皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。
8月に入り、田園調布・多摩川周辺でも厳しい暑さが続いております。この時期、外来で増えてくるのが「子どもの咳が止まらない」「ゼーゼーと苦しそうな呼吸をしている」というご相談です。夏かぜと思っていたら、実はRSウイルス感染症だった、というケースは少なくありません。RSウイルスは以前は冬に流行するウイルスでしたが、2021年以降は春から初夏にかけて増加し、夏にピークを迎える流行パターンに変化しており、まさに今の季節に注意が必要な感染症です。
今回のブログでは、厚生労働省・東京都感染症情報センターの情報や、日本小児科学会「日本におけるニルセビマブの使用に関するコンセンサスガイドライン」(2024年5月22日発行、2025年8月31日改訂)などをもとに、RSウイルス感染症の症状・受診の目安・ご家庭でのケア、そしてここ数年で大きく進歩した新しい予防法(抗体製剤・母子免疫ワクチン)について、内科・小児科の両方の視点から分かりやすく解説いたします。
目次
RSウイルス感染症とは?なぜ「夏」に流行するのか
RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus:呼吸器合胞体ウイルス)は、乳幼児の呼吸器感染症の代表的な原因ウイルスです。感染力が非常に強く、生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%のお子さんが一度は感染するとされています(厚生労働省 RSウイルス感染症Q&A)。
かつては「冬のウイルス」として知られていましたが、東京都感染症情報センターによると、近年は流行時期が変化し、2021年以降は春から初夏に増加が始まり、夏にピークがみられるようになりました。夏休みで人の行き来が増えるこの時期は、保育園・幼稚園やご家庭内での感染が広がりやすくなります。
感染経路は、咳やくしゃみによる飛沫感染と、ウイルスが付いた手やおもちゃを介した接触感染です。大人が感染すると軽い鼻かぜ程度で済むことが多いため、気づかないうちに赤ちゃんへうつしてしまうことがある点に注意が必要です。
症状と経過|「ただの鼻かぜ」から始まるのが特徴
RSウイルス感染症は、最初は鼻水・軽い咳・発熱といった普通のかぜと区別がつかない症状から始まります。多くのお子さんは数日〜1週間程度で自然に軽快しますが、生後6か月未満の赤ちゃん・早産で生まれたお子さん・心臓や肺に基礎疾患のあるお子さんでは、気管支の奥(細気管支)まで炎症が及び、細気管支炎や肺炎へ進行して重症化することがあります。
メカニズム図解|RSウイルスが重症化するまで
| 上気道で増殖:鼻やのどでウイルスが増え、鼻水・咳・発熱などかぜ症状が出ます(感染から2〜8日の潜伏期間) | |
| 細気管支へ波及:赤ちゃんの細い気管支は炎症でむくみ、痰がつまりやすく、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という喘鳴(ぜんめい)が出ます | |
| 細気管支炎・肺炎へ:呼吸が速く浅くなり、哺乳ができない・眠れないなどの状態に。月齢の低い赤ちゃんでは無呼吸発作を起こすこともあり、入院が必要になる場合があります |
RSウイルスに特効薬はなく、治療は水分補給・鼻水の吸引・酸素投与などの対症療法が基本です。だからこそ、「重症化のサインを見逃さないこと」と「予防」がとても大切になります。
すぐに受診すべき危険なサイン
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重要|次のサインがあれば、ためらわず受診を(夜間・休日は救急相談 #8000 / #7119 も) ・「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という呼吸音が続く ・呼吸が速い、肩で息をする、小鼻がピクピクする(鼻翼呼吸) ・息を吸うときに胸(みぞおちや肋骨の間)がペコペコへこむ(陥没呼吸) ・母乳・ミルクの飲みがいつもの半分以下、おしっこが少ない ・顔色・くちびるの色が悪い(青白い・紫がかっている) ・呼吸が数秒止まる、ぐったりして反応が鈍い |
特に生後3か月未満の赤ちゃんの発熱や呼吸の異常は、RSウイルスに限らず早めの受診が原則です。当院は内科・小児科を併設しておりますので、「これって受診したほうがいい?」と迷われた段階でお電話やWEB問診でご相談いただいて構いません。
ご家庭でのケアと登園の目安
ご家庭でのケアのポイント
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ポイント|おうちケアの4原則 ① こまめな水分補給:一度にたくさん飲めなくても、少量ずつ回数を分けて。母乳・ミルクも1回量を減らして回数を増やすと飲みやすくなります ② 鼻水の吸引:鼻づまりは呼吸と哺乳を妨げます。市販の鼻吸い器の活用や、当院での鼻処置もご利用ください ③ 室内環境:エアコンで室温を快適に保ちつつ、加湿と定期的な換気を。タバコの煙は症状を悪化させるため厳禁です ④ 家庭内感染対策:手洗い・おもちゃの消毒・タオルの共用を避ける。かぜ症状のある大人や上のお子さんは、赤ちゃんとの接触前に必ず手洗いを |
登園はいつから?
