【2026年夏】お盆・お墓参り・キャンプで急増「ハチ刺され」|アナフィラキシーのサインと備え(エピペン・ネフィー点鼻液)【田園調布・多摩川】

皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。

2026年も8月に入り、お盆の帰省やお墓参り、キャンプ・バーベキューなど、屋外で過ごす機会が増える季節となりました。この時期、当院でも「草むしり中にハチに刺された」「子どもが公園でハチに刺されて腫れてしまった」というご相談が増えてまいります。実はスズメバチの活動が最も活発になり攻撃性が高まるのは、まさに8月から9月。ハチ刺されによる健康被害が、1年で最も多くなる時期なのです。

ハチ刺されの多くは局所の痛みや腫れで済みますが、なかにはアナフィラキシーと呼ばれる重いアレルギー反応を起こし、短時間で命に関わる状態に進行することがあります。厚生労働省の人口動態統計によると、日本ではハチ刺されにより例年10〜20人前後の方が亡くなっており、その多くがアナフィラキシーによるものと考えられています。

今回のブログでは、日本アレルギー学会「アナフィラキシーガイドライン2022」(2022年8月発行)に基づき、ハチに刺されたときの正しい応急処置、受診すべき危険なサイン、そして備えとしてのエピペン(アドレナリン自己注射薬)と、2026年2月に発売された針を使わない新しい選択肢ネフィー点鼻液(アドレナリン点鼻薬)について、内科・小児科・アレルギー科の視点からわかりやすく解説いたします。

なぜ8〜9月はハチ刺されが最も危険な季節なのか

ハチ刺されの原因となるのは、主にスズメバチ・アシナガバチ・ミツバチの3種類です。なかでもスズメバチは毒性・攻撃性ともに強く、巣が最も大きく成長し働きバチの数が増える8月から9月にかけて、攻撃性がピークに達します。お盆のお墓参りやガーデニング、ハイキング、キャンプなど、私たちが屋外で活動する機会が増える時期と重なるため、この季節は刺傷事故が集中します。

田園調布・多摩川周辺は緑の多い住宅地で、多摩川の河川敷や公園、ご自宅の庭木・軒下・植え込みなど、身近な場所にハチが巣を作っていることも少なくありません。「山に行かないから大丈夫」とは言えないのが、ハチ刺されの怖いところです。

ハチの種類 特徴 注意点
スズメバチ 毒性・攻撃性ともに強い。土の中や軒下にも巣を作る 8〜9月に攻撃性がピーク。何度も刺すことができる
アシナガバチ 住宅の軒下・ベランダに巣を作りやすい 都市部の刺傷事故で多い。洗濯物に紛れることも
ミツバチ 攻撃性は比較的低いが、針が皮膚に残る 針が残った場合は横にはらって除去(つままない)

刺されたときの症状|「局所反応」と「全身反応」の違い

ハチに刺されたときの反応は、大きく「局所反応」「全身反応(アレルギー反応)」に分けられます。この区別が、様子を見てよいか・すぐに医療機関にかかるべきかの分かれ目になります。

局所反応(刺された場所だけの症状)

刺された直後の強い痛み、赤み、腫れ、かゆみは、蜂毒そのものによる反応で、多くの方に起こります。通常は数時間〜数日で軽快します。なかには腕全体が腫れるなど直径10cmを超える大きな腫れ(大局所反応)になる方もいますが、これも刺された部位とその周囲にとどまる限りは局所反応の範囲です。ただし腫れが強い場合や、お子さま・ご高齢の方は、一度受診していただくと安心です。

全身反応(アナフィラキシー)

一方、刺された場所から離れた部位に症状が出た場合は要注意です。全身のじんましん、のどの違和感・声のかすれ、咳・ゼーゼーする呼吸、嘔吐・腹痛、ふらつき・意識がぼんやりする——こうした症状は、蜂毒に対するアレルギー反応が全身に及んでいるサイン、すなわちアナフィラキシーの可能性があります。蜂毒によるアナフィラキシーは進行が非常に速く、刺されてから多くは15分以内に症状が現れるとされています。

