【2026年9月・がん征圧月間】糖尿病と「がん」の深い関係|リスクは何倍?今こそ受けたいがん検診を院長がやさしく解説【田園調布・多摩川】

皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。

毎年9月は、日本対がん協会が定める「がん征圧月間」です。大田区でも各種がん検診の受診が呼びかけられる時期ですが、実は糖尿病の患者さんにこそ、がん検診を意識していただきたいことをご存じでしょうか。外来でも「糖尿病があると、がんになりやすいのですか?」というご質問をいただくことが増えました。

日本糖尿病学会の「糖尿病診療ガイドライン2024」のトピックスでも取り上げられているとおり、日本人の糖尿病患者さんの死因の第1位は「がん」で、全体の約40%を占めます。今回は、日本糖尿病学会と日本癌学会の「糖尿病と癌に関する合同委員会報告」および糖尿病診療ガイドライン2024に基づき、糖尿病とがんの関係、そして今の時期にぜひ受けていただきたいがん検診について、やさしく解説いたします。

なお、本記事に登場する患者さんの例は、当院の外来でよく出会う場面をもとにした架空のモデルケースであり、特定の患者さんの診療情報ではありません。

糖尿病の方は、がんになりやすい?——数字で見る本当のリスク

日本糖尿病学会と日本癌学会が合同で行った、日本人約33万人分のコホート研究(集団を長期間追跡する研究)をまとめた解析では、糖尿病がある方は、糖尿病のない方に比べて、がん全体の発症リスクが約1.2倍になることが示されています。がんの種類別に見ると、特にリスクが高くなるのは肝臓がん・膵臓がん・大腸がん(結腸がん)です。

がんの種類 糖尿病がある方のリスク(ハザード比) 目安
がん全体 1.19倍 約2割増
肝臓がん 1.97倍 約2倍
膵臓がん 1.85倍 約1.9倍
結腸がん(大腸がんの一部) 1.40倍 約1.4倍

出典:糖尿病と癌に関する委員会報告(日本糖尿病学会・日本癌学会 合同委員会、2013年)、糖尿病診療ガイドライン2024 トピックス「糖尿病と癌」より

用語解説|ハザード比(HR)とは

ハザード比(hazard ratio:HR)とは、ある集団(ここでは糖尿病のある方)が、比較する集団(糖尿病のない方)に比べて、一定期間内にその病気を「何倍起こしやすいか」を表す統計学の指標です。

たとえば肝臓がんのハザード比1.97とは、「糖尿病のない方に比べて、肝臓がんを発症する危険度が約2倍」という意味です。ただし、これは集団としての傾向であり、糖尿病のある方が必ずがんになるという意味ではありません。過度に不安になる必要はなく、「だからこそ検診で早期発見を」と前向きに捉えていただくのが正しい受け止め方です。

なぜ糖尿病があると、がんが増えるのか——メカニズム図解

糖尿病とがんは、一見まったく別の病気に思えますが、体の中では複数のルートでつながっていると考えられています。代表的なメカニズムを整理してみましょう。

メカニズム図解|糖尿病ががんリスクを高める4つのルート

1 高インスリン血症(インスリン抵抗性):血中のインスリンが過剰な状態が続くと、細胞の増殖を促すシグナルが強まり、がん細胞の増殖にも有利な環境になると考えられています。
2 高血糖と酸化ストレス:慢性的な高血糖は、細胞の遺伝子を傷つける酸化ストレス(活性酸素によるダメージ)を増やします。
3 慢性炎症:内臓脂肪の蓄積などにより、体の中で弱い炎症がくすぶり続けることが、発がんの土壌になると考えられています。
4 共通の生活習慣リスク:肥満・運動不足・喫煙・過度の飲酒は、糖尿病とがんの両方の危険因子です。つまり、生活習慣を整えることは両方の予防につながります。

用語解説|高インスリン血症・インスリン抵抗性とは

インスリン抵抗性とは、血糖を下げるホルモンであるインスリンの「効きが悪くなった」状態のことです。肥満、特に内臓脂肪の蓄積が主な原因となります。

インスリンの効きが悪くなると、体はそれを補おうとして膵臓(すいぞう)からより多くのインスリンを分泌します。その結果、血液中のインスリン濃度が高い状態が続くことを高インスリン血症と呼びます。インスリンには血糖を下げる働きだけでなく、細胞の増殖を促す働きもあるため、この状態が長く続くことががんリスクとの関連で注目されています。2型糖尿病の初期〜中期によく見られる状態です。

