皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。
夏本番を迎え、プールや水遊びの機会が増えるこの時期、田園調布・大田区の当院でも「子どものお腹や脇に、つやつやした小さなブツブツができた」「水いぼと言われたけれど、プールに入っていいの?」といったご相談が増えてまいりました。かゆがってかき壊してしまい、数がどんどん増えて心配される保護者の方も多くいらっしゃいます。
今回のブログでは、夏に子どもへ広がりやすい「水いぼ(伝染性軟属腫:でんせんせいなんぞくしゅ)」について、日本臨床皮膚科医会・日本小児皮膚科学会の統一見解(2013年5月改訂)や、日本小児皮膚科学会が公表しているQ&Aをもとに、症状・感染経路・プールの可否・治療の考え方まで、内科と小児科を併設する当院の視点でわかりやすくお伝えいたします。
また、2026年2月には、日本で初めて伝染性軟属腫に適応をもつ塗り薬(カンタリジン外用液)が発売されました。これまで「待つ」か「ピンセットでつまむ」かの二択だった水いぼの治療に、新しい選択肢が加わっています。この新しいお薬についても、保険適用の有無・使い方・注意点を含めて第4章で詳しくご説明いたします。
あせも・とびひ・虫刺されなど夏の子どもの肌トラブル全般については、当院の「子どものあせも・虫刺され・とびひ完全ガイド」もあわせてご覧ください。
目次
1. 水いぼ(伝染性軟属腫)とは?
水いぼは、伝染性軟属腫ウイルス(molluscum contagiosum virus)というウイルスの感染によって起こる、ありふれた皮膚のできものです。日本小児皮膚科学会によると、7歳以下の子どもに多くみられます。免疫がまだ十分に発達していない時期に、皮膚を通じて感染しやすいためです。
見た目は、1〜5mmほどの光沢のある半球状の小さなブツブツで、中央がややへこんでいるのが特徴です。中には「軟属腫小体」と呼ばれる白い塊が詰まっており、これがウイルスの本体です。痛みは基本的にありませんが、まわりが赤くなってかゆみを伴うことがあり、かくことでさらに数が増えていきます。
できやすい場所は、わきの下・胸・お腹・太ももの内側・ひじ・ひざの裏など、皮膚がこすれやすくやわらかい部分です。アトピー性皮膚炎などで皮膚のバリア機能が弱っているお子さんでは、広がりやすい傾向があります。
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ポイント|水いぼの見た目の特徴 ① 大きさ:1〜5mm程度の小さなブツブツ ② 表面:つやつやと光沢があり、中央がへこんでいる ③ 症状:痛みは少ないが、かゆみを伴い、かくと増える |
2. どうやってうつる?感染経路と広がり方
水いぼは接触によって広がる感染症です。水いぼの中身(軟属腫小体)にはウイルスがたくさん含まれており、かき壊してつぶれた液や、それを触った指を介して、皮膚から皮膚へと感染していきます。
子ども同士のスキンシップや、きょうだいでのじゃれ合い、そしてタオル・浮き輪・ビート板などの共用が、家庭や園・学校での広がりの主な原因となります。夏に増えるのは、薄着になり肌の接触が増えること、プールや水遊びで道具を共用しやすいことが背景にあります。
メカニズム図解|水いぼが増えていく流れ
| ウイルスが皮膚に付着:接触や共用物を介してウイルスが肌に付く | |
| 小さなブツブツができる:数週間かけて光沢のあるいぼが出現 | |
| かゆくてかき壊す:中身がつぶれ、ウイルスを含む液が指に付く | |
| 別の場所・別の人へ広がる:その指で触れた部位に新しいいぼができる |
3. プールに入ってもいいの?(統一見解)
夏に最も多いご質問が、この「プール問題」です。結論から申し上げますと、水いぼがあってもプールに入ることは差し支えありません。
日本臨床皮膚科医会・日本小児皮膚科学会などが示している統一見解では、「プールの水ではうつらないため、プールに入っても構わない」とされています。水いぼを理由にプールを一律に禁止する医学的な根拠はない、という考え方です。文部科学省・日本臨床皮膚科医会などの資料でも、同様の見解が示されています。
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ただし、これだけは避けましょう プールの水ではうつりませんが、肌と肌の直接の接触や、タオル・ビート板・浮き輪の共用ではうつる可能性があります。 ・タオルや衣類、水泳道具は共用しない |
なお、園や学校によっては独自のルールを設けている場合があります。集団生活の場では、施設の方針も確認いただくとスムーズです。「入ってよい」という医学的根拠をお伝えする書面が必要な場合は、当院までご相談ください。
4. 治療の考え方|待つ? 取る? 塗る?
