皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。
夏の健康診断の結果が手元に届く時期になりました。この時期、田園調布・多摩川エリアの40〜50代の女性の患者さまから、「今まで一度も引っかからなかったのに、急にコレステロールが高いと言われました」「食生活は変えていないのに、なぜですか?」というご相談が増えます。
実はこれは決して珍しいことではなく、更年期(閉経前後)を境に、女性のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)は大きく上昇しやすいことが知られています。今回は、日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」および「脂質異常症診療ガイド2023年版」に基づき、更年期以降の女性のコレステロールがなぜ上がるのか、どこからが治療の対象なのか、そして今日からできる対策を、わかりやすく解説いたします。
コレステロール全般の基礎知識は、先日の記事「健診で「LDLコレステロールが高め」と言われたら」もあわせてご覧ください。本記事は女性・更年期の視点に絞ってお伝えいたします。
目次
なぜ更年期からコレステロールが上がるのか|エストロゲンの働き
女性ホルモンの一つであるエストロゲン(卵胞ホルモン)には、血液中のLDLコレステロールを肝臓に取り込ませて処理を促す働きがあります。肝臓の表面には「LDL受容体」という、LDLコレステロールを回収する入り口があり、エストロゲンはこの受容体の働きを支えています。
ところが閉経が近づきエストロゲンの分泌が減ってくると、この回収システムの働きが弱まり、血液中にLDLコレステロールが残りやすくなります。厚生労働省研究班監修の情報サイトでも、女性の脂質異常症は閉経後に急増することが示されており、食生活が変わっていなくても数値が上がるのはこのためです。
メカニズム図解|閉経とLDLコレステロール上昇の流れ
| 閉経前:エストロゲンが肝臓のLDL受容体の働きを支え、LDLコレステロールが効率よく回収される | |
| 更年期:卵巣機能の低下とともにエストロゲン分泌が減少する | |
| 回収力の低下:LDL受容体の働きが弱まり、血液中のLDLコレステロールや中性脂肪が増えやすくなる | |
| 長期間続くと:動脈硬化が少しずつ進み、心筋梗塞・脳梗塞のリスクが徐々に高まる |
つまり、更年期以降のコレステロール上昇は「自己管理ができていないから」ではなく、体の仕組みの変化による自然な現象です。ご自身を責める必要はまったくありません。大切なのは、変化に気づいた今から適切に向き合うことです。
健診結果の見方|脂質異常症の診断基準
健診結果の脂質の項目は、日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」に基づき、以下の基準で判定されます(スクリーニングのための基準です)。
| 項目 | 基準値 | 判定 |
|---|---|---|
| LDLコレステロール | 140mg/dL以上 | 高LDLコレステロール血症 |
| LDLコレステロール | 120〜139mg/dL | 境界域高LDLコレステロール血症 |
| HDLコレステロール | 40mg/dL未満 | 低HDLコレステロール血症 |
| 中性脂肪(トリグリセライド) | 空腹時150mg/dL以上 (随時採血では175mg/dL以上) |
高トリグリセライド血症 |
| non-HDLコレステロール | 170mg/dL以上 | 高non-HDLコレステロール血症 |
更年期以降の女性で特に多いのが、「LDLコレステロールだけが高く、ほかは正常」というパターンです。また、閉経後は中性脂肪も上がりやすく、HDLコレステロール(善玉)とのバランスが崩れてくる方もいらっしゃいます。
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ポイント|「基準値超え=すぐ薬」ではありません ① 診断基準はスクリーニングの入り口:この数値を超えたら、まず全身のリスクを評価する、という意味です。 ② 治療方針は一人ひとり異なる:年齢・血圧・血糖・喫煙・家族歴などを総合して、目標値と治療法を個別に決めていきます。 |
「女性は大丈夫」は本当?|治療が必要かどうかの考え方
