【2026-27年】子どもの「インフルエンザ脳症」に気をつけたいサイン|熱性けいれんとの違い・異常言動・受診の目安と最新の流行状況を院長・五藤良将がやさしく解説【田園調布・多摩川】

皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。

10月に入り、田園調布・多摩川周辺の小学校や保育園でもインフルエンザによる学級閉鎖のお知らせを目にするようになりました。今シーズンは8月末に流行入りした「早いシーズン」で、外来では「熱でうなされて変なことを言うのですが、脳症ではないでしょうか」「熱性けいれんを起こしたことがあるので心配です」といったご相談が増えています。

今回は、お子さまのインフルエンザで最も気をつけたい合併症であるインフルエンザ脳症(いんふるえんざのうしょう)について、厚生労働省研究班「インフルエンザ脳症ガイドライン【改訂版】」(2009年)、日本小児神経学会「小児急性脳症診療ガイドライン2023」「熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023」、日本小児科学会の注意喚起をもとに、ご家庭で気づきたいサインと受診の目安をお伝えいたします。記事の最初に、東京都・大田区の最新の流行状況もまとめました。

おうちでの看病のコツ(解熱剤の選び方・登園登校の目安など)は、前回の記事「子どものインフルエンザ『おうちケア』完全ガイド」もあわせてご覧ください。

五藤 良将

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竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将

日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医
この記事は五藤良将が執筆・監修し、内容に責任を持っています。

1. 今シーズンの流行状況(10月最新)

2026年第40週(9月28日〜10月4日)の発生状況をまとめました。全国の定点当たり報告数(1医療機関あたりの1週間の患者数)は11.35人で、昨シーズンの同じ時期(1.56人)の約7.3倍です。関東では1都6県すべてが注意報の目安(10.0人)を超えています。

地域・項目 第40週(9/28〜10/4)
全国 定点当たり 11.35人(前週7.17人から増加)
東京都 定点当たり 15.87人(前週9.51人)/注意報レベル継続
大田区(大田区保健所管内) 10.76人(226人)
都内の年齢別 報告6,619人のうち約6割強が14歳以下(最多は10〜14歳)
都内で検出されたウイルス シーズン累計37件すべてがA型(H1N1pdm09)
都内の臨時休業(8/31以降累計) 468施設(小学校334・中学校79など)

出典:東京都感染症情報センター 週報2026年第40週、厚生労働省「インフルエンザの発生状況」(2026年10月時点)。数値は週ごとに更新されます。

子どもの患者さんが中心の流行で、患者数が増えれば、まれな合併症である脳症も一定の割合で起こります。日本小児科学会によると、インフルエンザ脳症は新型コロナ流行期を除いて毎年約100〜200例報告されており(2023/24シーズンは189例)、その数は流行の大きさとおおむね連動しています。

2. インフルエンザ脳症とは?

インフルエンザ脳症は、インフルエンザにかかった後、主に発熱から数時間〜1日ほどの早い時期に、意識の状態が悪くなったり、けいれんや異常な言動が出たりする病気です。ウイルスが脳に入り込んで起こる「脳炎」とは違い、多くは体の免疫反応が過剰になり、脳がむくむ(脳浮腫:のうふしゅ)ことで起こると考えられています。

メカニズム図解|インフルエンザ脳症はどうして起こる?

1 のど・気道で感染:インフルエンザウイルスが気道の粘膜で増え、発熱が始まります。
2 免疫の「過剰反応」:一部のお子さんでは、炎症を起こす物質(サイトカイン)が血液中で急激に増えます(サイトカインストーム)。
3 血管と脳のバリアが傷む:血管の壁や、脳を守る仕組み(血液脳関門)が傷み、脳がむくみます。
4 神経の症状が出る:意識障害・けいれん・異常言動として現れます。急速に進むことがあるため、早く気づいて早く救急医療につなぐことが大切です。

用語解説|急性脳症・サイトカインストームとは

① 急性脳症(きゅうせいのうしょう):感染症などをきっかけに、脳の機能が急に低下する病気の総称です。脳そのものにウイルスや細菌がいる「脳炎」とは区別されます。インフルエンザのほか、突発性発疹や新型コロナでも起こることがあります。

