皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。
「大学から髄膜炎菌ワクチンの接種証明を求められました」「留学まであと2か月しかないのですが、間に合いますか」——田園調布・大田区の当院にも、留学や海外赴任を控えたご家族から、こうしたご相談をいただく機会が年々増えております。
髄膜炎菌ワクチンには、日本で承認されているメンクアッドフィ(A・C・W・Y群)と、海外で広く使われているBEXSERO/ベクセロ(B群)の2種類があります。多くの医療機関ではメンクアッドフィのみの対応ですが、この2つはカバーする「型」がまったく重なっておらず、片方だけでは守れない範囲が残ります。
本記事は2026年2月公開の記事を全面的に改訂したものです。今回の改訂では、2024年8月の米国FDAによるBEXSERO添付文書の改訂と、2024年10月のACIP(米国予防接種諮問委員会)推奨変更という重要な最新情報を反映しました。とくに「留学まで時間がない方が、出発前にどこまで打っておけばよいか」という実践的な問題に、明確な答えが出せるようになっております。あわせて、当院でよくいただくご質問である「なぜB群だけ別のワクチンが必要なのか」という根本的な理由についても、詳しく解説いたします。
目次
- 髄膜炎菌感染症(IMD)とは ── 24時間で命を奪う感染症
- なぜB群だけ「別のワクチン」が必要なのか ── 4CMenBという名前の意味
- 髄膜炎菌の「型」と地域差 ── 欧米でB群が重要な理由
- 日本国内の最新疫学データ ── B群の割合が増加
- 2つのワクチンの比較 ── メンクアッドフィとBEXSERO
- 【重要改訂】BEXSEROの接種スケジュールが変わりました(2024年)
- 留学まで時間がない方へ ── 「0・1か月で2回、あとで3回目」という現実解
- 接種できる年齢 ── 「10歳以上」は米国の話です
- 渡航先・目的別の接種パターン
- 費用と、未承認ワクチンであることのご説明
- よくあるご質問(FAQ)
- 参考文献
1. 髄膜炎菌感染症(IMD)とは ── 24時間で命を奪う感染症
侵襲性髄膜炎菌感染症(IMD:Invasive Meningococcal Disease)は、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)が血液や髄液に侵入して起こる、きわめて進行の速い感染症です。
この感染症が恐ろしい理由
最大の問題は、初期症状が発熱・頭痛・倦怠感など、風邪とほとんど区別がつかないことです。「様子を見ましょう」と判断した数時間後には、意識障害やショックに至っていることがあります。
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重要|適切な治療を行っても ・致命率は10〜15%に達します ・生存された方の約10〜20%に、四肢切断・難聴・神経学的後遺症などが残ります ・発症から24〜48時間で転帰が決まることが少なくありません |
典型的な経過
| 時期 | 症状 | この時点での判断 |
|---|---|---|
| 初期 0〜12時間 |
発熱、頭痛、咽頭痛、倦怠感、食欲低下 | 風邪との鑑別はほぼ不可能 |
| 進行期 12〜24時間 |
四肢の疼痛、手足の冷感、皮膚の蒼白、点状出血斑 | この段階で気づけるかが分岐点 |
| 重症化 24〜48時間 |
項部硬直、意識障害、紫斑の急速拡大、ショック | 緊急入院・集中治療 |
感染経路は飛沫感染です。咳・くしゃみ・会話に加え、食器やコップの共有、キス、密な接触でも伝播します。寮生活、シェアハウス、部活動やスポーツ合宿、大規模イベントといった「近距離で長時間過ごす環境」で集団発生が起こりやすいのは、このためです。留学生が高リスク集団とされる理由も、まさにここにあります。
2. なぜB群だけ「別のワクチン」が必要なのか ── 4CMenBという名前の意味
「4種類カバーするワクチンがあるのに、なぜB群だけもう1本必要なのですか」——これは当院でもっとも多くいただくご質問です。答えは、B群だけは、他の型と同じ作り方ではワクチンが作れなかったという点にあります。
A・C・W・Y群のワクチンは「莢膜」を狙っています
