【2026年夏】草むらの虫刺されと発熱に注意|マダニ感染症「SFTS」の症状・予防と新しい治療薬【田園調布・多摩川】

皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。

本格的な夏を迎え、田園調布・多摩川周辺でも、川沿いの土手や公園の草むら、家庭菜園やキャンプなど、屋外で過ごす機会が増える季節になりました。この時期、当院で「草むらで虫に咬まれたあと、数日して高い熱が出た」「庭仕事のあとに体調を崩した」といったご相談が増えてまいります。その背景として、近年注目されているのがマダニが媒介する感染症「SFTS(重症熱性血小板減少症候群)」です。

SFTSはこれまで西日本を中心に報告されてきましたが、近年は報告地域が徐々に東日本へ拡大していることが指摘されています。今回のブログでは、国立健康危機管理研究機構(旧・国立感染症研究所)や東京都感染症情報センターの最新情報をもとに、マダニ感染症の症状・予防と、2024年に新たに承認された治療薬について、患者さまにわかりやすくお伝えいたします。

なお、この記事は特定の症状の診断を確定するものではありません。気になる症状があるときは、自己判断で放置せず、かかりつけ医にご相談ください。

マダニとは?家のダニとの違い

「ダニ」と聞くと、布団やカーペットにいる小さなチリダニ(ヒョウヒダニ)を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、感染症を媒介するマダニは、それらとはまったく別の種類です。マダニは屋外の草むらや低木、山林などに生息する、吸血する大型のダニで、種類にもよりますが吸血前でも体長3〜4mmほど、血を吸うと1cm前後まで大きくなることもあります。

マダニは草の先端などで動物や人が通りかかるのを待ち、皮膚に取り付いて数日かけて血を吸います。咬まれてもかゆみや痛みを感じにくいことが多く、気づかないうちに吸血されているケースが少なくありません。家庭内のダニ対策とは別に、屋外での対策が必要になるのはこのためです。

SFTS(重症熱性血小板減少症候群)とは

SFTS(重症熱性血小板減少症候群、Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome)は、SFTSウイルスをもったマダニに咬まれることでうつる感染症です。日本では2012年に、海外渡航歴のない国内感染例が初めて報告されました。発熱と消化器症状で始まり、重症化すると命に関わることもある、注意が必要な感染症です。

マダニが媒介する感染症にはSFTSのほか、日本紅斑熱やライム病、つつが虫病(ダニの一種であるツツガムシが媒介)などもあります。いずれも屋外での「虫刺され+発熱」がサインになり得ます。

知っておきたいこと

SFTSには現在、予防のためのワクチンはありません。だからこそ「マダニに咬まれないこと(防御)」と「咬まれたあと・発熱したときに早めに相談すること(早期対応)」が何より大切になります。

どこで・誰が咬まれやすい?国内の発生状況

国立健康危機管理研究機構の集計によると、国内のSFTS報告数は2013年3月から2025年4月までの累計で1,071例にのぼります。2016年ごろまでは年間およそ60例前後でしたが、その後は増加傾向で、2023年には134例が報告されました。従来は西日本での報告が中心でしたが、報告地域は年々広がり、徐々に東日本へと拡大していることが指摘されています。

報告例の特徴として、60歳以上の方が約9割を占め、年齢の中央値は75歳と、高齢の方に多い傾向があります。農作業や庭仕事、山林での作業など、草むらに接する機会の多い方は特に注意が必要です。都市部にお住まいでも、家庭菜園や河川敷、公園の草地、レジャーでの山歩きなどでマダニに接触する可能性はあります。

項目 内容
国内累計報告数 1,071例(2013年3月〜2025年4月)
近年の年間報告数 2023年は134例(増加傾向)
多い年齢層 60歳以上が約9割(年齢中央値75歳)
流行しやすい時期 マダニが活動する春から秋にかけて
報告地域 西日本中心だが、徐々に東日本へ拡大

感染するとどうなる?主な症状

SFTSは、マダニに咬まれてからおよそ6日〜2週間の潜伏期間を経て発症するとされています。主な初期症状は次のとおりです。

主な症状

SFTSでみられる代表的な症状

① 発熱:38℃以上の高い熱が続くことが多い

② 消化器症状:吐き気・嘔吐・下痢・腹痛・食欲低下

③ 全身症状:強い倦怠感(だるさ)、頭痛、筋肉痛

④ 血液の異常:血小板や白血球の減少(検査でわかる)

重症化すると、意識障害や出血症状などがあらわれ、命に関わることもあります。国内の報告では、致死率はおよそ10〜30%とされており、けっして油断できない感染症です。特に高齢の方や持病のある方では重症化に注意が必要です。

ここで大切なのは、これらの症状はSFTSに限らず、夏の胃腸炎や熱中症、そのほかの感染症でもみられるということです。だからこそ「屋外で虫に咬まれたあと」「草むらに入ったあと」に発熱や消化器症状が出た場合は、その経緯を医師に伝えていただくことが、早期の判断につながります。

