皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。
朝晩が涼しくなり、運動会や遠足、行楽のお弁当づくりが増えるこの季節。「涼しくなったから、食べ物はもう安心」と思っていらっしゃいませんか。実は秋は、夏に劣らず食中毒(しょくちゅうどく)が多い季節です。気温低下による油断に加えて、行楽弁当・バーベキュー・秋の生魚・キノコといった秋ならではの食習慣が重なるためです。
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📺 テレビ出演のお知らせ|フジテレビ「ノンストップ!」 2026年9月17日(木)放送のフジテレビ系情報番組「ノンストップ!」(あさ9時50分〜)にて、院長の五藤良将が“秋の食中毒”をテーマに解説の機会をいただきました。番組とあわせて、本記事ではご家庭で役立つ予防と受診の目安を詳しくお伝えいたします。 |
今回のブログでは、厚生労働省の食中毒統計(令和7年)などをもとに、秋に注意したい4タイプの食中毒(細菌・ウイルス・寄生虫・自然毒)と、お子さま・ご高齢の方が重症化しやすいサイン、そして運動会・行楽弁当の予防ポイントを、内科・小児科の両方の視点から解説いたします。夏の記事「家族で防ぐ細菌性食中毒」の秋バージョンとして、あわせてご覧ください。
目次
秋こそ食中毒にご注意を——2025年は患者数が前年の約1.7倍に
厚生労働省の「令和7年食中毒発生状況の概要」によると、2025年に全国で報告された食中毒は1,172件・患者数24,727人で、患者数は前年の約1.7倍に増加しました。原因別ではノロウイルス462件、アニサキス280件、カンピロバクター220件が上位を占めています。
食中毒というと梅雨や真夏をイメージされる方が多いのですが、実際には秋(9〜10月)も発生件数の多い季節です。理由は大きく3つあります。
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ポイント|秋に食中毒が多い3つの理由 ① 「涼しいから大丈夫」という油断:日中はまだ25℃前後まで上がる日も多く、細菌が増殖しやすい温度帯が続いています。 ② 秋ならではの食シーン:運動会・遠足のお弁当、バーベキュー、キノコ狩り、秋の味覚の生魚など、リスクのある食習慣が集中します。 ③ 夏の疲れによる抵抗力の低下:夏バテや朝晩の寒暖差で体調を崩し、同じ菌量でも発症しやすくなります。 |
原因は4タイプ——細菌・ウイルス・寄生虫・自然毒
ひとくちに「食中毒」といっても、原因は大きく4つのタイプに分かれ、対策も異なります。
| タイプ | 秋に注意したい代表例 | 主な対策 |
|---|---|---|
| 細菌 | カンピロバクター、ウェルシュ菌、サルモネラ、黄色ブドウ球菌 | 中心部まで75℃で1分以上の加熱、低温保存 |
| ウイルス | ノロウイルス(これから冬に向けて増加) | 手洗い、二枚貝は85〜90℃で90秒以上加熱 |
| 寄生虫 | アニサキス(サンマ・サバ・カツオなど) | 加熱または−20℃で24時間以上の冷凍 |
| 自然毒 | 毒キノコ(ツキヨタケ、クサウラベニタケなど) | 野生のキノコは食べない(加熱しても毒は消えません) |
秋に多い食中毒① カンピロバクター(鶏肉・バーベキュー)
細菌性食中毒の代表格で、加熱不十分な鶏肉(鶏刺し・タタキ・バーベキューの生焼け)が主な原因です。潜伏期間(せんぷくきかん:食べてから発症までの時間)が1〜7日と長いのが特徴で、「数日前の食事が原因」とは気づきにくい食中毒です。発熱・腹痛・下痢(時に血便)が主な症状です。
まれではありますが、感染から1〜3週間後にギラン・バレー症候群という神経の合併症が起こることが知られています。
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用語解説|ギラン・バレー症候群とは 細菌やウイルスへの感染をきっかけに、免疫が誤って自分の末梢神経(まっしょうしんけい:手足などに向かう神経)を攻撃してしまう病気です。下痢などが治った1〜3週間後に、手足のしびれや力の入りにくさが現れ、進行すると歩行や呼吸に影響することもあります。カンピロバクター感染後の発症が知られており、下痢のあとにこうした症状が出た場合は早急に医療機関を受診してください。 |
対策:鶏肉は中心部まで75℃で1分以上加熱し、生肉を触ったトング・箸と食べる箸を必ず分けてください。バーベキューでの注意点は夏の記事「バーベキュー・お弁当に潜む食中毒」でも詳しく解説しています。