髄膜炎菌は、菌体の外側を莢膜(きょうまく)という多糖体の殻で覆っています。この莢膜の糖の並び方の違いが、そのままA群・B群・C群・W群・Y群といった「血清群」の違いになります。メンクアッドフィをはじめとする4価ワクチンは、この莢膜多糖体を抗原として使い、破傷風トキソイドに結合させることで強い免疫を引き出しています。
ところが、B群の莢膜だけは使えませんでした
メカニズム図解|B群に莢膜ワクチンが作れなかった理由
| B群の莢膜の正体:α(2→8)結合ポリシアル酸という糖の鎖でできています | |
| ヒトの体内にも同じ構造がある:胎児・新生児の脳に存在する神経細胞接着分子(NCAM)上のポリシアル酸と、構造がほぼ同一です | |
| 免疫が「自分の一部」と認識してしまう:免疫寛容が働くため抗体ができにくく、さらに自己免疫の懸念も理論上残ります | |
| そこで発想を変えました:莢膜をあきらめ、菌の表面タンパク質を抗原にする——こうして生まれたのがBEXSEROです |
「4CMenB」の4Cは「4 Component(4成分)」の略です
BEXSEROが学術文献で4CMenBと表記されるのは、下記の4つの成分を含むワクチンだからです。単に「MenB」と書かないのには、はっきりした理由があります。
| 成分 | 正体 |
|---|---|
| NHBA | ヘパリン結合抗原(Neisserial Heparin Binding Antigen) |
| NadA | 接着因子A(Neisserial adhesin A) |
| fHbp | H因子結合タンパク(factor H binding protein) |
| OMV | ニュージーランドNZ98/254株由来の外膜小胞(主抗原はPorA P1.4) |
|
ポイント|「MenB」では製品を特定できません ① B群ワクチンは2種類あり、中身が違います:BEXSERO(4CMenB/4成分)と、もう1つのTrumenba(MenB-FHbp/fHbpのみ2種)です。成分が異なるため相互に入れ替えることができません。だから組成を名前に埋め込んで呼び分けます。 ② 防御が「型」ではなく「株」で決まります:タンパク質を狙うため、流行しているB群の菌がその抗原を十分に持っているかどうかで効果が変わります。そのためMATS法という専用の手法で「株カバー率」を測定します(国や時期により概ね66〜88%)。「B群ワクチン」という言い方は、この本質をかえって見えにくくしてしまうのです。 |
思わぬ副産物 ── 淋菌への交差防御
狙っている抗原がB群髄膜炎菌だけのものではないため、想定外の効果が報告されています。髄膜炎菌と淋菌(Neisseria gonorrhoeae)は近縁で外膜のタンパク質を共有しているため、4CMenBに約30〜40%の淋菌感染予防効果が観察されているのです。莢膜を狙う従来型のワクチンでは決して起こりえない現象で、これも「4CMenB」という名前が示す設計思想の帰結といえます。
3. 髄膜炎菌の「型」と地域差 ── 欧米でB群が重要な理由
髄膜炎菌には13以上の血清群が知られていますが、実際にヒトの重症感染症を起こすのは主にA・B・C・W・X・Y群です。そしてどの型が流行しているかは、地域によって大きく異なります。
2000〜2017年を対象とした系統的レビューでは、世界全体のIMDの約48.5%がB群によるものと報告されています。
| 地域 | 主な血清群 | B群ワクチンの必要性 |
|---|---|---|
| ヨーロッパ(英国含む) | B群が50〜80% | きわめて高い |
| 北米 | B群・C群・Y群が主体 | 高い |
| オーストラリア・ニュージーランド | B群が最多 | きわめて高い |
| アフリカ髄膜炎ベルト | A群・W群・X群が主体 | 4価ワクチンを優先 |
| 日本 | Y群が最多/近年B群が増加 | 上昇中 |
|
英国留学をお考えの方へ 英国は世界でもっともB群の負担が大きい国のひとつで、そのため2015年からBEXSEROを乳児の定期接種(生後8週・16週・1歳)に組み込んでいます。つまり英国では、現地の子どもたちは全員B群ワクチンを接種済みという前提の社会です。日本から渡航される方だけが無防備という状況になりかねません。 |
4. 日本国内の最新疫学データ ── B群の割合が増加
「日本国内なら関係ないのでは」と思われるかもしれませんが、国内でもB群の割合は上昇しています。国立健康危機管理研究機構(JIHS)の届出状況のまとめから、重要な数字をご紹介します。
