皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。
食欲の秋を迎え、田園調布・多摩川エリアでも秋の健康診断の結果を手に来院される方が増えてまいりました。外来で本当によくいただくご質問のひとつが、「卵は1日1個までにしたほうがいいのですか?」というものです。コレステロールが高めと指摘された方はもちろん、お子さまのお弁当を作る親御さまからも、卵とコレステロールの関係についてご相談をいただくことが増えております。
今回のブログでは、「日本人の食事摂取基準(2025年版)」(厚生労働省)と日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」という2つの最新の公的基準をもとに、「卵とコレステロール」の正しい考え方を、健康な方・LDLコレステロールが高めの方それぞれの立場に分けて、わかりやすく解説いたします。
目次
卵1個に含まれるコレステロールはどのくらい?
鶏卵1個(可食部約50g)には、およそ200mg前後のコレステロールが含まれており、その大部分は卵黄に集中しています。食品の中でもコレステロール含有量が多い部類に入るため、長らく「コレステロールといえば卵」というイメージが定着してきました。
一方で卵は、必須アミノ酸をバランスよく含む良質なたんぱく質源であり、ビタミンD、ビタミンB群、鉄、コリンなど、成長期のお子さまから高齢の方まで大切な栄養素を豊富に含む食品でもあります。特にご高齢の方では、たんぱく質不足によるフレイル(心身の虚弱)予防の観点から、卵は手軽で優れたたんぱく質源として位置づけられています。「卵=悪者」と単純に考えてしまうと、かえって栄養バランスを崩してしまうことがあるのです。
コレステロールの大部分は「体内で作られる」という事実
ここで大切なのは、血液中のコレステロールは「食べたコレステロールがそのまま反映されるわけではない」という点です。体内のコレステロールの7〜8割程度は肝臓などで合成されており、食事から入ってくる分はむしろ少数派です。しかも体には、食事からの摂取量に応じて合成量を調節する仕組み(フィードバック調節)が備わっています。
メカニズム図解|食事のコレステロールと血中コレステロールの関係
| 食事から摂取:卵などの食品からコレステロールが腸で吸収されます(吸収率には大きな個人差があります) | |
| 肝臓で合成:体内のコレステロールの7〜8割程度は肝臓などで作られています | |
| フィードバック調節:食事から多く摂ると肝臓の合成が減り、血中濃度を一定に保とうとします | |
| ただし調節力には個人差:食事の影響を受けやすい体質の方(応答者)と受けにくい方がおり、脂質異常症の方では影響が出やすいことが知られています |
この「個人差」こそが、卵の話をややこしくしている正体です。同じように卵を食べても、LDL(悪玉)コレステロールがほとんど変わらない方もいれば、はっきり上がってしまう方もいらっしゃいます。だからこそ、「全員一律に1日1個まで」でも「誰でも何個でもOK」でもなく、ご自身の検査値に応じた対応が大切になります。
「卵は1日1個まで」の根拠は今どうなっている?──2つの公的基準
かつての栄養指導では「コレステロールは1日300mgまで」といった上限が示され、これが「卵は1日1個まで」の根拠とされてきました。しかし現在の公的基準では、次のように整理されています。
| 基準・ガイドライン | コレステロール摂取についての考え方 |
|---|---|
| 日本人の食事摂取基準(2025年版) (厚生労働省) |
健康な方については、目標量(上限)を算定するだけの十分な科学的根拠がないため数値は設定されていません。ただし「上限がないことを保証するものではない」とされ、脂質異常症の重症化予防の目的からは1日200mg未満に留めることが望ましいと明記されています。 |
| 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版 (日本動脈硬化学会) |
LDLコレステロールが高い高LDLコレステロール血症の方では、コレステロール摂取を1日200mg未満に抑えることで血中LDLコレステロールの低下効果が期待できるとされています。 |
|
よくある誤解にご注意ください 「健康な人には上限値が設定されていない」というニュースが、「卵は何個食べても大丈夫になった」と紹介されることがあります。これは正確ではありません。上限値がないのは「根拠となるデータが十分でないため数値を決められない」という意味であり、好きなだけ食べてよいというお墨付きではないのです。特にLDLコレステロールが高めの方は、卵1個で1日の目安(200mg未満)にほぼ達してしまう点を知っておくことが大切です。 |
あなたはどのタイプ?立場別・卵とのつきあい方の目安
当院の外来では、健診結果とご本人の状況に合わせて、おおよそ次のようにお伝えしています(あくまで一般的な目安であり、最終的には個別の診察・検査結果に基づいてご相談ください)。
| 立場 | 卵とのつきあい方の目安 |
|---|---|
| 健診で異常のない健康な方 | 1日1個程度を目安にバランスのよい食事の一部として楽しむ分には、過度に心配する必要はないと考えられています。数日単位で調整する考え方でも構いません。 |
