約100〜120g)が定番でした。飲み薬(メトホルミン)で治療中ですが、食後の血糖値スパイク(食後高血糖)が課題でした。基礎カーボカウントを学び、昼食を「定食スタイル(ご飯150g+主菜+野菜)=糖質約60g台」に置き換え、麺類は週1回のお楽しみに。3か月後、体重は2kg減り、HbA1cは7.0%まで改善しました。「我慢ではなく、量の調整だと思えたのが続いた理由」とのことでした。

Bさん(34歳・女性)——1型糖尿病、強化インスリン療法中

Bさんは毎食のインスリン量が「いつも同じ単位」だったため、食事内容によって食後の高血糖と低血糖を繰り返していました。CGMのデータをもとに主治医とインスリン/カーボ比を設定し、応用カーボカウントを導入したところ、血糖変動の幅が小さくなり、友人との外食や秋の行楽のお弁当も安心して楽しめるようになりました。1型糖尿病については「子どもも大人も発症する「1型糖尿病」とは?」で詳しく解説しています。

カーボカウントの落とし穴——「糖質制限」との違いと注意点

カーボカウントは「糖質を数える」方法であって、「糖質を極端に減らす」方法ではありません。ここを誤解すると、かえって健康を損なうことがあります。

カーボカウント実践時の4つの注意点

① カーボカウント≠糖質制限:糖尿病診療ガイドライン2024でも、極端な糖質制限の長期的な安全性は確立しておらず、炭水化物はエネルギー比40〜60%を目安に個別に調整することが基本とされています。

② おかずの食べ過ぎに注意:「糖質さえ減らせば、おかずは無制限」ではありません。脂質のとり過ぎはエネルギー過多や脂質異常症につながり、消化の遅い高脂肪食は数時間後の血糖上昇(遅延性高血糖)の原因にもなります。

③ 低血糖リスクのある薬を使っている方:スルホニル尿素(SU)薬やインスリンを使用中の方が自己流で糖質を大きく減らすと、低血糖を起こす危険があります。必ず主治医にご相談ください。

④ 腎症など合併症のある方:糖尿病性腎症(とうにょうびょうせいじんしょう:糖尿病の三大合併症の一つで、腎臓の濾過機能が障害される病気)などがある方は、たんぱく質量など別の調整も必要です。自己判断せず個別の栄養指導を受けましょう。

当院でのサポートと受診の目安

竹内内科小児科医院では、糖尿病内科・代謝内科の外来で、血糖値・HbA1cの評価から食事療法・運動療法・薬物療法まで一貫してサポートしております。栄養相談にも対応しており、カーボカウントも「まずは自分の定番メニューの糖質量を知る」ところから、無理なく始められるようお手伝いいたします。FreeStyleリブレなどのCGM(持続血糖モニタリング)を活用した食後血糖の「見える化」も行っています。

こんな方はご相談ください

□ 健診で血糖値・HbA1cが高めと言われたが、食事をどう変えればよいかわからない

□ 薬は飲んでいるのに、食後の血糖値だけが高い(食後高血糖を指摘された)

□ インスリン治療中で、食事のたびに血糖値が乱高下する

□ 糖質制限を自己流で続けていて、このままでよいか不安

□ 秋の味覚や外食を、血糖値を気にしすぎず楽しみたい

ご予約・ご相談は竹内内科小児科医院へ

東急東横線・目黒線「多摩川駅」徒歩5分。土曜午前も診療しており、平日はお忙しい方もご相談いただけます。内科・小児科併設ですので、ご家族そろっての受診も可能です。

診療時間:午前9:00〜12:00/午後15:30〜19:00(土曜は午前のみ、日祝休診)
お電話(03-3721-5222)または記事末尾のWEB予約・WEB問診・LINEの各ボタンからご予約ください。

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五良会グループでは、田園調布の竹内内科小児科医院と港区の五良会クリニック白金高輪、横浜市都筑区の五良ファミリークリニックセンター南の医師が連携し、糖尿病の食事療法から専門的な血糖管理まで多角的にサポートしております。患者さまの転居やライフスタイルの変化に合わせて、同じグループ内で継続診療が受けられる体制を整えております。

参考文献

  1. 日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病診療ガイドライン2024. 南江堂; 2024.(3章 食事療法)
  2. 日本糖尿病学会 編・著. カーボカウントの手びき——「糖尿病食事療法のための食品交換表」準拠. 文光堂; 2017.
  3. 日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病食事療法のための食品交換表 第7版. 文光堂; 2013.
  4. 日本糖尿病学会 編・著. 医療者のためのカーボカウント指導テキスト. 文光堂; 2017.
  5. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(2026年9月閲覧)
  6. 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補」(2026年9月閲覧)

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日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医

Author: 五藤 良将