【2026年夏】夏は血圧が下がる?猛暑と降圧薬・脱水の注意点|家庭血圧の正しいはかり方【田園調布・多摩川】

皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。

2026年の夏も、田園調布・多摩川周辺では連日厳しい暑さが続いております。この時期、外来で血圧を測定すると「あれ、冬より血圧が低いですね」と驚かれる方が少なくありません。実は血圧には季節変動があり、多くの方で夏は血圧が下がりやすいことが知られています。

「血圧が下がるなら良いことでは?」と思われるかもしれませんが、降圧薬を服用中の方にとって、夏は「下がりすぎ」と「脱水」に注意が必要な季節です。今回のブログでは、2025年8月29日に発刊された日本高血圧学会の最新ガイドライン「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」の内容も踏まえながら、夏の血圧管理のポイントを、生活習慣病・糖尿病を専門とする立場から分かりやすく解説いたします。

なお、熱中症・脱水そのものの対処法については、当院の救急科専門医・水谷政之 先生(毎週金曜午後定期非常勤医師)紹介記事「その頭痛・だるさ、隠れ脱水・熱中症かも」もあわせてご覧ください。

なぜ夏は血圧が下がるのか?──血圧の季節変動

血圧は1年を通じて一定ではなく、一般に冬は高く、夏は低くなる傾向があります。個人差はありますが、季節による差が10mmHg前後にのぼる方もいらっしゃいます。夏に血圧が下がる主な仕組みは、次のとおりです。

メカニズム図解|夏に血圧が下がる仕組み

1 暑さで血管が広がる:体は熱を逃がすため、皮膚の血管(末梢血管)を拡張させます。血管が広がると血圧は下がります。
2 汗で水分と塩分が失われる:大量の発汗により体内の水分・ナトリウムが減り、血液の量(循環血液量)が減少します。
3 冬と同じ量の降圧薬が「効きすぎる」ことがある:もともと血圧が下がりやすい状態のところに降圧薬が加わることで、血圧が下がりすぎる場合があります。
4 めまい・ふらつき・脱水関連のトラブルへ:立ちくらみや転倒、脱水による腎機能の悪化などにつながるおそれがあります。

つまり夏は、「血圧が高い」ことよりもむしろ「下がりすぎていないか」「脱水になっていないか」という視点でのチェックが大切になる季節なのです。

「下がりすぎ」のサインと、夏に起こりやすいリスク

血圧が下がりすぎたときのサインは、意外と「夏バテ」と似ています。「歳のせいかな」「暑いから仕方ない」と見過ごされやすいのが特徴です。

重要|こんな症状は「血圧の下がりすぎ」のサインかもしれません

・立ち上がったときのめまい・立ちくらみ(起立性低血圧)

・ふらつき、足元がおぼつかない、転びそうになる

・強いだるさ、ぼーっとする、集中できない

・目の前が暗くなる、失神しかけた(一瞬意識が遠のいた)

・尿の量が明らかに減った、尿の色が濃い(脱水のサイン)

特にご高齢の方では、血圧の下がりすぎによる転倒・骨折が、その後の生活の質を大きく左右します。また、脱水で血液が濃縮されると、脳梗塞や心筋梗塞などの血栓症のリスクが高まることも知られています。「夏は血圧が下がるから安心」と単純には言えない理由がここにあります。

さらに、脱水状態では腎臓への血流が減るため、腎機能が一時的に悪化することがあります。もともと腎臓の数値(eGFRやクレアチニン)を指摘されている方、糖尿病をお持ちの方は、夏場は特に注意が必要です。

夏に特に注意したいお薬──ただし自己判断での中止は禁物

降圧薬や糖尿病のお薬の中には、夏の脱水と相性の悪いものがあります。代表的なものを整理します。

お薬の種類 夏に注意したい理由
利尿薬(サイアザイド系など) 尿として水分・塩分を排出するお薬のため、発汗と重なると脱水・電解質異常を起こしやすくなります。
SGLT2阻害薬(糖尿病・心不全・腎臓病のお薬) 尿に糖を出して血糖を下げるお薬で、尿量が増えるため脱水になりやすい特徴があります。日本糖尿病学会も脱水予防を呼びかけています。
ARB・ACE阻害薬(レニン・アンジオテンシン系降圧薬) 脱水時には腎臓を守る仕組みに影響し、腎機能悪化につながることがあります。市販の解熱鎮痛薬(NSAIDs)との併用時は特に注意が必要です。
複数の降圧薬の併用 夏はお薬が「効きすぎる」ことがあり、季節に合わせた用量調整を検討する場合があります(調整は必ず医師が行います)。

お薬の自己判断での中止・減量は絶対にしないでください

「夏は血圧が下がるらしいから」と、ご自身の判断でお薬をやめたり減らしたりすると、かえって血圧が大きく変動し、危険な場合があります。降圧薬の調整は、家庭血圧の記録をもとに医師が判断いたします。