秋に多い食中毒② ウェルシュ菌(作り置きカレー・煮込み)
涼しくなると増えるのが、前日に作ったカレー・シチュー・煮物によるウェルシュ菌食中毒です。「一晩寝かせたカレーはおいしい」と言われますが、実は食中毒の観点では要注意。ウェルシュ菌は芽胞(がほう)という耐熱性の形態をつくるため、普通の加熱では死滅しないのです。食後6〜18時間(平均10時間)で腹痛・下痢を起こします。2025年の統計では事件数こそ全体の2.8%ですが、大鍋調理で一度に大人数が発症するため患者数では5.1%を占めています。
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用語解説|芽胞(がほう)とは 一部の細菌が、熱や乾燥などの厳しい環境を生き延びるためにつくる「殻に閉じこもった休眠状態」のことです。100℃の加熱にも耐えるため、カレーを煮込んでも芽胞は生き残り、温度が下がると再び目を覚まして増殖を始めます。ウェルシュ菌やセレウス菌がこのタイプで、「加熱したから安心」が通用しない理由です。 |
メカニズム図解|作り置きカレーでウェルシュ菌が増える流れ
| 加熱調理する:普通の細菌は死にますが、ウェルシュ菌の芽胞は煮込みに耐えて生き残ります。 | |
| 鍋のまま室温でゆっくり冷める:45℃前後の「増殖に最適な温度帯」を長時間通過します。大鍋の底は空気が少なく、酸素嫌いのウェルシュ菌にとって好条件です。 | |
| 芽胞が目を覚まして一気に増殖:一晩のうちに食中毒を起こす菌量まで増えてしまいます。 | |
| 翌日温め直しても手遅れに:増えた菌と芽胞は再加熱でも死滅しきらず、食中毒の原因になります。 |
対策:カレーや煮物は当日中に食べきるのが基本。残す場合は浅い容器に小分けし、粗熱を取ったらすぐ冷蔵庫へ。食べるときは全体をかき混ぜながらしっかり再加熱してください。
秋に多い食中毒③ アニサキス(サンマ・サバなど秋の生魚)
秋はサンマ・サバ・カツオなど、生で楽しみたい魚がおいしい季節。そこで増えるのがアニサキス症です。アニサキスは魚介類に寄生する長さ2〜3cmの寄生虫(線虫)で、生きたまま食べてしまうと胃や腸の壁に食い込み、食後数時間〜十数時間でみぞおちの激痛・吐き気(胃アニサキス症)を起こします。2025年には280件と、原因物質別で第2位でした。
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ここに注意|酢・わさび・塩ではアニサキスは死にません ・しめ鯖の「酢じめ」、わさび・しょうが・塩では死滅しません。 ・確実なのは加熱(70℃以上、または60℃なら1分)か冷凍(−20℃で24時間以上)です。 ・胃アニサキス症は、胃カメラ(上部消化管内視鏡)で虫体を摘出することで速やかな改善が期待できます。強い腹痛が出たら我慢せず受診してください。 |
五良会グループでは、姉妹院の五良会クリニック白金高輪(港区)が土曜・日曜・祝日も胃カメラに対応しております。生魚を食べたあとの激しい腹痛でお困りの際は、当院またはグループ院にご相談ください。
秋に多い食中毒④ 毒キノコ(自然毒)
秋の行楽シーズンに必ずニュースになるのが毒キノコです。ツキヨタケ(シイタケやヒラタケと間違えやすい)、クサウラベニタケなどによる食中毒が毎年発生しており、過去10年の食中毒による死者では毒キノコを含む植物性自然毒が最多(21人)という重いデータもあります。食後30分〜1時間で嘔吐・下痢・腹痛が現れます。
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重要|キノコの言い伝えは信じないでください ・「縦に裂けるキノコは食べられる」「虫が食べていれば安全」——いずれも科学的根拠はありません。 ・加熱や調理では毒は消えません。 ・確実に鑑別できないキノコは「採らない・食べない・人にあげない」。万一食べて症状が出たら、実物や写真を持って直ちに受診してください。 |
お子さま・ご高齢の方は重症化にご注意を
当院は内科・小児科を併設しているため、秋の食中毒シーズンには親子で受診されるケースが少なくありません。お子さまとご高齢の方は、脱水と重症化のリスクが高いことを知っておいてください。
特に注意していただきたいのが血便です。腸管出血性大腸菌(O157など)による食中毒では、お子さまやご高齢の方で溶血性尿毒症症候群(HUS)という重い合併症につながることがあります。