水いぼの治療は長らく、「摘除(てきじょ)して取る」か「自然に治るのを待つ(経過観察)」かの二択でした。しかし2026年2月、日本で初めて伝染性軟属腫に適応をもつ塗り薬が発売され、選択肢は3つになりました。それぞれに一長一短があり、お子さんの年齢・いぼの数・部位・アトピーの有無・ご家庭のお考えを踏まえて選んでいくのが基本です。
① 自然経過(待つ)
水いぼは、健康なお子さんであれば免疫の力でいずれ自然に治るのが特徴です。日本小児皮膚科学会のQ&Aでは、自然に治るまでにはおおむね6か月〜3年と個人差が大きく、期間の予測は難しいとされています。治るまでの間に一時的に数が増えることもあります。
② 摘除(取る)
専用のピンセット(トラコーマ摂子)で一つひとつつまみ取る方法です。数が少ないうちに早めに処置するほど、負担が少なくて済みます。つまむ際の痛みをやわらげるため、麻酔成分入りのテープ(貼付薬)を事前に貼る方法があり、この麻酔テープは平成24年(2012年)から保険適用が認められています。
③ 外用薬(塗る)|2026年に登場した新しい選択肢
2026年2月9日、カンタリジンを有効成分とする外用液(製品名:ワイキャンス®外用液0.71%、鳥居薬品株式会社)が日本で発売されました。伝染性軟属腫に適応をもつ、国内で初めての外用薬です。
この薬は2025年9月19日に国内で製造販売承認を取得し、2025年11月12日に薬価基準へ収載されました。つまり自費診療ではなく、健康保険が使えるお薬です。国内で行われた第Ⅲ相臨床試験では、プラセボ(有効成分を含まない外用液)に対する優越性が確認されています。
図解|カンタリジン外用液を使うときの流れ
| 医療機関で医師が塗布:劇薬に指定されており、処方箋でお持ち帰りいただくことはできません。診察のうえ、院内で医師が水いぼ1つひとつに塗布します | |
| 16〜24時間後にご自宅で洗い流す:石鹸を用いて水で洗い流します。洗い流すまでは入浴・シャワーを控えていただきます | |
| 3週間に1回の間隔で:残っている場合は、間隔をあけて塗布を繰り返します | |
| 対象は2歳以上:成人および2歳以上の小児に使用できます |
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外用薬を選ぶ前に知っておいていただきたいこと 「塗るだけ」と聞くとお子さんの負担がまったくないように思われるかもしれませんが、この薬は塗った部位に意図的に反応を起こして水いぼを取り除くタイプのお薬です。臨床試験では、塗った場所に小水疱(水ぶくれ)・かさぶた・赤み・痛み・かゆみ・びらんといった局所の反応が高い頻度で報告されています。 ・眼、眼の周囲、粘膜には使用できません ・塗布後に強い痛みが出た場合は、16〜24時間を待たずに石鹸と水で洗い流し、医師にご相談ください |
| 方法 | メリット | 留意点 |
|---|---|---|
| ① 経過観察 (待つ) |
処置の痛みがなく、傷あとが残りにくい | 自然治癒まで6か月〜3年と長く、その間に増える・人にうつす可能性 |
| ② 摘除 (取る) |
その場で確実に数を減らせる | つまむ際に痛みを伴う(麻酔テープで軽減可能) |
| ③ 外用薬 (塗る) |
つまむ処置を避けられる。保険適用(2025年11月薬価収載) | 塗った部位に水ぶくれ・赤み・痛みなどの反応が出やすい。2歳以上が対象。眼囲・粘膜には使用不可 |
「必ず取らなければいけない」というものではありませんし、逆に「新しい薬が出たから全員それを使う」というものでもありません。いぼの数・部位・お子さんの年齢・通院のご負担によって、最適な選択は変わります。治療法の選択や当院での対応可否については、診察のうえご相談ください。内科・小児科・皮膚科の視点をあわせて、無理のない方針を一緒に考えてまいります。
