【2026-27年 年末年始】東南アジア・南アジアへ旅行する方の「狂犬病ワクチン」|出発の何日前から?3回接種のスケジュールと現地で犬やサルに咬まれたときの対応を旅行医学会認定医の院長・五藤良将が解説【田園調布・多摩川】

皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。

11月に入り、外来では「年末年始にタイ(バンコク)やバリ島へ家族で行くのですが、何か打っておくべきワクチンはありますか?」というご相談が増えてきました。そして、出発の1〜2週間前になってから狂犬病ワクチンのご相談に来られ、3回接種が間に合わないというケースが少なくありません。

先に結論をお伝えします。狂犬病の曝露前ワクチン(ラビピュール)は「0日・7日・21日(または28日)」の3回接種が国内の添付文書上の基本で、完了まで最短3週間かかります。12月下旬に出発するなら、11月中に1回目を始めるのが安心です。そして、ワクチンを打っていてもいなくても、現地で犬・猫・サル・コウモリに咬まれたり引っかかれたりしたら、すぐに傷を洗い、その日のうちに医療機関を受診することが命を守る行動です。

この記事では、「年末年始の海外旅行の前に、狂犬病ワクチンを打つべきか・いつから始めればよいか・咬まれたらどうするか」の3点に絞って、添付文書とWHO(世界保健機関)の推奨をもとに解説いたします。行き先別のワクチン全体については海外渡航ワクチン 行き先別ガイドをご覧ください。

五藤 良将

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竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将

日本旅行医学会認定医・日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本温泉気候物理医学会 温泉療法医/温泉療法専門医
この記事は五藤良将が執筆・監修し、内容に責任を持っています。

1. 狂犬病は「発症したらほぼ助からない」感染症です

狂犬病は、狂犬病ウイルスを持つ動物に咬まれたり、傷口をなめられたりすることで感染し、脳や脊髄(中枢神経)に炎症を起こす病気です。いったん発症すると、有効な治療法はなく、致死率はほぼ100%とされています。一方で、咬まれた後すぐにワクチン接種を始めれば、発症を防ぐことができます。

WHOによると、狂犬病による死亡は世界で年間約5万9,000人と推計され、その最大99%は犬からの感染です。また、狂犬病が疑われる動物に咬まれる人の約40%は15歳未満の子どもとされています。

日本国内では、ヒトは1956年、動物は1957年(ネコ)を最後に発生がありません。ただし海外で感染して帰国後に発症した「輸入症例」は、1970年(ネパール)、2006年(フィリピン・2例)、2020年(フィリピン)と報告されています。潜伏期間は一般に1〜3か月程度ですが、まれに数年後に発症することもあり、「旅行中に咬まれたけれど何ともなかった」と放置するのは危険です。

地域 年末年始に人気の行き先の例 注意したい動物
東南アジア タイ、ベトナム、カンボジア、フィリピン、インドネシア(バリ島を含む) 野良犬・飼い犬、猫、寺院や観光地のサル
南アジア インド、ネパール、スリランカ 犬、サル
中南米・アフリカ ペルー、メキシコ、ケニアなど 犬、コウモリ(中南米)など

※日本のほか、オーストラリア・ニュージーランド・ハワイ・グアムなど、狂犬病の発生がないとされる地域は限られています。最新の状況は厚生労働省検疫所(FORTH)でご確認ください。

2. 年末年始の旅行で、打っておいたほうがよいのはどんな人?

添付文書でも「接種の要否は、WHOの推奨も参考に検討する」とされており、狂犬病の流行地域へ行くすべての人に一律で必須というワクチンではありません。短期の都市部滞在で動物に近づかない予定なら、接種せずに「咬まれたら現地ですぐ受診する」方針も選択肢の一つです。

一方で、次のような方には、出発前の接種(曝露前免疫)を当院からおすすめしています。これは医学的な基準そのものではなく、「咬まれたときに現地で必要な治療を受けられないリスク」を見据えた当院からのご提案です。