② サイトカインストーム:体を守るはずの炎症物質(サイトカイン)が「嵐」のように出すぎて、自分の血管や臓器を傷めてしまう状態です。

③ 主な病型:日本の小児に最も多いAESD(二相性けいれんと遅発性拡散能低下を呈する急性脳症)、重症になりやすいANE(急性壊死性脳症)、比較的経過が良いことの多いMERS(可逆性脳梁膨大部病変を有する軽症脳炎・脳症)などがあります。病型の診断は、病院でのMRI検査などで行います。

AESDという病型では、最初のけいれんの後にいったん意識が戻ったように見え、3〜7日目ごろに再びけいれんが起こる(二相性)ことがあります。「熱性けいれんで済んだ」と思っても、その後数日は様子をよく見ることが大切です。

3. 見逃したくない3つのサイン

厚生労働省研究班のガイドラインでは、インフルエンザ脳症の初期症状として次の3つが挙げられています。

サイン ご家庭で気づく具体的な様子
① 意識障害 呼びかけへの反応が鈍い、すぐ眠ってしまい起こしても目を開けない、視線が合わない、ぼーっとしている時間が長い
② けいれん 5分以上続く、左右差がある・体の一部だけ、短時間に何度も繰り返す、けいれんが止まっても意識が戻らない
③ 異常言動・行動 親がわからない、いない人がいると言う、意味不明なことを言う、急に怒る・泣く・笑う、自分の手をかむ、ろれつが回らない

重要|すぐに119番を考えてほしい状態

・けいれんが5分以上止まらない、または繰り返す

・けいれんが止まった後も、呼びかけに反応しない・目が合わない状態が続く

・おかしな言動が続き、しだいに意識がぼんやりしてくる

・顔色が悪い、呼吸が苦しそう、ぐったりして水分がとれない

4. 「熱性けいれん」「熱せん妄」との見分け方

高い熱が出たお子さんには、脳症ではない熱性けいれんや、熱に伴う一時的な熱せん妄(ねつせんもう)もよく見られます。これらの多くは後遺症を残さずに治まります。違いを知っておくと、落ち着いて判断しやすくなります。

用語解説|熱性けいれん(熱性発作)とは

主に生後6か月〜5歳のお子さんが、38℃以上の発熱に伴って起こすけいれんです(髄膜炎などの明らかな原因がないもの)。

単純型:全身が左右対称にけいれんし、15分以内に止まり、24時間以内に繰り返さないもの。

複雑型:①体の一部だけ・左右差がある、②15分以上続く、③24時間以内に繰り返す——のいずれかがあるもの。複雑型や、けいれん後の意識の戻りが悪いときは、脳症などとの区別のため医療機関での評価が必要です。

比較のポイント 単純型熱性けいれん・熱せん妄 インフルエンザ脳症を疑う
けいれんの長さ 多くは数分以内で止まる 長い(5分以上)・繰り返す・左右差
けいれん後の様子 しばらく眠そうでも、徐々に普段の反応に戻る 意識の戻りが悪い・ぼんやりが続く
おかしな言動 短時間で治まり、合間には会話ができる 長く続く(目安としておおむね1時間以上)・合間も反応が悪い
熱が下がった後 元気になる 熱に関係なく意識・言動の異常が続く

ただし、ご家庭で完全に見分けることは困難です。「いつもと明らかに違う」「判断に迷う」と感じたら、ためらわずに医療機関や救急相談窓口(東京消防庁救急相談センター #7119、こども医療でんわ相談 #8000)にご相談ください。けいれんや言動の様子をスマートフォンで動画に撮っておくと、診察時にとても役立ちます。

5. 外来でよく出会うケース(架空の症例)

イメージしやすいよう、当院の外来でよくご相談いただく状況をもとにした架空の例をご紹介します(実在の患者さんの情報ではありません)。

ケース1|1歳8か月の女の子、発熱当日の夕方にけいれん

39.6℃の発熱から約6時間後、全身が左右対称に約2分間けいれん。救急外来でインフルエンザA型と診断され、30分ほどで普段どおりにお母さんを目で追い、泣いて抱っこを求めるようになりました。けいれんはその後なく、単純型熱性けいれんと判断されました。