ポイント|「様子見でよいか」の目安

① 刺された場所だけが痛い・腫れている → まずは応急処置。腫れが強ければ受診を

② 刺された場所以外にじんましん・息苦しさ・気分不良が出た → アナフィラキシーの可能性。ためらわず救急要請(119番)を

③ 過去にハチ刺されで全身症状が出たことがある方 → 刺された時点で早めに医療機関へ

メカニズム図解|アナフィラキシーはこうして起こる

なぜ2回目以降のハチ刺されが特に注意といわれるのか、体の中で起きていることを順番に見てみましょう。

メカニズム図解|蜂毒アナフィラキシーが起こる仕組み

1 1回目の刺傷「感作(かんさ)」:初めて刺されたとき、体の免疫が蜂毒を「敵」と記憶し、蜂毒に対するIgE抗体(アレルギーの抗体)が作られることがあります。
2 2回目以降の刺傷:再び蜂毒が体に入ると、IgE抗体がこれを感知し、皮膚や粘膜にあるマスト細胞(肥満細胞)が一斉に反応します。
3 ヒスタミンなどが大量放出:血管が急激に広がって血圧が下がり、気道の粘膜がむくんで空気の通り道が狭くなります。
4 アナフィラキシー(重症化するとショック状態):全身のじんましん・呼吸困難・血圧低下・意識障害が短時間で進行します。だからこそ「その場での初期対応」が重要なのです。

なお、感作が成立していれば初めて全身症状が出るのが「2回目」とは限らず、刺された回数が多い方ほどリスクは高まります。林業や造園業など屋外作業の多いお仕事の方は特にご注意ください。

刺された直後の正しい応急処置(やってはいけないことも)

その場でできる応急処置

まずはハチのいる場所から静かに離れることが最優先です。ハチは巣を守るために集団で攻撃してくることがあるため、姿勢を低くして20〜30m以上離れましょう。そのうえで、次の手順で処置します。

応急処置の手順

□ ミツバチの針が残っていれば、つままずに、カードなどで横にはらって除去する

□ 傷口を流水でよく洗い、毒を絞り出すように水で洗い流す

□ 保冷剤や濡れタオルで冷やして腫れと痛みを和らげる

□ 市販の抗ヒスタミン成分やステロイド成分を含む外用薬があれば塗布する

□ 刺されてから30分〜1時間は全身症状が出ないか、一人にならずに様子を見る

やってはいけないこと

注意|昔ながらの「俗説」にご注意ください

「おしっこ(アンモニア)をかける」は効果がありません。蜂毒はアンモニアで中和されず、傷口が不衛生になるだけです

口で毒を吸い出すのは避けてください。口の中の粘膜から毒が吸収されるおそれがあります

・毒針をつまんで抜こうとすると、針の根元の毒のうを圧迫してかえって毒が入ることがあります

危険なサイン|こんな症状はすぐ救急要請を

日本アレルギー学会のアナフィラキシーガイドライン2022では、皮膚症状(全身のじんましん・かゆみ・赤み)や粘膜症状(唇や舌の腫れ)に加えて、呼吸器症状・循環器症状・強い消化器症状が急速に出現した場合にアナフィラキシーを疑うとされています。以下のサインが1つでもあれば、ためらわずに救急車(119番)を呼んでください。

重要|すぐに救急要請すべき危険なサイン

・のどが締めつけられる感じ、声のかすれ、飲み込みにくさ

・咳き込み、ゼーゼー・ヒューヒューする呼吸、息苦しさ

・くり返す嘔吐、強い腹痛

・顔面蒼白、冷や汗、ふらつき、立っていられない

・ぐったりする、意識がもうろうとする(お子さまでは「急に静かになる」ことも)

アナフィラキシーの治療の第一選択は、ガイドライン2022でも明記されているとおりアドレナリンの筋肉注射(太ももの前外側)です。抗ヒスタミン薬の内服だけでは進行を止められないことがあるため、全身症状が出た場合は「薬を飲んで様子を見る」のではなく、すぐに救急要請してください。救急車を待つ間は、あお向けに寝かせて足を高くする体位が推奨されます(嘔吐がある場合は横向きに、呼吸が苦しい場合は上体を起こして)。急に立ち上がったり歩いたりすると血圧が急低下することがあるため避けましょう。エピペンやネフィー点鼻液を処方されている方は、上記のサインが出たらためらわずに使用し、そのうえで必ず救急要請してください。

「2回目は危ない」は本当?|蜂毒アレルギー検査と備え(エピペン・ネフィー点鼻液)

蜂毒アレルギーは血液検査で調べられます

過去にハチに刺されて大きく腫れた方、全身症状が出たことのある方は、血液検査で蜂毒に対する特異的IgE抗体(スズメバチ・アシナガバチ・ミツバチなど種類別)を調べることができます。ご自身のリスクを知っておくことは、次に刺されたときの備えとして大切です。当院では内科・小児科・アレルギー科としてアレルギー検査に対応しておりますので、気になる方はお気軽にご相談ください。

