血糖値を急上昇させない「ベジファースト」の科学

皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。

食べる順番を変えるだけで、本当に血糖値が下がるのですか?」——糖尿病・予備軍・健康診断で血糖値を指摘された患者さまから、最も多くいただくご質問のひとつです。

結論から申し上げますと、同じメニューでも「野菜→たんぱく質→炭水化物」の順に食べることで、食後の血糖上昇(血糖スパイク)はかなり緩やかになることが、複数の臨床研究で示されています。今回は、いわゆる「ベジファースト」がなぜ効くのか、そのメカニズムと正しい実践法を、田園調布の患者さまにお伝えしている内容そのままにご紹介いたします。

本記事は、先日「週刊女性PRIME」に寄稿した『ラーメンを食べたらジョギングでリセット――発酵食品と睡眠で整える「免疫バランス習慣」』の補足編として、生活習慣病の食事療法をより具体的に深掘りする内容です。

血糖スパイクとは何か――食後高血糖が招くリスク

「血糖スパイク」とは、食後30分〜2時間の間に血糖値が急峻に跳ね上がり、その後反動で急降下する現象を指します。空腹時血糖や HbA1c が正常範囲でも、食後だけ200 mg/dLを超えるような「隠れ高血糖(食後高血糖)」を起こしている方は珍しくありません。

食後高血糖は、自覚症状が乏しい一方で、動脈硬化・心筋梗塞・脳梗塞・認知症・がん発症のリスクを押し上げることが、DECODE研究をはじめとする大規模疫学研究で示されています。空腹時血糖よりむしろ食後血糖値こそが、心血管イベントの強い予測因子だというデータも出ています。

こんな方は食後高血糖のチェックを

・健診で「HbA1cは正常だが空腹時血糖が境界域」と言われた

・食後に強い眠気・倦怠感・集中力低下が起こる

・甘いもの・麺類・丼ものを食べた後、急にお腹が空く

・家族に2型糖尿病の方がいる、肥満傾向、運動不足

ベジファーストの3つの作用メカニズム

ベジファースト(食物繊維を最初に食べる)が血糖を緩やかにする仕組みは、単一の作用ではなく、3つの生理学的作用が同時に働くことによります。

メカニズム図解|なぜ「野菜が先」で血糖が抑えられるのか

1 胃排出速度の遅延:食物繊維が胃の中で水分を抱え込み、内容物の粘度を上げます。胃から十二指腸への流出がゆっくりになるため、糖の吸収カーブも緩やかになります。
2 インクレチン(GLP-1)の分泌促進:野菜・たんぱく質が小腸を先に刺激することで、インスリン分泌を促す消化管ホルモン「GLP-1」「GIP」が早期に分泌され、後から到達する糖質に対するインスリン応答が間に合います。
3 糖の腸管吸収を物理的にブロック:水溶性食物繊維(β-グルカン、ペクチン等)がゲル状の層を作り、ブドウ糖が小腸粘膜と接触するスピードを下げます。結果として、食後血糖のピーク値が抑えられます。

エビデンス|実際にどれくらい血糖値が下がるのか

ベジファーストの臨床効果は、日本人を対象とした研究でも複数報告されています。代表的なものをご紹介いたします。

研究 介入内容 主な結果
関西電力医学研究所(2010年代) 2型糖尿病患者で「野菜→主食」と「主食→野菜」を比較 食後血糖・インスリン値ともに有意に低下
梶山内科クリニック(京都) 2型糖尿病患者を2.5年間「ベジファースト指導」で追跡 HbA1cが平均0.7〜1.0%低下、長期維持
米国Weill Cornell(2015) 2型糖尿病患者で「炭水化物が最後」食事の効果検証 食後血糖ピークが約37%、インスリン分泌が約50%減少

HbA1cが0.7〜1.0%下がるというのは、1種類のSGLT2阻害薬を追加するのに匹敵する効果です。「食べ方を変えるだけ」で得られる効果としては非常に大きく、薬を増やす前にまず取り組むべき食事戦略と言えます。