ポイント:短く、左右対称で、意識がきちんと戻ったことが安心材料です。それでも数日間は様子の変化(再びのけいれん、反応の鈍さ)に注意して見守ります。

ケース2|5歳の男の子、「ママじゃない」と言い出した

保育園で流行中のA型インフルエンザに感染。発熱した晩、お母さんを見て「知らない人がいる」と怯え、壁に向かって話しかける様子が続きました。呼びかけへの返事も次第にあいまいに。約1時間たっても戻らないため救急要請し、病院で精密検査と入院治療を受けました。

ポイント:おかしな言動が長く続き、意識がぼんやりしていくのは要注意のサインです。「様子を見るか迷う」ときほど、早めの相談をおすすめいたします。

6. ご家庭でできること・避けたいお薬

6-1. 発熱から少なくとも2日間は「ひとりにしない」

インフルエンザでは、抗インフルエンザ薬の服用の有無や種類にかかわらず、急に走り出す・窓から飛び出そうとするなどの異常行動が起こることがあります。厚生労働省は、発熱から少なくとも2日間は、玄関や窓の施錠を確認し、お子さんを一人にしないよう呼びかけています。夜間は同じ部屋で休むと、言動の変化にも早く気づけます。

6-2. 解熱剤は「アセトアミノフェン」を

注意|インフルエンザのときに避けたい解熱剤

・ジクロフェナクナトリウム(商品名:ボルタレンなど)、メフェナム酸(商品名:ポンタールなど)は、インフルエンザ脳症の経過を悪くするおそれが指摘されており、小児のインフルエンザでは使用しないこととされています。

・アスピリンなどサリチル酸系の解熱鎮痛薬は、ライ症候群(急性脳症と肝臓の障害が起こる病気)との関連から、15歳未満のインフルエンザ・水痘では原則使用しません。

・お子さんの解熱にはアセトアミノフェン(カロナール、アンヒバ坐剤など)が基本です。大人用の市販薬やご家族の処方薬を流用しないようご注意ください。

6-3. 抗インフルエンザ薬とワクチンの位置づけ

発症早期の抗インフルエンザ薬(タミフル、ゾフルーザ、イナビルなど)は、症状の期間を短くし、重症化リスクの高い方では重症化を防ぐ効果が期待されます。一方で、脳症を確実に防げるという科学的な証明は現時点ではありません。お薬を飲んでいても、上記のサインには引き続き注意してください。

ワクチンについても、日本小児科学会は脳症そのものを防ぐ効果は十分に明らかではないとしつつ、6歳未満での発病防止効果が約60%、18歳未満での入院予防効果(A型H1N1pdm09で約74%)が報告されていることを示し、接種を推奨しています。今季のワクチンには、今まさに流行しているA型(H1N1pdm09)の株が含まれています。

7. 救急要請・受診の目安チェックリスト

迷ったときのチェックリスト

【すぐ119番】

□ けいれんが5分以上続く/繰り返す

□ けいれん後、呼びかけても反応が戻らない

□ おかしな言動が続き、だんだん意識が悪くなっている

【当日中に受診・相談(#7119・#8000)】

□ 初めての熱性けいれん(短く止まって意識が戻った場合も)

□ 短時間のおかしな言動があったが、今は落ち着いている

□ 水分がとれない・おしっこが半日以上出ない

□ 呼吸が速い・苦しそう、顔色が悪い

受診の際は、発熱した時刻、けいれんの始まりと終わりの時刻、使ったお薬をメモし、可能なら動画をお持ちください。母子健康手帳(予防接種歴)もあると診療がスムーズです。

8. よくあるご質問

Q1. 以前、熱性けいれんを起こしたことがあります。脳症になりやすいのでしょうか?

A. 熱性けいれんの既往があること自体で、インフルエンザ脳症になりやすいとはいえません。ただ、発熱のたびにけいれんを繰り返すお子さんでは、ご家族も不安が大きいと思います。けいれん予防の坐薬(ジアゼパム)を使う目安は、お子さんごとに異なりますので、かかりつけ医と事前にご相談ください。

Q2. 大人もインフルエンザ脳症になりますか?

A. 頻度は低いものの、成人での報告もあります。特に意識の変化やけいれんがあれば、年齢にかかわらず救急受診が必要です。

Q3. 熱が高いほど脳症になりやすいのですか?

