皆さま、こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。
9月に入り、田園調布・多摩川エリアも朝晩は少しずつ過ごしやすくなってきました。日中はまだ残暑が続くものの、これから秋が深まるにつれて確実に変化していくものがあります。それが「血圧」です。実は血圧には季節変動があり、気温が下がり始める秋から冬にかけて上昇しやすいことが、日本の家庭血圧研究で繰り返し示されています。
特にご注意いただきたいのが、この夏に「血圧が下がったから」と降圧薬を減らした・調整した方です。夏に良好だった血圧が、秋の気温低下とともにじわじわと戻ってくる——毎年この時期に外来でよく経験するパターンです。今回のブログでは、日本高血圧学会が2025年8月に発刊した6年ぶりの新ガイドライン「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」を踏まえ、秋の血圧上昇のメカニズムと、今から始めたい家庭血圧測定・お薬の見直しについて解説いたします。
夏の血圧については、姉妹記事「夏は血圧が下がる?猛暑と降圧薬・脱水の注意点」もあわせてご覧ください。本記事はその“秋編”にあたります。
目次
血圧は「秋から上がり始める」——季節変動のエビデンス
「冬は血圧が上がる」というお話を聞いたことがある方は多いと思います。ただ、実際の上昇は真冬に突然始まるわけではありません。日本の大規模な家庭血圧研究(大迫研究など)では、家庭血圧は夏に最も低く、外気温が下がり始める秋から冬に向かって上昇していくことが示されており、夏と冬の差は収縮期血圧(上の血圧)でおよそ5〜10mmHgに及ぶこともあります。
つまり、朝晩が涼しくなってくる9月〜10月は、ちょうど血圧が「上がり坂」に入る転換点なのです。夏の間「今年は血圧の調子がいいな」と感じていた方ほど、この変化に気づかないまま冬を迎えてしまうことが少なくありません。
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ポイント|血圧の季節変動 ① 夏は低め:暑さによる血管拡張と発汗(塩分・水分の喪失)で血圧は下がりやすい ② 秋から上昇開始:気温低下とともに血管が収縮し、じわじわと上がり始める ③ 冬にピーク:心筋梗塞・脳卒中も冬に増加。秋のうちからの備えが大切 |
なぜ気温が下がると血圧が上がるのか(メカニズム図解)
気温の低下が血圧を押し上げる仕組みは、体が体温を守ろうとする自然な反応そのものです。
メカニズム図解|気温低下が血圧を上げる流れ
| 気温が下がる:朝晩の冷え込み、冷たい外気に触れる | |
| 交感神経が活発化:体温を逃がさないよう、体が「緊張モード」に切り替わる | |
| 末梢の血管が収縮:手足の血管が縮んで熱の放散を防ぐ。血液の通り道が狭くなる | |
| 血圧が上昇:狭くなった血管に血液を送るため、心臓はより強い圧力を必要とする |
さらに秋から冬は、発汗が減って塩分が体に残りやすくなること、鍋物や煮物など塩分の多い食事が増えること、寒さで運動量が減ることも重なり、血圧にとっては「上がる条件」がそろう季節と言えます。加えて、朝の冷え込みは早朝高血圧(起床前後の血圧上昇)を強めることが知られており、心筋梗塞や脳卒中が早朝・冬季に多いこととも関連しています。
夏に降圧薬を調整した方は「秋の見直し」を
この夏は記録的な暑さが続き、当院でも「夏になって血圧が下がりすぎた」「立ちくらみがする」といったご相談に対し、脱水への注意とあわせて降圧薬を一時的に減量・調整した患者さまがいらっしゃいました。これは夏の適切な対応です。
ただし大切なのは、その調整は「夏仕様」だったということです。気温が下がってくれば血圧は自然と戻り、夏のままのお薬では足りなくなることがあります。逆に、「涼しくなって血圧が上がってきたから」とご自身の判断で薬を増やしたり、飲み方を変えたりするのも危険です。
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お薬の自己調整はなさらないでください 降圧薬の増減は、家庭血圧の記録をもとに医師と相談して決めるのが原則です。夏に減量した方は、9月〜10月の受診時に「夏に薬を調整したこと」を必ずお伝えください。当院では家庭血圧の数値を拝見しながら、季節に合わせた処方の微調整を行っております。 |
JSH2025の降圧目標——全年齢で「診察室130/80・家庭125/75」へ
日本高血圧学会は2025年8月29日、6年ぶりの改訂となる「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」を発刊しました。最大のポイントは、これまで年齢によって分かれていた降圧目標が、原則として全年齢で統一されたことです。
| 測定場所 | JSH2025の降圧目標(原則・全年齢) | 高血圧の診断基準 |
|---|---|---|
| 診察室血圧 | 130/80mmHg未満 | 140/90mmHg以上 |
| 家庭血圧 | 125/75mmHg未満 | 135/85mmHg以上 |
