皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。
2026年の夏も残暑が続いておりますが、皆さま朝ごはんはきちんと召し上がっていますか。この時期、外来では「暑さで朝は食欲がなくて、コーヒーだけで済ませています」「夏休み中に生活リズムが崩れて、家族そろって朝食を抜きがちです」というお声をよくうかがいます。
実はこの「朝食抜き」、単なる食習慣の乱れにとどまらず、昼食後の血糖値の急上昇(血糖値スパイク)や、長期的には糖尿病・肥満・高血圧のリスク上昇と関連することが、多くの研究で報告されています。今回のブログでは、日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」や厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」などの最新の知見をもとに、朝食と血糖値の関係、そして忙しい朝でも実践できる「血糖にやさしい朝ごはん」のコツを、内科・糖尿病内科・小児科の視点から解説いたします。
夏の食事と血糖値については、姉妹記事「お盆の「そうめんだけ」昼食に注意|夏の麺・果物と血糖値スパイクを防ぐ食事療法」もあわせてご覧ください。
目次
日本人はどれくらい朝食を抜いている?
厚生労働省の「国民健康・栄養調査」(最新は令和5年調査)によると、朝食の欠食率は若い世代ほど高く、20歳代ではおよそ3〜4人に1人が朝食を欠食していると報告されています。働き盛りの30〜40歳代でも決して少なくなく、「朝は時間がない」「食欲がわかない」「少しでも長く寝ていたい」という理由が上位を占めます。
特にこの残暑の時期は、熱帯夜による睡眠不足や夏バテで食欲が落ち、ふだんは朝食を食べている方でも「今日はいいや」と抜いてしまいがちです。しかし、朝食を抜いた日の体の中では、見た目にはわからない変化が起きています。
朝食を抜くと体の中で何が起こるのか|血糖値スパイクのメカニズム
「食べていないのだから、血糖値はむしろ上がらないのでは?」と思われるかもしれません。ところが実際には、朝食を抜くと、次にとる昼食後の血糖値がかえって急上昇しやすくなることが、健康な方や2型糖尿病の方を対象とした研究で示されています。この食後の急激な血糖上昇は「血糖値スパイク(食後高血糖)」と呼ばれ、血管にダメージを与える一因と考えられています。
メカニズム図解|朝食抜きが昼食後の血糖値スパイクを招く流れ
| 絶食時間が長くなる:前日の夕食から昼食まで、半日以上何も食べない状態が続きます。 | |
| 体が「省エネ・血糖温存モード」に:長い空腹の間に遊離脂肪酸が増え、インスリン(血糖を下げるホルモン)の効きが一時的に悪くなると考えられています。 | |
| 空腹の反動でドカ食い・早食いに:昼食で糖質を一気にとりやすくなり、吸収のスピードも上がります。 | |
| 昼食後・夕食後に血糖値スパイク:インスリンの分泌・効きが追いつかず、食後の血糖値が急上昇。この状態が繰り返されると血管への負担が積み重なります。 |
やっかいなのは、こうした食後の血糖値スパイクは、健康診断で測る空腹時血糖値だけでは見つかりにくいという点です。空腹時血糖値やHbA1c(過去1〜2か月の血糖の平均を反映する検査値)が正常範囲でも、食後だけ血糖値が急上昇している「隠れ高血糖」の方は少なくありません。
朝食欠食と生活習慣病|研究で示されている関連
朝食欠食と健康リスクの関連は、国内外の多くの観察研究・メタ解析で報告されています。代表的なものを整理します。
| 項目 | 報告されている関連 |
|---|---|
| 2型糖尿病 | 朝食を習慣的に欠食する人では、2型糖尿病の発症リスクが高い傾向が複数のメタ解析で報告されています。 |
| 肥満・体重増加 | 朝食欠食は昼食以降の過食や間食の増加と結びつきやすく、肥満との関連が指摘されています。 |
| 高血圧・循環器疾患 | 朝食欠食と血圧上昇や循環器疾患リスクとの関連を示す疫学研究があります。 |
| 食後高血糖(血糖値スパイク) | 2型糖尿病の方を対象とした試験で、朝食を抜いた日は昼食後・夕食後の血糖上昇が大きくなることが報告されています。 |
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数字を読むときの注意 これらの多くは観察研究であり、「朝食を抜くこと」そのものが病気の直接の原因と証明されたわけではありません。朝食を抜く方には夜型の生活、睡眠不足、喫煙などの要因が重なりやすいことも影響していると考えられます。ただし、「朝食を含めた規則正しい食習慣が望ましい」という方向性は、日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」や厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」の考え方とも一致しています。効果には個人差がありますので、ご自身に合った続け方をご相談ください。 |
「セカンドミール効果」とは|朝食が昼食後の血糖まで左右する
朝食の大切さを語るうえで欠かせないのが「セカンドミール効果」です。これは、最初にとる食事(ファーストミール)の内容が、次の食事(セカンドミール)のあとの血糖上昇にまで影響するという現象で、1980年代にトロント大学のジェンキンス博士らが提唱しました。
たとえば、朝食に食物繊維の多い食品(大麦、全粒穀物、野菜、豆類など)やたんぱく質をとっておくと、昼食後の血糖上昇がゆるやかになりやすいことが報告されています。逆に朝食を抜くと、この「守り」の効果が得られず、昼食後の血糖値スパイクを招きやすくなるのです。
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ポイント|セカンドミール効果を味方につける3か条 ① 朝食を「食べる」こと自体が第一歩:完璧なメニューでなくても、まず何かお腹に入れることから始めましょう。 ② 食物繊維をプラス:もち麦ごはん・オートミール・全粒パン・野菜・海藻・豆類は、次の食事の血糖上昇もゆるやかにする味方です。 ③ たんぱく質を忘れずに:卵・納豆・ヨーグルト・牛乳・豆腐などを組み合わせると、腹持ちがよくなり昼のドカ食い防止にもつながります。 |