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用語解説|溶血性尿毒症症候群(HUS)とは O157などが出す毒素(ベロ毒素)によって赤血球が壊れ(溶血)、腎臓の働きが急に悪くなる合併症です。血便を伴う下痢の数日後に、顔色不良・尿量の減少・むくみ・ぐったりといったサインで現れます。小児で特に注意が必要で、疑われる場合は入院管理が必要になります。だからこそ、血便が出た時点で「様子見」をせず受診していただきたいのです。また、自己判断の下痢止めは毒素の排出を妨げるため使用しないでください。 |
ご家庭での水分補給は、水やお茶だけでなく経口補水液(ORS:水分と塩分・糖分を体に吸収されやすい濃度で配合した飲料)を少量ずつ、こまめに与えるのがコツです。嘔吐が続いて水分がまったくとれないときは、点滴が必要なことがありますので受診してください。
また、糖尿病で治療中の方は、嘔吐・下痢で食事がとれない「シックデイ」に、お薬の調整(SGLT2阻害薬やメトホルミンの休薬など)が必要になる場合があります。詳しくは「シックデイの休薬ルールの記事」をご覧のうえ、必ず主治医にご相談ください。
運動会・行楽弁当の予防6ポイントと、ご自宅でのケア・受診の目安
食中毒予防の三原則は「つけない・増やさない・やっつける」。秋のお弁当づくりでは、次の6つを意識してください。
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運動会・行楽弁当の予防6ポイント □ 調理前・盛り付け前に石けんで丁寧に手洗い(お子さまと一緒に) □ 生肉・生魚を扱った包丁・まな板・トングは、そのまま他の食材に使わない □ おかずは中心部まで75℃で1分以上しっかり加熱(卵焼きも半熟は避ける) □ 完全に冷ましてからフタをする(湯気=水分は細菌増殖のもと) □ 保冷剤・保冷バッグで持ち運び、直射日光の当たる場所に置かない □ 作り置きおかずの常温放置はしない。おにぎりはラップで握る |
ご自宅でのケアと「やってはいけないこと」
軽い下痢・嘔吐であれば、経口補水液での水分補給と消化のよい食事で回復することが多いです。ただし、自己判断での強い下痢止めの使用は避けてください。原因菌や毒素を体の外に出せなくなり、かえって回復を遅らせたり重症化させたりすることがあります。
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重要|こんなときは早めに受診を(受診の目安) ・血便(赤い便・赤黒い便)や黒い便が出た ・生魚を食べた数時間後〜翌日の非常に強い腹痛(アニサキスの可能性) ・野生のキノコを食べたあとの体調不良(実物・写真を持参してください) ・水分がとれない、尿が半日以上出ない、目が落ちくぼむ・ぐったりしている(脱水のサイン) ・下痢のあとの手足のしびれ・力の入りにくさ(ギラン・バレー症候群の可能性) ・呼びかけへの反応が鈍い、呼吸がおかしい、けいれん——このときは迷わず救急車(119番)を |
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おなかの不調、親子でまとめてご相談いただけます 竹内内科小児科医院(東急東横線・目黒線 多摩川駅 徒歩5分)は内科・小児科を併設しており、お子さまからご高齢の方まで、ご家族そろって同じ医師にご相談いただけます。下痢・嘔吐・腹痛が続くとき、お弁当や会食のあとの体調不良が心配なときは、我慢せずお早めにどうぞ。土曜午前も診療しております。 ご予約・お問い合わせ:TEL 03-3721-5222(下のボタンからWEB予約・WEB問診・LINEもご利用いただけます) |
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五良会グループでは、田園調布の竹内内科小児科医院と港区の五良会クリニック白金高輪の医師が連携しております。胃カメラによるアニサキス摘出など、より専門的な検査・処置が必要な場合も、同じグループ内でスムーズにご案内できる体制を整えております。
参考文献
- 厚生労働省「令和7年食中毒発生状況の概要」(2026年9月閲覧)
- 厚生労働省「カンピロバクター食中毒予防について(Q&A)」(2026年9月閲覧)
- 厚生労働省「アニサキスによる食中毒を予防しましょう」(2026年9月閲覧)
- 厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」(2026年9月閲覧)
- 厚生労働省「自然毒のリスクプロファイル」(2026年9月閲覧)
- 農林水産省「食中毒は年間を通して発生しています」(2026年9月閲覧)
竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医