皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。
2026年の残暑も厳しく、田園調布・多摩川周辺でも冷たい飲み物が手放せない日が続いております。コンビニや自動販売機には「カロリーゼロ」「糖類ゼロ」と書かれた飲料がずらりと並び、「健診で血糖値や体重を指摘されたので、せめて飲み物はゼロにしています」というお話を、外来でも本当によく伺います。
では、「カロリーゼロなら安心」は本当なのでしょうか。実はWHO(世界保健機関)は2023年5月に「体重管理を目的とした非糖質系甘味料(人工甘味料など)の使用は推奨しない」という新しいガイドラインを公表しており、世界的に注目を集めました。今回のブログでは、このWHO 2023年ガイドラインや糖尿病診療ガイドライン2024(日本糖尿病学会)などをもとに、人工甘味料と血糖値・体重の関係、そして毎日の飲み物との上手な付き合い方を、糖尿病内科・代謝内科の視点から分かりやすく解説いたします。
夏の甘い飲み物と血糖については、姉妹記事「夏に急増「ペットボトル症候群」とは?」もあわせてご覧ください。
目次
「カロリーゼロ」は本当にゼロではない?表示ルールの基礎知識
まず意外と知られていないのが、「ゼロ」表示のルールです。日本の食品表示基準では、飲料の場合、100mlあたり5kcal未満であれば「カロリーゼロ」「ノンカロリー」と表示してよいことになっています。つまり「ゼロ」と書かれていても、厳密にはわずかなエネルギーを含む場合があります。
| 表示 | 基準(飲料100mlあたり) | 500mlペットボトルでは最大 |
|---|---|---|
| カロリーゼロ・ノンカロリー | 5kcal未満 | 約25kcal未満 |
| カロリーオフ・低カロリー | 20kcal以下 | 約100kcal |
| 糖類ゼロ | 糖類0.5g未満 | 糖類は少なくても、糖アルコールなどを含む場合あり |
|
「カロリーオフ」には要注意 「オフ」「ひかえめ」表示の飲料は、500mlでおにぎり半分程度のエネルギーを含むことがあります。「ゼロ」と「オフ」は別物、という点をまず押さえておきましょう。 |
人工甘味料(非糖質系甘味料)とは|主な種類と特徴
カロリーゼロ飲料の甘さの正体が、非糖質系甘味料(NSS:Non-Sugar Sweeteners)です。砂糖の数百倍の甘さを持つため、ごく少量で甘みをつけられ、エネルギーはほぼゼロになります。人工的に合成されたもののほか、ステビアのような植物由来のものも含まれます。
| 甘味料名 | 甘さ(砂糖比・目安) | よく使われる製品 |
|---|---|---|
| アスパルテーム | 約200倍 | ゼロコーラ、卓上甘味料 |
| アセスルファムK(カリウム) | 約200倍 | ゼロ飲料全般、ノンアルコール飲料 |
| スクラロース | 約600倍 | スポーツ飲料、デザート |
| ステビア(植物由来) | 約200〜300倍 | お茶系飲料、卓上甘味料 |
なお、キシリトールなどの糖アルコールや、果物由来の糖は、WHOのいう「非糖質系甘味料」には含まれません。この記事では主にゼロ飲料に使われる上記のような甘味料についてお話しします。
WHO 2023年ガイドライン|「体重管理のための使用は推奨しない」の中身
WHOは2023年5月15日、非糖質系甘味料に関する新しいガイドラインを公表し、「体重コントロールや生活習慣病(非感染性疾患)の予防を目的として、非糖質系甘味料を使用しないことを推奨する」としました(条件付き推奨)。
根拠となった系統的レビューでは、次のような結果が報告されています。
|
ポイント|WHOレビューの主な結果 ① 短期間の試験では:砂糖から置き換えることで、体重がわずかに減る効果が確認されました。 ② しかし長期間の観察研究では:減量効果は持続せず、むしろ2型糖尿病や心血管疾患のリスク上昇と関連する可能性が示されました。 ③ 結論:「ゼロだから痩せる・健康になる」という長期的な効果は期待できない可能性が高い、というのがWHOの判断です。 |
