皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。
朝晩がぐっと冷え込むようになった田園調布・多摩川周辺。この時期の外来では、「昼や夕方の血糖値はまずまずなのに、朝起きたときの血糖値(空腹時血糖)だけが高いんです」というご相談をよくいただきます。夕食は控えめにしたはずなのに……と首をかしげる方も少なくありません。
実は、私たちの体は眠っている間も血糖値を一定に保とうと働いており、その仕組みのわずかな乱れが「朝だけ高い」という形で現れることがあります。代表的なのが暁現象(あかつきげんしょう)とソモジー効果、そして夕食のとり方やお薬の効き方によるものです。今回のブログでは、日本糖尿病学会『糖尿病診療ガイドライン2024』『糖尿病治療の手びき2026(改訂第59版)』と、持続血糖測定(CGM)を用いた研究をもとに、朝の高血糖の原因と見分け方、対策をやさしく解説いたします。
夜間の低血糖については「糖尿病治療中の「低血糖」対処完全ガイド」、血糖の見える化については「FreeStyleリブレ(CGM)と血糖自己測定」の記事もあわせてご参考にしてください。
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竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医
この記事は五藤良将が執筆・監修し、内容に責任を持っています。
目次
「朝だけ高い」はよくあるご相談です(2つのケース)
まずは、当院の外来でよくお見かけするような2つのケースをご紹介いたします。いずれも説明のために作成した架空の症例で、特定の患者さまの情報ではありません。
| ケース | 状況 |
|---|---|
| ケースA 60代男性・会社員 |
2型糖尿病でメトホルミンとDPP-4阻害薬を内服中。HbA1c 7.6%、BMI 26。昼食前や夕食前の血糖値は120前後なのに、朝の空腹時血糖は150台。仕事の都合で夕食は21時過ぎになることが多い。 |
| ケースB 70代女性 |
飲み薬に加えて寝る前に持効型インスリンを注射(BOT)。朝の血糖値が180前後と高いため単位数を増やしたが下がらない。最近、寝汗をかいて目が覚める、怖い夢を見る、朝に頭が重いことがある。 |
同じ「朝の高血糖」でも、ケースAは暁現象や夕食時間の影響、ケースBは夜間低血糖が隠れている可能性を考えます。原因によって対策が正反対になることもあるため、「朝が高いからお薬を増やす」と単純には決められないのです。
空腹時血糖の目安と、眠っている間の血糖の仕組み
空腹時血糖の目安
| 区分 | 空腹時血糖(mg/dL) |
|---|---|
| 正常域 | 110未満(100〜109は「正常高値」) |
| 境界型の範囲 | 110〜125 |
| 糖尿病型 | 126以上 |
| 治療中の目安(HbA1c 7.0%未満をめざす場合) | おおむね130未満(食後2時間はおおむね180未満) |
治療中の目標値は、年齢・低血糖の起こりやすさ・合併症の状況によって一人ひとり異なります。ご高齢の方では「下げすぎない」ことも大切です(高齢者のHbA1c目標の記事もご参照ください)。
眠っている間も、肝臓は糖をつくっています
夕食から朝食までの長い絶食の間、脳や体が使う糖は主に肝臓から供給されます。肝臓は、蓄えたグリコーゲンを分解したり、糖新生(とうしんせい)で新たに糖をつくったりして血液中に送り出します。この働きにブレーキをかけているのがインスリンで、逆にアクセルを踏むのがインスリン拮抗ホルモンです。
メカニズム図解|夜間〜早朝の血糖はこう決まる
| 夕食の糖が吸収される:夕食後数時間は、食事由来の糖で血糖が上がります。夕食が遅い・多いと、この影響が深夜まで続きます。 | |
| 深夜は肝臓が糖を供給:食事の影響が抜けると、肝臓の糖放出(グリコーゲン分解・糖新生)が血糖の主な源になります。 | |
| 明け方に拮抗ホルモンが増える:成長ホルモンやコルチゾールが夜間〜早朝に分泌され、肝臓の糖放出を促し、インスリンを効きにくくします。 | |
| インスリンが足りないと朝に高血糖:健康な方はインスリンが自然に増えて相殺しますが、糖尿病ではこの調整が追いつかず、起床時の血糖値が上がります。 |
|
用語解説|インスリン拮抗ホルモン・糖新生とは インスリン拮抗ホルモン(きっこうホルモン):インスリンと反対に血糖を上げる方向に働くホルモンの総称です。グルカゴン、アドレナリン、コルチゾール(副腎皮質ホルモン)、成長ホルモンなどがあり、低血糖やストレスのときにも分泌されます。 糖新生(とうしんせい):食事をとっていない時間に、主に肝臓がアミノ酸や乳酸などの材料からブドウ糖をつくり出す働きです。2型糖尿病ではこの働きが過剰になりやすく、空腹時血糖が上がる大きな要因になります。メトホルミンはこの肝臓の糖放出を抑えるお薬です。 |
