こんにちは。竹内内科小児科医院 院長の五藤良将です。
「食事制限も運動もしているのに痩せない」「年齢とともに代謝が落ちて体重が戻らない」——肥満は単なる見た目の問題ではなく、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病・心血管疾患・一部のがんなど、数多くの疾患のリスクを高める医学的な問題です。
近年、GLP-1受容体作動薬を中心とした肥満症治療薬が世界的に登場し、肥満医療は大きな転換期を迎えています。2024年2月には、日本で初めて「肥満症」への効能を持つGLP-1製剤ウゴービ®(セマグルチド)が保険収載され、2025年3月にはGLP-1/GIP両受容体作動薬ゼップバウンド®(チルゼパチド)も承認されました。
本記事では、当院で提供している医療痩身(メディカルダイエット)について、最新の臨床試験データと国内外のガイドラインに基づき、効果・エビデンス・副作用・適切な使い方を徹底解説します。
この記事でわかること
- 日本における「肥満」と「肥満症」の違い(肥満症診療ガイドライン2022)
- GLP-1受容体作動薬の作用機序と臨床試験エビデンス(STEP-1・SELECT試験)
- 日本で承認された肥満症治療薬ウゴービ・ゼップバウンドの最新情報
- L-カルニチン注射・点滴のエビデンスと限界
- α-リポ酸(チオクト酸)の抗肥満効果に関する最新メタ解析
- 当院で実施している治療メニュー・料金・適応
- GLP-1使用時の重要な副作用・禁忌・注意点
1.そもそも「肥満」と「肥満症」は違う病気です
まず知っていただきたいのが、「肥満」は病気ではなく「肥満症」は病気である、という日本独自の疾患概念です。
ポイント|「肥満症」の定義(日本肥満学会)
- 肥満:BMI 25kg/m²以上の状態(病気ではない)
- 肥満症:肥満に加えて11種の健康障害(2型糖尿病・脂質異常症・高血圧・脂肪肝・睡眠時無呼吸症候群など)のいずれかがあり、医学的に減量が必要な状態
出典:日本肥満学会『肥満症診療ガイドライン2022』
肥満症診療ガイドライン2022では、減量目標を以下のように明確化しています。
| BMI | 減量目標 | 総摂取エネルギー目安 |
|---|---|---|
| 25〜35kg/m²(肥満症) | 現体重の3%以上の減量 | 目標体重 × 25kcal/日以下 |
| 35kg/m²以上(高度肥満症) | 現体重の5〜10%の減量 | 目標体重 × 20〜25kcal/日以下 |
わずか3%の減量でも、血糖・血圧・脂質の改善が報告されており、「少しの減量」が大きな健康効果を生みます。
2.GLP-1受容体作動薬とは?|痩せる仕組みを医学的に解説
GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)は、食事をとると小腸から分泌されるインクレチンと呼ばれるホルモンです。もともと2型糖尿病の治療薬として開発されましたが、近年、体重減少効果が注目され肥満症治療薬としても世界的に使用されるようになりました。
メカニズム|GLP-1が体重を減らす5つの作用
- ①脳(視床下部)の満腹中枢に作用し食欲を抑制
- ②胃の蠕動運動を遅らせることで満腹感を持続
- ③インスリン分泌を血糖依存性に促進(低血糖を起こしにくい)
- ④グルカゴン分泌を抑制し肝糖産生を減らす
- ⑤心血管保護作用・腎保護作用も報告されている
3.日本初の肥満症治療薬「ウゴービ®(セマグルチド)」の臨床効果
ウゴービ®(一般名:セマグルチド)は、2024年2月22日に日本で保険収載された、日本初の「肥満症」適応を持つGLP-1受容体作動薬です。糖尿病治療薬オゼンピック®・リベルサス®と同じ成分ですが、肥満症治療に最適化された用量(週1回皮下注射、最大2.4mg)で使用されます。
エビデンス|STEP-1試験(NEJM 2021)
BMI 30以上(または27以上かつ体重関連疾患あり)の糖尿病のない成人1,961名を対象とした大規模第Ⅲ相試験。
- 68週後の平均体重変化:セマグルチド2.4mg群 −15.3kg vs プラセボ群 −2.6kg
- 5%以上の減量達成率:86.4% vs 31.5%
- 15%以上の減量達成率:約50% vs 4.9%
Wilding JPH, et al. Once-Weekly Semaglutide in Adults with Overweight or Obesity. N Engl J Med. 2021;384(11):989–1002. DOI: 10.1056/NEJMoa2032183
エビデンス|日本人を含むSTEP-6試験(東アジア人対象)
日本人を含む東アジア人を対象とした第Ⅲ相試験で、68週後の体重変化:
- ウゴービ2.4mg群:−13.2%
- ウゴービ1.7mg群:−9.6%
- プラセボ群:−2.1%
Kadowaki T, et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2022;10(3):193–206.