また、発熱・下痢・食欲不振で食事や水分が十分にとれない「シックデイ」には、SGLT2阻害薬や利尿薬などを一時的にお休みすることを検討する場合があります。事前にかかりつけ医と対応を相談しておきましょう。

JSH2025の新しい降圧目標と、夏の家庭血圧のはかり方

2025年8月に6年ぶりに改訂された「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」では、降圧目標が年齢を問わず統一されたことが大きなポイントです。

項目 診察室血圧 家庭血圧
高血圧の診断基準 140/90mmHg以上 135/85mmHg以上
降圧目標(全年齢で統一) 130/80mmHg未満 125/75mmHg未満

※ 降圧目標は病状により個別に調整します。ご自身の目標値は診察時にご確認ください。

そして、季節による血圧の変化をとらえるうえで最も大切なのが家庭血圧の記録です。JSH2025でも、診察室血圧より家庭血圧を重視する方針が引き継がれています。夏こそ、次のポイントを守って測定してみてください。

夏の家庭血圧測定のポイント

:起床後1時間以内、排尿後、朝食・お薬の前に、座って1〜2分安静にしてから測る

:寝る前に、同じ姿勢・同じ腕で測る

□ エアコンの効いた室内で測る(暑い部屋では低めに出ることがあります)

□ 1機会に2回測って、両方の値を記録する

□ めまい・ふらつきを感じたときは、その時の血圧もメモして受診時にお持ちください

今日からできる夏の血圧管理の工夫

1. 水分は「のどが渇く前に、こまめに」

高齢になるとのどの渇きを感じにくくなります。起床時・入浴前後・就寝前・外出前後など、タイミングを決めてコップ1杯ずつ飲む習慣がおすすめです。なお、甘い清涼飲料水のとりすぎは血糖値の急上昇を招きます。詳しくは当院の記事「夏に急増「ペットボトル症候群」とは?」をご覧ください。

2. 塩分は「控えめ」が基本、ただし大量発汗時は別

高血圧の方の減塩(1日6g未満が目標)は夏も変わらず大切です。一方で、炎天下での作業やスポーツなどで大量に汗をかいたときは、水分と併せて適度な塩分補給が必要になります。ご自身の状況に合わせたさじ加減は、診察時にお気軽にご相談ください。

3. エアコンをためらわない

「電気代がもったいない」「体に悪そう」とエアコンを我慢される方がいらっしゃいますが、屋内での熱中症・脱水はご高齢の方に多く発生しています。室温28℃を超えないよう調整し、就寝時も上手に活用しましょう。

4. 飲酒・入浴のあとは特に注意

アルコールには利尿作用と血管拡張作用があり、夏の飲酒後は血圧が下がりやすくなります。また、入浴直後も血管が広がって立ちくらみが起こりやすいタイミングです。急に立ち上がらない、入浴前後に水分をとる、といった小さな工夫が転倒予防につながります。

受診の目安と、当院でできること

受診をおすすめするチェックリスト

□ 家庭血圧が普段より明らかに低い日が続いている(目安:上の血圧が100mmHg前後まで下がる、普段より20mmHg以上低い)

□ 立ちくらみ・ふらつき・強いだるさが続いている

□ 利尿薬・SGLT2阻害薬を服用中で、夏の過ごし方に不安がある

□ 降圧薬を飲み始めてから初めての夏を迎える

□ 健診で血圧や腎機能の数値を指摘されたまま、まだ受診していない

ポイント|竹内内科小児科医院の夏の血圧サポート

① 家庭血圧をもとにした調整:血圧手帳やスマートフォンの記録をお持ちいただければ、季節に合わせたお薬の調整を検討いたします。

② 生活習慣病をまとめて診療:高血圧・糖尿病・脂質異常症を、糖尿病・代謝内科を専門とする院長が一体的に診療いたします。

③ 循環器内科の専門外来:動悸や心電図異常を伴う場合は、第2・第4土曜午前の樫木辰次医師(循環器内科)と院内で連携いたします。

④ 土曜午前も診療・ご家族で通える:お仕事帰りは平日19時まで、共働き世帯の方は土曜午前もご利用いただけます。お子さまの診療と同じ日にご家族の血圧相談も可能です。

五良会グループでは、田園調布の竹内内科小児科医院と港区の五良会クリニック白金高輪が連携し、生活習慣病の管理から精密検査まで多角的にサポートしております。患者さまの転居やライフスタイルの変化に合わせて、同じグループ内で継続診療が受けられる体制を整えております。

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参考文献

  1. 日本高血圧学会. 高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025). ライフサイエンス出版; 2025年8月29日発刊.
  2. 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン」 https://www.jpnsh.jp/guideline.html(2026年7月閲覧)
  3. 日本糖尿病学会「糖尿病治療におけるSGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」 https://www.jds.or.jp/modules/education/index.php?content_id=132(2026年7月閲覧)
  4. 環境省「熱中症予防情報サイト」 https://www.wbgt.env.go.jp/(2026年7月閲覧)
  5. 厚生労働省「健康のため水を飲もう」推進運動 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/nomou/index.html(2026年7月閲覧)

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