「関連する可能性」という言い方をしたのは、観察研究では因果関係(甘味料が原因かどうか)までは証明できないためです。それでも、「体重管理の手段として積極的に頼るべきものではない」という方向性は、世界の主要な公衆衛生機関の共通認識になりつつあります。
メカニズム図解|なぜ「ゼロ」でも痩せない可能性があるのか(考えられている仮説)
| 甘味への「慣れ」:強い甘みに慣れることで、より甘いものを求めやすくなり、食事全体の嗜好が甘い方向に傾く可能性が指摘されています。 | |
| 心理的な代償(ごほうび効果):「飲み物はゼロにしたから」と、お菓子や食事でかえってエネルギーを摂りすぎてしまうことがあります。 | |
| 腸内細菌への影響(研究段階):一部の甘味料が腸内細菌のバランスを変え、血糖の処理能力に影響しうるという報告がありますが、まだ研究段階の仮説です。 | |
| 結果として:「ゼロに置き換えただけ」では、長期的な体重・血糖の改善につながりにくい可能性がある、と考えられています。 |
なお、2023年7月には国際がん研究機関(IARC)がアスパルテームを「ヒトに対して発がん性がある可能性(グループ2B)」に分類し話題になりましたが、同時にFAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)は、従来どおり1日許容摂取量(体重1kgあたり40mg)の範囲内であれば安全性に問題はないとの評価を維持しています。体重60kgの方なら、ゼロコーラに換算しておよそ1日9〜14缶(355ml缶)に相当する量で、通常の飲み方で超えることはまずありません。「危険だから一切ダメ」ではなく、「頼りすぎない」が現実的な落としどころです。
糖尿病・糖尿病予備群の方はどう考えればよい?
ここで大切な注意点があります。WHOの「使用を推奨しない」という勧告は、すでに糖尿病のある方は対象外とされています。糖尿病の方にとっては、砂糖入り飲料を人工甘味料入りに置き換えることで、食後の急激な血糖上昇(血糖値スパイク)を避けられるという実際上のメリットがあるためです。
日本糖尿病学会の糖尿病診療ガイドライン2024でも、食事療法の基本は適正なエネルギー量とバランスのよい栄養素配分であり、甘味料はあくまで補助的な位置づけです。当院では、糖尿病・糖尿病予備群の患者さまには次のようにお伝えしています。
|
糖尿病・予備群の方への当院の考え方 □ 加糖飲料(ジュース・加糖コーヒー・スポーツドリンクの常飲)を続けるくらいなら、ゼロ飲料への置き換えは「良い一歩」です □ ただしゴールは「甘い飲み物そのものを卒業」し、水・麦茶・無糖のお茶を基本にすること □ ゼロ飲料を「免罪符」にして食事やお菓子が増えていないか、時々振り返る □ 服薬中の方・腎機能にご不安のある方は、飲み物の内容も含めて診察時にご相談ください |
夏の脱水時に糖分の多い清涼飲料水を大量に飲み続けると、血糖が急上昇して「ペットボトル症候群(清涼飲料水ケトーシス)」と呼ばれる状態に至ることもあります。残暑の水分補給は、基本は水や麦茶、大量発汗時のみ経口補水液、と使い分けるのが安心です。
今日からできる「飲み物」の見直し5つのステップ
ステップ1|まず「オフ・微糖」の正体を知る
「微糖」「カロリーオフ」の缶コーヒーや紅茶飲料は、意外としっかり糖分が入っています。まずはラベルの栄養成分表示(100mlあたり)を見る習慣をつけましょう。
ステップ2|加糖飲料→ゼロ飲料は「移行期の橋渡し」に
毎日ジュースを飲む習慣のある方が、いきなり水だけにするのは長続きしません。ゼロ飲料は「甘い飲み物を減らすまでの橋渡し」として上手に使い、少しずつ回数を減らしていきましょう。
ステップ3|「基本の1本」を水・麦茶・無糖茶にする
職場やご自宅に置く「いつもの1本」を無糖に変えるだけで、飲み物由来の糖分は大きく減らせます。無糖の炭酸水は、甘くないのに満足感があり、置き換えに向いています。
ステップ4|「ゼロだから」と食べる量を増やさない