エピペン(アドレナリン自己注射薬)とは

エピペンは、アナフィラキシーが現れたときに、ご本人やご家族がその場で太ももに注射できるアドレナリン自己注射薬です。医療機関での治療に代わるものではなく、あくまで救急搬送までの補助治療ですが、蜂毒アナフィラキシーのように進行の速い反応では、この「その場の一本」が重症化を防ぐ重要な手段となります。日本では蜂毒・食物・薬物などによるアナフィラキシーの補助治療薬として承認されており、体重15kg以上30kg未満のお子さまには0.15mg製剤、30kg以上の方には0.3mg製剤が用いられます。2011年9月からは保険適用となっています。

エピペンの処方には講習を受けた登録医による診察が必要です。処方をご希望の方は、まず当院までご相談ください。

針を使わない新しい選択肢「ネフィー点鼻液」——当院で処方できます

「注射はどうしても怖い」「子どもに針を刺せる自信がない」——エピペンをためらう理由として、とても多いお声です。そうした方への新しい選択肢として、2026年2月12日、国内初のアドレナリン点鼻薬「ネフィー点鼻液」(アルフレッサファーマ、2025年9月19日承認)が発売されました。鼻の中にワンプッシュ噴霧するだけでアドレナリンを投与できる、針を使わないアナフィラキシー補助治療薬で、効能・効果はエピペンと同じく「蜂毒、食物及び薬物等に起因するアナフィラキシー反応に対する補助治療」です。健康保険も適用されます。

  エピペン(注射) ネフィー点鼻液
投与方法 太もも前外側に自己注射 鼻の中に噴霧(針を使わない)
用量の目安 体重15kg以上30kg未満:0.15mg
体重30kg以上:0.3mg
体重15kg以上30kg未満:1mg製剤
体重30kg以上:2mg製剤
効果不十分な場合 医師の指導に基づき追加投与 10分以上あけて2本目を追加可能
位置づけ いずれも救急搬送までの補助治療。使用後は必ず救急要請(119番)を

どちらが適しているかは、年齢・体重・ライフスタイル・注射への抵抗感などによって異なります。当院では院長・五藤良将がネフィー点鼻液の処方に対応しております。過去にハチ刺されで全身症状が出た方、蜂毒アレルギーが判明している方、林業・造園・農作業など刺傷リスクの高い環境の方は、アドレナリン製剤の携帯が推奨される場合がありますので、お気軽にご相談ください。必要に応じて、五良会グループおよび連携医療機関のアレルギー専門外来もご案内いたします。

ハチに刺されないための予防策と受診前チェックリスト

ハチ刺されは、ちょっとした心がけでリスクを大きく減らせます。お盆のお墓参りや草むしり、ハイキングの前に、次のポイントを確認しましょう。

ハチに刺されないための予防チェックリスト

黒い服・黒い帽子を避け、白や淡い色の服装・長袖長ズボンを選ぶ(ハチは黒いものに反応しやすい)

□ 香水・整髪料・柔軟剤の強い香りは控える(甘い香りにハチが寄ってきます)

□ ジュースの飲みかけの缶・ペットボトルを屋外に放置しない

□ 巣を見つけても近づかない・揺らさない・刺激しない(駆除は自治体や専門業者に相談)

□ ハチが近づいてきたら、手で払わず、姿勢を低くして静かに離れる

□ 過去に全身症状が出たことのある方は、屋外活動の際に緊急連絡手段と(処方されていれば)エピペンを携帯する

受診前チェックリスト(ハチ刺されでご相談の方)

□ 刺された日時・場所・状況(わかればハチの種類や色・大きさ)

□ 過去のハチ刺されの回数と、そのときの症状(腫れの程度・全身症状の有無)

□ アレルギー歴(食物・薬剤・花粉症など)

□ 持病・服用中のお薬(お薬手帳)

当院は内科・小児科を併設しておりますので、お子さまから大人の方、ご高齢の方まで、ご家族そろって同じ窓口でご相談いただけるのが強みです。ハチ刺されのあとの腫れが引かない、かゆみが続く、蜂毒アレルギーが心配——そんなときは、田園調布・多摩川駅から徒歩5分の当院までお気軽にお越しください。土曜も午前は診療しております。

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参考文献

  1. 日本アレルギー学会「アナフィラキシーガイドライン2022」(2022年8月発行)
  2. 日本アレルギー学会 アナフィラキシーガイドライン啓発サイト https://anaphylaxis-guideline.jp/(2026年8月閲覧)
  3. 厚生労働省「人口動態統計」(スズメバチ、ジガバチ及びミツバチとの接触による死亡)
  4. 厚生労働科学研究「ハチによる刺症事故防止に関する研究」
  5. ヴィアトリス製薬「エピペン注射液0.15mg/0.3mg 添付文書」(PMDA医療用医薬品情報)
  6. アルフレッサファーマ「ネフィー点鼻液1mg/2mg 添付文書」(2025年9月19日製造販売承認、2026年2月12日発売)
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Author: 五藤 良将