「女性はコレステロールが高くても心配ない」という話を耳にされたことがあるかもしれません。たしかに閉経前の女性は、同じLDLコレステロール値でも男性より心筋梗塞などのリスクが低いことが知られています。しかし、これはあくまで閉経前・エストロゲンに守られている間の話です。
閉経後は動脈硬化が進みやすくなり、女性の心筋梗塞・脳梗塞は年齢とともに増えていきます。動脈硬化は10年、20年単位で静かに進行するため、「症状がないから大丈夫」と数値を放置しないことが大切です。
「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」では、年齢・性別・血圧・脂質・血糖・喫煙などから今後の動脈硬化性疾患のリスクを予測する「久山町研究のスコア」を用いて、一人ひとりのリスク区分(低・中・高リスク)を評価し、それぞれに応じたLDLコレステロールの管理目標値を設定します。たとえば糖尿病や慢性腎臓病(CKD)をお持ちの方、すでに心筋梗塞・脳梗塞を経験された方は、より厳格な管理が推奨されます。
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こんな方は早めにご相談ください ・LDLコレステロールが180mg/dL以上(家族性高コレステロール血症の可能性を確認する必要があります) ・ご家族(親・きょうだい)に若くして心筋梗塞・狭心症になった方がいる ・糖尿病・高血圧・慢性腎臓病・喫煙などのリスクが重なっている ・健診で2年連続以上、脂質の項目で引っかかっている |
治療の基本は、後述する食事療法と運動療法です。そのうえでリスクが高い場合には、スタチンをはじめとする脂質低下薬による薬物療法を検討します。薬物療法は医師がガイドラインに沿って必要性を判断したうえで行う保険診療であり、当院では効果と副作用を定期的な採血で確認しながら、無理のない治療計画をご提案しております。
食事療法|更年期からの食事の見直しポイント
コレステロールを意識した食事というと「卵を控える」ことばかりが注目されがちですが、より影響が大きいのは飽和脂肪酸(肉の脂身・バター・生クリームなど)の摂りすぎです。「日本人の食事摂取基準(2025年版)」でも、成人の飽和脂肪酸はエネルギー比率7%以下が目標とされています。
今日からできる置き換えの工夫
| 見直したい食品 | おすすめの置き換え・工夫 |
|---|---|
| 肉の脂身・バラ肉・ソーセージ | 赤身肉・鶏むね肉・青魚(サバ・イワシ・アジ)に置き換える |
| バター・生クリーム・菓子パン | オリーブ油などの植物油を適量、間食は果物やナッツ少量に |
| 白米・麺類中心の食事 | 野菜・海藻・きのこ・大麦など食物繊維を先に、主食は適量に |
| たんぱく源が肉に偏りがち | 大豆製品(豆腐・納豆・豆乳)を毎日の食卓に取り入れる |
食物繊維はコレステロールの吸収を抑える働きがあり、大豆製品・青魚は動脈硬化予防の観点からガイドラインでも推奨されている食品です。残暑のこの時期は、冷奴やもずく酢、焼き魚に野菜の副菜を添えた「和食パターン」が取り入れやすくおすすめです。一方で、そうめんなど麺類だけの食事や甘い清涼飲料水は中性脂肪・血糖値の上昇につながりやすいため、ほどほどに。
当院では管理栄養士による栄養相談も行っております。「何から手をつけていいかわからない」という方は、お気軽にお声がけください。
運動療法|残暑の時期に安全に続けるコツ
運動はHDL(善玉)コレステロールを増やし、中性脂肪を下げる効果が期待できる、脂質異常症対策の柱の一つです。厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、成人は1日約8,000歩(歩行またはそれと同等以上の身体活動を1日60分以上)を目安とすることが推奨されています。
ただし、2026年の夏も厳しい残暑が続いています。日中の炎天下でのウォーキングは熱中症のリスクがあるため、以下のような工夫で無理なく続けましょう。
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残暑の運動の工夫 □ 早朝・夕方の涼しい時間帯に、多摩川の土手など日陰・風通しのよいコースを選ぶ □ 屋内でのラジオ体操・スクワット・踏み台昇降など「家の中の運動」を組み合わせる □ 運動の前後・途中でこまめに水分補給をする □ 筋力トレーニングを週2〜3回加えると、更年期以降の筋肉量・骨の維持にも役立ちます |
詳しくは「猛暑でも安全に続ける生活習慣病の運動療法」の記事でも解説しております。
コレステロールだけではない|更年期以降に注意したい健康課題
