皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。
2026年のインフルエンザは、例年より約1か月早い8月に全国で流行入りするという異例のシーズンとなりました。厚生労働省の発表によると、全国の定点当たり報告数は第34週(8月17日〜23日)に1.11となって流行開始の目安(1.00)を超え、第36週(8月31日〜9月6日)には3.29まで増加しています。東京都でも8月27日に「流行開始」が発表されており、田園調布・多摩川エリアの当院でも、発熱外来でインフルエンザと診断されるお子さんや大人の方が少しずつ増えてまいりました。
こうした中で、糖尿病で通院中の患者さまから「糖尿病があるとインフルエンザは重くなりやすいの?」「熱で食事がとれないとき、薬はどうすればいいの?」というご質問をいただくことが増えています。今回のブログでは、日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」の考え方をもとに、糖尿病の方に知っていただきたいインフルエンザの重症化リスク、体調不良の日の対応ルール「シックデイルール」、そしてワクチン接種のポイントを、まとめて分かりやすく解説いたします。
なお、インフルエンザの検査・治療薬については前回の記事「インフルエンザにかかったら|検査のベストタイミング・治療薬5種の使い分け」もあわせてご覧ください。
目次
2026-27シーズンの流行状況|記録的に早いスタート
今シーズンのインフルエンザは、感染症法にもとづく調査が始まった1999年以降、2009年(新型インフルエンザの年)に次いで2番目に早い流行入りとなりました。厚生労働省の発表を時系列で整理すると、次のようになります。
| 時期 | 全国の定点当たり報告数 | 状況 |
|---|---|---|
| 第34週(8月17日〜23日) | 1.11 | 流行開始の目安(1.00)を超過。異例の8月流行入り |
| 第36週(8月31日〜9月6日) | 3.29 | 増加が継続。沖縄県では注意報級の水準に |
東京都でも2026年8月27日に「都内でインフルエンザが流行開始」と発表されており、報告数の多い地域は東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県など首都圏に集中しています。例年の「12月〜2月がピーク」という感覚のままでいると、ワクチン接種が流行の本格化に間に合わないおそれがある、というのが今年の大きな特徴です。
なぜ糖尿病があるとインフルエンザに注意が必要なのか
糖尿病の患者さまは、インフルエンザにかかったときに肺炎などの合併症を起こしやすく、重症化しやすいことが知られており、国内外のガイドラインでワクチン接種が推奨される「ハイリスク群」に位置づけられています。理由は大きく2つあります。
① 高血糖は「免疫のはたらき」を弱めます
血糖値が高い状態が続くと、細菌やウイルスと戦う白血球(好中球など)のはたらきが低下し、感染症にかかりやすく、治りにくくなります。肺炎や気管支炎への進展、入院のリスクも高くなることが報告されています。
② 感染そのものが「血糖値を急上昇」させます
もうひとつ見逃せないのが、感染時には血糖値が普段より大きく乱れるという点です。この悪循環は、次のような流れで起こります。
メカニズム図解|感染と高血糖の悪循環
| インフルエンザに感染・発熱:からだは感染と戦うため「ストレス状態」になります | |
| ストレスホルモンが増加:コルチゾールやアドレナリンなど、血糖値を上げるホルモンが分泌され、インスリンが効きにくくなります | |
| 食事がとれないのに血糖値は上がる:「食べていないから薬は全部お休み」と自己判断すると、高血糖がさらに進むことがあります | |
| 脱水・著しい高血糖へ:発熱・食欲低下による脱水が重なると、糖尿病ケトアシドーシスや高浸透圧高血糖状態など、入院治療が必要な状態に進むことがあります |
つまり糖尿病の方にとってインフルエンザ対策は、「かからない工夫(ワクチン・予防)」と「かかったときの備え(シックデイルール)」の両方をセットで準備しておくことが大切なのです。
外来でよくあるケースから|2つの架空症例
当院の外来でよくご相談いただく場面を、架空の症例としてご紹介します(実在の患者さまではなく、典型的なご相談内容をもとに構成したものです)。
ケース1:60代男性・会社員のAさん(HbA1c 7.8%、飲み薬で治療中)