食べる順番の正解――「カーボラスト」が新基準

従来は「野菜ファースト」と表現されてきましたが、最新の研究では、たんぱく質(肉・魚・卵・大豆)も野菜と同じく先に食べた方がよいことが分かってきました。むしろ重要なのは「炭水化物(カーボ)を最後にする=カーボラスト」という発想です。

食べる順番の正解(カーボラスト)

① 最初の5分:野菜・きのこ・海藻(食物繊維)

② 次の5〜10分:肉・魚・卵・豆腐(たんぱく質・脂質)

③ 最後の5分:ごはん・パン・麺(炭水化物)

※ 1食あたり最低15分かけて、ゆっくりよく噛んで食べることもセットでお願いします。

外食・コンビニ・ラーメンでも実践できる工夫

「ベジファーストはお弁当箱や定食では分かるが、丼ものや麺類では難しい」というご相談もよく受けます。シーン別にすぐ実践できるコツをまとめました。

シーン 具体的な工夫
ラーメン店 野菜大盛り(もやし・キャベツ)をトッピング。最初に野菜→チャーシュー→最後に麺の順で。
牛丼・カツ丼 サラダ・お味噌汁・お新香を必ず先に。具と米を交互ではなく、具→米の順で。
コンビニランチ カット野菜・サラダチキン→おにぎり。サラダの油(ドレッシング)も胃排出を遅らせるので可。
寿司 最初に枝豆・わかめサラダ・茶碗蒸し。ガリ(生姜)を意識的に挟むのも有効。
焼肉 サンチュ・キムチ・サラダを先に。締めの冷麺・ビビンバは最後の一口に。

ベジファーストが効きにくい人・注意点

ベジファーストはほぼ全員に勧められる安全な食事戦略ですが、いくつか注意点があります。

注意が必要な方

糖尿病でインスリン・SU薬を使用中の方:吸収が遅れることで低血糖のタイミングがずれる可能性。主治医にご相談を。

胃切除後・機能性ディスペプシアの方:満腹感が強くなりすぎて主食が食べられなくなり、エネルギー不足になることがあります。

慢性腎臓病で野菜のカリウム制限がある方:生野菜より茹でこぼし野菜を選び、量も主治医の指示に従って。

ご高齢のフレイル傾向の方:野菜でお腹を満たしすぎると、たんぱく質摂取量が減りサルコペニアを招くことも。

当院では、糖尿病・脂質異常症・高血圧などの生活習慣病に対し、ベジファーストを基本とした食事指導を、患者さまの生活リズム・お仕事・ご家族構成に合わせて個別にご提案しております。HbA1c、空腹時血糖、随時血糖、必要に応じて持続血糖モニター(FreeStyleリブレ)まで、田園調布の地域に根ざしてサポートいたします。

今日から始める「カーボラスト」3か条

□ 食卓に必ず1品「野菜・きのこ・海藻」を加える

□ ごはんは「最後の5分」のお楽しみと考える

□ 1食15分以上、よく噛んで食べる

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参考文献

  1. 日本糖尿病学会編「糖尿病診療ガイドライン2024」南江堂.
  2. Imai S, et al. A simple meal plan of ‘eating vegetables before carbohydrate’ was more effective for improving glycemic control than an exchange-based meal plan in Japanese patients with type 2 diabetes. Asia Pac J Clin Nutr. 2011;20(2):161-168.
  3. Shukla AP, et al. Food order has a significant impact on postprandial glucose and insulin levels. Diabetes Care. 2015;38(7):e98-e99.
  4. Kuwata H, et al. Meal sequence and glucose excursion, gastric emptying and incretin secretion in type 2 diabetes: a randomised, controlled crossover, exploratory trial. Diabetologia. 2016;59(3):453-461.
  5. DECODE Study Group. Glucose tolerance and cardiovascular mortality. Arch Intern Med. 2001;161(3):397-405.

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日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医

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