【2026年秋】子どもも大人も、生活習慣と関係なく発症する「1型糖尿病」とは?|2型との違い・3つのタイプ・受診のサインを院長がやさしく解説【田園調布・多摩川】

皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。

秋の健康診断や学校健診の結果が届く季節になりました。当院は内科と小児科を併設していることもあり、「子どもの尿検査で糖が出たと言われた」「痩せているのに血糖値が高いと言われた。自分は本当に2型糖尿病なのでしょうか」というご相談をいただくことがあります。糖尿病というと中高年の生活習慣病というイメージが強いのですが、実は生活習慣とは関係なく、子どもから大人まで、どの年齢でも突然発症しうる「1型糖尿病」というタイプがあります。

今回のブログでは、日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」および同学会の各診断基準(急性発症1型糖尿病の診断基準〈2012〉、劇症1型糖尿病診断基準〈2012〉、緩徐進行1型糖尿病〈SPIDDM〉の診断基準〈2023〉)をもとに、1型糖尿病の基礎知識・気づくためのサイン・診断と治療の流れを、田園調布・多摩川エリアの皆さまに向けてやさしく解説いたします。

2型糖尿病の診断基準については、こちらの記事もあわせてご覧ください:健診で「血糖値・HbA1cが高め」と言われたら

1型糖尿病とは?——2型糖尿病との違い

糖尿病は「血糖値を下げるホルモンであるインスリンの働きが足りなくなる病気」ですが、その理由によって大きくタイプが分かれます。日本の糖尿病の約9割を占める2型糖尿病は、体質(遺伝的な背景)に加えて食事・運動などの生活習慣が関わり、インスリンの「効きが悪くなる」「分泌が徐々に減る」ことで起こります。

一方、1型糖尿病は、主に自己免疫(本来はウイルスなどから体を守る免疫が、誤って自分の膵臓を攻撃してしまう反応)によって、インスリンを作る膵臓のβ細胞(べーたさいぼう)が壊されてしまい、インスリンそのものがほとんど作れなくなる病気です。生活習慣や食べすぎ、甘いものの摂りすぎが原因ではありません。この点は、ご本人やご家族が誤解や偏見で苦しまないためにも、ぜひ知っていただきたい大切なポイントです。

  1型糖尿病 2型糖尿病
主な原因 自己免疫などによるβ細胞の破壊 体質+生活習慣(インスリンの効き・分泌の低下)
発症しやすい年齢 小児〜思春期に多いが、何歳でも発症する 中高年に多い(近年は若年化も)
発症のしかた 数日〜数か月で急に症状が出ることが多い 何年もかけてゆっくり、自覚症状に乏しい
体型 痩せ型〜普通体型が多い 肥満・内臓脂肪型が多い(痩せ型もいます)
治療の中心 インスリン注射が生命維持に必須 食事・運動療法+飲み薬や注射薬

日本での1型糖尿病の発症率は欧米に比べて低く、10万人あたり年間およそ1〜2人程度と報告されていますが、決して「珍しいから自分には関係ない」病気ではありません。特にお子さんの多飲・多尿・体重減少は、見逃したくない重要なサインです。

なぜ起こる?——インスリンが出なくなるメカニズム

メカニズム図解|1型糖尿病で高血糖になるまで

1 免疫の誤作動:ウイルス感染などをきっかけに、免疫が膵臓のβ細胞を「敵」と誤認して攻撃を始めます(自己免疫反応)。
2 β細胞の破壊が進行:インスリンを作る工場であるβ細胞が徐々に(劇症型では数日で)壊れ、インスリンの分泌量が減っていきます。
3 ブドウ糖が使えなくなる:インスリンが足りないと、血液中のブドウ糖を細胞に取り込めず、血糖値が上がる一方でエネルギー不足になります。のどの渇き・多尿・体重減少が現れます。
4 ケトン体が急増(放置すると危険):糖の代わりに脂肪を燃やすため「ケトン体」という酸性の物質が血液中にたまり、糖尿病ケトアシドーシス(DKA)という緊急事態に至ることがあります。

糖尿病ケトアシドーシスの症状や対処については、先日の記事「血糖値の「上がりすぎ」も緊急事態です」で詳しく解説しております。

1型糖尿病の3つのタイプ(急性発症・緩徐進行・劇症)