メトホルミンとSGLT2阻害薬で治療中のAさん。日曜の夜から38.5℃の発熱と関節痛があり、食欲がなくお粥を数口食べるのがやっとの状態になりました。「食べていないから」と、月曜の朝はすべての薬を自己判断でお休みし、水分もあまりとらずに寝て過ごしたところ、火曜にはふらつきと強い口の渇きが出てきました。
実はこのケース、「休むべき薬」と「量の調整を相談すべき薬」の区別、そして水分補給が鍵になります。食事がとれないときにメトホルミンやSGLT2阻害薬を続けると脱水などと重なって体に負担がかかる一方、水分まで控えてしまうと脱水が一気に進みます。後ほどのシックデイルールで詳しくご説明します。
ケース2:40代女性・パート勤務のBさん(妊娠糖尿病の既往、現在は経過観察中)
小学生のお子さんが学校でインフルエンザをもらってきて、看病していたBさんも発症。「自分のワクチンは毎年後回しにしてしまう」とのことでした。お子さんのいるご家庭では、学校・園から家庭内へという感染ルートがとても多く、ご本人の接種に加えてご家族そろっての対策が重要になります。当院は内科と小児科を併設しておりますので、親子で同じ日にワクチン接種やご相談が可能です。
シックデイルール|食べられない日の薬・食事・水分
糖尿病の方が発熱・下痢・嘔吐などで食事がとれない日のことを「シックデイ(sick day)」と呼びます。日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」でも、シックデイの対応をあらかじめ主治医と決めておくことが勧められています。基本の5か条は次のとおりです。
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ポイント|シックデイ対応の基本5か条 ① 安静と保温:無理に出勤・外出せず、しっかり休みます ② 水分をこまめに:お茶・スープ・経口補水液などで、脱水を防ぎます(目安として1日1〜1.5L程度を少しずつ) ③ 炭水化物を絶やさない:食欲がなくても、お粥・うどん・ゼリー・果汁など口にしやすい形で糖質をとります ④ 血糖測定はいつもより多めに:自己測定をされている方は回数を増やして変化を確認します ⑤ 薬の扱いは「事前の取り決め」どおりに:迷ったら自己判断せず、当院までお電話ください |
特に大切なのが⑤の「お薬の扱い」です。種類によって考え方が異なりますので、代表的なものを整理します。
| お薬の種類 | シックデイのときの一般的な考え方 |
|---|---|
| メトホルミン(ビグアナイド薬) | 食事がとれない・脱水があるときは休薬を考慮(乳酸アシドーシス予防のため)。再開時期は主治医に確認 |
| SGLT2阻害薬 | 脱水・ケトアシドーシスを避けるため、食事がとれないときは休薬を考慮 |
| SU薬・グリニド薬 | 食事量が大きく減っているときは低血糖に注意。減量・休薬の目安を事前に相談 |
| DPP-4阻害薬・GLP-1受容体作動薬 | 吐き気・食欲低下が強いときは継続の可否を相談 |
| インスリン | 自己判断で完全に中止しないことが原則(特に1型糖尿病の方は中止すると危険です)。血糖値に応じた調整方法を事前に決めておきます |
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ご注意ください 上の表はあくまで一般的な考え方です。実際の休薬・減量の判断は、お薬の組み合わせや腎機能などによって一人ひとり異なります。「自分の場合はどうするか」を、元気なうちに外来で決めておくことが、シックデイ対策のいちばんの近道です。次回の受診時に、ぜひお気軽にお尋ねください。 |
すぐに受診していただきたいサイン
シックデイの多くはご自宅での療養で乗り切れますが、次のような場合は我慢せず、早めに医療機関へご連絡ください。
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重要|こんなときは早めにご連絡・ご受診を ・嘔吐や下痢が続き、水分がほとんどとれない ・丸1日近く、食事がほとんどとれない ・血糖値が350mg/dL前後の高い状態が続く、または低血糖を繰り返す ・高熱(38℃以上)が3日以上下がらない ・意識がもうろうとする、呼吸が苦しい、尿の量が明らかに減った |
とくに高齢の方や、腎臓の合併症をお持ちの方は脱水が進みやすいため、早め早めのご相談をお願いいたします。当院は訪問診療にも対応しておりますので、通院が難しいご家族についてもご相談いただけます。
