皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。
夏は春から初夏にかけて受けた職場の定期健診や特定健診の結果が手元に届く時期です。田園調布・大田区の当院でも、この時期になると「健診でLDLコレステロールが高いと言われたのですが、放っておいて大丈夫ですか?」「中性脂肪の欄にDやEが付いていました」というご相談が増えてまいります。
脂質異常症(コレステロールや中性脂肪の異常)は、痛くもかゆくもないのに、静かに動脈硬化を進めてしまう病気です。今回のブログでは、日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」、厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」「日本人の食事摂取基準(2025年版)」に基づき、健診結果の見方と、夏だからこそ気をつけたい食事・運動のコツを徹底解説いたします。
健診結果の他の項目が気になる方は、関連記事「健診でHbA1c・血糖値を指摘されたら」と合わせてご参考にしてください。
目次
健診結果の「脂質」4つの数値の見方
健診結果の「脂質」の欄には、主に4つの数値が並んでいます。それぞれの意味と、日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」に基づく診断基準(空腹時採血)は以下のとおりです。
| 項目 | どんな数値? | 診断基準 |
|---|---|---|
| LDLコレステロール (悪玉) |
血管の壁にたまり、動脈硬化を進める | 140mg/dL以上で高LDLコレステロール血症 120〜139は境界域 |
| HDLコレステロール (善玉) |
余分なコレステロールを回収する | 40mg/dL未満で低HDLコレステロール血症 |
| 中性脂肪 (トリグリセライド) |
エネルギー源。多すぎると動脈硬化や急性膵炎のリスクに | 空腹時150mg/dL以上 随時(食後)175mg/dL以上 |
| non-HDLコレステロール | 総コレステロールからHDLを引いた「悪玉の総量」 | 170mg/dL以上で高non-HDLコレステロール血症 150〜169は境界域 |
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ポイント|「随時175mg/dL以上」という基準は2022年版からの新しい考え方 ① 食後の採血でも評価できるように:2022年版ガイドラインから、空腹時でない採血(随時)の中性脂肪基準(175mg/dL以上)が新設されました。 ② 「食後だったから高いだけ」と自己判断しないこと:食後でも大きく超えている場合は、再検査・医師への相談をおすすめいたします。 |
なぜ放置してはいけないのか|動脈硬化のメカニズム
LDLコレステロールが高くても、自覚症状はほとんどありません。しかし血液中に増えすぎたLDLコレステロールは、長い年月をかけて静かに血管を傷めていきます。
メカニズム図解|コレステロールが心筋梗塞・脳梗塞につながるまで
| LDLが血管の壁に入り込む:血液中に余ったLDLコレステロールが、動脈の内側の壁にしみ込みます。 | |
| 「プラーク」というこぶができる:壁の中で変性したLDLを免疫細胞が取り込み、おかゆ状のこぶ(プラーク)ができて血管が狭く・もろくなります。 | |
| プラークが破れて血栓ができる:こぶが破れると、傷をふさごうと血のかたまり(血栓)ができ、血管を突然ふさいでしまいます。 | |
| 心筋梗塞・脳梗塞:心臓の血管で起これば心筋梗塞、脳の血管で起これば脳梗塞。ここで初めて「症状」が出ますが、命に関わる段階です。 |
だからこそ、症状のない健診の段階で見つけて対策を始めることに大きな意味があります。逆にいえば、脂質異常症は「サイレントキラー」と呼ばれる一方で、早く気づけば食事・運動から無理なく手を打てる病気でもあります。
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重要|こんな方は「体質」の可能性も。早めにご相談ください ・LDLコレステロールが180mg/dL以上の方(家族性高コレステロール血症の可能性があります) ・ご家族(親・きょうだい)に、若くして心筋梗塞・狭心症になった方がいる ・アキレス腱が太い、まぶたに黄色いしこり(黄色腫)があると言われたことがある |
目標値は人によって違います
「LDLは140未満ならよい」と思われがちですが、実は目指すべき数値は一人ひとり異なります。動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版では、年齢・性別・血圧・血糖・喫煙などから将来の動脈硬化性疾患のリスクを予測し(久山町研究のスコアを使用)、リスクの高さに応じて管理目標を定めています。
| リスク区分(目安) | LDLコレステロールの管理目標 |
|---|---|
| 低リスクの方 | 160mg/dL未満 |
| 中リスクの方 | 140mg/dL未満 |
| 高リスクの方(糖尿病・慢性腎臓病などがある方を含む) | 120mg/dL未満(条件により100mg/dL未満) |
| 心筋梗塞・狭心症などを起こしたことがある方(二次予防) | 100mg/dL未満(急性冠症候群後や糖尿病合併など、条件により70mg/dL未満) |
ご自身がどの区分に当たるかは、健診結果全体(血圧・血糖・喫煙歴など)を見ながら判断する必要があります。当院では健診結果をお持ちいただければ、リスク評価から今後の方針まで丁寧にご説明いたします。糖尿病・高血圧をお持ちの方は、脂質の目標がより厳しくなる場合が多いため、特にご相談をおすすめいたします。
夏こそ要注意|食事のコツ
実は夏は、脂質異常症にとって油断しやすい季節です。ビールなどのアルコール、清涼飲料水、アイスクリーム——夏の楽しみには、中性脂肪を上げやすいもの、飽和脂肪酸や糖分の多いものが少なくありません。
今日からできる食事の工夫