暁現象(あかつきげんしょう)とは
暁現象(Dawn phenomenon)とは、夜中に低血糖がないにもかかわらず、明け方(おおむね午前3時〜8時ごろ)に血糖値が自然に上がる現象です。主に成長ホルモンやコルチゾールなどの拮抗ホルモンが明け方に増えることが原因と考えられています。
持続血糖測定(CGM)を用いたフランスの研究(Monnierら、Diabetes Care 2013年)では、インスリンを使っていない2型糖尿病の方248人のうち約半数に暁現象(夜間の最低値から朝食前までに20mg/dL以上の上昇)がみられ、その影響はHbA1cに換算して平均約0.4%と報告されています。また、この影響は食事療法のみ・飲み薬の種類にかかわらず同程度でした。決して珍しい現象ではなく、「朝の数値がなかなか下がらない」理由のひとつになりえます。
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用語解説|暁現象(Dawn phenomenon)とは 「暁(あかつき)」=夜明けの時間帯に起こる血糖上昇という意味で、「あかつきげんしょう」と読みます。夜間の低血糖を伴わない点がポイントで、健康な方にも小さな形で起こりますが、インスリンの分泌や効きが低下している糖尿病の方では目立ちやすくなります。 似た言葉に、夕方〜夜に血糖が上がりやすい「黄昏現象(たそがれげんしょう/Dusk phenomenon)」という概念もあります。 |
ソモジー効果とは|実は「まれ」と考えられるようになった理由
ソモジー効果(Somogyi effect)は、1930年代に米国の生化学者ソモジーが提唱した考え方で、「夜中に低血糖が起こる → 体が拮抗ホルモンを出して血糖を押し上げる → 朝はかえって高血糖になる」という反跳性高血糖(はんちょうせいこうけっとう)のことです。もしこれが起きていると、朝が高いからとインスリンを増やすほど夜の低血糖が悪化し、悪循環に陥ります。
ところが、CGMで夜間の血糖を連続して記録できるようになってから、この考え方は見直されています。英国の研究(Choudharyら、Diabetic Medicine 2013年)では、夜間低血糖があった夜の翌朝の血糖値はむしろ低い傾向にあり、「夜間低血糖のあとに朝の高血糖が起こる」パターンはまれであると報告されました。現在では、朝の高血糖の多くは暁現象やインスリン不足によるもので、ソモジー効果は頻度が低いと考えられています。
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用語解説|ソモジー効果(反跳性高血糖)とは ― それでも「夜間低血糖」には要注意 ソモジー効果とは、夜間の低血糖に対する体の防御反応(拮抗ホルモンの分泌)で、翌朝に血糖が跳ね返るように高くなる現象を指す言葉です。 現在は「まれ」と考えられていますが、夜間低血糖そのものは見逃してはいけない危険なサインです。特にインスリンやSU薬(スルホニルウレア薬)を使っている方は、朝の数値だけを見て自己判断で量を増やさないようにしてください。 |
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重要|夜間低血糖を疑うサイン ・寝汗をかいて目が覚める、パジャマや枕がぬれている ・悪夢を見る、夜中にうなされる(ご家族が気づくことも) ・朝起きたときの頭痛・頭の重さ・強いだるさ ・ご高齢の方では、夜間の混乱・ふらつき・転倒として現れることもあります |
そのほかの原因|夕食・お薬の効き方・睡眠
実際の外来では、暁現象やソモジー効果よりも、生活習慣やお薬の効き方が原因になっていることが多いものです。
| 原因 | 特徴・ポイント |
|---|---|
| 夕食が遅い・多い、夜食 | 就寝時点ですでに血糖が高く、そのまま朝まで高い状態が続きます。秋の新米・果物・お酒のおつまみにもご注意ください。 |
| お薬の効果切れ(ウェイニング) | 持効型インスリンや飲み薬の効果が明け方までもたず、朝にかけて徐々に上昇します。 |
| お薬の飲み忘れ・打ち忘れ | 夕・寝る前のお薬は忘れやすいもの。お薬カレンダーやスマホのアラームが役立ちます。 |
| 睡眠不足・睡眠時無呼吸症候群 | 睡眠の質が低いとコルチゾールや交感神経の働きが高まり、インスリンが効きにくくなります。大きないびきは要チェックです。 |