ワクチンはいつ・どう受ける?|今年は「早め」が合言葉
糖尿病の方は、インフルエンザワクチンの接種が特に勧められる方々です。ワクチンは発症をある程度減らすとともに、肺炎などの合併症や入院・重症化を減らす効果が示されています(効果の程度はシーズンや年齢によって異なります)。
例年であれば「10月中旬〜12月上旬に接種すれば十分」とされていますが、今年はすでに9月上旬の時点で流行が拡大しています。ワクチンは接種してから効果が出るまでに約2週間かかりますので、今シーズンについては接種開始後、できるだけ早めに受けていただくことをおすすめしています。当院のワクチン接種開始時期・費用は、決まり次第お知らせページやお電話でご案内いたします。
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糖尿病の方のワクチンのポイント □ インフルエンザワクチンは毎年の接種がすすめられます(65歳以上の方などは定期接種の対象です) □ 65歳以上の方は肺炎球菌ワクチンもあわせてご相談ください(インフルエンザ後の肺炎予防に重要です) □ 血糖コントロールが多少不安定でも、体調が落ち着いていれば接種は可能です。迷ったらご相談ください □ 同居のご家族の接種も、ご本人を守る大切な予防策です |
「注射のワクチンと点鼻のフルミスト、どちらを選ぶか」については、姉妹記事「フルミスト点鼻と注射ワクチン、今年は「いつ・どちらを」受けるべき?」で詳しく解説しています。
ご家族みんなでの予防が、いちばんの守りになります
インフルエンザは、学校や園で流行し、お子さんからご家庭へ持ち込まれるケースがとても多い感染症です。糖尿病で治療中のおじいちゃま・おばあちゃまがいらっしゃるご家庭では、ご家族全員での手洗い・換気・ワクチン接種が、結果的にご本人をいちばん守ることにつながります。
当院は内科と小児科を併設しており、お子さんの接種と親御さん・祖父母さまの接種、糖尿病の定期診察を同じ院内でまとめてご相談いただけます。土曜日も午前は診療しておりますので、平日お忙しい共働き世帯の皆さまもご利用ください。
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受診前チェックリスト(糖尿病×インフルエンザ対策) □ シックデイのときの自分のお薬の扱いを、主治医と決めてあるか □ 経口補水液・お粥やゼリーなど「シックデイ用の備え」が自宅にあるか □ 今シーズンのインフルエンザワクチンの予定を立てたか □ (65歳以上の方)肺炎球菌ワクチンの接種歴を確認したか □ 同居のご家族の接種予定も確認したか |
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五良会グループでは、田園調布の竹内内科小児科医院と港区の五良会クリニック白金高輪(糖尿病内科・内視鏡・健康診断)、横浜市都筑区の五良ファミリークリニックセンター南(高齢者糖尿病・認知症外来・訪問診療)が連携し、糖尿病の患者さまを地域をまたいで多角的にサポートしております。患者さまの転居やライフスタイルの変化に合わせて、同じグループ内で継続診療が受けられる体制を整えております。
参考文献
- 厚生労働省「インフルエンザの発生状況について」(2026年8月28日発表:2026年第34週、2026年9月11日発表:2026年第36週)(2026年9月閲覧)
- 東京都感染症情報センター「インフルエンザの流行状況(東京都 2026-2027年シーズン)」(2026年9月閲覧)
- 日本糖尿病学会 編・著『糖尿病診療ガイドライン2024』南江堂, 2024.
- 日本糖尿病学会 編・著『糖尿病治療ガイド2024』文光堂, 2024.(シックデイ対策の項)
- 厚生労働省「インフルエンザQ&A」(2026年9月閲覧)
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糖尿病×インフルエンザ対策のご相談は当院へ シックデイ時のお薬の取り決め、インフルエンザワクチン・肺炎球菌ワクチンのご相談、発熱時の受診など、お気軽にお問い合わせください。下記のWEB予約・LINE・お電話(03-3721-5222)からご予約いただけます。土曜午前も診療しております。 |
竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医