皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。
外来では、「最初は筋肉痛か寝違えだと思っていた」「湿布を貼って様子を見ていたら、数日後に水ぶくれが出てきた」という経過で、帯状疱疹(たいじょうほうしん)のご相談に来られる方が少なくありません。年末に向けて仕事や行事が重なり、疲れがたまりやすいこの時期は、とくに受診が後回しになりがちです。
帯状疱疹の飲み薬(抗ウイルス薬)は、発疹が出てから72時間(3日)以内に飲み始めるのが目安とされています。ただし、72時間を過ぎたら手遅れというわけではなく、新しい発疹が出続けている、痛みが強い、顔に出ている、といった場合は、それ以降でも治療をおすすめすることがあります。「ピリピリした痛み+片側だけの赤いぶつぶつ」に気づいたら、その日か翌日の受診を考えてください。
この記事では、「いつまでに・どこへ受診すればよいか」という1つの問いを軸に、飲み薬の選び方(とくに腎臓の働きが落ちている方の注意点)、すぐに受診すべき危険なサイン、そして温泉療法専門医の立場から「お風呂や温泉はいつから入ってよいか」までをお伝えいたします。
THIS ARTICLE IS WRITTEN AND SUPERVISED BY
竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本温泉気候物理医学会 温泉療法医・温泉療法専門医/日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医
この記事は五藤良将が執筆・監修し、内容に責任を持っています。
目次
帯状疱疹はなぜ「片側だけ」に出るの?
帯状疱疹の原因は、子どものころにかかった水ぼうそう(水痘)のウイルス=水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)です。水ぼうそうが治ったあとも、ウイルスは背骨の近くにある神経の節(後根神経節)に何十年も潜み続けます。加齢・疲労・ストレス・糖尿病や抗がん剤治療などで免疫の力が落ちると、ウイルスが再び活動を始め、1本の神経に沿って皮膚へ出てくるため、体の左右どちらか片側に、帯のように発疹が並びます。
80歳までにおよそ3人に1人がかかるとされ、50歳を過ぎると発症が増えます。多くの場合、発疹より先に2〜5日ほど「ピリピリ」「チクチク」「ズキズキ」した痛みや違和感が出るのが特徴で、この段階では皮膚に何も見えないため、肩こり・腰痛・胸の病気などと間違われやすいのです。
メカニズム図解|帯状疱疹が起こるまで
| 子どものころ水ぼうそうにかかる:治ったあともウイルスは神経節に潜伏します。 | |
| 免疫の力が落ちる:加齢、疲れ、睡眠不足、糖尿病、ステロイドや抗がん剤などがきっかけになります。 | |
| ウイルスが神経を傷つけながら皮膚へ:まず神経の痛み、数日後に赤い発疹と水ぶくれが帯状に出ます。 | |
| 神経の傷が残ると痛みが長引く:皮膚が治ったあとも痛みが続く「帯状疱疹後神経痛」につながることがあります。早めの抗ウイルス薬は、ウイルスの増殖をおさえて神経へのダメージを小さくするためのものです。 |
|
用語解説|デルマトーム・帯状疱疹後神経痛(PHN)とは デルマトーム(皮膚分節):1本の神経が受け持つ皮膚の範囲のことです。帯状疱疹はこの範囲に沿って出るため、「胸から背中へ帯状」「おでこからまぶたへ」のように、体の正中線を越えない分布になります。 帯状疱疹後神経痛(PHN:ピーエイチエヌ):発疹が治ったあとも、一般に3か月以上痛みが続く状態を指します。高齢の方、発疹や痛みが強かった方ほど起こりやすいとされ、衣服が触れるだけで痛む(アロディニア)こともあります。 |
「72時間以内」が目安とされる理由と、過ぎてしまったら
抗ウイルス薬は、ウイルスが増えるのをおさえるお薬で、すでに傷ついた神経を元に戻すお薬ではありません。そのため、ウイルスがさかんに増えている発疹の出始め(皮疹出現から72時間以内)に飲み始めると、急性期の痛みや発疹が治るまでの期間を短くできるとされています。
一方で、72時間はあくまで目安です。新しい水ぶくれが出続けている、痛みが強い、顔や耳に出ている、ご高齢・免疫が落ちているといった場合には、72時間を過ぎていても抗ウイルス薬を使うことがあります(発疹から5日以内の開始が望ましい、とする解説もあります)。「もう3日過ぎたから受診しても意味がない」と考えず、まずはご相談ください。