1型糖尿病は、発症のスピードによって3つのタイプに分けられます。日本糖尿病学会は、それぞれについて診断基準を公表しています。

タイプ 経過の特徴 ポイント
急性発症1型
(最も典型的)
のどの渇き・多尿・体重減少などの症状が出てから、おおむね3か月以内にインスリン治療が必要になる 膵島関連自己抗体(GAD抗体など)が陽性のことが多い(診断基準〈2012〉)
緩徐進行1型
(SPIDDM)
何年もかけてゆっくりインスリン分泌が低下。初めは2型糖尿病のように見えることが多い GAD抗体などの測定が診断の鍵。診断基準は2023年に改訂され、インスリン分泌能の評価がより重視されました(診断基準〈2023〉)
劇症1型
(最も緊急性が高い)
症状が出てから約1週間前後でケトアシドーシスに陥る。前駆症状として発熱・のどの痛み・腹痛・吐き気など「かぜや胃腸炎のような症状」を伴うことがある 血糖値は非常に高いのにHbA1cはそれほど高くないのが特徴のひとつ(診断基準〈2012〉)。妊娠に関連して発症する例も報告されています

「2型」と言われていても、実は緩徐進行1型のことがあります

緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)は、健診で見つかった時点では飲み薬で血糖が下がるため、2型糖尿病として治療されていることが少なくありません。痩せ型なのに血糖が高い方、飲み薬の効きがだんだん悪くなってきた方は、GAD抗体などの検査を一度受ける価値があります。当院でも検査が可能ですので、お気軽にご相談ください。

こんなサインに注意——受診のきっかけになった2つの例

イメージしていただきやすいように、当院のような地域のクリニックの外来でよく出会うタイプの患者さんの例を2つご紹介します。いずれも特定の患者さんではなく、複数の典型的な経過をもとにした架空の症例です。

例1:10歳の男の子——「水筒がすぐ空になる」

小学4年生のA君。夏休み明けごろから、学校に持っていく水筒がすぐ空になり、夜中に何度もトイレに起きるようになりました。食欲はあるのに1か月で体重が3kg減少。学校の尿検査で尿糖を指摘され、お母さまと一緒に受診されました。血糖値は300mg/dLを超えており、その日のうちに連携する専門医療機関へご紹介。急性発症1型糖尿病と診断され、インスリン治療が始まりました。

お子さんの「多飲・多尿・体重減少・だるさ」は、1型糖尿病の代表的なサインです。おねしょが再び始まった、というかたちで気づかれることもあります。当院は小児科を併設しておりますので、「様子がいつもと違う」と感じたら、どうぞ遠慮なくご相談ください。

例2:40代の女性——「2型と言われて薬を飲んでいるのに」

会社員のBさん(40代女性・BMI 20の痩せ型)。3年前の健診で高血糖を指摘され、近医で2型糖尿病として飲み薬による治療を受けていました。当初はHbA1c 6%台で落ち着いていたものの、食事に気をつけているのに徐々に上昇し、HbA1c 8.5%に。転居を機に当院を受診され、GAD抗体を測定したところ陽性で、インスリン分泌能の低下も確認されたため、緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)と判明しました。現在はインスリン療法を含む治療に切り替え、専門医療機関とも連携しながら血糖コントロールの立て直しを進めています。

重要|次のサインがあれば、その日のうちに医療機関へ

・のどが異常に渇く、水分を大量に飲む、トイレが近い

・食べているのに体重が急に減る(1か月で2〜3kg以上)

・強いだるさ、吐き気・腹痛、呼吸が速く深い、甘酸っぱい口臭

・意識がもうろうとしている(この場合はためらわず救急要請を)

診断はどう行う?——血糖値だけでは分からないこと

1型糖尿病の診断では、「糖尿病かどうか」に加えて「どのタイプの糖尿病か」を調べることが重要です。当院では、次のような検査を組み合わせて評価します。

検査 何が分かるか
血糖値・HbA1c 糖尿病の診断と、過去1〜2か月の血糖の平均的な状態
膵島関連自己抗体(GAD抗体など) 自己免疫による1型糖尿病かどうかの重要な手がかり
Cペプチド(血中・尿中) 自分の膵臓がインスリンをどれだけ作れているか(インスリン分泌能)
尿ケトン体・血中ケトン体 インスリン不足が高度かどうか、ケトアシドーシスの危険性

とくに緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)の診断基準(2023)では、GAD抗体などの自己抗体に加えて、インスリン分泌能(Cペプチド)の推移を確認することが重視されています。「一度2型と診断されたら終わり」ではなく、経過の中で診断を見直すことがあるのは、このためです。

治療の基本——インスリン療法とCGM(持続血糖測定)

1型糖尿病では、体の中でインスリンがほとんど作れないため、不足しているインスリンを注射で補うことが治療の柱になります。健康な膵臓の働きに近づけるよう、持効型(1日を通して効く基礎インスリン)と超速効型(食事に合わせて効くインスリン)を組み合わせる「強化インスリン療法」が基本で、ライフスタイルに応じてインスリンポンプ療法という選択肢もあります。