従来のJSH2019では75歳以上の目標は緩めに設定されていましたが、JSH2025では「高値血圧(130〜139/80〜89mmHg)の段階でも心血管疾患のリスクが高まる」というエビデンスに基づき、年齢を問わず130/80mmHg未満(家庭血圧125/75mmHg未満)を目指す方針となりました。もちろん、ご高齢の方やふらつきが出やすい方には、副作用や体調に配慮しながら個別に目標を調整します。「数字だけを追いかける」のではなく、お一人おひとりに合わせた血圧管理を行うことも、同ガイドラインが強調している点です。
また、JSH2025では引き続き減塩(食塩1日6g未満)と、野菜・果物などからのカリウム摂取の重要性が示されています。詳しくは先日の記事「減塩だけじゃない“足し算”の血圧対策|カリウム・DASH食」で解説しております。
秋に始めたい3つの血圧対策
① 家庭血圧測定を「再開」する
夏の間に血圧測定をお休みしていた方は、涼しくなってきた今こそ再開のタイミングです。JSH2025でも、診察室血圧より家庭血圧を優先して診断・治療判定に用いる方針が引き継がれています。測り方の基本は次のとおりです。
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家庭血圧測定の基本(朝・晩の1日2回) □ 朝:起床後1時間以内・排尿後・朝食や服薬の前に □ 晩:就寝前に □ 椅子に座って1〜2分安静にしてから、上腕式の血圧計で測定 □ 数値は手帳やアプリに記録し、受診時にお持ちください |
② 朝の冷え対策と入浴の工夫
血圧を急に上げるのは「温度差」です。起床時に一枚羽織る、洗顔をぬるま湯にする、脱衣所や浴室を暖めておく(本格的な冬に向けた準備として今から習慣に)、湯温は41度以下・長湯を避ける——こうした小さな工夫が、早朝高血圧やヒートショックの予防につながります。
③ 「運動の秋」を血圧管理に活かす
涼しくなる秋は、運動療法を始める絶好の季節です。ウォーキングなどの有酸素運動を1日30分程度(少しずつの合計でも構いません)、週の合計で150分以上を目安に続けると、降圧効果が期待できることが示されています。多摩川の土手沿いの散歩など、地域の環境も上手に活用してください。筋力トレーニングとの組み合わせについては「涼しくなった秋こそ始める“貯筋”」の記事もご参照ください。
こんなときは早めにご相談ください
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重要|受診をおすすめするサイン ・家庭血圧が135/85mmHg以上の日が続く(治療中の方は普段より明らかに高い日が続く) ・夏に降圧薬を減量・中止したまま、秋の血圧を確認していない ・朝の血圧だけが高い(早朝高血圧の可能性) ・健診で「血圧高め」と言われたまま受診していない ・頭痛・めまい・動悸・むくみなど、気になる症状を伴う |
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受診前チェックリスト □ 家庭血圧の記録(手帳・アプリ・血圧計のメモリー) □ 現在服用中のお薬(お薬手帳)と、夏に調整した内容 □ 直近の健康診断の結果 □ 気になる症状(いつから・どんなときに)のメモ |
当院は内科・糖尿病内科・代謝内科として、高血圧をはじめ糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病をまとめて診療しております。土曜午前も診療しておりますので、平日お忙しい働き盛りの方も、健診結果を片手にお気軽にご相談ください。ご家族の血圧が気になる方の「付き添いついでのご相談」も歓迎です。
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秋の血圧チェック・降圧薬の見直しは竹内内科小児科医院へ 東急東横線・目黒線「多摩川駅」徒歩5分/土曜午前も診療 ご予約・お問い合わせ:03-3721-5222(WEB予約・LINEは下記ボタンから) |
参考文献
- 日本高血圧学会編. 高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025). ライフサイエンス出版, 2025年8月発刊.
- 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン」 https://www.jpnsh.jp/guideline.html(2026年8月閲覧)
- 日本高血圧学会 緊急声明「冬こそ血圧朝活!—冷えとヒートショックから身を守る—」 https://www.jpnsh.jp/topics/849.html(2026年8月閲覧)
- 東北大学 大迫研究グループ. 家庭血圧値の季節変動性と外気温の関連(Ohasama Study 関連報告).
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」(2026年8月閲覧)
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竹内内科小児科医院 院長 五藤 良将
日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・日本旅行医学会認定医