エストロゲンは脂質だけでなく、血管・骨・自律神経など全身を守っています。そのため更年期以降は、コレステロールとあわせて次のような変化にも目を向けていただきたいと考えています。
血圧の上昇
閉経後は血圧も上がりやすくなります。日本高血圧学会の「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」では、家庭血圧の管理がこれまで以上に重視されています。健診で血圧も指摘された方は、まず家庭血圧の測定から始めてみましょう。
骨密度の低下(骨粗鬆症)
エストロゲンの減少は骨密度の低下にも直結します。60歳前後からは骨密度検査を意識していただきたい時期です。骨粗鬆症は自覚症状のないまま進み、骨折してはじめて気づかれることが少なくありません。
血糖値の変化
内臓脂肪の増加とともに血糖値も上がりやすくなります。HbA1c(過去1〜2か月の血糖の平均を反映する指標)もあわせてチェックしておくと安心です。
当院は内科・糖尿病内科・代謝内科として、コレステロール・血圧・血糖・骨の健康をまとめて診ることができる「かかりつけ医」を目指しております。お子さまの診察のついでに、お母さま・お祖母さまご自身の健診結果のご相談をいただくことも多く、ご家族でまとめてご相談いただけるのが当院の特長です。土曜午前も診療しておりますので、平日お忙しい方もご利用ください。
当院でできること|受診の目安とチェックリスト
当院では、健診結果をお持ちいただければ、脂質・血圧・血糖・肝機能・腎機能などを総合的に評価し、必要に応じて再検査(空腹時採血・詳細な脂質検査など)を行ったうえで、お一人おひとりに合わせた対策をご提案いたします。
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受診前チェックリスト □ 今年の健診・人間ドックの結果(あれば過去数年分も) □ 月経の状況(閉経の時期・更年期症状の有無) □ ご家族の病歴(心筋梗塞・脳卒中・糖尿病・脂質異常症など) □ 服用中のお薬・サプリメント(お薬手帳) □ ふだんの食事・運動・喫煙・飲酒の習慣(メモ程度で結構です) |
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重要|こんな症状はすぐに受診・救急要請を ・突然の胸の痛み・締めつけ感、冷や汗を伴う胸苦しさ ・片側の手足の脱力・しびれ、ろれつが回らない、顔のゆがみ これらは心筋梗塞・脳梗塞のサインの可能性があります。ためらわず救急車(119番)をご利用ください。 |
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ご予約・ご相談はお気軽に 健診結果のご相談は、WEB予約・LINE・お電話(03-3721-5222)で承っております。ページ下部の予約ボタンからどうぞ。 東急東横線・目黒線「多摩川駅」徒歩5分。土曜午前も診療しております。 |
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五良会グループでは、田園調布の竹内内科小児科医院と港区の五良会クリニック白金高輪、横浜市都筑区の五良ファミリークリニックセンター南の医師が連携し、生活習慣病の予防と治療を多角的にサポートしております。患者さまの転居やライフスタイルの変化に合わせて、同じグループ内で継続診療が受けられる体制を整えております。
参考文献
- 日本動脈硬化学会編. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版. 2022.
- 日本動脈硬化学会編. 脂質異常症診療ガイド2023年版. 2023.
- 日本高血圧学会. 高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025). 2025.
- 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2025年版). 2024.
- 厚生労働省. 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023. 2024.
- 厚生労働省研究班監修 女性の健康推進室ヘルスケアラボ「女性および高齢者の脂質異常症」 https://w-health.jp/old_age/dyslipidemia/ (2026年8月閲覧)
竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医