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脂質異常症の食事ポイント(動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版より) □ 「The Japan Diet(日本食パターン)」を意識する:魚(特に青魚)、大豆製品、野菜、海藻、きのこ、未精製穀類を増やす □ 肉の脂身・バター・洋菓子など飽和脂肪酸を控えめに □ 食物繊維をしっかり(野菜・海藻・大豆・雑穀) □ 中性脂肪が高い方は、甘い飲み物・果糖の多い加工食品・アルコールを減らす □ 揚げ物・菓子パンなどのトランス脂肪酸を摂りすぎない |
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夏の落とし穴|「とりあえずビール」と甘い飲み物 アルコールと糖分の多い清涼飲料水は、いずれも中性脂肪を上げる代表格です。水分補給の基本は水やお茶にして、ビールは「乾杯の1杯を楽しむ」程度に。甘い飲み物のがぶ飲みは、血糖の急上昇(ペットボトル症候群)にもつながります。詳しくは関連記事「夏に急増「ペットボトル症候群」とは?」をご覧ください。 |
当院では管理栄養士による栄養相談も行っております。「何をどれだけ食べてよいか分からない」という方は、ご自身の食生活に合わせた具体的なアドバイスが受けられますので、お気軽にお申し付けください。
運動のコツ|猛暑の中でも安全に
運動は、HDL(善玉)コレステロールを増やし、中性脂肪を下げる効果が期待できる、脂質異常症対策の大切な柱です。ガイドラインではウォーキング・速歩・軽いジョギング・水泳などの中強度以上の有酸素運動を、1日合計30分以上、週3日以上(できれば毎日)行うことが推奨されています。また、厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、成人は1日60分以上(約8,000歩以上)の歩行相当の身体活動と、週2〜3日の筋力トレーニングが推奨されています。
ただし、この時期の日中の運動は熱中症のリスクと隣り合わせです。次の工夫で、夏でも安全に体を動かしましょう。
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ポイント|夏の運動は「時間・場所・水分」を工夫 ① 時間をずらす:早朝や日没後など、気温の下がる時間帯に。多摩川の河川敷も朝夕は歩きやすくなります。 ② 場所を変える:猛暑日は無理をせず、冷房の効いた屋内での踏み台昇降・スクワット・ラジオ体操やプール歩行も立派な運動です。 ③ 水分をこまめに:運動の前・途中・後に水分補給を。のどが渇く前に飲むのがコツです。 ④ 細切れでもOK:1回10分×3回など、合計で30分になれば効果が期待できます。エレベーターを階段に変えるなど「今より少しでも多く動く」ことから始めましょう。 |
高血圧や心臓の病気をお持ちの方、膝や腰に不安のある方は、運動を始める前に一度医師にご相談ください。当院では患者さまの状態に合わせた無理のない運動のご提案をいたします。
お薬による治療について
食事・運動の改善を続けても目標に届かない場合や、リスクが高い場合には、スタチンをはじめとするお薬による治療を検討します。脂質異常症の治療薬は種類が増えており、体質や他の病気との兼ね合いを見ながら選択します。
大切なのは、お薬はあくまで食事・運動療法と組み合わせて効果を発揮するものだということ、そして自己判断で中断しないことです。「数値が下がったからやめた」というご相談をよくお受けしますが、服薬を中断すると数値は元に戻ってしまうことが多く、中止や減量は必ず医師と相談しながら進めましょう。なお、脂質異常症と診断された場合の治療(診察・検査・お薬)は保険診療で行うことができます。
受診前のチェックリスト・ご予約方法
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受診前チェックリスト □ 今年の健診結果(あれば過去2〜3年分も) □ 服用中のお薬・サプリメントが分かるもの(お薬手帳) □ ご家族の病歴(心筋梗塞・脳梗塞・脂質異常症など) □ ふだんの食事・飲酒・運動の習慣(ざっくりで結構です) |
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健診結果を「そのまま」お持ちください 竹内内科小児科医院では、健診で脂質異常を指摘された方の再検査・リスク評価・食事運動指導・お薬の治療まで一貫して対応しております。土曜も午前診療を行っておりますので、平日お忙しい働き盛りの方もご相談いただけます。 ご予約はWEB予約・LINE・お電話(03-3721-5222)にて承っております。ページ下部のボタンからどうぞ。東急東横線・目黒線「多摩川駅」徒歩5分です。 |
五良会グループの関連診療
医療法人社団五良会では、田園調布の竹内内科小児科医院と港区の五良会クリニック白金高輪が連携し、脂質異常症をはじめとする生活習慣病の予防・治療を多角的にサポートしております。
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関連情報|五良ファミリークリニック センター南(横浜市都筑区)
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五良会グループでは、田園調布から白金高輪まで医師が連携しております。患者さまの転居やライフスタイルの変化に合わせて、同じグループ内で継続診療が受けられる体制を整えております。
参考文献
- 日本動脈硬化学会編「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」日本動脈硬化学会, 2022.
- 日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版について」https://www.j-athero.org/jp/jas_gl2022/(2026年8月閲覧)
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」2024年1月.
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書, 2024年10月.
竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医