また近年は、FreeStyleリブレなどのCGM(持続血糖測定器)の進歩により、血糖の変動を「線」で見ながらきめ細かく調整できるようになりました。1型糖尿病の方はCGMが保険適用となります。詳しくは「血糖値を“見える化”する時代へ」をご覧ください。

ポイント|1型糖尿病の治療で知っておきたいこと

① 食事制限の病気ではありません:成長期のお子さんは特に、必要な栄養をしっかり摂ることが大前提です。食事に合わせてインスリンを調整する、という考え方が基本になります。

② 運動も部活動も基本的に可能です:低血糖への備え(補食・血糖確認)をしたうえで、スポーツを楽しんでいる患者さんはたくさんいらっしゃいます。

③ 「ハネムーン期」を知っておく:治療開始後、一時的にインスリンの必要量が減る時期(寛解期)がありますが、治ったわけではないため、自己判断での中断は危険です。

低血糖への対処については「糖尿病治療中の「低血糖」対処完全ガイド」、インスリン製剤の種類については「「インスリンは最後の手段」ではありません」もあわせてご覧ください。

日常生活で大切なこと——学校・仕事・シックデイ

学校生活とのつきあい方

1型糖尿病のお子さんは、適切な血糖管理のもとで体育も給食も宿泊行事も、基本的に他のお子さんと同じように参加できます。大切なのは、担任の先生・養護教諭と「低血糖のときのサインと対応(ブドウ糖の場所など)」を共有しておくことです。学校提出用の管理指導表や連携文書の作成も、かかりつけ医としてサポートいたします。

かぜをひいたとき(シックデイ)

発熱や胃腸炎で食事がとれないときも、1型糖尿病では自己判断でインスリンを完全に中止してはいけません。基礎インスリンまで中断すると、ケトアシドーシスに陥る危険があるためです。水分・糖分のとり方やインスリンの調整はあらかじめ主治医と決めておくことが大切です。詳しくは「シックデイの休薬ルール」の記事で解説しています。

当院でできること・五良会グループの連携

竹内内科小児科医院では、糖尿病内科・代謝内科として血糖値・HbA1c・GAD抗体・Cペプチドなどの検査、インスリン療法やCGMを用いた継続診療に対応しております。内科と小児科を併設しているため、お子さんの「気になるサイン」の初期評価から、大人になってからの継続診療まで、ご家族そろって同じクリニックでご相談いただけるのが当院の強みです。教育入院やインスリンポンプの導入など、高度な専門治療が必要な場合は、地域の専門医療機関へ責任をもってご紹介し、退院後の日常診療を当院で担う「病診連携」を大切にしています。

五良会グループでは、田園調布の竹内内科小児科医院と港区の五良会クリニック白金高輪が連携し、糖尿病診療を多角的にサポートしております。患者さまの転居やライフスタイルの変化に合わせて、同じグループ内で継続診療が受けられる体制を整えております。土曜午前も診療しておりますので、平日お忙しい方もご相談ください。

受診前チェックリスト(気になる症状がある方)

□ のどの渇き・多飲・多尿・体重減少は、いつごろから始まったか

□ 直近の健診結果(血糖値・HbA1c・尿糖)をお持ちください

□ 現在服用中のお薬・お薬手帳

□ ご家族の糖尿病・甲状腺疾患などの病歴

□ 吐き気・腹痛・強いだるさを伴う場合は、チェックリストより受診を優先してください

参考文献

  1. 日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病診療ガイドライン2024. 南江堂, 2024.
  2. 日本糖尿病学会 1型糖尿病調査研究委員会. 急性発症1型糖尿病の診断基準(2012)の策定. 糖尿病. 2013;56(8):584-589.
  3. 日本糖尿病学会 1型糖尿病調査研究委員会. 劇症1型糖尿病の新しい診断基準(2012). 糖尿病. 2012;55(10):815-820.
  4. 日本糖尿病学会 1型糖尿病における新病態の探索的検討委員会. 緩徐進行1型糖尿病の診断基準(2023). 糖尿病. 2023;66(7):587-591.
  5. 日本糖尿病学会「緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)の診断基準(2023)について」 https://www.jds.or.jp/modules/important/index.php?content_id=295(2026年9月閲覧)

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五良会グループでは、田園調布から白金高輪まで医師が連携しております。患者さまの転居やライフスタイルの変化に合わせて、同じグループ内で継続診療が受けられる体制を整えております。

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竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医

Author: 五藤 良将