外来でよく出会う2つのケース(モデルケース)

ケース1:60代男性・会社員のAさん——「糖尿病の通院はしているけれど、がん検診は数年ご無沙汰」

Aさん(62歳・男性・会社員、HbA1c 8.2%・BMI 27)は、2型糖尿病で当院に通院中です。血糖の話は毎月していても、「がん検診はいつ受けましたか?」とお聞きすると、「そういえば、便潜血検査はここ3年ほど受けていません」とのこと。実はこのパターン、外来では非常によくお見かけします。

糖尿病の通院をしていると「毎月採血をしているから大丈夫」と感じてしまいがちですが、通常の血液検査でがんは見つけられません。Aさんのように大腸がんリスクが約1.4倍とされる糖尿病の方こそ、年1回の便潜血検査(検便)を欠かさないことが大切です。当院では大田区のがん検診のご案内も行っており、便潜血陽性の場合は五良会グループの連携先で大腸内視鏡検査(大腸カメラ)まで切れ目なくつなぐことができます。

ケース2:50代女性のBさん——「健診で脂肪肝。太っていないのに?」

Bさん(55歳・女性、HbA1c 7.0%)は、健診で「脂肪肝」と指摘されました。「お酒はほとんど飲まないのに、なぜ?」と驚かれていましたが、糖尿病や肥満に伴う脂肪肝(現在はMASLD:代謝機能障害関連脂肪性肝疾患と呼ばれます)は、飲酒と関係なく起こります。脂肪肝から肝炎・肝硬変へ進むと、肝臓がんのリスクが高まることが知られており、糖尿病の方の肝臓がんリスクが約2倍とされる背景の一つと考えられています。

Bさんのような方には、血液検査での肝機能のフォローに加えて、腹部超音波(エコー)検査による定期的な肝臓のチェックをおすすめしています。

「急に血糖が悪化した」は膵臓がんのサインのことも

膵臓は、インスリンを分泌する臓器です。そのため、膵臓がんができるとインスリンの分泌が障害され、糖尿病の新規発症や、それまで安定していた血糖コントロールの急な悪化という形で最初のサインが現れることがあります。

もちろん、血糖が悪化する原因の大半は食事・運動・体重・季節の変化やお薬の飲み忘れなど日常的なものです。ただ、次のようなサインが重なるときには、膵臓の精査(腹部エコー・CT・MRIなど)を検討する必要があります。

重要|こんなときは主治医にご相談ください

・食事や生活を変えていないのに、HbA1cが急に1%以上悪化した

・50歳以降に、やせているのに新しく糖尿病を指摘された

・ダイエットをしていないのに体重が減ってきた

・みぞおちや背中の持続する痛み皮膚や白目が黄色い(黄疸)

・ご家族に膵臓がんの方がいる

当院では、こうしたサインを見逃さないよう、糖尿病の定期通院の中で体重や血糖の推移を継続的に確認しています。「いつもと違う」変化に早く気づけることこそ、かかりつけ医に通い続ける大きなメリットです。

糖尿病の方が受けておきたい「5つのがん検診」

糖尿病診療ガイドライン2024では、「糖尿病患者は性別・年齢に応じて、科学的根拠のあるがん検診を適切に受診することが推奨される」と明記されています。国が推奨する対策型がん検診は次の5つです(厚生労働省の指針に基づく。お住まいの自治体により対象年齢・自己負担額が異なる場合があります)。

検診 対象年齢 間隔 検査方法
大腸がん 40歳以上 毎年 便潜血検査(検便)
胃がん 50歳以上 2年に1回 胃部X線または胃内視鏡
肺がん 40歳以上 毎年 胸部X線(必要に応じ喀痰細胞診)
乳がん 40歳以上の女性 2年に1回 マンモグラフィ
子宮頸がん 20歳以上の女性 2年に1回 子宮頸部の細胞診