A. 熱の高さそのものが脳症の原因ではありません。体温の数字よりも「意識・反応・言動」を見ることが大切です。高い熱でも、遊んだり水分をとったりできていれば、過度に心配する必要はありません。

竹内内科小児科医院で診るという選択(当院が選ばれる理由)

流行期のインフルエンザは、「早く診断する」「家庭で見守るポイントをお伝えする」「危ないサインがあれば速やかに高次医療機関へつなぐ」ことが大切です。当院では次の体制でご家族をサポートしております。

理由① 内科・小児科を併設

お子さまからご高齢の方まで、家族内で続けて発熱したときも同じ窓口でご相談いただけます。

理由② 抗インフルエンザ薬の院内処方

ゾフルーザ・タミフル・イナビルを院内でお渡しできます(リレンザはご希望により院外処方)。発熱中のお子さんを連れて薬局を回る負担を減らせます。

理由③ 注射・点鼻(フルミスト)の両ワクチン

年齢やご希望に応じて、注射ワクチンと点鼻ワクチンからお選びいただけます(在庫・対象年齢はお問い合わせください)。

理由④ 土曜午前も診療・多摩川駅徒歩5分

受付は午前12時まで・午後19時まで。共働きのご家庭でも受診しやすい時間帯です。

理由⑤ 院長が自ら診療

本記事を執筆した院長・五藤良将が外来で直接診察し、必要時は近隣の高次医療機関へ速やかにご紹介します。

理由⑥ 五良会グループの連携

港区の五良会クリニック白金高輪、横浜市の五良ファミリークリニックセンター南と連携し、転居後も継続して相談できます。

お子さまの発熱やワクチンのご相談は、お早めにどうぞ。

※けいれんが止まらない・意識がおかしいなど緊急時は、迷わず119番へ。

医療法人社団 五良会・正友会 理事長 五藤 良将

AUTHOR / SUPERVISOR|この記事の執筆医師

竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将(ごとう よしまさ)

  • 防衛医科大学校 医学部 卒業(27期)。防衛医科大学校病院、自衛隊中央病院、自衛隊横須賀病院ほかで臨床経験を積む
  • 医療法人社団 五良会(竹内内科小児科医院・五良会クリニック白金高輪)理事長/医療法人社団 正友会(五良ファミリークリニックセンター南)理事長/竹内内科小児科医院 院長
  • 日本内科学会 認定内科医/日本抗加齢医学会 専門医/日本糖尿病協会 登録医/日本旅行医学会 認定医
  • 日本温泉気候物理医学会 温泉療法専門医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/難病指定医
  • 所属学会:日本内科学会、日本糖尿病学会、日本アレルギー学会、日本東洋医学会、日本リウマチ学会、日本外来小児科学会、日本抗加齢医学会、日本睡眠学会、日本美容内科学会、日本旅行医学会 ほか
  • 著書『あぶら落とすスープ』(アスコム)。NHK・TBS・フジテレビ・日本テレビ・テレビ朝日などメディア出演多数

執筆・監修責任について

本記事も院長の五藤良将が執筆・監修しています。公的機関の発表・国内外の診療ガイドライン・査読済み論文を確認したうえで執筆しており、内容は公開時点の情報に基づくものです。新しい知見やガイドラインの改訂があった場合は、こちらで記事を更新します。
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個々の患者さんの診断・治療に代わるものではありません。症状や治療のご判断については、必ず医師にご相談ください。記載内容について気になる点がございましたら、竹内内科小児科医院(03-3721-5222)までお知らせください。

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参考文献

  1. 厚生労働省 インフルエンザ脳症研究班「インフルエンザ脳症ガイドライン【改訂版】」2009年9月
  2. 日本小児神経学会 監修・編集「小児急性脳症診療ガイドライン2023」診断と治療社, 2023年
  3. 日本小児神経学会 監修・編集「熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023」診断と治療社, 2023年
  4. 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会「インフルエンザ流行に対する日本小児科学会からの注意喚起」2025年1月29日
  5. 国立健康危機管理研究機構 IASR「<特集>インフルエンザ 2024/25シーズン」
  6. 東京都感染症情報センター「東京都 感染症週報 2026年第40週」「インフルエンザの流行状況(東京都 2026-2027年シーズン)」(2026年10月閲覧)
  7. 厚生労働省「インフルエンザの発生状況について」2026年第40週(2026年10月閲覧)
  8. 厚生労働省「インフルエンザQ&A」(異常行動への注意喚起)
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