こんな旅行・こんな方 理由
お子さま連れの家族旅行 動物に自分から近づきやすく、顔や頭を咬まれやすい。咬まれたことを親に言わないこともある
地方・離島・遺跡めぐり、トレッキング、自転車旅 すぐに曝露後ワクチンや免疫グロブリンを受けられる医療機関まで遠いことがある
サルの多い寺院・観光地、動物とのふれあいツアー サルや犬との接触機会が多い
今後も流行地域へ繰り返し渡航する予定がある方 一度基礎免疫を済ませておくと、次回以降も咬まれたときの対応が簡単になる

用語解説|「曝露前免疫」と「曝露後免疫」とは

曝露前免疫(ばくろまえめんえき・PrEP):咬まれる前、つまり旅行の前に、あらかじめワクチンで免疫をつけておくことです。

曝露後免疫(ばくろごめんえき・PEP):ウイルスを持つ可能性のある動物に咬まれた「後」に、発症を防ぐために行うワクチンの連続接種です。必要に応じて「抗狂犬病免疫グロブリン(RIG)」という、ウイルスを直接中和する抗体製剤も傷のまわりに注射します。

大切なポイント:曝露前免疫を済ませていても、咬まれたら曝露後免疫は必ず必要です。ただしWHOの推奨では、曝露前免疫を済ませた人は曝露後のワクチン回数が少なく(0日・3日の2回など)、免疫グロブリンも不要になります。免疫グロブリンは日本国内では入手できず、旅行先でも常に準備されているとは限らないため、ここが曝露前免疫の大きな利点です。

3. いつから始める?国内2製剤のスケジュールと逆算カレンダー

日本で承認されている狂犬病ワクチンは2種類あり、添付文書上の接種スケジュールが異なります(いずれも2024年10月改訂の添付文書による)。

製剤 曝露前免疫(旅行前) 年末年始旅行への向き不向き
ラビピュール筋注用
(筋肉注射・2019年7月販売開始)
3回:0日・7日・21日または0日・7日・28日 最短3週間で完了でき、今からでも間に合いやすい
組織培養不活化狂犬病ワクチン
(国産・皮下注射)
4週間隔で2回+6〜12か月後に追加1回 2回目まで4週間かかり、年末出発にはやや窮屈

12月下旬〜年始に出発する場合、ラビピュールで逆算すると次のようになります。1回目の日付を0日として、出発日の前日までに3回目を終えるのが目安です。

1回目(0日) 2回目(7日) 3回目(21日 or 28日) コメント
11月14日(土) 11月21日(土) 12月12日(土)=28日 土曜午前だけで3回完了できる例
11月下旬 12月上旬 12月中旬〜下旬=21日 12月下旬出発なら間に合う
12月中旬以降 出発直前 出発に間に合わない 途中までの接種でどう対応するか医師と相談

WHOの2018年のポジションペーパーでは、0日・7日の2回で曝露前免疫とする短縮スケジュールも示されていますが、国内の添付文書はラビピュールで3回接種となっています。当院では原則として添付文書に沿ってご案内し、出発まで日数が足りない場合は、途中までの接種状況と帰国後の残りの接種の考え方を個別にご説明いたします。また、A型肝炎・破傷風・日本脳炎など他の渡航ワクチンとの同時接種も、医師が必要と認めた場合は可能です。

4. 現地で咬まれたら|その場でやること・受診でやること

重要|咬まれた・引っかかれた・傷をなめられたら

① すぐに石けんと流水で、傷を約15分間しっかり洗う(WHOの推奨)。その後、消毒薬(ポビドンヨードなど)があれば使う

② その日のうちに現地の医療機関を受診し、「狂犬病の曝露後ワクチン(PEP)を受けたい」と伝える。ホテル・旅行会社・海外旅行保険のサポートデスクに相談すると探しやすい