飲み物をゼロにした安心感から間食が増えては本末転倒です。体重・腹囲を週1回でも記録すると、こうした「無意識の代償」に気づきやすくなります。内臓脂肪は現体重の3%減量でも血圧・血糖・脂質の改善が期待できることが知られています(肥満症診療ガイドライン2022)。
ステップ5|迷ったら健診結果を持って相談を
HbA1c(過去1〜2か月の血糖の平均を反映する指標)や中性脂肪、肝機能などの数値によって、飲み物の優先順位は人それぞれです。健診結果をお持ちいただければ、管理栄養士による栄養相談も含めて、その方に合った現実的なプランをご提案いたします。
お子さまとジュース・ゼロ飲料|小児科からのお願い
内科と小児科を併設する当院ならではの視点として、お子さまの飲み物についても触れておきます。成長期のお子さまにとって大切なのは、「ゼロ飲料に置き換えること」ではなく、そもそも甘い飲み物を習慣にしないことです。
|
重要|お子さまの飲み物で気をつけたいこと ・ジュースや乳酸菌飲料の「毎日飲み」は、肥満・むし歯のリスクになります(おやつの時間に量を決めて) ・強い甘味に幼少期から慣れると、甘い嗜好が定着しやすいと考えられています。ゼロ飲料も「甘い味の習慣」という点では同じです ・ふだんの水分補給は水・麦茶で十分です。スポーツドリンクは激しい運動や発熱・下痢のときなど、場面を限って |
「子どもの肥満を指摘された」「家族そろって食習慣を見直したい」という場合も、同じ医師が親子まとめてご相談に乗れるのが当院の強みです。土曜午前も診療しておりますので、共働きのご家庭もご利用いただけます。
当院でできること(糖尿病内科・代謝内科・栄養相談)
竹内内科小児科医院では、糖尿病内科・代謝内科として、健診で血糖値・HbA1c・体重・腹囲を指摘された段階からの早めのご相談をお受けしています。血液検査による評価、生活習慣の振り返り、管理栄養士による栄養相談まで、田園調布・多摩川エリアの「かかりつけ医」として継続的にサポートいたします。
|
受診前チェックリスト|こんな方はご相談ください □ 健診で血糖値・HbA1c・中性脂肪・体重(腹囲)を指摘された □ ゼロ飲料や甘い飲み物を毎日1本以上飲む習慣がある □ ダイエットを繰り返しても体重が戻ってしまう □ のどの渇き・多尿・体のだるさなど、気になる症状がある □ 家族に糖尿病の方がいて、自分やお子さまの生活習慣が心配 |
|
関連記事|竹内内科小児科医院(田園調布)
|
|
関連記事|五良会クリニック白金高輪(港区)
|
|
関連記事|五良ファミリークリニックセンター南(横浜市都筑区)
|
五良会グループでは、田園調布から白金高輪まで医師が連携しております。患者さまの転居やライフスタイルの変化に合わせて、同じグループ内で継続診療が受けられる体制を整えております。
参考文献
- World Health Organization. Use of non-sugar sweeteners: WHO guideline. Geneva: WHO; 2023年5月15日公表.
- 日本WHO協会「WHOガイドライン:体重管理に非糖質甘味料を使用しないよう勧告」(2023年5月)
- WHO/IARC・JECFA. Aspartame hazard and risk assessment results(2023年7月):IARCグループ2B分類およびJECFAによる1日許容摂取量(40mg/kg体重)維持の評価.
- 日本糖尿病学会 編・著『糖尿病診療ガイドライン2024』南江堂, 2024.
- 日本肥満学会 編『肥満症診療ガイドライン2022』ライフサイエンス出版, 2022.
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書, 2024.
- 消費者庁「食品表示基準」(栄養強調表示:エネルギー「ゼロ」は飲料100mlあたり5kcal未満、「オフ」は20kcal以下).
竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医