RSウイルス感染症には、インフルエンザのような法律で定められた出席停止期間はありません。一般に、発熱や激しい咳などの症状が落ち着き、普段どおりの食事・睡眠がとれるようになってからの登園再開が目安とされています。ただし、園によって基準が異なる場合がありますので、通われている保育園・幼稚園にもご確認ください。当院でも診察のうえ、登園再開のタイミングについてご相談に応じております。
大きく進歩した予防法|抗体製剤と母子免疫ワクチン
ここ数年で、RSウイルスの予防はめざましく進歩しました。赤ちゃんを守る選択肢が「生まれた後に投与する抗体製剤」と「妊娠中に接種する母子免疫ワクチン」の2つの方向から広がっています。
| 予防法 | 対象 | 特徴 |
|---|---|---|
| ニルセビマブ (ベイフォータス®) |
新生児・乳幼児 | 2024年3月26日に国内承認された長時間作用型モノクローナル抗体。1回の筋肉内注射で約5か月間効果が持続し、重症化リスクの高いお子さんに加え、生後初回の流行期を迎える健康な新生児・乳児も対象に承認されています |
| 母子免疫ワクチン (アブリスボ®) |
妊婦さん | 2024年1月18日に国内初の母子免疫RSウイルスワクチンとして承認。妊娠中に接種することで、お母さんの抗体が胎盤を通じて赤ちゃんに移行し、生後早期の赤ちゃんをRSウイルスから守ります |
| 高齢者向けワクチン (アレックスビー®など) |
60歳以上の方など | 2023年9月25日に60歳以上を対象とした国内初のRSウイルスワクチンとして承認。高齢の方の重症RSウイルス感染症の予防が期待されています |
ニルセビマブについては、日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会が「日本におけるニルセビマブの使用に関するコンセンサスガイドライン」(2024年5月22日発行、2025年8月31日改訂)を公表し、わが国での使い方の考え方が整理されています。
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ご注意ください 抗体製剤やワクチンは、それぞれ対象となる方・投与時期・費用(保険適用の範囲や自治体の助成の有無)が異なります。すべての方に一律におすすめできるものではなく、お子さんの月齢や基礎疾患、ご家族の状況によって適した選択肢が変わりますので、詳しくはかかりつけ医にご相談ください。当院でも、五良会グループの連携体制を活かしてご案内いたします。 |
大人・高齢者も要注意|「孫からの感染」に気をつけて
RSウイルスは「子どもの病気」と思われがちですが、実は何度でも感染するウイルスで、大人もかかります。健康な大人では鼻かぜ程度で済むことがほとんどですが、ご高齢の方や、心臓・肺の持病、糖尿病などの基礎疾患をお持ちの方では、肺炎や心不全の悪化など重症化することが知られています。
夏休みやお盆の帰省は、お孫さんと祖父母が触れ合う楽しい機会ですが、同時にRSウイルスが世代を越えて広がりやすいタイミングでもあります。かぜ症状のあるお子さんと祖父母との接触はできるだけ控えめにし、手洗いを徹底することが、ご家族みんなを守ることにつながります。長引く咳や痰、微熱が続く場合は、大人の方も内科でご相談ください。
受診前チェックリスト
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受診前チェックリスト(メモしてお持ちいただくとスムーズです) □ 発熱・咳・鼻水がいつから始まったか □ 母乳・ミルク・食事・水分がどのくらいとれているか □ おしっこの回数(いつもと比べて) □ 保育園・幼稚園や家族内で同じような症状の人がいるか □ 早産・心疾患・肺疾患などの基礎疾患の有無 □ 服用中のお薬・お薬手帳 |
当院は土曜午前も診療しており、内科・小児科併設のため、お子さんと親御さん・祖父母の方を同じ場所でまとめてご相談いただけます。「家族ぐるみのかかりつけ医」として、田園調布・多摩川エリアの皆さまの夏の健康をお守りしてまいります。
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五良会グループでは、田園調布の竹内内科小児科医院と港区の五良会クリニック白金高輪、横浜市都筑区の五良ファミリークリニックセンター南が連携し、お子さんから祖父母の世代まで、ご家族の健康を世代横断的にサポートしております。患者さまの転居やライフスタイルの変化に合わせて、同じグループ内で継続診療が受けられる体制を整えております。
参考文献
- 厚生労働省「RSウイルス感染症に関するQ&A」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rsv_qa.htm(2026年8月閲覧)
- 東京都感染症情報センター「RSウイルス感染症の流行状況」 https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/diseases/rs-virus/(2026年8月閲覧)
- 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会「日本におけるニルセビマブの使用に関するコンセンサスガイドライン」(2024年5月22日発行、2025年8月31日改訂) https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20250831Beyfortus_GL.pdf
- アストラゼネカ株式会社 プレスリリース「ベイフォータス®、新生児および乳幼児のRSウイルス感染症による下気道疾患の発症抑制・予防にて製造販売承認取得」(2024年3月26日承認)
- ファイザー株式会社 プレスリリース「アブリスボ®筋注用[組換えRSウイルスワクチン(母子免疫)]製造販売承認を取得」(2024年1月18日) https://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2024/2024-01-18-02
- グラクソ・スミスクライン株式会社 プレスリリース「60歳以上を対象としたRSウイルスワクチン『アレックスビー筋注用』の製造販売承認を取得」(2023年9月25日) https://jp.gsk.com/ja-jp/news/press-releases/20230925-arexvy/
- 国立成育医療研究センター「RSウイルス感染症」 https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/children/rs.html(2026年8月閲覧)
竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医