| LDLコレステロールが高め・脂質異常症と言われた方 | コレステロール摂取1日200mg未満が目安となるため、卵黄は1日1個まで・毎日は控えめにが現実的です。マヨネーズ・洋菓子・卵を多く使う料理など「見えない卵」にもご注意ください。 |
| 糖尿病・動脈硬化性疾患(狭心症・脳梗塞など)の既往がある方 | LDL管理目標がより厳格になるため、自己判断ではなく主治医・管理栄養士と相談のうえで食事全体を設計することをおすすめします。 |
| ご高齢で食が細くなってきた方 | たんぱく質不足によるフレイル予防が優先されることも多く、卵は貴重な栄養源です。制限が必要かどうかは検査値を見ながら個別に判断いたします。 |
大切なのは、卵の個数そのものよりも、「ご自身のLDLコレステロール値と管理目標を知ったうえで、食事全体を整えること」です。当院では管理栄養士による栄養相談も行っておりますので、お気軽にご相談ください。
卵よりも見落とされがちな「飽和脂肪酸」──秋の食事のコツ
実は、血中のLDLコレステロールを上げる要因として、食事性コレステロール以上に影響が大きいとされているのが飽和脂肪酸(肉の脂身・バター・生クリーム・ラードなどに多い脂)とトランス脂肪酸です。「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、18歳以上の飽和脂肪酸の目標量は総エネルギーの7%以下とされています。
食欲の秋は、こってりした料理やスイーツの誘惑が増える季節です。卵の個数だけを気にして、霜降り肉やバターたっぷりの洋菓子を召し上がっていては本末転倒になりかねません。
|
ポイント|秋のLDL対策・食事の3か条 ① 脂の「種類」を意識する:肉の脂身・バターを控えめにし、青魚(サンマ・サバなど秋の魚)や大豆製品を主菜に取り入れましょう ② 食物繊維をしっかり:きのこ・海藻・野菜・大麦などの食物繊維はコレステロールの吸収を抑える働きが期待できます。秋はきのこの季節です ③ 「見えない脂」に注意:洋菓子・菓子パン・加工肉には飽和脂肪酸が多く含まれます。間食の内容を一度見直してみましょう |
秋の健診でLDLコレステロールが高かったら──当院でできること
LDLコレステロール高値は、自覚症状がないまま動脈硬化を進め、将来の心筋梗塞や脳梗塞のリスクにつながります。「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」では、年齢・血圧・喫煙・糖尿病の有無などからリスクを評価し、お一人おひとりに応じたLDL管理目標値を設定する考え方が採用されています。つまり、「基準値を少し超えただけだから大丈夫」かどうかは、単純に数字だけでは判断できないのです。
竹内内科小児科医院では、脂質異常症について次のような診療を行っております。
|
当院でできること □ 血液検査によるLDL・HDL・中性脂肪・non-HDLコレステロールの評価と、リスクに応じた管理目標の設定 □ 管理栄養士による栄養相談(卵・脂の摂り方など、具体的な食事の工夫を一緒に考えます) □ 生活習慣の改善で不十分な場合の、ガイドラインに沿った薬物療法のご相談 □ 高血圧・糖尿病・脂肪肝など、併存する生活習慣病を含めた包括的な管理 |
内科と小児科を併設する当院では、働き盛りの方の生活習慣病から、お子さまの食生活のご相談まで、ご家族そろって同じ医師に相談していただけます。平日はお仕事で忙しい方も、土曜午前の診療をご利用いただけます。秋の健診結果がお手元に届きましたら、結果用紙をお持ちのうえ、田園調布・多摩川駅近くの当院までお気軽にお越しください。
|
受診前チェックリスト □ 今年の健康診断・人間ドックの結果用紙(過去の結果もあれば経年変化がわかります) □ 服用中のお薬・サプリメントがわかるもの(お薬手帳など) □ ご家族の病歴(心筋梗塞・脳梗塞・脂質異常症など) □ ふだんの食事内容・飲酒量・運動習慣のメモ |
|
関連記事|竹内内科小児科医院(田園調布)
|
|
関連記事|五良会クリニック白金高輪(港区)
|
|
関連ページ|五良ファミリークリニック センター南(横浜市都筑区)
|
五良会グループでは、田園調布の竹内内科小児科医院と港区の五良会クリニック白金高輪、横浜市都筑区の五良ファミリークリニックセンター南(医療法人社団正友会)の医師が連携し、生活習慣病の管理を多角的にサポートしております。患者さまの転居やライフスタイルの変化に合わせて、同じグループ内で継続診療が受けられる体制を整えております。
参考文献
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(2024年10月公表、2025年度から適用)
- 日本動脈硬化学会編『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』2022年.
- 日本動脈硬化学会編『脂質異常症診療ガイド2023年版』2023年.
- 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」(鶏卵のコレステロール含有量)
竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医