加えて糖尿病の方には、リスクの高い肝臓に対する腹部超音波検査や肝機能のフォローも大切です。大田区のがん検診は、対象の方は無料または少額の自己負担で受けられます。「自分はどの検診の対象?」「どこで受けられる?」といったご相談も、外来でお気軽にお声がけください。

血糖管理と生活習慣の改善は「がん予防」にもつながる

糖尿病診療ガイドライン2024では、食事療法・運動療法・禁煙・節酒が、がんリスクの減少につながる可能性があるとされています。つまり、日ごろ糖尿病のために取り組んでいる生活習慣の改善は、そのままがん予防にもつながる「一石二鳥」の取り組みなのです。

なお、「この薬を飲むとがんが増える/減る」といった情報を目にすることがあるかもしれませんが、メトホルミンなど特定の糖尿病治療薬とがんリスクとの関連についての科学的根拠(エビデンス)は、現時点では限定的とされています。自己判断でお薬を中断せず、気になることは必ず主治医にご相談ください。

ポイント|糖尿病とがん、共通の予防策

① 適正体重の維持:内臓脂肪を減らすことは、インスリン抵抗性と慢性炎症の両方の改善につながります。

② 運動習慣:1日8,000歩を目安にした歩行や週2〜3回の筋力トレーニングは、血糖改善とがん予防の両面で有益です。

③ 禁煙:喫煙は多くのがんと動脈硬化の共通リスクです。当院でも禁煙のご相談を承ります。

④ 節酒:純アルコール量を意識した適量飲酒を心がけましょう。

受診前チェックリストと当院からのご案内

がん征圧月間・セルフチェックリスト

□ 直近1年以内に便潜血検査(大腸がん検診)を受けた(40歳以上)

□ 直近2年以内に胃がん検診を受けた(50歳以上)

□ 脂肪肝を指摘されたことがあり、肝臓のフォロー(採血・エコー)を受けている

□ 食事・生活を変えていないのに血糖・体重が急に変化していないか、自分でも気にかけている

□ 自分が対象になる自治体のがん検診を把握している

ひとつでもチェックがつかなかった方は、次回の外来でぜひご相談ください。竹内内科小児科医院では、糖尿病・生活習慣病の診療とあわせて、健康診断・各種検診のご案内、そして必要な場合の専門医療機関へのご紹介まで、一貫してサポートいたします。内科と小児科を併設しているため、ご家族そろって健康のご相談をいただけるのも当院の特徴です。土曜午前も診療しております。

ご予約・ご相談はお気軽に

糖尿病の定期通院中の方も、健診で血糖値やHbA1cを指摘されたばかりの方も、がん検診のご相談とあわせてどうぞ。WEB予約・WEB問診・LINE・お電話(03-3721-5222)にて承っております(予約ボタンはこのページ下部にございます)。

東急東横線・目黒線「多摩川駅」徒歩5分。田園調布・大田区で糖尿病内科・生活習慣病の診療をお探しの方は、竹内内科小児科医院へご相談ください。

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五良会グループでは、田園調布の竹内内科小児科医院と港区の五良会クリニック白金高輪が連携し、糖尿病診療とがんの早期発見を多角的にサポートしております。便潜血陽性の際の大腸内視鏡検査(大腸カメラ)や胃内視鏡検査は、内視鏡専門医の在籍する五良会クリニック白金高輪と連携してご案内が可能です。患者さまの転居やライフスタイルの変化に合わせて、同じグループ内で継続診療が受けられる体制を整えております。

参考文献

  1. 日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病診療ガイドライン2024 トピックス1「糖尿病と癌」. 南江堂, 2024.
  2. 春日雅人ほか. 糖尿病と癌に関する委員会報告(日本糖尿病学会・日本癌学会 糖尿病と癌に関する合同委員会). 糖尿病. 2013;56(6):374-390.
  3. 国立がん研究センター がん情報サービス「がん検診について」(厚生労働省「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」に基づく)(2026年9月閲覧)
  4. 公益財団法人日本対がん協会「がん征圧月間」 https://www.jcancer.jp/ (2026年9月閲覧)
  5. 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」

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竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医

Author: 五藤 良将