ペット(ネコ・イヌ)からの感染にも注意

SFTSはマダニからだけでなく、感染した動物(特にネコ)から人にうつることも知られています。SFTSに感染したネコの体液(唾液・血液など)に濃厚に接触することで感染した例が報告されています。2024年には動物のSFTSとしてネコ196頭・イヌ12頭が報告されており、特にネコでは致死率が60〜70%と高いことが知られています。

メカニズム図解|SFTSがうつる主な経路

1 ウイルスをもったマダニが、草むらで人や動物を待ち構える
2 咬まれて吸血されることで、ウイルスが人・動物の体内に入る
3 感染したネコ・イヌの体液に濃厚接触することでも人にうつることがある
咬まれない工夫+動物への配慮で、リスクを大きく減らせる

体調の悪い動物や野生動物、衰弱している動物にはむやみに触れないこと、そして動物に触れたあとはしっかり手を洗うことが予防になります。飼いネコ・飼いイヌを屋外に出す場合は、マダニに咬まれないよう獣医師に相談することもおすすめです。

2024年に承認された治療薬について

これまでSFTSには特効薬がなく、点滴などの対症療法が中心でした。しかし2024年6月24日、抗ウイルス薬ファビピラビル(販売名:アビガン錠)が、SFTSウイルス感染症への使用について国内で承認されました。国内で行われた臨床試験の結果にもとづくもので、治療の選択肢が一つ増えたことになります。

治療薬のポイント

・ファビピラビル(アビガン錠)が2024年6月にSFTSへの適応で承認されました。

・使用にあたっては、対象・投与量などが定められており、医師の判断のもとで用いられます。

・治療薬があっても、早期に医療機関にかかることが重症化を防ぐうえで重要です。

薬の効果や副作用、使用できるかどうかは一人ひとりの状態によって異なります。ここでの記載は一般的な情報提供であり、実際の治療方針は診察のうえで医師が判断いたします。

マダニに咬まれない予防のポイント

ワクチンがないSFTSでは、マダニに咬まれないことが最大の予防策です。草むらや山林、河川敷、家庭菜園などに入るときは、次の点を心がけましょう。

屋外でのマダニ対策チェックリスト

□ 長袖・長ズボンで肌の露出を減らす(袖口・裾は閉じる)

□ 足を完全に覆う靴を履く(サンダルは避ける)

□ 首元にはタオルを巻く、帽子をかぶる

□ 明るい色の服を選ぶ(マダニに気づきやすい)

□ 虫よけ剤(ディートやイカリジン配合)を活用する

□ 屋外活動のあとは入浴し、体をよく確認する

□ 衣類は家に入る前に払い、早めに洗濯する

特に、わきの下・膝の裏・足の付け根・髪の生え際・耳の後ろなど、皮膚のやわらかい場所は咬まれやすいので、屋外活動のあとはお子さまも含めてご家族でチェックしていただくと安心です。

咬まれてしまったら?受診の目安

マダニは吸血中、皮膚に口を差し込んでしっかり固定されています。無理に引き抜こうとすると、口の部分が皮膚に残ってしまったり、マダニの体液が逆流して感染のリスクが高まったりするおそれがあります。ご自身でつぶしたり引きちぎったりせず、できるだけ医療機関(皮膚科など)で除去してもらうことをおすすめします。

重要|早めの受診をおすすめする場合

・マダニに咬まれた(皮膚に虫が食いついている)

・草むら・山林などに入ったあと、数日〜2週間ほどで発熱した

・発熱に加えて、吐き気・下痢・強いだるさをともなう

・受診の際は「いつ・どこで・どんな状況で咬まれたか」をお伝えください

当院は内科・小児科・皮膚科を併設しており、大人の方もお子さまも、虫刺されの相談から発熱時の診察まで、ご家族そろってご相談いただけます。土曜午前も診療しておりますので、平日の受診が難しい方もお気軽にご来院ください。「これはSFTSでしょうか?」と不安に思われた段階でご相談いただいて構いません。夏の屋外レジャーを安心して楽しむために、正しい知識で予防していきましょう。

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参考文献

  1. 国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト「<特集>重症熱性血小板減少症候群(SFTS)2025年5月現在」(IASR Vol.46)(2026年7月閲覧)
  2. 国立健康危機管理研究機構「SFTSに対するファビピラビルの承認と現状について(2025年)」(IASR)(2026年7月閲覧)
  3. 東京都感染症情報センター「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」(2026年7月閲覧)
  4. 富士フイルム富山化学株式会社「マダニ媒介感染症『SFTSウイルス感染症』抗ウイルス薬『アビガン®錠』適応追加のお知らせ」(2024年)(2026年7月閲覧)
  5. 厚生労働省「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)について」(2026年7月閲覧)

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