「FLASH」に五藤院長の取材・監修記事が掲載されました。



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2022年春ごろから、欧米を中心に増加し、日本での広がりが懸念されていた小児の急性肝炎で、ついに国内初の死者が出た。3月29日、国立感染症研究所は、2月16日までに報告された原因不明の急性肝炎について、可能性例は156例、肝移植が必要な重症例が3例、死亡例が1例あったことを発表した。

 発症に至るまでの経緯や、その後の経過などが詳しく発表されていないため、乳幼児を持つ親は不安に感じているはず。原因がいまだに特定されていないことから、「コロナワクチンが原因だ」といった、陰謀論めいたデマがSNSで流布するありさまだ。


 五良会 竹内内科小児科医院院長の五藤良将医師が、「まずは冷静になってほしい」としたうえで、この急性肝炎の広がりの原因と指摘される「4つの可能性」について解説した。

■アデノウイルス

 ひとつめは、アデノウイルスだ。英科学誌『ネイチャー』に掲載された論文によると、患者の多くから「アデノ随伴ウイルス2型(AAV2)」が見つかったことから、AAV2が肝炎に影響している可能性を示唆している。しかし、この報告に関して五藤医師は、「断定するには時期尚早」と話す。


アデノウイルスに感染すると、鼻水や咽頭痛、胃腸炎、結膜炎など、風邪のような症状を引き起こします。アデノウイルスによって肝炎が起きることはゼロではありませんが、一般的には抗がん剤治療を受ける患者や免疫不全疾患、HIV感染症など、免疫能低下が著しい患者が発症する傾向にあります。アデノウイルスは子どもが感染しやすいウイルスの代表格でもありますが、ふだん健康な子どもが感染しても、肝炎になることは、まれだと思います」

■薬剤性

 ふたつめは、薬剤を原因とするものだ。


「じつは、急性肝炎を引き起こす原因のひとつに『薬剤性』があります。一般的な総合感冒薬(風邪薬)や解熱鎮痛薬、比較的、安全と思われている漢方薬でも急性肝炎になることがあります。また、抗がん剤などの副作用でもっとも多いもののひとつとして、急性肝障害が知られています。重篤になると死亡するケースも見られます。一連の急性肝炎の患者のなかに、薬の服用をしていた患者がいた可能性はゼロとはいえないでしょう」

■「ウイルス干渉」の消失

 徐々に収束しつつある新型コロナウイルスも、なんらかの影響を与えている可能性があるという。

「そもそもコロナ禍には『ウイルス干渉』が起きていた可能性があります。ウイルス干渉とは、ひとつのウイルスに感染することで、ほかのウイルスへの感染が抑制される、という現象です。コロナ禍にインフルエンザがあまり流行らなかったのは、ウイルス干渉が働いていたからだ、と考える専門家もいます。

 ウイルス干渉があった場合、インフルエンザだけでなく、ほかのウイルスも抑えられていた可能性があります。いま、新型コロナウイルスが収束しつつあることによって、ウイルス干渉がなくなり、別のウイルスが感染力、増殖力を伸ばしている可能性もあります」

■抗体をつけるチャンスを失った

 そして、別のウイルスの影響もありうるという。

「お子様を育てた方は体験していると思いますが、たとえば保育園や幼稚園に通い出したとき、さまざまな病気をもらってきたこと(感染したこと)があると思います。保育園や幼稚園で、友達や自然と触れ合うなかで、いろいろなウイルスなどに感染し、抗体をつけていくのです。

 しかし、コロナ禍でとくに子供たちは、本来、体験すべき他人や自然との触れ合いが著しく制限されたため、感染によって十分な抗体をつけるチャンスを失った、とも考えられます。そのため、なんらかのウイルスに免疫が過剰反応し、急性肝炎を発症するという仮説を立てることもできます」

しかし、これら4つの仮説は、どれも現時点では「これが原因だ」と断定することはできない。

「国内で、急性肝炎によって、1人の小児の命が失われたことは重大なことです。しかし、医師をはじめ、まわりの大人たちは、冷静になるべきです。過度に恐れるのはナンセンスです。

 新型コロナに振り回された3年間を教訓に、あやふやな情報に惑わされないようにしてほしいと思います」

 専門家による原因の究明が待たれる。

取材/文・吉澤恵理(医療ジャーナリスト)


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Author: 五藤 良将