なお、従来の国立感染症研究所は2025年4月に国立国際医療研究センターと統合され、国立健康危機管理研究機構(JIHS)となりました。現在の疫学情報はJIHSの感染症情報提供サイトで公開されています。
B群の割合は約1.8倍に
| 期間 | B群の割合 |
|---|---|
| 2013年4月〜2020年3月 | 20%(39/198例) |
| 2020年4月〜2024年6月 | 36%(19/53例) |
年齢によって流行する型が違います(2023〜2024年、国内87例)
| 年齢層 | 血清群の分布 | 示唆されること |
|---|---|---|
| 14歳以下 | B群が63%(5/8例) | お子さんではB群が主役。4価ワクチンだけでは大半をカバーできません |
| 15歳以上 | Y群61%(48/79例) B群24%(19/79例) |
Y群が優位だが、B群も4例に1例 |
また、2020年から2022年は年間1〜13例と減少していた報告数が、2023年は21例、2024年は6月時点ですでに29例と、明らかな増加傾向に転じています。20歳代の占める割合も8%から17%へと上昇しました。行動制限の緩和とマスギャザリングイベントの再開が背景にあると考えられます。
|
ポイント|お子さんこそB群対策を 国内データでは、14歳以下ではB群が6割超を占めています。「日本ではY群が多いから4価だけで十分」という説明は、小児には当てはまりません。小児科を併設する当院として、この点は特に強調してお伝えしたい事実です。 |
5. 2つのワクチンの比較 ── メンクアッドフィとBEXSERO
| 項目 | メンクアッドフィ(MenQuadfi) | BEXSERO(ベクセロ) |
|---|---|---|
| 製造元 | サノフィ社 | GSK社 |
| カバーする血清群 | A群・C群・W群・Y群 | B群 |
| ワクチンの種類 | 結合型(莢膜多糖体+破傷風トキソイド結合体) | 組換えタンパク型(4成分=4CMenB) |
| 日本での承認 | 承認済み (2022年9月26日承認/2023年2月10日発売) |
未承認(医師輸入ワクチン) |
| 海外での承認 | 米国・EU等で広く承認 | 40か国以上で承認 |
| 接種回数 | 通常1回(0.5mL筋注) | 2回または3回(詳細は第6章) |
| 接種対象年齢 | 2歳以上 (2歳未満は安全性・有効性が確立していません) |
米国:10〜25歳/欧州・英国:生後2か月〜 (詳細は第8章) |
| 当院での費用(税込) | 24,000円/1回 | 27,500円/1回 |
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この2つは「上位互換」の関係ではありません メンクアッドフィとBEXSEROは、カバーする血清群がまったく重なっていません。どちらかが上位でも下位でもなく、守備範囲が完全に分かれています。したがって「両方接種してはじめて主要な血清群を網羅できる」というのが正確な理解です。厚生労働省検疫所FORTHでも「四価ワクチン(A・C・W・Y群)ではB群は予防できない」と明記されております。 |
6. 【重要改訂】BEXSEROの接種スケジュールが変わりました(2024年)
ここが本記事の改訂でもっとも重要な部分です。2024年8月、米国FDAがBEXSEROの添付文書を改訂し、続く2024年10月にACIP(米国予防接種諮問委員会)が推奨を更新しました。従来の説明とは内容が変わっておりますので、以前に情報を集められた方はご注意ください。
何が変わったのか
| 改訂前 | 改訂後(現行) | |
|---|---|---|
| 2回法 | 0か月、1か月以上あけて | 0か月、6か月 |
| 3回法 | 設定なし | 0か月、1〜2か月、6か月 (リスクの高い10歳以上) |
ACIPの推奨は次のとおりです。
|
ポイント|ACIP 2024年10月更新の推奨 ① 健康な16〜23歳(医師と相談のうえ判断):2回接種(0か月・6か月) ② リスクの高い10歳以上:3回接種(0か月・1〜2か月・6か月) ③ 補体欠損症・無脾症など、リスクが持続する方:初回シリーズ完了後もブースター接種が推奨されます |