忙しい朝でもできる「血糖にやさしい朝食」のコツ
「理屈はわかったけれど、朝はとにかく時間がない」という方のために、当院の外来でもお伝えしている現実的なステップアップ方式をご紹介します。
| レベル | 朝食の例 | ねらい |
|---|---|---|
| ステップ1 (まずはここから) |
牛乳・無糖ヨーグルト・豆乳・バナナなど「手でとれる1品」 | 絶食時間を短くし、昼のドカ食いを防ぐ |
| ステップ2 | ゆで卵+ヨーグルト、納豆ごはん、チーズトーストなど「たんぱく質+主食」 | 腹持ちを良くし、血糖上昇をゆるやかに |
| ステップ3 (理想形) |
もち麦ごはん・全粒パン+卵や納豆+野菜・味噌汁+乳製品や果物 | 食物繊維でセカンドミール効果を最大限に |
そのほか、次のような小さな工夫も食後高血糖対策として役立ちます。
・野菜や汁物から先に食べる(いわゆる「ベジファースト」)
・よく噛んで、10分以上かけて食べる(早食いは血糖値スパイクのもと)
・菓子パン+甘い飲み物「だけ」の朝食は避ける(糖質に偏ると、かえって血糖が乱高下しやすくなります)
・前日の夜に朝食を用意しておく(オーバーナイトオーツ、カット野菜、ゆで卵の作り置きなど)
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重要|すでに糖尿病で治療中の方へ ・インスリンや血糖降下薬を使用中の方が自己判断で朝食を抜くと、低血糖を起こす危険があります。食事を抜いた場合の薬の扱いは、必ず主治医にご確認ください。 ・「朝食を食べれば薬は不要」ということでもありません。食事療法はあくまで治療の土台であり、通院・服薬は続けながら整えていきましょう。 |
お子さまの朝ごはんも大切です
朝食の習慣は、大人だけの問題ではありません。文部科学省の全国調査では、朝食を毎日食べる子どもほど学力調査・体力調査の結果が良好な傾向が繰り返し示されており、成長期の生活リズムづくりの土台として朝食は重要です。
夏休みが明けるこの時期は、夜ふかし・朝寝坊の習慣が残り、朝食を抜いたまま登校してしまうお子さまが増えがちです。「早寝・早起き・朝ごはん」を合言葉に、2学期に向けて少しずつリズムを戻していきましょう。当院は内科と小児科を併設しておりますので、お子さまの食欲不振や生活リズムのご相談と、親御さまの血糖・血圧・コレステロールのご相談を、同じ診察室でまとめてお受けできます。ご家族での「食習慣の立て直し」も、どうぞお気軽にご相談ください。
こんな方は一度ご相談ください
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受診前チェックリスト □ 健診で血糖値・HbA1cが「やや高め」「要経過観察」と言われた □ 朝食を抜く日が週の半分以上ある □ 昼食後や夕食後に強い眠気・だるさを感じることが多い □ 20〜30歳代のころより体重が10kg以上増えた □ ご家族に糖尿病の方がいる □ 妊娠中に血糖が高いと言われたことがある |
当院では、血糖値・HbA1cの測定はもちろん、必要に応じてブドウ糖負荷試験などで「食後の血糖の動き」を確認し、患者さまお一人おひとりの生活に合わせた食事療法・運動療法をご提案しております。管理栄養士による栄養相談も行っておりますので、「何から変えればよいかわからない」という段階でも大丈夫です。
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ご予約・ご相談はお気軽に 健診結果の用紙をお持ちいただければ、その場で一緒に確認いたします。土曜午前も診療しておりますので、平日お忙しい働き盛りの方もご相談いただけます。 竹内内科小児科医院(東急東横線・目黒線「多摩川駅」徒歩5分)/TEL:03-3721-5222/WEB予約・WEB問診・LINEは記事末尾のボタンからどうぞ。 |
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五良会グループでは、田園調布の竹内内科小児科医院と港区の五良会クリニック白金高輪、そして横浜市都筑区の五良ファミリークリニック センター南(医療法人社団正友会)が連携し、生活習慣病の予防から専門的な治療まで多角的にサポートしております。患者さまの転居やライフスタイルの変化に合わせて、同じグループ内で継続診療が受けられる体制を整えております。
参考文献
- 日本糖尿病学会 編・著「糖尿病診療ガイドライン2024」南江堂, 2024.(第3章 食事療法)
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書, 2024年10月.
- 厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査報告」(朝食欠食率の状況)
- Jakubowicz D, et al. Fasting until noon triggers increased postprandial hyperglycemia and impaired insulin response after lunch and dinner in individuals with type 2 diabetes. Diabetes Care. 2015;38(10):1820-1826.
- Bi H, et al. Breakfast skipping and the risk of type 2 diabetes: a meta-analysis of observational studies. Public Health Nutr. 2015;18(16):3013-3019.
- Jenkins DJ, et al. Slow release dietary carbohydrate improves second meal tolerance. Am J Clin Nutr. 1982;35(6):1339-1346.
- 文部科学省「全国学力・学習状況調査」(朝食摂取と学力・体力の関連)
竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医