なお、帯状疱疹かどうかは多くの場合、症状と発疹の見た目で診断します。発疹が出る前の「痛みだけ」の段階では診断がつかないこともあるため、痛みのあった場所に発疹が出てきたら、改めて早めに受診していただくのが確実です。
飲み薬は3種類|腎臓の働きで選び方が変わります
日本で帯状疱疹に使われる主な飲み薬は、次のとおりです(用量は成人・腎機能が正常な場合の添付文書上の標準。実際の処方は医師が判断します)。
| お薬(一般名) | 飲み方の目安 | 腎臓との関係・注意点 |
|---|---|---|
| バラシクロビル(バルトレックス など) | 1回1,000mgを1日3回 | 腎臓から排泄されるため、腎機能に応じた減量が必要 |
| ファムシクロビル(ファムビル など) | 1回500mgを1日3回 | 同じく腎排泄型で、腎機能に応じた減量が必要 |
| アメナメビル(アメナリーフ) | 1回400mgを1日1回・食後 | 主に便中へ排泄され、腎機能による用量調整は不要。ただし結核のお薬リファンピシンとは併用禁忌で、他のお薬との飲み合わせ確認が必要 |
アメナメビルは2017年7月に帯状疱疹の治療薬として承認された、作用の仕組みが異なる(ヘリカーゼ・プライマーゼ阻害薬)お薬です。どのお薬も一般に7日間飲み切ります。どれが「一番よく効く」というより、腎臓の働き・飲み合わせ・1日に飲める回数で選ぶのが実際です。
ここで大切なのが腎機能です。糖尿病や高血圧で通院中の方、ご高齢の方は、自覚がないまま腎臓の働き(eGFR)が下がっていることがあります。腎排泄型のお薬を通常量で飲むと、お薬が体にたまり、意識障害などの副作用が出ることがあるため、直近の血液検査の結果をお持ちいただくと、安全な処方につながります。
|
用語解説|アシクロビル脳症(精神神経症状)とは バラシクロビルは体内でアシクロビルに変わって効きます。腎臓の働きが落ちている方で体内の濃度が高くなりすぎると、ぼんやりする・つじつまの合わないことを言う・幻覚・ろれつが回らない・ふらつきなどが、飲み始めて数日のうちに出ることがあり、これを「アシクロビル脳症」と呼びます。 ご家族が「急に様子がおかしい」と感じたら、自己判断で飲み続けず、すぐに処方した医療機関へご連絡ください。脱水でも起こりやすくなるため、服用中は水分を十分にとることも大切です。 |
外来でよく出会うケース(架空の例)
以下は、説明のために作成した架空のケースで、実在の患者さんの情報ではありません。
ケース1:70代女性・2型糖尿病で通院中・eGFR 42
2日前から右のわき腹がピリピリし、今朝、同じ場所に赤いぶつぶつと小さな水ぶくれが出てきた。
→ 発疹から72時間以内で、抗ウイルス薬の良いタイミングです。腎機能が中等度に低下しているため、腎機能による調整が不要なお薬を選ぶか、腎排泄型のお薬を減量して使う、といった判断になります。血糖が乱れやすくなるため、糖尿病のお薬や血糖の自己測定についてもあわせて確認します。
ケース2:40代男性・会社員・持病なし
年末の繁忙期。左のおでこからまぶたにかけて発疹があり、鼻の先にもぶつぶつが出ている。
→ 目の合併症が起こりやすいサインがあるため、抗ウイルス薬を始めたうえで、当日〜翌日に眼科を受診していただくよう手配します(次の章で解説します)。
顔・耳に出たら要注意|すぐに受診すべきサイン
帯状疱疹の多くは胸・背中・お腹に出ますが、顔や耳に出た場合は、目や耳・顔の神経に合併症が起こることがあり、通常より急いで対応する必要があります。
|
重要|その日のうちに受診・相談してほしいサイン ・おでこ・まぶた・鼻の先に発疹がある、目が赤い・痛い・かすむ(鼻の先の発疹は「ハッチンソン徴候」と呼ばれ、目の合併症の目安になります)→ 眼科受診も必要です ・耳の中や耳たぶに発疹があり、顔がゆがむ、口から水がこぼれる、目が閉じにくい、めまい・耳鳴り・聞こえにくさがある(ラムゼイ・ハント症候群)→ 耳鼻咽喉科での治療を急ぎます ・発疹が体の両側や全身に広がる、高熱、強い頭痛、首が硬い、意識がぼんやりする ・抗がん剤・免疫抑制薬・ステロイドを使用中の方、妊娠中の方 |
こうしたサインがある場合、当院では抗ウイルス薬を速やかに開始したうえで、眼科・耳鼻咽喉科・入院可能な病院など、必要な専門科へ紹介いたします。
お風呂・温泉・仕事・家族への感染はいつまで気をつける?