そして最重要のルールがこちらです
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重要|2回目を早めに打った場合は3回目が必要です 2回目を1回目から6か月より早く接種した場合は、2回目から4か月以上あけて3回目を接種してください。 これは米国添付文書に明記されたルールです。「2回打ったから終わり」ではありません。以前の「1か月あけて2回」という説明で接種を済ませた方は、3回目が必要な可能性がありますので、ぜひ一度ご相談ください。 |
なぜ6か月あけるほうがよいのか
今回の改訂の根拠となったのは、接種間隔と免疫原性を比較した試験データです。0・2か月や0・4か月といった短縮スケジュールは、0・1〜2・6か月の3回法と比較して、多様なB群株に対する防御が劣っていたことが示されました。
B群ワクチンは第2章でご説明したとおりタンパク質を抗原とするワクチンのため、幅広い菌株をカバーするには、抗体の「量」だけでなく「質と持続性」が重要になります。6か月あけた最終接種が、この質と持続性を引き上げていると理解していただくとよいでしょう。つまり「早く2回打つ」だけでは足りず、6か月時点の追加接種が効いてくるという構造です。
7. 留学まで時間がない方へ ── 「0・1か月で2回、あとで3回目」という現実解
「出発まで2か月しかないのですが、6か月あけろと言われたら間に合いません」——当院でもっとも切実にご相談いただくのがこのケースです。
ご安心ください。この状況にこそ、2024年に新設された3回法(0・1〜2・6か月)が使えます。出発前に0か月・1か月で2回接種して早期に免疫を立ち上げ、6か月時点の3回目を留学先または一時帰国時に接種する——これは応急処置でも自己流のアレンジでもなく、米国添付文書に正式に記載されたスケジュールそのものです。
メカニズム図解|出発まで2か月のケース
| 今すぐ(0か月):BEXSERO 1回目+メンクアッドフィ(1回で完了)を同日別部位で接種 | |
| 1か月後:BEXSERO 2回目。ここまでで出発前の免疫は立ち上がります | |
| 出発:接種証明書(英文)をお持ちいただきます | |
| 初回から6か月時点(=2回目から4か月以上後):3回目を接種して完了。夏休みや年末の一時帰国に合わせるのが現実的です |
出発までの残り期間別・おすすめの進め方
| 出発までの期間 | おすすめのスケジュール | 3回目の扱い |
|---|---|---|
| 6か月以上 | 2回法(0・6か月)で出発前に完了 | 不要(もっともシンプル) |
| 1〜6か月 | 3回法の1・2回目(0・1〜2か月)を出発前に | 必須。一時帰国時または渡航先で |
| 1か月未満 | メンクアッドフィを優先接種(1回で完了) BEXSEROは1回目のみ接種して出発 |
2回目・3回目とも渡航先で |
|
時間がないときは、まずメンクアッドフィを確実に 米国の大学では入学要件としてMenACWY(4価)の接種証明の提出が必須とされることがほとんどです。一方でB群ワクチンは「強く推奨」の位置づけであることが多く、必須要件とは限りません。出発までが1か月を切っている場合は、1回で完了するメンクアッドフィを最優先で確保し、BEXSEROは可能な範囲で開始する——という優先順位づけが現実的です。 |
渡航先での接種について
BEXSEROは40か国以上で承認されており、英国・米国・カナダ・オーストラリアなど主要な留学先ではごく一般的に入手できます。とくに英国では乳児定期接種に使われているワクチンですので、GP(かかりつけ医)に登録すれば接種の相談が可能です。
当院では、渡航先で残りの接種を受けられるよう、接種日・ロット番号・製品名を記載した英文接種証明書を発行しております。現地の医療機関に「何を、いつ、あと何回」が正確に伝わる形でお渡しいたしますので、お申し付けください。
8. 接種できる年齢 ── 「10歳以上」は米国の話です
BEXSEROの対象年齢について、インターネット上では「10歳以上」という説明が多く見られますが、これは米国での承認年齢です。実際には、地域によって承認されている年齢が大きく異なります。
| 地域 | 承認年齢 | スケジュール |
|---|---|---|
| 米国(FDA) | 10〜25歳 | 2回法(0・6か月)または3回法(0・1〜2・6か月) |