③ 曝露前免疫を受けた方は、接種記録(製剤名・日付)を見せる。スマートフォンに写真を保存しておくと安心です

④ 現地で受けたワクチンの製剤名・接種日・次回予定日を書いた記録をもらう

⑤ 帰国時は空港の検疫所に申し出て、帰国後すみやかに医療機関で残りの接種を続ける

「小さな傷だから」「飼い犬っぽかったから」と自己判断しないことが大切です。WHOは曝露の程度をカテゴリーで分け、それぞれ対応を決めています。

用語解説|WHOの「曝露カテゴリー」と「抗狂犬病免疫グロブリン(RIG)」

カテゴリーⅠ:動物に触れた・エサをあげた・傷のない皮膚をなめられた → 曝露とはみなさない

カテゴリーⅡ:素肌を軽くかじられた、出血のない小さな引っかき傷 → 傷の洗浄と、すぐにワクチン接種

カテゴリーⅢ:出血を伴う咬み傷・引っかき傷、傷口や粘膜をなめられた、コウモリとの直接接触 → 洗浄・ワクチンに加え、必要に応じて免疫グロブリン

抗狂犬病免疫グロブリン(RIG):ワクチンで自分の抗体ができるまでの間、ウイルスを中和する「完成した抗体」の注射です。日本では入手できないため、必要な場合は現地で投与を受けることになります。

なお国内の添付文書では、曝露後免疫のスケジュールとして、ラビピュールは4回(0日に2か所・7日・21日)、5回(0・3・7・14・28日)、6回(0・3・7・14・30・90日)、国産ワクチンは6回(0・3・7・14・30・90日)が示されています。現地で始めた接種を日本で引き継ぐ場合は、現地の記録をもとに残りの回数と日付を決めます。咬まれた傷では破傷風の予防も必要になることがあるため、母子手帳や接種記録で破傷風を含むワクチンの接種歴も確認しておきましょう。

5. お子さま連れの旅行で気をつけたいこと

説明のための架空のケースでご紹介します(実在の患者さんの情報ではありません)。

40代のご両親と小学2年生・5年生のお子さまの4人家族が、12月27日からバリ島へ6泊の旅行を計画。ウブドの寺院(サルが多い観光地)やライステラスの散策を予定しています。この場合、ご家族と相談のうえ、11月中旬に1回目、7日後に2回目、28日後に3回目を、平日夕方や土曜午前の受診でご家族そろって受ける計画が考えられます。ラビピュールの添付文書には年齢の制限はなく、2歳以上は上腕に筋肉注射します。

ワクチンと同じくらい大切なのが、出発前のお子さまへの声かけです。

・犬・猫・サルには、かわいくても自分から触らない、エサをあげない
・サルの前で食べ物やビニール袋を見せない
・咬まれた・引っかかれた・なめられたら、小さな傷でも必ずすぐ大人に言う(怒られないと伝えておく)

6. 副反応・費用・輸入ワクチンについて

ラビピュールの国内臨床試験(曝露前免疫)では、注射部位の痛み(約43%)・赤み(約17%)、全身症状としてだるさ(約14%)・頭痛(約9%)・筋肉痛(約8%)が報告されています。多くは数日で治まります。まれな重い副反応として、ショック・アナフィラキシー、脳炎、ギラン・バレー症候群が添付文書に記載されており、接種後は院内でしばらく様子をみていただきます。

狂犬病ワクチンは健康保険・公費の対象外(自費診療)です。当院では国内承認のラビピュールのほか、国内未承認の輸入ワクチン(ChiroRab)も取り扱っています。国内未承認の輸入ワクチンは、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる点を必ずご理解いただいたうえで選択していただきます。料金はトラベルワクチン外来のご案内に掲載しております。

7. 受診・相談前に確認しておくこと

受診前チェックリスト

□ 出発日・帰国日と、旅程(都市部か、地方・離島・寺院・トレッキングを含むか)

□ 旅行に行く家族全員の母子手帳・予防接種記録(破傷風・日本脳炎・A型肝炎などの接種歴)

□ 過去に狂犬病ワクチンを受けたことがあれば、その製剤名・回数・日付

□ お薬手帳(ステロイドや免疫を抑えるお薬はワクチンの効きに影響することがあります)

□ 妊娠中・妊娠の可能性、過去のワクチンでの強いアレルギーの有無

□ 土曜午前を含めて、3回分の来院日の候補(0日・7日・21日または28日)

ワクチンは取り寄せが必要な場合があるため、ご予約の際に「狂犬病ワクチン希望・出発日」をお伝えください。

8. まとめ

  • 狂犬病は発症するとほぼ100%死亡しますが、咬まれた後のワクチン接種で発症を防げます
  • ラビピュールの曝露前免疫は0・7・21日(または28日)の3回。12月下旬出発なら11月中の開始が安心です
  • 曝露前免疫を済ませていても、咬まれたら曝露後免疫は必要。ただし回数が減り、日本では入手できない免疫グロブリンが不要になります
  • 咬まれたら石けんと流水で約15分洗い、その日のうちに受診。帰国時は検疫所に申し出ます
  • お子さまには「動物に触らない」「咬まれたらすぐ言う」を出発前に約束しておきましょう