ご自宅のお風呂
熱がなく体調が落ち着いていれば、ご自宅での入浴やシャワーは基本的に問題ありません。患部は石けんを泡立ててやさしく洗い、こすらないようにします。帯状疱疹の痛みは冷やすより温めたほうが和らぐことが多いため、ぬるめのお湯で体を温めるのは痛みのケアにもなります。水ぶくれは破らず、タオルはご家族と分けてください。
温泉・銭湯・プール
温泉療法専門医として、ここはぜひお伝えしたい点です。温泉や銭湯などの共同浴場、プールは、すべての発疹がかさぶたになるまで控えてください。水ぶくれの中にはウイルスが含まれており、水ぼうそうにかかったことのない方へうつす可能性があるためです。また、発病中は体力も落ちており、長湯や熱いお湯、サウナは体に負担になります。
かさぶたがはがれて皮膚が落ち着き、体調が戻ってからであれば、温泉で体を温めることは療養の一助になり得ます。ただし、温泉で帯状疱疹や神経痛が治ると断言できるものではありません。これは医学的な基準ではなく、感染予防と体調面を考えた当院からのご提案です。
仕事・家族への感染
帯状疱疹は、水ぼうそうのように咳やくしゃみで広くうつる病気ではありませんが、水ぶくれに触れることで、水ぼうそうにかかったことのない方(とくに乳児・妊婦さん)に「水ぼうそう」としてうつることがあります。発疹をガーゼや衣服で覆えばお仕事は可能なことが多いですが、乳児・妊婦さん・免疫の落ちた方と接するお仕事の方は、かさぶたになるまでの対応を職場と相談してください。当院は小児科を併設しているため、ご家族にお子さんがいる場合の注意点もあわせてご説明いたします。
治ったあとも再発することがあるため、帯状疱疹ワクチンの接種も検討の対象になります。2025年4月から65歳の方などを対象に定期接種が始まっています。接種の時期や大田区の助成については、糖尿病の方こそ秋の「肺炎球菌・帯状疱疹ワクチン」をの記事をご覧いただき、治癒後の接種時期は医師にご相談ください。
受診前に確認しておくこと
次のものをご用意いただくと、その場で安全なお薬を選びやすくなります。
| 確認すること・持ち物 | 理由 |
|---|---|
| □ 痛みが始まった日と、発疹に気づいた日時 | 72時間の目安に当てはまるかを判断します |
| □ 発疹の写真(出始めと現在) | 広がり方の確認に役立ちます |
| □ お薬手帳(他院のお薬・サプリも) | リファンピシンなど飲み合わせの確認 |
| □ 直近の血液検査・健診結果(クレアチニン・eGFR、HbA1c) | 腎機能に合わせたお薬・用量を選びます |
| □ 目の充血・見え方、耳の症状、顔のしびれ・ゆがみの有無 | 眼科・耳鼻科への紹介が必要かを判断します |
| □ 同居家族に乳児・妊婦さん・水ぼうそう未経験の方がいるか | 家庭内での注意点をご説明します |
| □ 帯状疱疹ワクチンの接種歴 | 今後の予防の相談に使います |
まとめ
- 片側だけのピリピリした痛み→数日後に帯状の発疹が帯状疱疹の典型です。
- 抗ウイルス薬は発疹から72時間以内の開始が目安。過ぎていても治療をすすめる場合があるので、まずご相談ください。
- お薬は3種類あり、腎機能(eGFR)と飲み合わせで選びます。検査結果とお薬手帳をお持ちください。
- 顔(とくに鼻の先・目の周り)や耳に出たら、その日のうちに受診を。
- ご自宅の入浴は基本的に可。温泉・銭湯・プールはすべてかさぶたになるまで控えましょう。
🏥 竹内内科小児科医院で診るという選択(当院が選ばれる理由)
帯状疱疹は「早く始める」「その方の腎臓や持病に合わせる」「必要なら専門科へすぐつなぐ」ことが大切な病気です。当院では次の体制でご対応しております。
理由① 内科・皮膚科を同じ窓口で
発疹の診察と、腎機能・血糖など持病の確認を一度の受診で行い、その方に合った抗ウイルス薬を選びます。
理由② 糖尿病・生活習慣病の診療経験
日本糖尿病協会登録医・日本抗加齢医学会専門医の院長が、帯状疱疹中の血糖の乱れや腎機能に配慮して治療します。
理由③ 温泉療法専門医による入浴の助言
日本温泉気候物理医学会の温泉療法医・温泉療法専門医として、療養中の入浴や、回復後の温泉の利用についてご相談に応じます。