| 欧州・英国(EMA/MHRA) | 生後2か月〜(年齢上限なし) | 年齢群ごとに回数と間隔が設定 11歳以上は2回(1か月以上あけて) |
乳幼児のスケジュール(欧州・英国の添付文書)
| 初回接種時の年齢 | 初回シリーズ | 追加接種 |
|---|---|---|
| 生後2〜5か月 | 3回(1か月以上あけて) | 生後12〜15か月に1回 |
| 生後6〜11か月 | 2回(2か月以上あけて) | 生後2年目に1回 |
| 生後12〜23か月 | 2回(2か月以上あけて) | 12〜23か月後に1回 |
| 2〜10歳 | 2回(1か月以上あけて) | リスク持続時は考慮 |
|
ポイント|接種量は年齢を問わず同じです 「赤ちゃんだと量を減らすのですか」というご質問をよくいただきますが、BEXSEROは年齢にかかわらず1回0.5mLの筋肉内注射で共通です。乳児だから半量、といった減量の規定はありません。年齢によって変わるのは「回数」と「間隔」だけとご理解ください。 |
ご家族で英国やオーストラリアに赴任される場合など、乳幼児のお子さんにもB群ワクチンをご検討いただけるということです。内科と小児科を同一の医師が併診する当院では、ご家族全員の接種計画をまとめてご相談いただけます。田園調布・多摩川エリアで「親子まとめて渡航前の準備を」とお考えの方は、どうぞお気軽にお声がけください。
9. 渡航先・目的別の接種パターン
| 渡航先・目的 | メンクアッドフィ | BEXSERO | 備考 |
|---|---|---|---|
| 米国の大学進学(寮生活) | 必須 | 強く推奨 | 大学でのアウトブレイクはほぼB群 |
| 英国の大学進学 | 必須 | きわめて強く推奨 | B群が50〜80%。現地は乳児定期接種済み |
| カナダ・豪州・NZ留学 | 必須 | 強く推奨 | B群が主要血清群 |
| アフリカ髄膜炎ベルト | 必須 | リスクに応じて | A群・W群・X群が主体 |
| サウジアラビア巡礼 | 入国要件 | リスクに応じて | ハッジ・ウムラ参加者は証明書必須 |
| ご家族での海外赴任(乳幼児同伴) | 2歳以上から | 生後2か月から検討可 | 欧州・英国基準のスケジュールで |
| 国内(寮生活・合宿) | 推奨 | 推奨 | 国内でもB群増加傾向 |
| 補体欠損症・無脾症の方 | 必須 | 必須 | 渡航の有無を問わず。3回法+ブースター |
10. 費用と、未承認ワクチンであることのご説明
当院での接種費用(税込・自費診療)
| ワクチン | 費用(1回あたり) | 必要回数 |
|---|---|---|
| メンクアッドフィ | 24,000円 | 通常1回 |
| BEXSERO | 27,500円 | 2回または3回 |
いずれも自費診療(保険適用外)となります。リスクが持続する方には、メンクアッドフィは5年ごとのブースター接種が推奨されます。
BEXSEROが未承認ワクチンであることについて
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重要|接種前に必ずご確認いただきたいこと ・BEXSEROは日本国内では未承認のワクチンで、医師の個人輸入(薬監証明)により取り扱っております ・予防接種法に基づく定期接種・任意接種ではないため、予防接種健康被害救済制度の対象外です ・未承認薬であるため、医薬品副作用被害救済制度(PMDA)の対象外となります ・当院では上記を記載した説明・同意書を接種前に必ずお渡しし、ご納得いただいたうえで接種を行っております |
「未承認」と聞くと不安に思われるかもしれませんが、これは日本国内での薬事手続きの問題であって、ワクチンの品質や有効性の問題ではありません。BEXSEROは40か国以上で承認され、英国では10年以上にわたって乳児の定期接種として使われている実績のあるワクチンです。制度上の位置づけと、医学的な評価を分けてご理解いただければと思います。
|
在庫確保にお時間をいただきます BEXSEROは輸入ワクチンのため、ご予約から接種まで在庫確保のお時間が必要です。渡航予定の少なくとも2〜3か月前にはご相談ください。2回目・3回目の分まで見越して確保いたしますので、初回受診時に渡航スケジュールをお聞かせいただけますと確実です。 |
11. よくあるご質問(FAQ)