竹内内科小児科医院で相談するという選択(当院が選ばれる理由)

年末年始の旅行前の渡航ワクチンを、当院ではご家族単位で、日程から逆算してご提案しています。

理由① 日本旅行医学会認定医の院長が相談を担当

院長の五藤良将は日本旅行医学会認定医です。旅程・持病・お薬を伺い、必要なワクチンと優先順位を一緒に決めます。

理由② 内科・小児科併設でご家族そろって

お子さまからご高齢の方まで同じ窓口で。家族旅行の全員分のスケジュールをまとめて組み立てられます。

理由③ 国内承認・輸入ワクチンの両方を取り扱い

狂犬病はラビピュールと輸入ワクチン(ChiroRab)に対応。A型肝炎・破傷風などとの同時接種もご相談いただけます。

理由④ 多摩川駅徒歩5分・土曜午前も診療

受付は午前12時まで・午後19時まで。3回の接種を、お仕事や学校の予定に合わせて組みやすい体制です。

理由⑤ 五良会グループの渡航医学体制と連携

姉妹院の五良会クリニック白金高輪(渡航医学認定医2名)と連携し、帰国後の発熱など輸入感染症の相談にもつなげます。

年末年始に海外へ行く方は、11月中にご相談ください。

ご予約の際に「狂犬病ワクチン希望・出発日」をお知らせください。

医療法人社団 五良会・正友会 理事長 五藤 良将

AUTHOR / SUPERVISOR | この記事の執筆医師

竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将(ごとう よしまさ)

  • 防衛医科大学校 医学部 卒業(27期)。防衛医科大学校病院、自衛隊中央病院、自衛隊横須賀病院ほかで臨床経験を積む
  • 医療法人社団 五良会(竹内内科小児科医院・五良会クリニック白金高輪)理事長/医療法人社団 正友会(五良ファミリークリニックセンター南)理事長/竹内内科小児科医院 院長
  • 日本内科学会 認定内科医/日本抗加齢医学会 専門医/日本糖尿病協会 登録医/日本旅行医学会 認定医
  • 日本温泉気候物理医学会 温泉療法医・温泉療法専門医(温泉・入浴・気候と健康の専門家として、旅先での入浴や体調管理のご相談にも対応)
  • 日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/難病指定医
  • 所属学会:日本内科学会、日本糖尿病学会、日本アレルギー学会、日本東洋医学会、日本リウマチ学会、日本外来小児科学会、日本抗加齢医学会、日本睡眠学会、日本美容内科学会、日本旅行医学会、日本温泉気候物理医学会 ほか
  • 著書『あぶら落とすスープ』(アスコム)ほか。NHK・TBS・フジテレビ・日本テレビ・テレビ朝日などテレビをはじめメディア出演多数

執筆・監修責任について

本記事も院長の五藤良将が執筆・監修しています。公的機関の発表・添付文書・国内外のガイドラインを確認したうえで執筆しており、内容は公開時点の情報に基づくものです。新しい知見や改訂があった場合は、こちらで記事を更新します。
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個々の患者さんの診断・治療に代わるものではありません。症状や治療のご判断については、必ず医師にご相談ください。記載内容について気になる点がございましたら、竹内内科小児科医院(03-3721-5222)までお知らせください。

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参考文献

  1. ラビピュール筋注用 添付文書(2024年10月改訂 第2版). PMDA 医療用医薬品情報.
  2. 組織培養不活化狂犬病ワクチン(KMバイオロジクス)添付文書(2024年10月改訂 第2版). PMDA 医療用医薬品情報.
  3. World Health Organization. Rabies vaccines: WHO position paper – April 2018. Weekly Epidemiological Record. 2018;93(16):201-220.
  4. World Health Organization South-East Asia Regional Office. Rabies(2026年11月閲覧).
  5. 千葉県「狂犬病について」(国内発生状況・輸入症例)(2026年11月閲覧).
  6. 厚生労働省検疫所 FORTH「狂犬病」(2026年11月閲覧).
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