理由④ 小児科併設でご家族の相談も
同居のお子さんへの感染や水ぼうそうワクチンについても、同じ医院でご相談いただけます。
理由⑤ 多摩川駅徒歩5分・土曜午前も診療
受付は午前12時・午後19時まで。平日にお休みが取りにくい方も、土曜午前に受診いただけます。
理由⑥ 五良会グループと地域の専門科連携
眼科・耳鼻咽喉科・入院施設へ速やかに紹介し、ワクチンや専門外来は五良会クリニック白金高輪とも連携しています。訪問診療中の方のご相談にも対応しています。
片側だけのピリピリした痛みや発疹に気づいたら、早めにご相談ください。
AUTHOR / SUPERVISOR|この記事の執筆医師
竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将(ごとう よしまさ)
- 防衛医科大学校 医学部 卒業(27期)。防衛医科大学校病院、自衛隊中央病院、自衛隊横須賀病院ほかで臨床経験を積む
- 竹内内科小児科医院 院長/医療法人社団 五良会(竹内内科小児科医院・五良会クリニック白金高輪)理事長/医療法人社団 正友会(五良ファミリークリニックセンター南)理事長
- 日本温泉気候物理医学会 温泉療法医・温泉療法専門医:温泉・入浴を医学的に活用する専門資格。持病のある方の安全な入浴や湯治の相談に応じています
- 日本内科学会 認定内科医/日本抗加齢医学会 専門医/日本糖尿病協会 登録医/日本旅行医学会 認定医
- 日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/難病指定医
- 所属学会:日本内科学会、日本糖尿病学会、日本アレルギー学会、日本東洋医学会、日本リウマチ学会、日本外来小児科学会、日本抗加齢医学会、日本睡眠学会、日本美容内科学会、日本旅行医学会、日本温泉気候物理医学会 ほか
- 著書『あぶら落とすスープ』(アスコム)など。NHK・TBS・フジテレビ・日本テレビ・テレビ朝日などテレビをはじめメディア出演多数
執筆・監修責任について
本記事も院長の五藤良将が執筆・監修しています。公的機関の発表・添付文書・医学文献を確認したうえで作成しており、内容は公開時点の情報に基づきます。新しい知見や改訂があった場合は、こちらで記事を更新します。
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個々の患者さんの診断・治療に代わるものではありません。記事中のケースは説明のための架空の例です。症状や治療のご判断については、必ず医師にご相談ください。記載内容について気になる点がございましたら、竹内内科小児科医院(03-3721-5222)までお知らせください。
|
関連記事|竹内内科小児科医院(田園調布)
|
|
関連記事|五良会クリニック白金高輪(港区)
|
|
関連記事|五良ファミリークリニックセンター南(横浜市都筑区)
|
五良会グループでは、田園調布から白金高輪まで医師が連携しております。患者さまの転居やライフスタイルの変化に合わせて、同じグループ内で継続診療が受けられる体制を整えております。
参考文献
- 渡辺大輔.帯状疱疹[私の治療].日本医事新報.2024年12月登録(2026年2月更新).
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA).アメナリーフ錠200mg 審査報告書(効能追加:再発性の単純疱疹).2023年1月23日.
- アメナリーフ錠200mg、バルトレックス錠500、ファムビル錠250mg 各添付文書(最新版).
- 厚生労働省.帯状疱疹ワクチン(定期接種).2025年4月開始(2026年11月閲覧).
- 国立感染症研究所.帯状疱疹とは/水痘とは(2026年11月閲覧).
竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本温泉気候物理医学会 温泉療法専門医・日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医