Q. メンクアッドフィだけでは不十分ですか?
渡航先によっては不十分です。メンクアッドフィはA・C・W・Y群をカバーしますが、B群にはまったく効果がありません。厚生労働省検疫所FORTHでも「四価ワクチン(A・C・W・Y群)ではB群は予防できない」と明記されています。欧米ではB群が50%以上を占める地域もあり、留学される方には両方の接種を強くおすすめしております。
Q. 以前「1か月あけて2回」で接種を終えました。追加は必要ですか?
3回目が必要な可能性が高いです。2024年8月の米国添付文書改訂により、2回目を1回目から6か月より早く接種した場合は、2回目から4か月以上あけて3回目を接種することとされました。以前の推奨(0・1か月の2回)で完了された方は、ぜひ一度ご相談ください。接種記録をお持ちいただければ、必要な追加接種を判断いたします。
Q. 留学まで2か月しかありません。間に合いますか?
間に合います。3回法の1回目・2回目(0・1か月)を出発前に接種し、6か月時点の3回目を一時帰国時または渡航先で接種する方法があります(第7章参照)。これは正式なスケジュールとして添付文書に記載された方法ですので、ご安心ください。メンクアッドフィは1回で完了しますので、同日に併せて接種いただけます。
Q. BEXSEROは何歳から接種できますか?
欧州・英国の添付文書では生後2か月から接種可能です。米国の承認は10〜25歳ですが、これは米国での薬事上の設定であり、英国では乳児の定期接種(生後8週・16週・1歳)に使われています。ご家族での海外赴任などで乳幼児のお子さんの接種をご検討の場合は、欧州・英国基準のスケジュールでご相談いただけます。
Q. 接種量は年齢によって変わりますか?
変わりません。BEXSEROは全年齢共通で1回0.5mLの筋肉内注射です。乳児だから減量する、といった規定はありません。年齢によって変わるのは接種回数と間隔だけです。
Q. 両方のワクチンを同時に接種できますか?
できます。左右の腕(乳幼児は左右の大腿)など別の部位に接種いたします。同時接種による免疫応答への悪影響は報告されておりません。当院では渡航前の限られた時間を有効に使っていただくため、他の渡航ワクチンも含めた同時接種を積極的にご提案しております。
Q. 副反応はどのようなものがありますか?
両ワクチンとも、接種部位の疼痛・発赤・腫脹、発熱、頭痛、倦怠感が主な副反応です。BEXSEROでは筋肉痛や吐き気もみられます。乳幼児では、他の定期接種と同時に接種した際の発熱の頻度が高くなりますが、アセトアミノフェン(解熱剤)の予防投与はワクチンの効果を下げずに発熱を軽減することが添付文書に明記されています。お子さんの接種では解熱剤をご用意のうえご来院ください。アナフィラキシーなどの重篤な副反応はきわめてまれですが、接種後15〜30分は院内で経過を観察いたします。