エビデンス|SELECT試験|心血管イベント20%減少(NEJM 2023)
糖尿病のない過体重・肥満+心血管疾患の既往がある患者17,604名を対象。平均39.8か月の追跡期間で:
- 主要3点MACE(心血管死・非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中):ハザード比0.80(95%CI 0.72–0.90、p<0.001)
- 心血管イベントリスクを20%減少
- HbA1cの改善の有無にかかわらず心血管保護効果あり(多面的効果)
Lincoff AM, et al. Semaglutide and Cardiovascular Outcomes in Obesity without Diabetes. N Engl J Med. 2023;389(24):2221–2232. DOI: 10.1056/NEJMoa2307563
このSELECT試験は、肥満治療が単に「見た目」ではなく命を守る治療であることを証明した、画期的な大規模試験です。
4.ゼップバウンド®(チルゼパチド)|GLP-1/GIP両受容体作動薬
チルゼパチド(糖尿病適応:マンジャロ®/肥満症適応:ゼップバウンド®)は、GLP-1とGIPの2つの受容体に同時に作用する新世代の薬剤です。2025年3月19日、肥満症治療薬として日本で薬価収載されました。
エビデンス|SURMOUNT-1試験(NEJM 2022)
糖尿病のない肥満・過体重成人2,539名を対象とした第Ⅲ相試験。72週後の体重変化:
- チルゼパチド15mg群:−22.5%(平均−24kg)
- チルゼパチド10mg群:−21.4%
- チルゼパチド5mg群:−16.0%
- プラセボ群:−2.4%
- 5%以上の減量達成率:10・15mg群で96%、5mg群で89%
Jastreboff AM, et al. Tirzepatide Once Weekly for the Treatment of Obesity. N Engl J Med. 2022;387(3):205–216. DOI: 10.1056/NEJMoa2206038
エビデンス|SURMOUNT-1 3年間追跡|糖尿病発症を93%抑制
肥満+前糖尿病の被験者を176週(3年4か月)追跡した解析で:
- 2型糖尿病発症率:チルゼパチド群1.3% vs プラセボ群13.3%(ハザード比0.07)
- 治療中止17週後も糖尿病発症率2.4% vs 13.7%と持続的効果を確認
Jastreboff AM, et al. Tirzepatide for Obesity Treatment and Diabetes Prevention. N Engl J Med. 2024. DOI: 10.1056/NEJMoa2410819
5.重要|GLP-1の「美容・痩身目的」での適応外使用について
警告|日本肥満学会・日本糖尿病学会の公式見解
日本糖尿病学会は2023年4月、「GLP-1受容体作動薬およびGIP/GLP-1受容体作動薬の適応外使用に関する見解」を発表し、以下を強く警告しています:
- 美容・痩身目的での不適切な宣伝・処方は重大な問題である
- 薬は承認された適応範囲でのみ使用すべき
- 本来必要な糖尿病患者への供給が不足する事態が発生している
- 低体重・普通体重の方への美容目的使用は絶対に行うべきではない
出典:日本肥満学会「肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント」(2023年11月策定・2025年改訂)
当院では、この公的ステートメントを厳守し、医学的に必要な方にのみGLP-1受容体作動薬を処方しています。「痩せたい」という美容目的のみでのご希望にはお応えできませんので、ご了承ください。
6.当院で取り扱うGLP-1受容体作動薬
GLP-1注射(週1回皮下注射)
当院では医師の厳密な適応判断のもと、GLP-1注射を取り扱っております。使用する薬剤は症例により異なりますが、いずれも国内承認薬を使用しています。
投与方法
- 自己注射(お腹・二の腕・太ももの外側)
- 週1回、決まった曜日に投与
- 注射針は非常に細く、痛みはほとんどありません
- 注射部位は前回から2〜3cmずらしてください(皮下組織の硬結予防)