5. おうちでできるケアと悪化を防ぐコツ
水いぼを「増やさない・広げない」ためには、日々のスキンケアと生活の工夫がとても大切です。特に、かき壊しを防ぐことと皮膚のバリアを保つことが二本柱になります。
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おうちケアのポイント □ 爪を短く切り、かき壊しを防ぐ □ 乾燥はかゆみのもと。保湿で皮膚のバリアを整える □ タオル・衣類・水泳道具は共用しない □ いぼの部分は衣類や防水ばんそうこうで覆う □ 汗をかいたらこまめに洗い流し、清潔を保つ |
特にアトピー性皮膚炎などで肌が乾燥しがちなお子さんは、日ごろの保湿ケアが水いぼの広がりを抑えるうえでも重要です。夏の子どもの肌ケア全般については、当院の夏のスキンケア記事もご参照ください。
6. こんなときは受診を|チェックリスト
水いぼの多くは慌てる必要のないものですが、次のような場合は一度ご相談いただくと安心です。かき壊した部分から細菌が入り、とびひ(伝染性膿痂疹)を併発することもあります。
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こんなときは受診をおすすめします ・いぼの数が急に増えてきた ・赤く腫れる、じくじくする、膿をもっている(とびひの併発が疑われる) ・強いかゆみや痛みがある ・アトピー性皮膚炎があり、広がりやすい ・園・学校のプールや行事の前に方針を相談したい |
当院は内科・小児科・皮膚科を併設しており、お子さんの肌の相談から、保護者の方ご自身の健康相談まで、ご家族まとめて対応できるのが強みです。土曜午前も診療しておりますので、共働きのご家庭もお気軽にご相談ください。
7. よくあるご質問(Q&A)
Q. 大人にもうつりますか?
水いぼは主に子どもにみられますが、大人にうつることもあります。皮膚のバリアが弱っている方などでは感染することがあるため、家庭内でもタオルの共用は避けるとよいでしょう。
Q. お風呂で家族にうつりますか?
湯船のお湯を介してうつるものではありません。ただし、タオルの共用や肌の直接接触では広がる可能性があるため、タオルは分けることをおすすめします。
Q. 保育園・幼稚園は休ませるべき?
水いぼは学校保健安全法で出席停止と定められた感染症ではなく、原則として登園・登校を制限する必要はありません。園ごとの方針もありますので、気になる場合は施設と相談し、必要に応じて当院にもご相談ください。
参考文献
- 日本小児皮膚科学会「Q&A みずいぼ(伝染性軟属腫)」 https://jspd.umin.jp/qa/01_mizuibo.html (2026年8月閲覧)
- 日本臨床皮膚科医会・日本小児皮膚科学会「プール・水泳と皮膚疾患に関する統一見解」(2013年5月改訂)
- 鳥居薬品株式会社「ウイルス性疣贅治療剤『ワイキャンス®外用液0.71%』(適応症:伝染性軟属腫)の日本における新発売について」(2026年2月9日)
- 鳥居薬品株式会社「皮膚疾患治療薬『ワイキャンス®外用液0.71%』の伝染性軟属腫を適応症とした日本国内における製造販売承認取得について」(2025年9月19日)
- ワイキャンス®外用液0.71% 電子添文(効能・効果、用法・用量、副作用、適用上の注意)(2026年8月閲覧)
- マルホ株式会社 医療関係者向けサイト「伝染性軟属腫(みずいぼ)の治療」(2026年8月閲覧)
- MSDマニュアル プロフェッショナル版「伝染性軟属腫」(2026年8月閲覧)
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竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医