Q. 日本国内で生活する場合も必要ですか?
国内のIMD発生率は低い水準(0.028/10万人)ですが、2023年以降は増加傾向にあります。寮生活、部活動の合宿、大規模イベントに参加される方はご検討の価値があります。また補体欠損症や脾臓摘出後の方には、渡航の有無にかかわらず両ワクチンを強くおすすめしております。とくに14歳以下ではB群が6割超を占めるという国内データがあり、お子さんではB群対策の意義が大きくなります。
Q. 大学から英文の接種証明書を求められました。
発行できます。米国の大学では入学前にMenACWYの接種証明の提出が必須とされることがほとんどで、近年はMenB(B群)の証明を求められるケースも増えています。当院では接種日・製品名・ロット番号を記載した英文証明書を発行しております。渡航先で残りの接種を受けられる場合にも役立ちますので、ご希望の方はお申し付けください。
|
受診前チェックリスト □ 出発予定日(何か月後か) □ 渡航先の国と滞在期間・滞在形態(寮・ホームステイ・家族帯同など) □ 大学・学校から指定された必要ワクチンの一覧 □ これまでの髄膜炎菌ワクチンの接種歴(母子健康手帳・接種証明書) □ 英文接種証明書の要否 □ アレルギー歴(特に破傷風トキソイド、ラテックス) □ 持病・服用中のお薬(免疫抑制剤の使用の有無) |
渡航前の接種計画は早めにご相談ください
髄膜炎菌ワクチンは、渡航ワクチン全体の中の一部にすぎません。渡航先によってはA型肝炎・B型肝炎・狂犬病・腸チフス・日本脳炎なども必要となり、それぞれに接種スケジュールがあります。複数のワクチンを限られた期間で組み合わせるには、全体の設計が欠かせません。
当院は土曜午前も診療しておりますので、お仕事や学校の都合で平日の受診が難しい方にもご利用いただけます。内科と小児科を同一の医師が併診いたしますので、ご家族での渡航準備もまとめてご相談いただけます。
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五良会グループでは、田園調布の竹内内科小児科医院と港区の五良会クリニック白金高輪が連携し、渡航前の健康管理を多角的にサポートしております。患者さまの転居やライフスタイルの変化に合わせて、同じグループ内で継続診療が受けられる体制を整えております。
より専門的な渡航相談は、姉妹院である五良会クリニック白金高輪の渡航医学認定医2名(日本旅行医学会認定医:五藤良将、日本渡航医学会認定医:安達弘人医師)と連携してご対応いたします。
参考文献
- Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP). New Dosing Interval and Schedule for the Bexsero MenB-4C Vaccine: Updated Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices — United States, October 2024. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2024;73(49).
- GSK. BEXSERO (Meningococcal Group B Vaccine) Prescribing Information. U.S. Food and Drug Administration. 2024年8月改訂.
- GSK. Bexsero Meningococcal Group B Vaccine — Summary of Product Characteristics (SmPC). electronic medicines compendium(英国).
- European Medicines Agency. Bexsero: EPAR Product Information.
- 国立健康危機管理研究機構(JIHS)「感染症法に基づく侵襲性髄膜炎菌感染症の届出状況のまとめ」(2013年4月〜2024年6月)
- 国立健康危機管理研究機構(JIHS)「最近2年間(2023年、2024年)の侵襲性髄膜炎菌感染症の届出状況のまとめ」(2025年2月26日公開)
- 厚生労働省・国立感染症研究所「侵襲性髄膜炎菌感染症発生時 対応ガイドライン〔第二版〕」(2025年3月28日)
- 厚生労働省検疫所 FORTH「海外渡航のためのワクチン」
- サノフィ株式会社「4価髄膜炎菌ワクチン『メンクアッドフィ筋注』の国内製造販売承認を取得」(2022年9月26日)/「同 発売のお知らせ」(2023年2月10日)
- サノフィ株式会社「メンクアッドフィ筋注」電子添文
- CDC. Meningococcal Vaccine Recommendations. 2025.
- Peterson ME, et al. Meningococcal serogroups and surveillance: a systematic review and survey. J Glob Health. 2019;9(1):010409.
竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医