| ステロイド薬・感染症(シックデイ) | ステロイドの内服や、かぜ・インフルエンザなどの発熱時には血糖が上がりやすくなります。 |
| 測り方・タイミング | 起床後すぐではなく、朝の活動後や少し食べたあとに測ると高めに出ます。手指の糖分の付着にもご注意ください。 |
見分け方|「夜中の血糖値」がカギ
原因を見分けるには、寝る前・夜中(午前2〜3時ごろ)・起床時の血糖値の流れを確認するのが基本です。血糖自己測定(SMBG)で夜中に測る方法のほか、近年は持続血糖測定(CGM)で夜間の変動を連続して確認できるようになりました。
| 考えられる原因 | 寝る前 | 夜中(2〜3時) | 起床時 |
|---|---|---|---|
| 暁現象 | 目標付近 | 目標付近 | 明け方から上昇 |
| 夜間低血糖(ソモジー効果を含む) | さまざま | 低い(70未満) | 高い/正常〜低め |
| 夕食・夜食の影響 | 高い | 高いまま | 高い |
| お薬の効果切れ | 目標付近 | じわじわ上昇 | 高い |
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用語解説|SMBG・CGMとは SMBG(血糖自己測定):指先から少量の血液をとって、その時点の血糖値を測る方法です。 CGM(持続血糖測定):腕などに小さなセンサーを装着し、皮下の間質液のブドウ糖濃度を連続的に記録する方法です。寝ている間の変動や、気づかない夜間低血糖を「線」で確認できます。保険適用の条件は治療内容によって異なりますので、医師にご相談ください。 |
冒頭のケースAでは、夕食を早めた日の朝も明け方にかけて上昇がみられれば暁現象の関与が、ケースBでは夜中に70mg/dL未満の値がみられれば夜間低血糖の関与が疑われます。同じ「朝180」でも、治療の方向性はまったく異なることがお分かりいただけるかと思います。
対策|生活の工夫と治療の見直し
今日からできる生活の工夫
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朝の血糖を整える生活のポイント □ 夕食はできれば就寝の3時間前までに。遅くなる日は夕方に軽く補食をとり、夜の主食を控えめに「分食」する □ 夕食の炭水化物(ごはん・麺・パン)をとりすぎない。野菜・たんぱく質から先に食べる □ 夕食後15〜30分の軽い散歩や家事で、食後の血糖上昇をおだやかに □ 寝る前の甘い飲み物・お酒のおつまみ・果物を習慣にしない □ 睡眠時間を確保し、大きないびきや日中の眠気があればご相談を |
治療の見直し(医師と一緒に)
原因に応じて、医師は次のような調整を検討します。いずれも自己判断で行わず、必ず主治医とご相談ください。
| 原因 | 検討される主な対応 |
|---|---|
| 暁現象・肝臓の糖放出が多い | 肝臓の糖放出を抑えるメトホルミンの調整、持効型インスリンの種類(作用がより平坦・長いもの)や注射時刻の見直し、全体の治療強化など |
| 夜間低血糖がある | インスリンやSU薬の減量・変更、夕食や就寝前の補食の見直し。低血糖を起こしにくいお薬への切り替えを検討することもあります |
| 夕食・夜食の影響 | 食事時間・内容の具体的な調整、食後高血糖に対するお薬の検討 |
| お薬の効果切れ・飲み忘れ | 服薬・注射のタイミング、剤形や回数の見直し |
|
ご注意|「朝が高いから増やす」は危険なことも インスリンやSU薬を使用中の方が、朝の数値だけを見て自己判断で増量すると、夜間低血糖を招くおそれがあります。治療の評価には朝の値だけでなく、HbA1c、夜間・食後の血糖、低血糖症状の有無を総合して判断いたします。 |
受診の目安とチェックリスト
次のような場合は、次回の受診を待たずにご相談ください。
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早めの受診をおすすめするとき ・寝汗・悪夢・朝の頭痛など、夜間低血糖を疑う症状が続く ・朝の血糖値が急に高くなった(目安として200mg/dL以上が続く) ・口の渇き・多尿・体重減少などがある ・発熱や食事がとれないなどシックデイの状態にある |
|
受診時にお持ちいただくと役立つもの □ 血糖自己測定の記録(できれば寝る前・夜中・起床時の値)、またはCGMのデータ □ 夕食・就寝・起床のおおよその時刻のメモ(3〜7日分) □ お薬手帳(インスリンの種類・単位数・注射時刻も) □ 寝汗・悪夢・いびきなど、ご家族が気づいたこと |
竹内内科小児科医院が選ばれる理由