GLP-1経口薬(リベルサス®)
セマグルチドの経口錠剤(リベルサス®)は、2型糖尿病治療薬として承認されています。肥満症への使用は適応外となり、当院でも糖尿病患者様以外への処方は原則行いません。
重要な副作用・禁忌
重要|GLP-1製剤の主な副作用
- 消化器症状(最頻):悪心・嘔吐・下痢・便秘・腹痛(投与初期に多い、多くは軽〜中等度)
- 急性膵炎:稀だが重篤。激しい腹痛・背部痛出現時は直ちに受診
- 胆石症・胆嚢炎:急激な体重減少に伴うリスク
- 低血糖:単独では稀、他の糖尿病薬併用で増加
- 甲状腺髄様癌(MTC)のリスク:動物実験で甲状腺C細胞腫瘍が報告、MTCの既往・家族歴は禁忌
- 糖尿病網膜症の増悪:急激な血糖改善により網膜症が悪化する報告あり
禁忌となる方
- 妊娠中・授乳中・妊娠を希望する方
- 膵炎の既往・重度の胃腸障害のある方
- 甲状腺髄様癌の既往または家族歴のある方
- 多発性内分泌腫瘍症2型(MEN2)の方
- 重度のアルコール依存・栄養不良の方
- 18歳未満(安全性未確立)
7.脂肪燃焼注射(L-カルニチン注射)
L-カルニチンは体内で合成されるアミノ酸誘導体で、長鎖脂肪酸をミトコンドリア内膜に輸送するシャトル役として、脂肪燃焼の必須因子です。加齢とともに体内量が減少することが知られており、脂肪代謝の低下に関連するとされています。
エビデンス|L-カルニチンの体重減少効果(メタ解析)
- 37件のRCT・2,292名を統合したメタ解析:L-カルニチン補充により平均−1.21kg(95%CI −1.73〜−0.68)、BMI −0.24kg/m²、体脂肪量 −2.08kgの有意な減少
- 用量反応解析:2,000mg/日前後が最大効果
- 過体重・肥満者でより効果が大きい(亜集団解析)
Talenezhad N, et al. Effects of l-carnitine supplementation on weight loss and body composition: A systematic review and meta-analysis of 37 randomized controlled clinical trials. Clin Nutr ESPEN. 2020;37:9–23.
ただしL-カルニチンの減量効果はあくまで「補助的」で緩やかです。GLP-1製剤のような大きな減量は期待できませんが、食事療法・運動療法と併用することで代謝改善に寄与します。特に運動前に投与することで脂肪燃焼効率を高めることができます。
当院の脂肪燃焼注射
- 主成分:L-カルニチン
- 料金:1回 2,500円(税込)/初診料別途 1,000円
- 所要時間:数分
8.脂肪燃焼点滴(L-カルニチン+α-リポ酸/チオクト酸)
α-リポ酸(チオクト酸)は、ミトコンドリア内のピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体の補酵素として、糖代謝・脂質代謝の中心的役割を担います。抗酸化物質としても作用し、ビタミンC・Eの再生も促します。
エビデンス|α-リポ酸の抗肥満効果(メタ解析)
- Kucukgoncu et al. メタ解析(10 RCT、Obesity Reviews 2017):α-リポ酸投与で平均−1.27kg(95%CI 0.25〜2.29)の体重減少、BMI −0.43kg/m²
- Koh et al. RCT(Am J Med 2011):1,800mg/日のα-リポ酸投与で20週後にプラセボ比 体重の2.1%(95%CI 1.4〜2.8)の有意な減量
Kucukgoncu S, et al. Alpha-lipoic acid (ALA) as a supplementation for weight loss: results from a meta-analysis of randomized controlled trials. Obes Rev. 2017;18(5):594–601.
Koh EH, et al. Effects of alpha-lipoic acid on body weight in obese subjects. Am J Med. 2011;124(1):85.e1–8.