「朝だけ高い」血糖値の背景を探るには、数値の流れと生活のリズムを一緒に読み解くことが大切です。当院では次のような体制で、糖尿病の診療を行っております。
| 理由 | 内容 |
|---|---|
| ① 糖尿病・生活習慣病の専門的診療 | 日本糖尿病協会登録医・日本抗加齢医学会専門医の院長が外来で直接診察し、血糖自己測定やCGMの記録をもとに、お薬・インスリンの調整をご一緒に検討いたします。 |
| ② 内科×小児科併設 | お子さまからご高齢の方まで、ご家族そろって同じ窓口で受診いただけます。ご家族の夜間の様子もあわせてご相談ください。 |
| ③ 多摩川駅徒歩5分・土曜午前も診療 | 東急東横線・目黒線「多摩川駅」から徒歩5分。平日は午後19時まで、土曜は午前も診療しており、お勤めの方も通院を続けやすい環境です。 |
| ④ 五良会グループ連携 | 内視鏡検査や専門外来が必要な場合は、姉妹院の五良会クリニック白金高輪へ切れ目なくご紹介いたします。 |
| ⑤ 訪問診療・地域密着 | 通院が難しくなった方には訪問診療でも対応しており、ご高齢の方の夜間低血糖への配慮を含め、田園調布・大田区の地域で長く寄り添う診療を心がけております。 |
朝の血糖値が気になる方、夜中の寝汗や悪夢が気になる方は、記録を持ってお気軽にご相談ください。
この記事の執筆医師 / AUTHOR & SUPERVISOR
竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将(ごとう よしまさ)
- 竹内内科小児科医院 院長
- 医療法人社団 五良会(竹内内科小児科医院・五良会クリニック白金高輪)理事長
- 医療法人社団 正友会(五良ファミリークリニックセンター南)理事長
- 日本抗加齢医学会 専門医/日本糖尿病協会 登録医/日本旅行医学会 認定医
- 防衛医科大学校 医学部 卒業。防衛医科大学校病院、自衛隊中央病院ほかで臨床経験を積む
- 著書『あぶら落とすスープ』(アスコム)など。テレビなどメディア出演多数
執筆・監修責任について
本記事も院長の五藤良将が執筆・監修しています。公的機関の発表・国内外の診療ガイドライン・査読済み論文を確認したうえで作成しており、内容は公開時点の情報に基づきます。新しい知見やガイドラインの改訂があった場合は記事を更新いたします。
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個々の患者さんの診断・治療に代わるものではありません。記事中の症例は説明のための架空のものです。症状や治療のご判断については、必ず医師にご相談ください。記載内容について気になる点がございましたら、竹内内科小児科医院(03-3721-5222)までお知らせください。
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五良会グループでは、田園調布から白金高輪まで医師が連携しております。患者さまの転居やライフスタイルの変化に合わせて、同じグループ内で継続診療が受けられる体制を整えております。
参考文献
- 日本糖尿病学会 編・著『糖尿病診療ガイドライン2024』南江堂, 2024年
- 日本糖尿病学会 編・著『糖尿病治療の手びき2026(改訂第59版)』南江堂, 2026年5月
- Monnier L, Colette C, Dejager S, Owens D. Magnitude of the dawn phenomenon and its impact on the overall glucose exposure in type 2 diabetes: is this of concern? Diabetes Care. 2013;36(12):4057-4062.
- Choudhary P, Davies C, Emery CJ, Heller SR. Do high fasting glucose levels suggest nocturnal hypoglycaemia? The Somogyi effect—more fiction than fact? Diabetic Medicine. 2013;30(8):914-917.
- Somogyi M, Kirstein M. Insulin as a cause of extreme hyperglycemia and instability. Weekly Bulletin of the St Louis Medical Society. 1938;32:498-510.
竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医