当院の脂肪燃焼点滴は、L-カルニチンにα-リポ酸(チオクト酸)を加えた処方で、単独投与よりも脂肪代謝・抗酸化作用の両面から相乗効果が期待できます。
当院の脂肪燃焼点滴
- 主成分:L-カルニチン+α-リポ酸(チオクト酸)
- 料金:1回 4,000円(税込)/初診料別途 1,000円
- 所要時間:約20〜30分
9.医療用サプリメント|ワカサプリ L-カルニチン
スイス・ロンザ社が製造する高純度L-カルニチン「Carnipure™」を使用した医療用サプリメントです。
- 1粒あたりL-カルニチン 350mg配合(60粒入、1日2粒目安)
- ロンザ社独自製法でD体(異性体)を一切含まない
- 米国FDAのGRAS認定(一般に安全と認められた成分)取得
- アスリートの体組成管理にも使用される高品質原料
料金
60粒 3,000円(税込)/1日2粒目安
運動との併用で、メタ解析でも報告されているL-カルニチンの体重・BMI・体脂肪量減少効果が期待できます。
10.医療痩身をおすすめしたい方
| 1 | BMI 25以上で、食事・運動療法を3か月以上続けても体重が改善しない方 |
| 2 | 高血圧・脂質異常症・2型糖尿病などの合併症があり、医学的な減量が必要な方 |
| 3 | 年齢とともに代謝が低下し、従来の方法では痩せにくくなった方 |
| 4 | 心血管イベント(心筋梗塞・脳梗塞)の予防として減量が必要な方 |
| 5 | 脂肪吸引などの外科的治療ではなく、内科的に体質改善したい方 |
ただし、医療痩身は「食事・運動療法の代わり」ではなく「補助」です。生活習慣の改善と並行することで、最大の効果を発揮します。
11.未承認機器・医薬品に関する注意事項
【脂肪燃焼注射・点滴】
- 医薬品医療機器等法上の承認:美容・痩身治療に関しては未承認(使用薬剤「チオクト酸静注」「エルカルチンFF静注」は厚生労働省で医薬品として認可済)
- 入手経路:国内販売代理店経由で入手
- 同一成分の国内承認医薬品:有
- 諸外国における安全性:長年の臨床使用経験あり、重篤な副作用の報告は稀
【GLP-1注射・経口薬(肥満症目的使用)】
- 医薬品医療機器等法上の承認:2型糖尿病の効能・効果で承認されているが、当院で行う肥満治療目的での使用は国内で承認されていない(ただしウゴービ®は2024年2月より肥満症適応で承認)
- 入手経路:国内の医薬品卸業者より国内承認薬を仕入れ
- 国内の承認医薬品の有無:ウゴービ®(肥満症)が承認されているが、保険適用には厳格な施設基準・患者基準があり、当院では自費診療での取り扱いとなる
- 諸外国における安全性:米国FDA・欧州EMAで肥満治療薬として承認済み
12.受診・初回相談について
医療痩身(特にGLP-1注射・経口薬)は、医師による適応判断が必須です。ご希望の方は、以下の要領で初回相談にお越しください。
GLP-1初回相談のご案内
- 初回は五藤院長の診療日にご来院ください
(月曜午前、火曜日終日、木曜日午前、金曜日午前、土曜日午前) - 既往歴・内服薬・身長・体重・腹囲のデータをご用意ください
- BMI・合併症により適応を判断し、最適な治療プランをご提案します
- ご希望の場合は採血・血圧・心電図などの評価も可能です
医療痩身は「魔法の薬」ではありません。しかし、科学的に確立された治療法を正しく使うことで、これまでの努力だけでは届かなかった健康目標を実現できる可能性があります。
お気軽にご相談ください。
参考文献
- Wilding JPH, et al. Once-Weekly Semaglutide in Adults with Overweight or Obesity. N Engl J Med. 2021;384(11):989–1002.
- Lincoff AM, et al. Semaglutide and Cardiovascular Outcomes in Obesity without Diabetes. N Engl J Med. 2023;389(24):2221–2232.
- Kadowaki T, et al. Semaglutide once a week in adults with overweight or obesity in East Asia (STEP 6). Lancet Diabetes Endocrinol. 2022;10(3):193–206.
- Jastreboff AM, et al. Tirzepatide Once Weekly for the Treatment of Obesity (SURMOUNT-1). N Engl J Med. 2022;387(3):205–216.
- Jastreboff AM, et al. Tirzepatide for Obesity Treatment and Diabetes Prevention. N Engl J Med. 2024.
- Talenezhad N, et al. Effects of l-carnitine supplementation on weight loss and body composition: A systematic review and meta-analysis of 37 RCTs. Clin Nutr ESPEN. 2020;37:9–23.
- Pooyandjoo M, et al. The effect of (L-)carnitine on weight loss in adults: a systematic review and meta-analysis. Obes Rev. 2016;17(10):970–976.
- Kucukgoncu S, et al. Alpha-lipoic acid (ALA) as a supplementation for weight loss: results from a meta-analysis of RCTs. Obes Rev. 2017;18(5):594–601.
- Koh EH, et al. Effects of alpha-lipoic acid on body weight in obese subjects. Am J Med. 2011;124(1):85.e1–8.
- 日本肥満学会『肥満症診療ガイドライン2022』ライフサイエンス出版, 2022.
- 日本肥満学会「肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント」2023年11月策定(2025年改訂).
- 日本糖尿病学会「GLP-1受容体作動薬およびGIP/GLP-1受容体作動薬の適応外使用に関する見解」2023年4月.
- 厚生労働省「肥満症の効能又は効果を有するセマグルチド(遺伝子組換え)製剤に係る最適使用推進ガイドライン」2023年11月.

